島村楽器 presents “HOTLINE 2014 JAPAN FINAL”

NEWS by 山本彦太郎 2014/12/09

熱いパフォーマンスが火花を散らしたコンテストFINAL!!!

 1984年にスタートし、今年で31回目を迎えた島村楽器主催のコンテスト“HOTLINE”。年齢制限なし、バンドもソロもありと、門戸は広く開けられているが、“ライヴ・パフォーマンスの重視”という独自の審査基準により、出場者の真価がシビアに問われるコンテストだ。
 その頂上決戦、“HOTLINE 2014 JAPAN FINAL”が、11月9日(日)に東京恵比寿のTHE GARDEN HALLにて開催された。本大会には、北は北海道から南は鹿児島まで11エリア/118店舗にエントリーされた全3559組の中から、各エリア代表、優秀賞ノミネートを勝ち取った全12組が出場。ギタリストの洪栄龍氏、アレンジャーの大堀薫氏、ギタリストの宮脇俊郎氏、ベーシスト/アレンジャーの高橋竜氏、ソニーミュージック・エンタテインメントの大野貴博氏が審査員を、島村楽器の島村元紹会長が審査委員長を務め、多くの観客が詰めかけるなか繰り広げられた、熱い戦いの模様をレポートしよう。

■わすれなぐさ

わすれなぐさ

 司会を務めるDJの森一丁氏がコールした一番手は、中部エリア代表の“わすれなぐさ”。ヴォーカル小林勇一郎がギターも弾くツイン・ギターの4人組ロック・バンドだ。ストロークとアルペジオを絶妙にからませた1曲目「神の粒子」は、♪ダダッダダッダダッというイントロのキメも迫力充分で、自然と会場の空気も引き締まる。続く「砂の城」は緩急のあるメロディと、山本諒の奏でるオブリ的メロディ、会場を巻き込んだシンガロング・パートが印象的で、飾り気はないものの見事な幕開けを飾った。

■the crunch dog

the crunch dog

 続いては九州エリア代表のthe crunch dog。ヴォーカル草刈勇樹がギターも弾くツイン・ギターに、キーボードを擁する5人組で、草刈の朴訥な歌を生かした繊細な音楽性が特徴だ。1曲目の「電車の音」は福島俊司(key)のファルセット・コーラスがさらに繊細さをアップさせるが、レス・ポールを弾く飯干嵩章の伸びやかなトーンと情感あふれるソロも印象的だった。「おめでたい男」は、軽やかなリズムと、不協和一歩手前の不思議なコード・ワークがクセになる楽曲。舞台上で一際目を引くハモンド・オルガンが、1フレーズのみの使用だったのが少し残念か。

■プリメケロン

プリメケロン

 3番手は北海道エリア代表のプリメケロン。男女混合のキーボード・トリオで、阿部さとみ(vo、key)の佇まいはなんとなく“ねごと”を思わせる。1曲目の「シンガポーダイナソー」は、沖縄風の歌い回しと造語の歌詞の組み合わせがなんとも独特で、童話の世界に迷い込んだような気持ちだ。Fベースの5弦モデルを操る古谷隆祐(b)も、ストラミングにグリスにワウにと自由奔放で、ワン&オンリーの世界観を作るのに貢献している。2曲目の「ハグしに行くよ」は、キャッチーなメロディを持った疾走感のあるピアノ・ポップ・ロックで、長谷美沙紀(d)のソリッドなドラムも心地よいドライブ感を生み出していた。

■the ORES

the ORES

 続いては2年連続出場となる東京エリア代表のthe ORES(ジ・オーレス)。佇まいやステージ・ワークに自信を感じさせる4人組ロック・バンドで、地元開催ということもあり多くのファンもつめかけていた。蝦名一樹(vo)の、どこなく河村隆一を感じさせる表現力豊かな歌を軸にしつつ、凝ったリズムやアレンジも盛り込んだアンサンブルは見事な完成度を見せていた。「Take off」のディレイ・ギター・リフや、MASAYA(b)の高速スラップ、「Answer」のベース・アルペジオなど、見所・聴き所も十分。ある意味、普段通りのライヴ・パフォーマンスを見せられたのではないだろうか。

■みどりかわさん

みどりかわさん

 5番手は群馬・信越エリアで優秀賞を獲得して出場ノミネートされた“みどりかわさん”。ユニット名もどこかすっとぼけた感じだが、独自の世界という点で、今回一番のインパクトを放っていた男女デュオだ。1曲目の「tik tak」は、tamago(vo、g)の、情感というよりは情念がにじみ出たダークな曲。凹川(p)の伴奏もベートーベンの「月光」のような、冷たく重いもので、思わず息をひそめてしまう。MCもなく淡々と続けられた「ケムリ」は、暗さは変わらずだが伸びやかなメロディが印象的で、凹川による軽やかな伴奏(こちらはサティの「ジムノペディ」風か?)も心安らぐものだった。

