『The Shadow Do』 Gary Bartz

塚本謙のFunk裏Recommend Disc by 塚本謙 2014年8月7日

FUNK的千円生活:ゲイリー・バーツ編

今回の”裏”Recommend Disc

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『The Shadow Do』 Gary Bartz

 

『ザ・シャドウ・ドゥ』ゲイリー・バーツ

 

Prestige (1975)

 

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結構な完璧主義者に見えるマイゼル兄弟たちなのに、なんでゲイリー・バーツドナルド・バードにあえてヘタクソな歌を歌わせてるんだろうか。というのはスカイ・ハイ作品を聴くにおいてのちょっとした謎だったんですけど、最近自分なりに見つけた回答は、せめてこれくらいはダサい部分を入れておかないとそれこそ気持ち良過ぎてサルの◯◯ニー状態で何度もリピートしてしまうから。というものでした。間違った回答だけどな。それでもオレはたぶん人生で100回目くらいのリピートになる「Gentle Smiles」を聴きながら100回目くらいのエクスタシーを迎えているわけで、その後賢者モードに入って確認してみるに、このマロングラッセのように懐かしくスウィートな曲書いてるのはマイルスの『Agharta』で凶悪極まりないギター弾いてるレジー・ルーカスやんけ、ということに気付いたわけです。ルーカスだけじゃなくて、エムトゥーメ(perc)、マイケル・ヘンダーソン(el-b)もアガルタ組。そしてヒューバート・イーヴス(key)も入れればのちのエムトゥーメ(バンド)組。マイルスやNTUトゥループの世界からエムトゥーメの世界に移行する中間にスカイ・ハイが存在したとはこれいかに。

さてマイゼル・ブラザーズ=スカイ・ハイ・プロダクションズ絶頂期のプロデュース作品であるゲイリー・バーツ(as)の人気作品です。主役のバーツはマイルス・バンドからドロドロのスピリチュアル・ジャズから骨太ガテン系な自身のバンド、NTUトゥループまで色々やってきて、コルトレーン派という以上に何でもできて器用でそれでいて個性的という存在。マイゼル兄弟がいかにバーツの新たな美点を引き出すか、というところが聴きどころだと思うんですけど、このアルバムでフィーチャーされているのは実はバーツの美しくイノセントなアルトの音色そのものではないかと思うのです。冒頭の「Winding Roads」を聴いてみてください。ムーグシンセはじめエレクトリックな人工音に対比して浮かび上がるのはソプラノ・サックスのまろやかな音色とクラリネットの木管が響く非人工的な木(Wood)の音。この木(Wood)の感覚を全編で共有したいがために冒頭にのみクラリネット・ソロを持ってきたのではないかと。以降のほとんどの曲はアルトですが、美人の肌のようにうるおいと張りを保ったバーツのアルトが、極めて木(Wood)的に響きつづける美しさは他の作品では味わえないものです。マイゼル的ともいえる郷愁と青春の薫りを宿した旋律も、周到に幾層にも重ね貼られたアレンジも、すべてバーツのアルトの音色を100%活かすために用意されたものではないかと。だからこのアルバムではほとんどサックス以外はソロを取りません。

例えばドナルド・バードの『Places And Spaces』みたいにプロデュース、作曲、アレンジ、ミュージシャンすべてスカイ・ハイまかせ、という作品と比べると、演奏から作編曲までほとんどの曲をバーツ・バンドのメンバーでまかなってる本作はマイゼル濃度的にはそれほど高くないはずなんだけど、なんか異様にマイゼル的な世界観で統一されていて、だからエクスタシーは何度も繰り返されるのかも。

塚本謙

CDリイシュー企画「Return Of Jazz Funk」主宰。モダン・ジャズ〜ジャズ・ファンク〜レア・グルーヴまでこよなく愛するレコード・コレクター。学生時代はベイシー・マナーのフルバンでサックス担当。



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