英国発の新鋭マイクロフォン・メーカーASTON MICROPHONES

マガジン連動 by Interpretation:Miki Nakayama  Photo:Hiro Sato 2016年8月23日

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2015年、ジェイムス・ヤング(MD)、フィル・スミス(オペレーション・ディレクター)、アラン・ギャビン(インターナショナル・セールス・ディレクター)、ジャック・ムンロ(メカニカル・デザイナー)によって創業されたイギリスで唯一のコンデンサー・マイク・ブランドASTON MICROPHONES(以下ASTON)。OriginとSpiritという二種類のマイクのほか、リフレクション・フィルターHaloを発売する新進のメーカーだ。ここでは、創業者の一人、ジェイムス・ヤングのインタビューと、5人の著名エンジニアによるインプレッションをお届けする。
 

開発者インタビュー|ジェイムス・ヤング

“ブリティッシュ・サウンド”のエッセンスを製品に持たせることが理念にあった

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▲(写真左から)ジャック・ムンロ、ジェイムス・ヤング、フィル・スミス、アラン・ギャビン

最高品質でありながら手ごろな価格を目指した

私とスミスは、2000年から中国ブランドSE ELECTRONICSを共同経営していたが、2014年7月にパートナーたちが共同経営に終止符を打つ決定をくだした。それがきっかけで、ASTONを創業したんだ。私は、小さな島国でも素晴らしいイノベーション、デザイン、製造クオリティを世界に知らしめたいと願っていた。そのため、美しく人目を引くデザインと、“ブリティッシュ・サウンド”のエッセンスを製品に持たせる理念があった。そしてASTONでは、最高品質でありながら手ごろな価格の製品を作りたいと願っている。音楽のクオリティやパフォーマンスをコストの都合で諦めることのないようにしていきたいんだ。

マイク製品はすべてイギリス国内生産で、部品の90%以上を国内の問屋から仕入れている。ASTONはゼロからマイクを設計し、マイク部品一つ一つが本来持っている美を失わないようにし、構造美を備えた製品を作り上げた。これにより、ASTONのマイクはほかの追随を許さない耐摩耗性の高さを誇る。ステンレス・スティールのシャーシは4時間にわたって回転ドラムにかけるので、錆びることがなく、キズや汚れもつかないんだ。またASTON独自のメッシュ・ヘッドは、ステンレス・スティール・ウールを使用しているので、遮断率が向上し、カプセルから基板へクリーンな信号が送られる。このデザインは破裂音のコントロールにも有効で、ASTONマイクを使用する場合にポップ・シールドは必要ない。さらにカプセル保護の良さはほかのマイクの比ではない。ウェイブ・スプリング・ヘッドはインパクトを変形させて吸収した後でノーマルな形に戻るので、デコボコのグリルを交換する必要はないし、カプセルがダメージを受けることもないんだ。つまり、優れたエンジニアリング、画期的なデザイン、パフォーマンスの良さが要となる部分であり、ユーザーのコスト削減にもつながる部分なのだ。

我々のマイクは、オールラウンドにデザインしている。つまり、リード・ボーカルでも、ギターでも、ドラムでも、ストリングスでも、ピアノでも気楽に使えるマイクということ。どのようなレコーディング環境でも大丈夫な素晴らしいマイクというのは商業スタジオにとっても朗報だが、何よりもプロになろうと勉強中のアマチュア・ミュージシャンにはコスト削減の面で非常に重要な要素なんだ。そして日本の音楽文化に大きく貢献できるようになることが私たちの目標だ。何よりも重要なことは、ユーザーがASTONというブランドに親近感を持ってくれること。それこそがASTON製品が長い間愛されるための要因なのだから。それから年末までに新しいペンシル・マイクをリリースする予定だから、楽しみにしていてくれ。

 

Engineers’ impression

伊東俊郎

<Profile>音響ハウスからキャリアをスタートさせ、米米クラブ、吉田美奈子、山下達郎、渡辺美里、TM NETWORKなどのエンジニアを務めている
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男性ボーカルのレコーディングでテストしました。マイクプリはスタジオのNEVEのコンソールに直接つないでいます。それで、リード・ボーカルにSpiritを、男性コーラスにOriginを使用したところ、中高域の音のスピード、レスポンスがすごく速くて、輪郭がハッキリと聴こえました。音が劣化しないという印象でしょうか。C12VRやC414などAKG系のスピード感に似ている傾向があるかもしれませんね。ただし音の豊かさで言うと、400〜800Hzの中低域が少しだけ遅れて聴こえ、へこんでいる印象でした。しかし逆にこの特性は、打ち込み系など、オケが密集している楽曲にはすごくアドバンテージがあるなと思いました。プリアンプの切り替えもハッキリ分かりますし、それがこの価格で手に入るのは素晴らしいと思います。

