【製品レビュー】トム・オーバーハイムTwo Voice Pro Synthesizer 機能性と操作性が進化し蘇るオーバーハイム・サウンド

REVIEW by 齋藤久師 2016年10月20日

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キーボード・マガジン2016年AUTUMN号より

コシのあるシンセ・ブラス・サウンドや、カラっと乾いたアメリカらしいシンセ・サウンドで一世を風靡したオーバーハイム・シンセサイザー。1974年の発売以来、実に40年以上経った現代に復活したTwo Voice Pro Synthesizer。“SEM”とはシンセサイザー・エキスパンダー・モジュールの略称で、このSEMの数によりや4Voice、8Voiceなどの拡張されたモデルも存在した。ほぼ当時のまま復刻されたこの最新のSEMにも2つのVCO、フィルター、そして2基のエンベロープが搭載されている。オシレーターはノコギリ波と矩形波の2種類で、フィルター発振によるサイン波とホワイト・ノイズを合わせると4つのサウンド・ソースを搭載している計算になる。また、オシレーター・シンクも可能であり、各オシレーターには“ENV1”“ENV2”“LFO”、そして“EXT(外部)”からの変調が可能なため、複雑なモジュレーションやシンク・リードなどを自由に作り出すことができる。“PULSE WIDTH”も10〜90%の可動範囲を持ち、バリエーション豊かな矩形波サウンドを得られる。

フィルター・セクションでは、ローパス、ハイパス、またノッチの範囲を自由に変化でき、バンドパス・スイッチも搭載。“FREQUENCY”“RESONANCE” により切れ味の良い音質効果を自由自在に得ることが可能だ。また、フィルター・モジュレーションセクションでは“ENV2”や“LFO”からのコントロールのほかに、外部からの入力も可能である。またアープ・シンセサイザーにも見られる、オシレーターのミキサーがフィルター・セクションに搭載されている点もユニークだ。

エンベロープは2基搭載されており、それぞれ“ATTACK”“DECAY”“SUSTAIN”の3ポイントでコントロールするタイプだ。そのほか、外部からのオーディオ・ソースをSEMフィルターで加工できるのは嬉しい仕様だ。

Two Voice Pro SynthesizerはこのSEMが2基搭載された2ボイス、2ウェイ・マルチティンバー仕様の完全アナログ・シンセサイザーだ。1974年のオリジナルからアップデートされた点として、2つのVCAの切り替えにより、音量とフィルターにベロシティを付けられるようになったことで、表現の幅が倍増している。

最も特筆すべき点としては、フロント・パネル上部に搭載された3.5mmサイズのパッチ・パネルだ。これは、Two Voice Pro Synthesizer内部のパッチングを行うだけでなく、昨今のユーロラック・シリーズなどの外部アナログ・シンセサイザー、またモジュラー・シンセサイザーなどを接続して、無限の可能性を得ることができるのだ。

そして、Two Voice Pro Synthesizerには優秀なコンパクト・アナログ・シーケンサーが搭載されている。すべてにノブが搭載された16ステップのシーケンサーは純粋なアナログ・シーケンサーとしてだけではなく、サンプル&ホールドのソースにもできるのが嬉しい。さらに、2つのSEMを個別にコントロールできたり、ソング・モードを組めるなど使い込むほど本格的なシーケンス・コントロールを可能とする。もちろん、MIDIクロックの同期も容易だ。また、当然ながらMIDI IN/OUTによる制御のほかに、パッチ・パネルによるアナログ信号での外部機器との親和性を同時に可能にする。

キーボード・モードでは、ユニゾン、スプリット、ポリフォニックを自由に切り変えられる。それぞれのSEMの音量と定位などをフィジカルにコントロールできる点は、非常に音楽的、そして人間工学に基づいてデザインされていることが分かる。ベロシティ、アフタータッチのほか、ビブラートの深さやスピード・コントロール・ノブを隣接させたピッチベンド・ホイール、モジュレーション・ホイールは、まさに演奏表現に特化した完成度の高いデザインを実現させている。

Seq & Synth Bass

半音単位でピッチを設定できる16ステップのアナログ・シーケンサーを使用し、2つのSEMに別々のコントロールを施した。まずはSEM Bでシンセ・ベースの音色を鳴らし、定位はセンターから始まる。SEM OUTPUTSでそれぞれの音量とパンニングをリアルタイムでコントロールできる機能を使い、次第にシンセ・ベースが右にパンニングされ、左からはSEM Aで作ったホワイト・ノイズとパルス波によるシーケンス・パターンが登場する。アナログ・シーケンサー走行時にもポルタメントを自由にかけられるのは嬉しい仕様だ。SEMごとに別々にコントロールできるLFOも多様なバリエーションを創造しやすい。

Saw Synth Bass

Two Voice Pro Synthesizerに搭載されたノコギリ波は4つ。そのすべてを総動員して作った地を這うようなシンセ・ベース・サウンド。フィートのクリックを搭載しないオーバーハイム・シンセサイザーは、SYNCスイッチを使いピッチを強制的にあわせることができるが、あえてスイッチをオフにし、それぞれのオシレーターのピッチのずれを利用したデチューン効果で重厚な低音効果を狙った。各オシレーターには、ファイン・チューニングのできるノブが用意されているので、まるでアコースティック楽器のチューニングをするような微細なピッチの揺れを容易に付けることができる。また、演奏中にNOTCHフィルターや、LFO、またフリケンシーなどをリアルタイムで操作することで、生き生きとした音色の変化を楽しめる。

Synth Brass Lead

オーバーハイム・シンセサイザーの最も代表的な音色と言えば、シンセ・ブラスであろう。分厚く乾いたアメリカンな音色は、誰もが一度は耳にしたことがあるはずだ。オシレーターやハリのあるSEMフィルターのほかに、シンセ・ブラスを作る上で最も重要なポイントは、管楽器の吹き始めに起こる“ピッチのしゃくり”だ。本機にも、オシレーターにピッチ・カーブを付けられるピッチ・エンベロープが搭載されているので、これを容易に表現することができる。オシレーターに用意されたモジュレーション・セクション・スイッチは“ENV1”“EXT”“LFO”の3つから選ぶ。ここでは“ENV1”を選択し、エンベロープのアタックでピッチのカーブを調整し、最後にMODULATIONノブをFREQ(左)方向に回すことでシャクリ具合を調整すれば完成だ。

 

 

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