仮面女子のカギを握るサウンドクリエイター、永田雅規<後編>

NEWS by インタビュー:桜鳥浜敬 2015/01/04

仮面女子のカギを握るサウンドクリエイター、永田雅規<前編>

2015年元旦発売のシングル「元気種☆」が予約だけで12万枚を超え、さらに11月にはさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブも決定し、今、日本のアイドル・シーンでダントツの勢いを誇る大型ユニット、仮面女子。そんな彼女たちの音楽的側面を支えるトラックメイカーの永田雅規にインタビューを敢行。前編では永田自身の音楽的背景に迫ったが、後編では実際の楽曲制作の手法、仮面女子に対する想いを語ってもらった。

ギタリストが5分で決めそうなことを僕は2時間くらいかけて音を探す

前編からつづき

●永田さんの作る楽曲で特に気になるのが“リズム”なんです。
○リズムは特にこだわっている部分ですね。おそらくダンスの影響だと思います。ダンスはドラムやリズムが命ですよね? アレンジャーさんから上がってきたものに対して、「ドラムをSlipknotっぽく」とか、「もっと強く」とかいった指示はよくしますね。
●2015年元旦発売の新曲「元気種☆」は多彩な展開が特徴的ですね。
○僕自身がミクスチャー・バンドをやっていたおかげだと思います。当時Dragon Ashの降谷くん(Kj)なんかもよく言っていたんですが、ヒップホップ、ラテン……いろいろな要素を入れられる自由なロックがミクスチャーなんですよね。
●ディストーション・ギターの音も特徴的です。
○それはせいじ(編注:仮面女子が所属するアリスプロジェクトの代表)がやっていたバンド、AcQuA-E.P.の影響ですかね。彼らのサウンドはヘヴィ・メタル系だったし、“空白の2年間”でMEGADETHをはじめ、いろいろと聞きました。“ヘヴィメタ”は仮面女子のキャッチコピーにもなっているので、意識的に重たいギターを入れますけど、時にはレゲエだったりトロピカルだったり……自由にやっていますね。
●メロディーを考えたときにトラックも浮かんでいますか?
○浮かびますね。口はひとつですが(笑)、メロディー、リズム、コード進行……をうまいことiPhoneで録音するんです。たまに道端で録音することもあるので、そのときはちょっと変な人に見えているかもしれない(笑)。3トラックですけど、多重録音できるアプリ『Take』も使ってます。
●QY以外に制作用の機材にこだわりは?
○本当はアレンジャーさんと同じような機材を揃えて制作したいんです。QYのプリセット音源も限界はあるし、PCを使えば仮歌録りまでできる。もう少し自分でこなせるようになって、アレンジャーさんの負担を軽くしたいなとは思っています。そういう意味でSinger Song Writerを導入したんです。
●QYで制作されたデモトラックを聞かせていただきましたが、コード進行もキチンと出来上がってますよね?
○コード進行はかなり練り直しますね。ギタリストがジャーンと弾いて5分くらいで決めそうなことを、僕は音を探しながら2時間くらいかけるんです。そこに一番時間がかかります。
●PCでいろいろなループを貼り付けて楽曲制作をされていると思っていたので、あの展開をQYで作っているのが驚きです。
○もちろんアレンジャーさんの力も大きいですけどね。彼らにうんざりされるほど何度も何度もやりとりするんです。アレンジャーさんの解釈が僕の考えにハマらないとき、場合によっては途中からアレンジャーさんを変えるようなこともありますから。

 

nagata3

▲愛用中のQY100を携えジェイソン・マスクで登場してくれた永田氏。

 