■The LostBarrel

The LostBarrel

 “みどりかわさん”の次はなかなかハードルが上がるが、東北エリア代表の4人組ロック・バンド、The LostBarrelは、そのはつらつとした勢いでそれをクリアした。1曲目の「Bang!!」はその名の通り“ひっか”(b)のスラップ・リフがハジけ、菅原亮平(g)のディレイ・リフが拡散する楽曲。4つ打ちリズムを用いたダンサブルなサビも印象的だった。続く「Mash Up』は、どこか懐かしいメロディを持った疾走感のある8ビート・ロック。MCでは「大層なメッセージはなく、少しだけ明日の活力になれば」と自分達の音楽のスタンスを語っていたが、この曲のポジティブさは、まちがいなく会場に明るい活力を与えることができたはずだ。

■Zip Rip FuzZ

Zip Rip FuzZ

 前半戦最後は北関東・埼玉エリア代表、“全世界参加型エンターテインメント・ポップ・バンド”を名乗る6人組、Zip Rip FuzZ。色も意匠も凝った派手な衣装と、米米CLUBを想起させるようなそのノリ、音を聴く前から楽しいパフォーマンスになることが確信できるバンドだ。もちろんアンサンブルも高水準で、ツカサキ凛(b)&ATSUSHI(d)のグルーヴィかつ骨太のリズム・セクション、RYOTA(g)のテクニカルなギター・プレイは、ただのコミック・バンドではないことを証明している。80年代バンド・ブーム的な「フユヒマワリ」、振りも楽しいファンク・チューン「強引ロリポップ」と、しっかり自分達のエンターテインメントをやり切った堂々のパフォーマンスだった。

■the tote

the tote2

 後半戦のトップ・バッターは、こちらも2年連続出場となる千葉エリア代表の4人組the tote(ザ・トート)。スペーシーなシンセから導かれた「ペディグリー」は、菊地ショー(vo、g)の歌声を厚く盛り立てる“さきちゃん”(key、cho)のコーラスが印象的で、詰めかけたファンも大いに盛り上がっていた。続く「箱ブランコとエクスカリバー」の前には短いMCが挟まれたが、その間もシンセと繊細なシンバル・ワークで流れを切らないようにしていたのは見事。みながわ ひかる(d)はマレットなども駆使していたが、リズム・キープだけでない、表現手段としてのドラムの一面もしっかり見せてくれたと思う。

■SLOWLY BUT SURELY

SLOWLY BUT SURELY

 続いては中国・四国エリア代表の4人組SLOWLY BUT SURELY。パッと見で興味深かったのは、ヴォーカル保田勇輝(vo、g)がフェンダー・マスタングを、杉裕太(b)がリッケンバッカーを弾いていたことで、あまり楽器バリエーションのないここまででは、こだわりを感じた部分だ。演奏された「Butterfly effect」「梅雨前線」共に、良くも悪くもBUMP OF CHICKENチルドレンという趣ではあったが、保田のよく伸びる歌声、杉のコーラスなど、このバンドの強みはしっかり表現できたパフォーマンスだったと思う。

■田中雄也

田中雄也

 終盤にさしかかった10番目の出場者は、今回唯一のソロ・パフォーマーである、関西エリア代表の田中雄也。アコギの弾き語りという、音圧的には不利な環境かと思いきや、「ドーパミンジャンキー」ではパーカッシヴなボディ叩きや低音弦のスラッピングなども巧みに混ぜ込んだ重層的なバッキングで、不足を感じさせないのは感服した。観客の煽りも手慣れたものだ。続く「Gift」は生命賛歌。ギブソンJ-45をピック・ストロークする武骨なサウンドと、歌い上げるメロディのマッチングも良く、まさにひとりで会場を掌握していたと言えるだろう。

■poolproof

poolproof

 残り2バンド。11番目の出場者は、神奈川エリア代表のpoolproof。キーボードを擁する4人組で、Kuroda(key)の奏でるリリカルなイントロから始まる「春か遠く」でパフォーマンスをスタートする。が、センターのTsurumi(vo、g)に注目していた所、下手側のMurakami(vo、b)が歌い出してちょっとビックリだった。「星空案内人」も含め、Tsurumiの繊細さとMurakamiの包容力という2声のコントラストは魅力であるだけに、もう少し伝わりやすい工夫があっても良かったのではないか、というのが正直な感想だ。

■REVERSE DOG LIBERTY

REVERS DOG LIBERTY

 いよいよラスト。トリを飾るのは群馬・信越エリア代表の4人組、“リバリバ”ことREVERSE DOG LIBERTYだ。閉幕前にでっかい花火を一発とばかりに突き進むパンク魂は爽快の一言で、「声」では♪オーオーというコーラスがテンションをさらにアップさせる。一方で「そんな時もあるんだけどさ」では大輝(vo)もギターを持ち、翔(g)はディレイ・リフでアンサンブルに広がりを与えるなど、勢い一発ではない所も見せる。拓馬(d)の4つ打ちリズムと泰(b)のオクターブ・フレーズによるグルーヴ・メイクも躍動的だ。THE GARDEN HALLをライヴハウスに変えてしまうパフォーマンスだった。

■優秀賞発表!!!

