黒い球体を用いた八木良太と蓮沼執太によるサウンド・パフォーマンス~4/2 東京都現代美術館

NEWS by 編集部 2011/04/05

4月2日(土)、清澄白河にある東京都現代美術館で「八木良太×蓮沼執太 サウンドパフォーマンス」が行われた。本イベントは、現在同館で開催されている展覧会「MOTアニュアル2011 Nearest Faraway|世界の深さのはかり方」の関連イベントだ。会場となったエントランスホールにはおよそ100名の観客が集まり、ひとときの音楽体験を楽しんだ。

HEADZから数々の作品を発表し、最近では演劇やファッションブランドなど幅広い分野とのコラボレーションで多くの化学反応を起こしている音楽家、蓮沼執太。1月初旬に行われた「蓮沼執太フィル・ニューイヤーコンサート」では権藤知彦、石塚周太ら名だたるプレーヤーが参加した大所帯の「フィル」編成により、ファンを魅了した。
そんな蓮沼が2010年に発表した作品『wannapunch!』のミュージック・ビデオを制作したのが現代アーティストの八木良太だ。氷のレコード『VINYL』をはじめ、「聞く」ことや「時間」など、音楽との関連性を感じさせる作品を発表し、注目を集めてきた。

パフォーマンスが行われたのは東京都現代美術館1階の広い通路の一角、高い天井と穏やかな日の光が差し込むガラス窓が開放的な場所だ。そこに長テーブルが左右に2つ置かれ、その中央にPA卓とスピーカーがある。

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左右のテーブルの上にある、不可思議な黒い球体が八木良太の作品『Sound Sphere』だ。ハンドボールくらいの大きさの球体にカセットテープをぐるぐる巻きにしたもので、専用の再生装置に設置すると、ローラーで球体を回転させながら磁気ヘッドで音声を読み取る。巻かれているテープは既製品のため音源が収録されているが、幾重にも巻きつけられていることとランダムな回転により、ノイズ音や偶然生まれた不思議な音が聞こえてくる。

この作品の実演に蓮沼執太が制作した音を重ねていくという形で演奏が行われた。
それぞれのテーブルには『Sound Sphere』の球体をセットした再生装置が2台ずつ置かれ、向かって左側のテーブルに八木、右に蓮沼が立ち、音はそれぞれの側のスピーカーから出る。八木はミキサー、蓮沼はMacbookとDJミキサーを設置。中央のPA卓にはサウンド・エンジニアの葛西敏彦が座る。

ゆっくりとパフォーマンスが開始された。『Sound Sphere』のプレイヤーから、ジーというノイズ音が重なり合って聞こえてくる。蓮沼はかすかな音からリズムを拾い、そこに即興的に音を貼り付けたり載せたりしていく。

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八木が磁気ヘッドをテープの目に沿ってこすると逆回転のようなキュルキュルという音が出る、それに呼応するように蓮沼の音も変化していく。深海で聞こえる水と泡のようなイメージ。穏やかな緊張感が会場を包んでいる。その静かな掛け合いの瞬間瞬間で、葛西が細かく対応していく。回転する黒い球体とその周りで緻密な操作を加える3人の仕草は、まるで科学の実験のようだ。観客はそれぞれリラックスした姿勢で耳を傾ける。目を閉じて瞑想するように聴いている人も多かった。
パフォーマンスはおよそ30分、開始時と同様にゆっくりと終了した。

バンド編成やサウンドインスタレーションなどさまざまな活動を経て、今回のパフォーマンスは蓮沼執太の新たな側面を垣間見ることができたものとなった。と同時に、場や時間、そのほかのさまざまな要素を読み取りながらアウトプットを変化させていく、彼の豊かな感性をそのまま表しているようにも感じられた。
この次の日に行われたSounar Sound Tokyoへの出演とその成功も含めて、軽やかに変化を続ける彼の活動には引き続き注目していきたい。

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蓮沼執太

1983年東京都生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科研究生。HEADZをベースに音楽作品を多数発表。オリジナルアルバムに『OK Bamboo』(2007)、『POP OOGA』(2008)など。八木良太、シアタープロダクツ、古川日出男、小金沢健人、快快、ほうほう堂との共同制作をはじめ、「ウインドアンドウインドウズ」「音楽からとんでみる」「蓮沼執太フィル/チーム」を組織する。
過去の活動には、SOMMER SONIC、HARAJUKU PERFORMANCE+、SonarSound Tokyo、Sence of Wonder、SPECTACLE in the Farm、MOSAIC MUSIC FESTIVALなど、国内外の大型フェスティヴァルやイヴェントの出演を果たし、ユニクロ上海店オープニング音楽、SONY製品などの多くの広告音楽を担当するなど、多様な音楽機能を探求する。
http://www.shutahasunuma.com/

八木良太

1980年生まれ。京都在住。音響作品をはじめとして、オブジェや映像、インスタレーションからインタラクティヴな作品まで、多様な手法を用いて表現活動を行なう。再生するほどに音が溶解・摩耗していく氷のレコード「Vinyl」や、高速再生された音楽に映像処理を施すことで美しいクラシック音楽に再構成する作品「Lento -Presto」など、音と時間が作用する多層的な空間を生みだす八木の表現に対する評価は年々高まっている。
2010年、ACC(Asian Cultural Council)の招聘でNYに半年間滞在して制作を行なった。
http://www.lyt.jp/

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