『Earthworks presents ハイ・ディフィニション・マイキング・セミナー』レポート

NEWS by 編集部 2012/08/03

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メディア・インテグレーション主催による『Earthworks presents ハイ・ディフィニション・マイキング・セミナー』が、7月27日(金) に東京都世田谷区のハートビート・レコーディング・スタジオにて開催された。今回はその充実した内容についてレポートする。

DBXの創設者にして、VCAコンプの発明者(!)でもあるデヴィッド・ブラックマー氏によってアメリカ・ニューハンプシャー州に設立されたEARTHWORKS。以来、ライブ/レコーディング用のマイクを多数リリースし、”時間軸の再現性”に優れた特性が、コールドプレイ、スティーヴ・ガッドなど音にこだわるミュージシャン/エンジニアから高い評価を受けている。今回のセミナーでは、EARTHWORKSのマイクのみを使用して生バンドのレコーディングを敢行。その優れた特性を実際に耳で確認しつつ、セッティングのコツを学ぼうというものだ。

講師を務めたのはエンジニアの間瀬哲史氏。以前からEARTHWORKSのマイクを愛用しているとのことで、2009年の坂本龍一ヨーロッパ・ツアー時の写真を交えつつ、「解像度の高さはもちろんだが、ルックスから想像される以上にハウリングに強いので、現場でも安心感がある」と、同社製品の特性について語った。

セミナーが行われたのはハートビート・レコーディング・スタジオのStudio A。コントロール・ルームにはNEVE VR72コンソールが鎮座するが、今回はモニターのみに使用され、各EARTHWORKSマイクの出力はマイクプリのSYM・PROCEED SP-MP4×2とGML 8304で受け、コンプやEQをかけないままAVID Pro Toolsにダイレクトに録音される。またモニター・スピーカーは、間瀬氏が坂本龍一のヨーロッパ・ツアーで使用したMUSIKELECTRONIC GEITHAIN RL901KとRL906が持ち込まれていた。

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▲講師を務めた間瀬哲史氏。コロンビア・スタジオを経て、2003年セカンドトリップを設立。DJ KAWASAKI、沖野修也などの作品を手掛ける。坂本龍一ヨーロッパ・ツアーの模様は、本誌2009年12月号でもレポート

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▲セミナーが行われたハートビート・レコーディング・スタジオStudio Aのコントロール・ルーム。DAWはAVID Pro Tools|HD3。モニタリングはMUSIKELECTRONIC GEITHAIN RL901KとRL906で行っている

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▲ピアノに立てられたPM40TとQTC40×2、ドラムのトップに立てられたQTC50×2、SR40×2は4ch仕様のマイクプリSYM・PROCEED SP-MP4×2を経由してAVID Pro Toolsにそのまま録音。キック、スネア、ハイハット、フロア・タムは下に見えるGML 8304で受けている

当日演奏を行ったのは、3ピース編成の「コトリンゴ with 村田シゲ&神谷洵平」。間瀬氏はまず、赤い靴での活動や大橋トリオのサポートで知られる神谷洵平のドラム・キットへのマイキングから説明を始めた。今回のようにジャジィな音楽性の小編成バンドの場合、間瀬氏はオーバーヘッド×2とキック×1の計3本だけでドラムを収音することが多いそうで、その理由を「相互干渉を減らすため、可能な限りマイクの本数は減らしたい」と語る。今回は比較用として無指向性のQTC50と単一指向性のSR40の2種類がステレオ・ペアで立てられており、コントロール・ルームにて比較試聴を敢行。空間がワイドですき間が無い感じのQTC50、よりダイレクトなドラム音が得られるSR40と各マイクのキャラクターが明快に音として表れたが、今回はアンサンブルに混ぜた際の雰囲気の良さからQTC50を採用。実際のレコーディングでは、ほかにスネアやハイハットにもマイクが立てられていたのだが、間瀬氏は「オーバーヘッドとキックの3本だけで、十分にドラム・キットの音をとらえられていますね」とEARTHWORKSマイクの性能を称賛していた。

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▲神谷洵平が担当するドラムのマイキングについて解説する間瀬氏(右)。オーバーヘッド・マイクはスネアを中央に定位させるため、やや右寄りに設置されている

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▲オーバーヘッドは音質比較のために無指向性のQTC50(左)と単一指向性のSR40(右)の2組が立てられていたが、アンサンブルでの雰囲気から録音にはQTC50を採用

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▲キックはKickPadをかませた状態でSR30にて収音

続いて間瀬氏は、コトリンゴが担当するピアノとボーカルのマイキングについて説明する。グランド・ピアノにはピアノ専用のマイク・システムPM40Tを設置。伸縮可能なバーに周波数特性9Hz〜40kHzと高性能の無指向性マイク×2が取り付けられており、ピアノの内部にバーを固定してセッティングする。一見、弦のかなり近くに収音部がくるように見えるが、「チューニングが優秀なのか、直接音はもちろん、会場の空気感まで収めることができる」と間瀬氏。このマイクは坂本のヨーロッパ・ツアーでも使用されたが、セッティングの再現性の高さが、リハーサルの時間短縮に大いに役立ったという。ピアノ・ブース内にはピアノからやや離れた位置にQTC40×2もセットされ、より空間の広さを感じさせる録り音をコントロール・ルームでも確認できた。ボーカル用のSR40Vは本来ステージでの使用を想定した設計となっているが、間瀬氏は「ひずみに強いし、繊細なニュアンスも拾える」とレコーディングでの使い勝手/音質の良さを強調していた。

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▲コトリンゴが演奏するピアノにセットされたPM40T。弦に近く見えるが、間瀬氏いわく「部屋鳴りも過不足無く収められる」とのこと。ブース内にはQTC40×2もセットされていた

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▲ボーカル・マイクはSR40V

セミナーの最後に、コトリンゴらによる生演奏のレコーディングが行われた。「minoru」は、ライブではおなじみのジャジィでアップ・テンポな一曲で、神谷のドラムに加え、□□□やCubismo Grafico Fiveで活躍する村田シゲのベースを加えてのトリオ編成での演奏となる。緩急のある曲構成で、コトリンゴのボーカルもダイナミクス豊かだが、ブースの空気感も含めて演奏が”そのまま”収められた印象。マイクは少ない本数ながら、実音と部屋鳴りのバランスが、実際に耳で聴いているのと驚くほど近いのが印象的だった。EARTHWORKSマイクの性能の高さとともに、その性能を最大限引き出す間瀬氏のテクニックの一端を垣間見たセミナーであった。

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