何から何までバンドとは違う……それがまた楽しい

●アイドルの曲を作りたいと思っている読者も多いと思います。そういう方に向けてアドバイスはありますか?
○80〜90年代のJ-POPは絶対に聞いた方が良いと思います。今のアーティストと比べてメロディーの質が違うし、コード進行や展開、構成なんか本当にすごい曲が多い。僕自身、特に90年代の小室哲哉さんにはかなり影響を受けてますし、一日何回聞いてるんだ?っていうくらい、とにかく聞いてました(笑)。他にも、小林武史さんが手がけるもの全般……My Little Lover、ミスチル、サザン、桑田さん、それからSPEED、TUBE……そういうメロディーを聞いたほうがいい。海外の人たちよりも日本のメロディーメイカーをリスペクトしています。僕のルーツはJ-POPとヒップホップ。それに、アイドルはステージで踊ることが不可欠。踊りにつながるダンス・ミュージックをたくさん聞くことも大切だと思います。バンドと違ってアイドルって1曲を作るのに関わる人がすごく多いんですね。プロデューサー、作詞家、ミキシング・エンジニア、アレンジャー、振付、衣装、メイク、MV制作スタッフ……そもそも僕なんてアレンジャーさんがいなかったらQY止まりのダメな作家になってしまう(笑)。ちなみに、アリスプロジェクトでは、せいじが総合の司令塔となっていろいろなものを決めます。僕のところにはまずせいじから「永田さん、こういう感じの曲を作ってください」という指令がきます。僕は作曲してQYで打ち込んだものをせいじのところに送ります。せいじがその構成なんかを直します。OKが出たらアレンジします。そして衣装やメイク、MV、振り付けが始まるわけですが、アイドルのそれはすべてにおいて関わる方々がいて、曲作りから何から何までバンドとは違う。それがまた楽しいんです。アイドルというものは“表現者”であって、そのすべてを完璧に表現することが彼女たちの使命なんですね。仮面女子のメンバーたちも本当によく頑張っていると思います。

 

▲2015年1月1日リリース「元気種☆」

 

「これぞ仮面女子」っていうものを貫き通したい

「元気種☆」は予約だけで12万枚を超えましたね。(編註:本インタビューは2014年12月末に行われました)
○嬉しいですけど、正直ちょっとビビってます(笑)。バンド時代は成功しなくて、頑張っても700〜800名くらいの集客だったわけで。僕の曲をこれだけの人が聞いてくれることを考えると嬉しいですが。「元気種☆」は4ヶ月くらいかけて、何回も作り直した曲なんです。せいじの「オリコン1位を狙う」という言葉を聞いてから、もうプレッシャーがすごくて……実は体調も悪くしたくらい(笑)。僕としては自信はあったんですが、何度も練り直して出来上がったそのトラックをおそるおそるせいじに送ったら「めっちゃいい曲じゃないですか。これで勝負しましょう!」って返信が来て。もう泣いちゃうくらい嬉しかったですね。それから僕はラップのパートを作りメロディーをFIXさせて、そこに仲間の武村大が素晴らしい詞を書いてくれて、あとはアレンジャーさんの力も借りて一気に仕上げて、ようやく「元気種☆」が完成しました。そう言えばこの前、「この曲を生み出すのに永田さんがどれだけ苦労したことか」って、せいじが涙ながらに仮面女子のメンバーに説明をしていたんですよ。クリエイターの気持ちもわかる社長なんですね、うちは。
●仮面女子は2015年11月にさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブが決まっていますね。
○僕たち社員(スタッフ)は、無謀な挑戦と言われてもやりがいがあるな、なんて思ってしまいがちなんですが、社長のせいじからしてみたら実はとんでもないことで、ある意味“崖っぷち”なわけです。僕らは蓄えも政治力もないし、小さな芸能事務所です。でも社員や所属タレントの生活もかかっている以上、さいたまスーパーアリーナは絶対に成功させなきゃいけない。そういうプレッシャーの中で彼は仕事しているし、命かけてますよ。だからついて行けるんです。アリスプロジェクトは、そういう熱い会社なんです。僕なんて本当に1人では何もできないので、すごい仲間に囲まれている今のこの場が楽しくてしょうがないです。
●トラックメイカーとして、今後の仮面女子に思うことは何でしょうか?
○売れているアーティストさんってブレてないと思うんです。何を聞いてもそのアーティストだと分かる。ブレて失敗したアーティストって多いですよね? だからマニアックになってはいけない。「仮面女子なんてどれを聞いても同じじゃん?」って言われるくらいの方がいいなって思ってますから、これぞ仮面女子っていうものを貫き通したいと思ってます。あとはラップの2人がいるんですが、もっと成長したらZEEBRAさんやKREVAさんとコラボさせてもらいたいですね。仮面女子の曲って、アイドルの“萌え”の部分と、“不良”や“暴力”といったロックでヒップホップな部分、それが合わさった感じなんです。“PEACE”と“MAD”みたいなものがありつつ、でも軸はアイドルなんですというものが、曲やMVやステージでも表現できたら嬉しいですね。

 

kamenjoshi_main

▲アリス十番、スチームガールズ、アーマーガールズの融合体、仮面女子の快進撃は始まったばかり。2015年は仮面女子からますます目が離せない。

 

仮面女子公式HP

 

TUNECORE JAPAN