 以上を以て、全12組のパフォーマンスはすべて終了。昨年のグランプリ受賞者、モノポックルのゲスト・ライヴを挟んで各賞の発表となった。発表に先立つ審査員のコメントでは、宮脇氏が「(審査は伯仲したが)このアーティストに時間をゆだねていることが楽しいと感じたバンドを評価した」と語り、洪氏は「年々レベルが上がっていることを実感。どの出場者も詰めが良くなっている」と総括する。この日会場を訪れた人ならば、コンテストであることを忘れてしまうぐらい、ライヴを楽しむことができたのではないだろうか。
 さて、気になる審査結果だが、部門賞は以下となった。
●ベスト・ヴォーカリスト賞 田中雄也
●ベスト・ギタリスト賞 RYOTA(Zip Rip FuzZ)
●ベスト・ベーシスト賞 ツカサキ 凛(Zip Rip FuzZ)
●ベスト・ドラマー賞 みながわひかる(the tote)
●ベスト・キーボーディスト賞 阿部さとみ(プリメケロン)
●オーディエンス賞 田中雄也
●楽曲賞 「Gift」作詞 / 作曲:田中雄也
 いずれも納得の受賞だが、唯一のソロ出場で三冠を獲得した田中雄也の、ライヴ力の強さを改めて証明した結果と言えるだろう。

■栄えあるグランプリは誰の手に……!?

 続いて優秀賞は“みどりかわさん(左)”と“わすれなぐさ(右)”が受賞。強烈なインパクトを残した“みどりかわさん”はもちろん、次々と衝撃が更新されていく中、トップ・バッターにして確たる印象を残した“わすれなぐさ”にも拍手を送りたい。

みどりかわさん(優秀賞)わすれなぐさ(優秀賞)

 そしていよいよグランプリの発表。会場が固唾を飲んで見守る中コールされたのは……the tote! 昨年の雪辱を果たしての、堂々の栄冠だ。「あきらめなければ叶う」。菊地ショー(vo、g)のこの言葉には、万感の思いが込められていたように思う。
 the toteのグランプリはもちろん納得だが、審査が伯仲したというのもまたよく理解できる第31回大会だった。HOTLINE 2015では、また新しい衝撃を期待したい。

■グランプリ:【the toteインタビュー】

thetote(グランプリ)

僕たちが頑張って“楽器店から出てきたぜ!”って言えるようなバンドになりたい(菊地)

