『Members, Don’t Git Weary』 Max Roach

塚本謙のFunk裏Recommend Disc by 塚本謙 2014年7月31日

FUNK的千円生活:マックス・ローチ編

今回の”裏”Recommend Disc

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『Members, Don’t Git Weary』 Max Roach

 

『メンバーズ、ドント・ギット・ウィアリー』マックス・ローチ

Atlantic (1968)

 

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豚のように弛緩してしまった俺らの精神は時折マックス・ローチの火箸のようなスティックでシバきあげてもらう必要があると思うワケです。このアルバムにおけるマックス・ローチのドラムの何が凄いということを考えるに、シンバルの一打一打で火花が散るようだとか、スネア・ロールのツブツブが足裏マッサージに効きそうだとか、この人のバスドラのドンは壁ドンどころの胸騒ぎじゃないとか、ドラムの存在感が規格外過ぎて異質な非日常感さえ醸し出しているところとか、そういうところは当たり前に凄いんだけど、最近気付いたのはこの人のドラムが支配的なまでの「正しさ」をもって打ち込まれているということ。それはタイムキープ的な正しさとか音楽的な正しさみたいに当然のことじゃなくって、超人的な練習量とか経験とか精神力を糧に確信的に得た、あらゆる意味においてこれ以上の「正しさ」は存在いたしません、という圧倒的なローチの自信がドラムからほとばしり出ており、それが異次元の響きやビートを生み出している、という事実。一点の曇りもない「正義」のドラムが音楽の中心にあって支配しているのです。これほどまで迷いなき精神力を感じる録音は数えるほどしかない。

鮮烈なピアノ演奏と、3曲のオリジナル曲の提供で貢献しているのがスタンリー・カウエル。記憶を覗き込むようなバラッド「Equipoise」もいいけど、ローチのワルツ・ビートがあまりにも雄弁な「Effi」は息をのむ“刹那の美”のようなものが表現されていて泣けてきます。弧を描いて踊るようなアルト・サックスはゲイリー・バーツ。コルトレーンのイディオムを礎にハード・バップも超えた新しいサウンドを形作りつつあった彼はこの後自身のNTUトゥループ結成、マイルス・バンド参加へと進みます。「Libra」はポスト・バップ的なエッジを持ったバーツのオリジナル。硬質なグルーヴはカッコ良過ぎて何か余剰がボロボロこぼれ落ちている気がします。この曲でヴィヴィッドな印象を残すのがトランペットのチャールズ・トリヴァー。有り余った若いエネルギーが制御しきれていない感じがむしろ素敵。ローチ以外は皆まだかけ出しの新人といった時代でした。

このグループが生み出したもうひとつの伝説がカウエルとトリヴァーによる70年代の共闘。まもなくミュージック・インクというグループを結成した彼らはすぐにStrata-Eastというレーベルをスタートさせます。仕事や表現の場に飢えた真摯な黒人ジャズマンたちによる自助組織、協同組合のような場所となったStrata-Eastがこんにち“スピリチュアル・ジャズ”と呼ばれるジャンルの代名詞的存在になっているのはご存知の通り。その辺の話は今年出た『インディペンデント・ブラック・ジャズ・オブ・アメリカ』というディスクガイドにたっぷり書いてありますので、興味がある方はぜひお手に取ってご覧ください。先週からはプロデューサーのジョエル・ドーンつながりということで全くファンクじゃない一枚をお届けしましたが、最後は自著の宣伝で締めるという我ながら冷や汗な回でした。

塚本謙

CDリイシュー企画「Return Of Jazz Funk」主宰。モダン・ジャズ〜ジャズ・ファンク〜レア・グルーヴまでこよなく愛するレコード・コレクター。学生時代はベイシー・マナーのフルバンでサックス担当。



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