アレンジのお話 14

書き屋石川芳の徒然鳴るままに by 編集部 2012年12月3日

☆ 調性について考える ☆

11月22日、東京オペラシティリサイタルホール高木早苗さんのピアノリサイタルがあり、聴きに行きました。
創刊当時から『ピアノスタイル』を読んでくださっている方には、
高木さんの名前はきっと懐かしく聞こえるかと思います。
機械仕掛けのように完璧に動く指と、輝くような明るい音色。
初めて高木さんの演奏を聴いたときに感じた印象です。
『ピアノスタイル Vol.3』に収録されている、テレビ番組『大改造!劇的ビフォーアフター』の挿入曲「Toccatina」の演奏は、まさにその機械仕掛けのようなキビキビとした演奏の代表。
また、Vol.7に収録されているイーグルスの名曲「デスペラード」では、切なさと深いところに逞しく熱くたぎる男心みたいなものが伝わる、高木さんのもうひとつの一面を垣間見るような素敵な演奏でした。

今回のリサイタルの演目は、J.S.バッハの「平均律クラヴィーア曲集」をメインに調性に注目した選曲で、たとえば「平均律クラヴィーア曲集第1巻 第1番ハ長調、前奏曲とフーガ」とショスタコーヴィチの「24の前奏曲とフーガより 第1番ハ長調」といった具合に対比させながら聴かせてくれる、とても興味深いもので、引きこまれました。

私もひとつの曲をアレンジするときに、”調性”にはとてもこだわります。
原曲に近い、いわゆるコピー&アレンジの場合は、もちろんオリジナルキーで書きますが、私の自由なイメージで書くときには、少なくともピアノ曲としてアレンジする場合は、ピアノがもっとも美しく鳴る音域で、その先に発展させるドラマをしっかり描いた上で、スタートのキーを設定しています。
『ピアノスタイル』最終号に収録した曲の「メリー・リトル・クリスマス」で、〈演奏者からのアドバイス〉の中に調性について触れている箇所がありますね。
私は、演奏者の伊賀ちゃんに”ヘ長調で書いたから意識して演奏してね”と伝えたりはしていないんです。
でもピアニストは、それをしっかり感じて演奏してくれています。
本が届いて、ページをめくりながらこのアドバイスを読んだときは、本当に嬉しかったです。

調性について面白かったこととしては「私はピアノ」のアレンジを、最初は原由子の歌っている調で完成していたのですが、編集部から”フラットがいっぱいで脅迫感があるので、弾きやすいキーに移してもらえないか?”と、書き換えの指示があり、高田みずえの歌うキーに変更したのでした。
内容は、原坊の歌うちょっとおちゃめな駆け引きのあるバージョンのままなので、
結果的にはなかなか貴重な楽譜が誕生した……というわけです。
絶対音感のある人はつらいかもしれませんが、デジタルピアノやキーボードのトランスポーズ機能を使って、
それぞれの調の響きの違いをちょこっと体験してみてはいかがでしょうか。

石川芳

幼少よりピアノ、エレクトーンを学ぶ。ネム音楽院(現ヤマハ音楽院)卒業後、ヤマハの海外デモンストレーターとして、世界各国で演奏活動および現地スタッフの指導にあたる。"ディズニー・クラシカルコンサート"でアレンジャーとしてデビュー。曲集の編曲や音楽専門誌の執筆など、幅広いジャンルで活躍している。ピアノスタイルでは、創刊号から編曲を手がける。



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