『Brasswind』 Gene Ammons

塚本謙のFunk裏Recommend Disc by 塚本謙 2014年8月28日

FUNK的千円生活:ジーン・アモンズ編

今回の”裏”Recommend Disc

Brasswind

『Brasswind』 Gene Ammons

 

『ブラスウィンド』ジーン・アモンズ

 

Prestige (1974)

 

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末期ガンでくたばる数ヶ月前の録音だから、あんなにふてぶてしくドスが利いていたテナーの音色が少し扁平になっちまってるところはご勘弁ください。トーンがわずかに震えているように聴こえるのもそのせいだから。裏ジャケの写真はすっかり痩せこけていて悲しいよ。あんなに恰幅良くって“ボス・テナー”にふさわしい体型だったのにさ。なんだかもうそう長くないことを自分で分かってるみたいな顔してさ。灰がぽとりと落ちそうなタバコ掲げてさ。

それでもこのアルバムを何度も何度もターンテーブルに載せるのはつまり、ビリー・ホリデイの晩年のアルバム『Lady In Satin』を手放せないのと同じで、ベストのパフォーマンスができなくなってもその偉大さにはなにひとつ陰りがないことが証明されているからなのかも知れません。少し聴いただけでその人以外ありえないと感じさせるほどの強烈な個性、脳がしびれてくるようなその中毒性、すぐに聴き手を自分の世界に引き込んでしまう吸引力、舌を巻くほど巧みな芸、こびりついたブルースの匂い。贅肉がこそげ落ちた後にそういった本質が骨のように浮かび上がってくるヒリヒリした感じ。もうアモンズやホリデイのような偉大な魂が我々の前に現れることはないのでしょうか。

さてボス・テナー最晩年の今日の一枚はデヴィッド・アクセルロッド編曲指揮。前作『And Friends At Montreux』(Prestige, 73年)でキャノンボール・アダレイと共演してるから彼のお膳立てでしょうか、空間を生かしたモダンな建造物を思わせるアクセルロッドのアレンジは抑制がきいていてタイトでファンキィ。アモンズにとってはこのうえないセッティングに思われます。ジョージ・デュークがエレピで参加、要所を締める印象的なプレイも聴きどころ。冒頭の「Cántaro」はサウダージな雰囲気が漂うファンク。60年代のほとんどをムショで過ごしたとは思えないアモンズの8ビート対応力はさすがだけど、その中でもあの独特のアクの強さというか渋味というかぬぐい去れない存在の濃厚さが当然のように保たれているのが匠の証。アルバムのファンク度ではバーナード・パーディがキレキレな『Brother Jug!』(Prestige, 70年)にかなわないけど、味わいの深さでは劣らないと思う。続く「Brasswind」はアモンズのオリジナル。こういうスウィング・ナンバーではアモンズの中でビバップ魂とブルース魂がせめぎあうところが好き。ヴォン・フリーマン(ts)とともにシカゴ・スタイルの源流と呼ぶべき存在であり、ジョシュア・レッドマン(ts)にも影響を与えた、といわれる名手。ただのホンカーじゃありません。個人的にもっとも愛好するのがA面最後の「Cariba」。ウェス・モンゴメリーが名盤『Full House』でやってたアレです。ブーガルー的なビートもデュークのオブリガートも最高だけど、ファンキィの残り火を燃やし尽くすようなアモンズのソロが抜群なのだ。ところで裏ジャケの写真でジーン・アモンズがぶらさげてるピースマークと鳩の模様が入ったストラップってどこ行ったら売ってるんでしょうか。アレめっちゃ欲しいんですけど。

 

塚本謙

CDリイシュー企画「Return Of Jazz Funk」主宰。モダン・ジャズ〜ジャズ・ファンク〜レア・グルーヴまでこよなく愛するレコード・コレクター。学生時代はベイシー・マナーのフルバンでサックス担当。



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