●まずはグランプリ受賞の感想をお願いします。
さきちゃん”(key、cho) 今回は、グランプリを獲れても獲れなくても最後と決めていたので、こうして形になったことが嬉しいです。
みながわ ひかる(d、cho) バンドのグランプリはもちろんですが、千葉エリア・ファイナルに続いてFINALでもドラムの部門賞をいただけたのは、すごく嬉しいです。部門賞を狙おうと気合いを入れていたので、喜びも二倍ですね。
菊地ショー(vo、g) 一年間やってきたことがしっかり成果になったということが、実感と自信になった一日でした。個人的には、これまで一番を獲るっていうことがなくて、亡くなった祖父から「根性なし!」って言われたことがずっと引っかかっていたんですけど、今日は根性見せられたかなと思っています(笑)。
アスマヒビキ(b、cho) 去年は優秀賞だったので、雪辱を果たせました。それから、応援してくれているファンの人達が駆けつけてくれて、みんなで一丸となってグランプリを獲れたということが嬉しいです。
●前回の雪辱をというのは、今回の原動力でしたか?
菊地 プレッシャーの方が大きかったです。今回はギリギリまでエントリーするかどうか迷っていましたし、もしダメだったら……ということも考えてしまいますからね。前回をバネにというよりかは、今回は楽曲も衣装も前回とは全然毛色が違う感じなので、僕達としては一から挑戦しなおそうという意識のほうが強かったと思います。
●HOTLINEは1バンドにつき“2曲、10分以内”というルールがあります。何をどう見せるかというのは重要ですが、どのような意図がありましたか?
アスマ 来年アルバムを出す予定で、「ペディグリー」はその中からの選曲です。これから僕達がどういう音楽をやっていきたいかというのを見せたかったので選びました。「箱ブランコとエクスカリバー」は昔のことを振り返るような歌詞で、僕達の過去とこれからの両方を見せたいという意図でした。
菊地 前回はドラマチックに演出した部分があったんですけど、今回はアレンジや展開といった、音楽そのものにこだわっての選曲でしたね。
●ファンの方も多く詰めかけていましたが、普段のライヴとは意識が違ったりはしましたか?
菊地 まさに普段通りできたと思います。
さきちゃん 逆に去年はリキみや固さも出ちゃったかなとも思うので、今回はウォーミング・アップや楽屋での過ごし方なども、普段通りにしていました。素を見せようっていう感じでしたね。
菊地 普段は5曲で30分とかのライヴが多いんですけど、今回はそれが2曲で10分というだけ。逆に、そこでMCとかを入れちゃうと流れが切れちゃうので、曲間にシンセを入れて2曲でひとつという流れを作ろうということは、メンバー全員で話していました。
みながわ 個人的には、ドラムはあえて“魅せる”ということを意識しました。「箱ブランコ〜」の間奏ではフロア・タムを押してニュアンスを変えたり、演奏自体もダイナミックに見えるようにというのは考えていましたね。前回の動画を見返して、こういうのも行けるなっていのが見えてきたからだと思います。
●最後に、今後の展望を教えてください。
さきちゃん 来年大きな動きを予定していて、そのはずみのためにもグランプリを獲りたかったんですけど、上手い流れでいけそうです。
みながわ グランプリ受賞はひとつの通過点ですし、まだまだ自分も腕を上げなくちゃいけないと思っています。嬉しいですけど、そこで立ち止まらないようにしたいですね。
アスマ これから1年は島村楽器さんと一緒に走っていくことになりますし、全国のお店で紹介もされます。「HOTLINEと言えばthe tote」と言われるぐらいまでがんばっていきたいです。
菊地 楽器店がプロデュースしたバンドって、まだまだいないと思います。僕達ががんばって、「楽器店から出てきたぜ!」って言えるようなバンドになりたいですね。……それから、見えましたね、武道館(笑)!

■インタビュー:小久保昌彦(島村楽器株式会社 営業推進部 イベント推進係)

●昨年より約500組のエントリー増加となりましたが、どのように受け止めていますか?
小久保 バンド・ブームのようなものが来ているのかどうかは、正直わからない部分もあります。ただ、手前味噌になりますが、音楽をする人を増やしていきたいという企業努力・店舗の努力が、こういう結果につながったのかなと思います。あと、今回は昨年に続いてJAPAN FINALに出場したバンドが3組いました。バンドにもイベント自体の魅力が伝わっているのかなと思いますし、分母は変わらずとも、その中で支持してくださる人が増えているのではないでしょうか。
●お客さんの中には、特定のバンドのファンではなく、このイベント自体を楽しみに来たという人も多かったですね
小久保 そうですね。おかげさまでそういう支持もいただけていますね。島村楽器の場合、お客さんの層が幅広く、ロック・コンサートには行かなそうな方も多いのですが、喜ばれそうだなと思えば積極的にイベントの紹介をしていますし、一度ご覧いただければ「敷居が高そう」と思っていらした方でも楽しんでいただけているんじゃないかと思います。
●出場者の傾向などに変化は感じられますか?
小久保 一番際立っていたのは、キーボードが入っているバンドが多くなったことですね。しかも、ただコードを当てるといった使い方ではなく、バンドでのキーボードを成立させるための、音楽的な志しの高さを感じることが多かったと思います。それとアコースティック楽器も、一時期ブームが来て、減ってというのを経て、ちょうど良い割合に定着しているのではないでしょうか。
●HOTLINEは「ライヴを見せるコンテスト」というのも、改めて面白いポイントですね。
小久保 1曲だけのコンテストもありますけど、2曲の落差や変化っていうのは面白いですよね。作戦というわけじゃないですけど、2曲でどう自分を表現するかっていう奥深さがありますし、自分が持っているものを表現したいという人にとっては、HOTLINEは選んでもらえるコンテストになっていると思います。将来性やサムシングが評価のポイントになるコンテストもありますが、HOTLINEはあくまでも“2曲/10分”という枠で、その場のお客さんが納得できる形での勝負ということにこだわりたいです。
●来年への展望を教えてください。
小久保 おかげさまで店舗数も増えており、エリア分けを変更する可能性もありますが、フォーマット自体は変わらずでやっていきたいと思います。あとは、バンド側がHOTLINEをもっと活用できるよう、応援する方法などは考えていきたいですね。

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