bird “Lush” Live! レポート〜冨田ラボがProphet-6を投入

レポート by 松本伊織(サウンド&レコーディング・マガジン編集部) 2016年2月19日

撮影:仁礼博

撮影:仁礼博

冨田ラボこと冨田恵一が、サウンド&レコーディング・マガジン2015年12月号「Cross Talk」で試したDAVE SMITH INSTRUMENTS Sequential Prophet-6を、自身がバンド・マスターを務めるbird「”Lush” Live」で導入。その経緯を知る本誌としては、これは見逃すわけにはいかないだろう。ということで、2月11日に行われた東京公演の模様をお伝えしていく。

撮影:仁礼博

撮影:仁礼博

現代ジャズを冨田流に解釈した『Lush』

birdが昨年11月にリリースしたアルバム『Lush』は、ちょっとした事件だった。冨田ラボこと冨田恵一が全面プロデュースし、冨田とbird、二人だけで作り上げた『Lush』には、現代の新しいジャズ・ムーブメントから影響を受けたグルーブがその根幹にあった。例えば、デヴィッド・ボウイの遺作『★』では、マーク・ジュリアナ(ds)やジェイソン・リンドナー(ac.p)といったその最先端ジャズ・シーンを作るミュージシャンたちが支えていたが、冨田はこうした感覚を一人で咀嚼し、『Lush』に大量投入してきた。以前、冨田ラボでは、1960〜80年代のサウンドを使用楽器からプレイスタイルまで踏まえて冨田流の解釈で自曲に取り込むことを“シミュレーショニズム”と呼んでいたが、ついに冨田は現在進行形の音楽までそのシミュレーション対象にしてしまった。
さらに言えば、アルバム『Lush』はライブを前提としてない作品だったとも言えるだろう。つまり……

生演奏に影響を受けたヒップホップのグルーブ

ヒップホップに影響を受けたコンテンポラリー・ジャズのグルーブ

コンテンポラリー・ジャズに影響を受けた冨田の打ち込みによる『Lush』

『Lush』のグルーブを再現するバンド

……という、何周回ってたどり着いたのか分からなくなりそうなのが今回のライブであった。

撮影:仁礼博

撮影:仁礼博

従来の冨田ラボ・サウンドとの対比が『Lush』の先進性を描き出す

筆者が見たのは1stセットで、『Lush』の曲順通りの進行であった。『Lush』のグルーブは冨田のグルーブであるから、当然リズムの根幹は冨田自身と、ドラマーの坂田学に委ねられる。従って冨田はリズム・キープのためか、アコースティック・ピアノに向かうことが多かった。例えば『Lush』の同名オープニング・ナンバーは、アルバムでは跳ねた8分音符のシンセ・リフが印象的だが、ライブではそのパートを冨田がピアノでたたき出す、といった具合。ギターもセットされていたが、最後の「道」(冨田ラボ『Shipbuilding』収録曲のセルフ・カバー)でソロを弾くだけというぜいたくな使い方だ。坂田は、ガサガサした低いピッチのサブスネアで“今”っぽい感じを出しつつ、丁寧なプレイをしていたように感じた。

撮影:仁礼博

撮影:仁礼博

こうした趣旨のライブであったため、細かなシンセ類はシーケンスに委ねられることが多く、Sequential Prophet-6の出番はそう多くは無かったが、最も印象的だったのは序盤に演奏された「Surprise」。華やかなシンセ・ブラスのリフが全体をけん引するナンバーだ。主張はありながら、全体を埋め尽くすことなく、バンドの一楽器としてのポジションをきっちりこなすのはアナログ・ポリシンセならではではないだろうか? アルバムでは恐らく冨田所有のSEQUENTIAL Prophet-10が使われたのだろうが、巨大なProphet-10の代わりをきっちりとSequential Prophet-6がRHODESの上で果たしていた。また、終盤「Ten」ではパッド系サウンドも聴けた。

アルバムで関心したのが、birdのシンガーとしてのポテンシャルだが、ライブでもそれを見せつけられた。この『Lush』グルーブ感から導き出されるメロディは、決して歌いやすい譜割りではないと思う。それを見事に、軽やかに乗りこなす彼女の歌のしなやかさに聴き惚れてしまった。

『Lush』全曲を終えたアンコールは、冨田プロデュース『BREATH』(2006年)収録の曲「パレード」が演奏されることになったが、ニューオーリンズのセカンドラインを取り入れたこの曲は、当然『Lush』の世界とは全く異なる。我々が知っている、従前の「冨田ラボ・サウンド」だとも言えるだろう。この曲がかえって、『Lush』の先鋭性を色濃くしてくれたようにも思えた。

3月3日(木)には大阪公演も予定されているが、恐らくバンドとしての強度も上がっているだろう。関西の方はぜひ会場に足を運んでいただきたい。

撮影:仁礼博

撮影:仁礼博

冨田のエリア。左が会場常設のSTEINWAYグランド・ピアノ。右がDAVE SMITH INSTRUMENTS Sequential Prophet-6と、RHODES MK1 Suitcase Seventy-ThreeをベースにしたDynoMyPiano

冨田のエリア。左が会場常設のSTEINWAYグランド・ピアノ。右がDAVE SMITH INSTRUMENTS Sequential Prophet-6と、RHODES MK1 Suitcase Seventy-ThreeをベースにしたDynoMyPiano

bird “Lush” Live! 2/11 Billboard Live Tokyo
1.Lush
2.Surprise
3.リズムだけ残して
4.Can’t Stop
5.明日の兆し
6.Wake Up
7.タイドグラフ
8.Ten
9.アイスクリーム
10.道
encore.パレード

bird(vo、Performance)
冨田ラボ/冨田恵一(Sound Produce、ac.p、k、g)
坂田学(ds)
鹿島達也(b)
樋口直彦(g)
綿引京子(cho ※2/11東京)
斉藤久美(cho)
Meg(※3/3大阪)

400x40000bbbird『Lush』
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birdオフィシャル・サイト http://www.bird-watch.net/

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