またマイクはルックスもすごく大事で、ボーカリストの意識にすごく影響するんですよ。もちろん好みはありますが、ASTONのマイクはテンションが上がるカッコ良いデザインだと思います。また重量も軽いので、卓上にセッティングしたとしてもマイクが傾かない。そういったアドバンテージもあるので、自宅での録音にも向いてると思います。

それからリフレクション・フィルターもすごく効果的でした。軽くてコンパクトなのでお辞儀することもないですし(笑)、音の反射もしっかり抑えてくれていました。自宅などの空間でもしっかりと集音できそうです。ASTONは設計を含めて丁寧に作ってあるマイクだと思います。

 

グレゴリ・ジェルメン

<Profile>パリ育ち。20歳で来日し、現在はDigz,Inc Groupの運営するDCH STUDIOにてハウス・エンジニアとして塩ノ谷早耶香、Sky’s The Limit、FlowBackなどを手掛ける
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今回は、ボーカルとアコギ、ウクレレ、サックスでテストしてみました。歌はSpiritで、男性と女性のチェックをしたんですけど、高域が伸びる周波数特性を持っており、男性ボーカルがその成分の多い声質だったので、少し増幅されてしまった印象です。女性は柔らかく太い声質だったので、5k〜10kHzの帯域のニュアンスがすごく良く出ていて好印象でしたね。あとHaloがすごく効果がありびっくりしました。ボーカリストもすごく歌いやすくなると言っていましたし、声が広がらず、しっかり芯をしっかりとらえることができたんです。またサックスではSpirit1本とOrigin2本立てて録ってみたんですけど、レスポンスもすごく良かったですね。

サウンドに関しては、Originはアグレッシブでハイファイなイメージ、Spiritはファットでレンジが広くてS/Nも良く、さらに指向性も変更できるので、Originよりも使用の幅が広いと思いました。指向性のチェックもしましたが、双指向だとより上が伸びますし、無指向だと200kHzあたりがまろやかになりました。ただどちらのマイクも基本ナチュラルで、音が作られている感じはありません。マイクプリも、今回試したNEVE、TUBE-TECH、SYM・PROCEEDのどれとも相性が良かったですね。それだけマイク自体に色付けがなく、自然な音で録れているんだと思います。最後に値段を調べたらさらにびっくりしました(笑)。この価格でこの音が手に入るなら、相当コスト・パフォーマンスが高いです。スタジオのマイクのラインナップにも加えたいですね。
 

井上剛&うにっしー

<Profile>
井上剛(写真左):1982年キャリアをスタート。国内/海外レコーディングとグローバルな活動を展開し、これまでに松任谷由実、Mr.Chirdren、絢香など、多くのアーティストを手掛けている。
うにっしー(写真右):知る人ぞ知るサウンド・エンジニア、知らない人は知らない。今回は久々の誌面登場に、うにっしーとして参加。
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チェックはSSLのコンソールにそのまま立ち上げる形でボーカルとアコギで行いました。ボーカルはVOXRAYのTommyにアカペラで歌ってもらい、マイキングはオンとオフで、アコギはギタリスト清永充美に演奏してもらいました。今回は比較マイクとしてNEUMANN U87を使いました。まずは歌からチェックしましたが、瞬間瞬間を切り取って聴くと、ASTONとU87ではほとんど違いはないですね。1曲を通して音楽として聴いたときに初めて違いが出るのかなと。パッと聴いた瞬間はどれも良いです。ASTONのマイク同士を比べると、傾向は似ていますがOriginの方がよりフラットで、Spiritは指向性を変えられるなど使い勝手の良さを取ったのかなという印象でした。この価格帯なら、VOXRAYのようなボーカル・グループや、自宅録音で音楽制作している人が使うマイクとしてかなり良いと思いますよ。(井上剛)

