あいちトリエンナーレ2013で清水靖晃+カール・ストーンによるパフォーマンス『Just Breathing』が開催

NEWS by RandoM編集部 2013/07/27

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トリエンナーレとは3年に1回開催される現代美術の祭典のこと。あいちトリエンナーレは2010年に第1回が開催され、池田亮司が「spectra [nagoya]」という空に光でタワーを描く壮大なインスタレーションを発表したのをご記憶の方も多いだろう。

2回目の開催となる今年も多くの興味深い作品が出展されるが、注目したいのは9月28日に行われる清水靖晃とカール・ストーンの2人よるパフォーマンス『Just Breathing』だ。清水はサキソフォン奏者/作曲家/プロデューサーとして活躍し、近年はサキソフォネッツというサックス5人組みのユニットで独自のバッハや5音階の音楽に取り組んでいる。

一方のカールはコンピューター・ミュージックのパイオニアの一人で、かつてサンレコでも連載を持ち現在のMaxブームの礎を作った人物としても知られている。しかし、そんな“音楽家”である2人がなぜ現代美術の祭典に出演するのだろう? あいちトリエンナーレ2013の舞台芸術統括プロデューサーの小崎哲哉氏はその理由をこう説明する。

「あいちトリエンナーレのメイン会場の1つである愛知芸術文化センターは、愛知県美術館と愛知県芸術劇場から成る施設なんですね。それで必然的に美術だけではなく演劇やダンスそして音楽も絡めた祭典となったわけです」

あいちトリエンナーレ2013のテーマは“揺れる大地―われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活”。小崎氏はそれを発展させた舞台芸術部門のサブテーマを考えたという。

「メイン・テーマはもちろん東日本大震災を受けてのものです。愛知は直接被害を受けたわけではないですが、我々は自分の足下をあらためて見つめ直さなければいけないっていうことですね。そう考えたときに僕がパッっと思い浮かんだのが、サミュエル・ベケットだったんです。不条理演劇の作家に“足下を見つめ直す”という点で通じるものを感じたんです。たまたま今年が『ゴドーを待ちながら』っていうベケットの代表作の初演から60年に当たるということもありましたしね。もちろん、ベケット・フェスティバルではないですからベケットの演目は9つくらいにして、あとは何らかの形でベケットにインスパイアされた作品を集めたいと思ったんです」

その流れで小崎氏は、ベケットをテーマとした音楽作品の制作を清水靖晃に依頼したわけだ。

「靖晃さんはものすごく勘のいい人なので、僕がベケットの話をちょっとしただけで、“Breathing”っていうアイディアを出してきた。これは非常にベケット的なテーマだったんですよ」

Breathing=呼吸というテーマが出てきたのは直感であったと清水は語る。

「僕にとってベケットとは……というかベケット的というのは、すごく抽象的なんだけれど“物の本質を見る努力をすること”なんです。僕も音楽をやっているわけなんだけれども、音楽という表面よりもその本質が一番のポイントだと思っている。だから今回の“Breathing”っていう発想は、音が発せられるよりも前の重要なムーブメントから出てきたものなんですね」

そんな清水は、これまた直感的に共演相手としてカールを選んだという。

「昨年の12月に横浜のみなとみらいホールで初めて共演したんですけど、そのときは委嘱作品で「Carl’s Wild Garden」という曲を作りました。僕の吹くサキソフォンの音を有機質(草花等)と想定し、カールさんのプログラムにリアルタイムで入力。そしてその音たちは「カールさんの意識の庭」の中で成長する。これがグっときたのです。で、これからも、この庭が育ったらいいなと思っていたときに、今回の話が来たのでね、じゃあカールさんともう一度やろうと(笑)」

実はカールと清水は、映画音楽作曲家として知られるマイケル・ナイマンを通じて知り合ったそうだ。カール自身は知り合う前から清水に興味を持っていたと語る。

「昔、中野に住んでいたことがあるんですけど、中野サンモール商店街でバッハの旋律をサキソフォンで演奏している曲が毎日かかっていて、いつも感動していたんです。調べたら、清水靖晃さんが演奏しているものだということが分かった。で、6~7年前にマイケル・ナイマンと東京で飲む話になって、マイケルが“友達を連れてきてもいいか~”といって連れてきたのが靖晃さんだったんです(笑)」

そんなカールも実はベケット好きであった。ベケットの代表作の1つとして『クラップの最後のテープ』という作品がある。誕生日ごとにテープレコーダーにその日考えたことを録音するという不思議な習慣を持っている老人の話で、過去の録音を聴きながら過去の自分を批評する様子は、リアルタイムでサンプリングを行うカールの音楽作品に通じる部分がある。

「確かに私の音楽は『クラップの最後のサンプル』とでも言いたくなる構造かもしれないですね(笑)。今回も詳細が決まっているわけではないですが、靖晃さんの演奏をリアルタイムで取り込んでCYCLING’74 Maxでいろいろと加工すると思います」

今回2人の演奏が行われるのは愛知県文化芸術センターの小ホール。多目的に使えるスペースで、映像やサラウンド音響を駆使したパフォーマンスになる予定だという。その空間で清水靖晃とカール・ストーンの2人が『ゴドーを待ちながら』の登場人物=ウラディミールとエストラゴンのような会話を交わすのか? そしてゴドーは現れるのだろうか?

 
公演名:清水靖晃+カール・ストーン『Just Breathing』
日時:9月28日(土)18時~
会場:愛知芸術文化センター小ホール
入場料:一般4,000円 学生2,500円
(チケットは7月27日より販売開始)

あいちトリエンナーレ2013

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