僕もまず歌を聴いてみて、すごくフラットでスタンダードなマイクという印象を受けました。特にOriginが好印象でしたね。どちらのマイクも甘さの表現はしっかり録れているんですけど、Spiritは、Originに比べると、音の立ち上がりがやや遅い印象でした。でも使い込んでいくことで、すごく良い使い方が見つかるようなマイクのような気がしましたね。(うにっしー)

アコギは3本の中ではOriginがすごく良かったです。音の立ち上がり、スピード感など。これは買いだと思いますよ。Originがすごくフラットに作られているので、Spiritには、もっと特徴的な作り込みをしても良いのかなと思いました、SONY C-800Gくらいに。(井上剛)

僕も同じ印象で、Originはすごく良かったです。ストリングスなど擦弦楽器に合うと思います。ピアノも試してみたいですね。それも良ければ打弦楽器にも使えるので、オールマイティなマイクとして重宝すると思いますよ。複数本立てればオリジナリティのある音で録れると思うので、それがほかのマイクとの差別化になりますしね。あとはこのルックスがパフォーマンスにどのくらい影響するか。僕は好きなフォルムなので好感は持てました。(うにっしー)

あとリフレクション・フィルターHaloも効果がありましたね。普段使っているスタジオのブースでしたが、より静かな印象でしたから。自宅録音する際に絶対に必要なアイテムだと思いますよ。(井上剛)

 

葛西敏彦

<Profile>蓮沼執太、D.A.N.、スカート、寺尾紗穂など、生音や打ち込みを問わず幅広いレンジのアーティストのレコーディング/ミキシング/PAするエンジニア
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シンガー・ソングライターのMINAKEKKEさんのレコーディングで、歌とアコギ録音でチェックしてみました。まずアコギにNEUMANN U87とOriginの2本を立てて、U87を基準にして聴いてみたんですけど、とても良くて、そのままOriginを本チャンで使うことになりました。そこまでギターの音が大きくない曲だったのですが、レンジも適度な広さでギュッと録ることができて、すごくマッチしていましたね。

そして今度はSpiritをボーカルでも使いました。ラージ・ダイアフラムのU87と比べても情報量はしっかりあって、シビアにAB比較で聴き比べれば中低域が薄い感じはしましたが、高域は素直で癖もなく、扱いやすいマイクです。だからギターも歌もしっかり使えました。ラージ・ダイアフラムの感じが欲しかったらASTONが最初の選択肢に挙がりうると思います。特にSpiritの方は指向性を変えられるので、さまざまなマイキングによって使い勝手の幅が広がると思います。それがステレオならなおさらですね。ピアノでも試してみたいなと思いました。あとはリフレクション・フィルターもボーカル録音に役立ちましたね。ちょっと響きのある部屋だったのですが、これを使ったら反射の影響もなく、マイクの素性をしっかり集音できたと思います。

ASTONはラージ・ダイアフラムを持っていない人の1本目のマイクとして、またこのマイクがあることで、違うチョイスができるマイクとして活躍すると思います。自宅スタジオなどでプレイヤーが持つマイクとしても重宝すると思いますよ。
 
 

SPECIFICATIONS

Origin

▲Origin(オープン・プライス市場予想価格:33,000円前後)

▲Origin(オープン・プライス市場予想価格:33,000円前後)

▪指向性:単一指向
▪周波数特性:20Hz〜20kHz(+/−3dB)
▪感度:23.7mV/Pa
▪最大音圧:127dB SPL
▪外形寸法:54(W)×125(H)mm
▪重量:450g
 
製品ページ
https://www.roland.com/jp/products/aston_origin/

 

Spirit

▲Spirit(オープン・プライス市場予想価格:50,000前後)

▲Spirit(オープン・プライス市場予想価格:50,000前後)

▪指向性:無指向、単一指向、双指向
▪周波数特性:20Hz〜20kHz(+/−3dB)
▪感度:23.7mV/Pa
▪最大音圧:138dB SPL
▪外形寸法:54(W)×175(H)mm
▪重量:625g
 
製品ページ
https://www.roland.com/jp/products/aston_spirit/

 

Halo

▲Halo(オープン・プライス市場予想価格:33,000円前後)

▲Halo(オープン・プライス市場予想価格:33,000円前後)

▪外形寸法:538(W)×441(H)×302(D)mm
▪重量:1.65kg
 
製品ページ
https://www.roland.com/jp/products/aston_halo/
 

問合せ
ローランド お客様相談センター
TEL 050-3101-2555
http://www.roland.co.jp

 

 

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