【製品レビュー】WALDORF Zarenbourg 多彩な音源システムを装備 リアルなビンテージ・サウンドを実現した次世代型ステージ・キーボード

WALDORF Zarenbourg

REVIEW by 堀越昭宏/撮影:八島崇 2016年4月1日

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キーボード・マガジン2013年AUTUMN号より

フィジカル・モデリングによる
豊かなビンテージ・エレピ音色

ドイツのシンセサイザー・メーカーの名門ウォルドルフ。独特の厚く、陰影を持ったトーンに熱狂的なファンも多い。かつて“ウェーブテーブル・シンセ”であるPPG Waveという名機でシーンに登場し、その機能やサウンド・キャラクターを引き継いだ比較的小型のMicroWaveシリーズ、巨大なThe Waveといった製品をリリース。そして近年はかつての自社製名機のサウンドを再現したプラグイン・シンセや、ハードウェア・シンセBlofeldなどでまた人気を取り戻していると聞き、いちシンセ・ファンとしてうれしい限りだ。

そしてかなり以前からフランクフルト・ミュージックメッセやNAMMといった海外フェアに出品され、話題になっていた“あの”ウォルドルフが本気で作ったエレピ 、Zarenbourgがついにリリースされるのだという。“シンセのウォルドルフがエレピ!?”と思いつつも、そこは音にこだわる名門。“期待できるに違いない!”と胸踊らせ、筆者はキーボード・マガジンが用意してくれた試奏室へ向かうのだった(笑)。

扉を開けると目に飛び込んできたのは、ローズ・ピアノのトップ・カバーの色を変え、コンパクトにして、ウーリッツァーの足を付けたようなそのルックスだった。試奏機のカバーの色はアイボリーで、リア・パネルには黒地に銀色のロゴ。エレピへの愛情があふれ、安っぽい感じは微塵もない。うん、いいぞ(笑)。
そして目に入るパネル両側のスピーカー。弾いてみると、小さいわりにはエレピ音色でも決してさみしくない、自然な低音が出ている。“これは?”と思い本体下を覗きこんでみると、低音を出すバスレフ・ホールが存在していた。この辺のチューニング(調律でなくて調整の方)もぬかりない。

音色はSOUNDノブで選んでいく。“TINES”はやはりローズ系の音色。“ん?”弾いてみるとMk-IとMk-Ⅱのどちらをサンプリングしたサウンドなのか分からない。Mk-Iの音の太さとMk-Ⅱの音抜けが両立しているようで気持ち良いのだが、マニアとしてどちらか分からないのは納得がいかないので(笑)聞いてみると、エレピ音色に関しては実機のサンプリングではなく物理モデリング音源なのだという。なるほど。モデリングのエレピ音源はPCプラグインとしていくつか存在するが、それらと比べてもよりハッキリとローズのキャラクターだと分かる音作りだ。もちろん離鍵音も自然だ。

“BARS”はドンシャリに加工したローズの音色。かつてローズのチューンナップ・モデルとして存在したダイノマイ・ピアノと共通したキャラクターだが、それよりはナチュラルに感じる。“REEDS”はお待ちかねのウーリッツァーの音色。ウーリーだからといって特徴を強調するゆえに音が細くなったりせず、これも適度に太い、バランスの良い音作りがしてあると感じた。

以上のビンテージ・エレピ系の音色に頻繁に使われるトレモロ/オートパン・エフェクトは、ほかのエフェクトと独立したノブが割り当てられており、操作性が高い。実機に合わせてローズ系のときはステレオ(オートパン)が、ウーリッツァー系のときはモノが設定されている。なお筆者の希望として、ローズのオートパン波形がMk-7に近い正弦波状なので、Mk-Iに近い矩形波状のものも選択可能にしてほしいなと思った。

 

サンプリングとFM音源に加え
機能性の高いエフェクターも搭載

さてZarenbourgのもう1つのハイライト、それは質の高いグランド・ピアノ“Steinway B”の波形だ。クセのないピアノ・タッチ鍵盤で弾くこの音色はまさにスタジオ・クオリティで、気持ち良いことこの上ない。エレクトリック・グランド“CP-80”やクラビネットも質が高く品を保った音色で、後述するエフェクトを使えばアグレッシブなアプローチも可能だろう。

そして追加のオーケストラ系の音色は、ストリングス単体の音色もあり、ベロシティによって徐々に木管、金管、ティンパニが加わってくる音色もある。単独で弾いても非常に楽しいのだが、エレピやアコピとユニゾンさせ、エクスプレッション・ペダルで音量をコントロールすることもできる。これらピアノ~オーケストラ音色はモデリングではなく、4GBものSSDからサンプリング波形をダイレクト・ストリーミングしている。

また、エレピと聞いてFM音源をイメージする80年代サウンドのファンもいることだろう。そんな方々のためにZarenbourgはなんとヤマハDX7と同じ、6オペレーターのFM音源も実際に積んでいるのだ。タッチに対して繊細に音色が反応するのが、本物のFM音源を積むことによって得られる利点だ。

こうした複数の音源システムをZarenbourgは持っているわけだが、こうして得られた音色を内蔵エフェクトで仕上げたり変化させたりできる。選択ノブは一見1つだけを選択するように見えるが、“HOLD”ボタンを押しながら選択することによって、複数(もちろん全部でも)のエフェクトを選択できる。また、シンプルなパネルではあるが、1つ1つのエフェクトを効果的にエディットしていくことも可能だ。

そしてZarenbourgはソフトウェアのエディターを使うことによって、非常に数多くのパラメーターにアクセスできる仕様。エレピのモデリングならハンマー音、トーン・バー、ピックアップなど、実機に手を突っ込んでしかできない数々の調整ができるし、FM音源ではエレピを超えたシンセサイズまで行える。まさに必携のエディターと言えるだろう。

最後に、Zarenbourgのルックスは非常にシックで、クリエイティブ系のオフィスにも合いそうなイメージとなっている。リビングに置いて曲が浮かんだ瞬間に弾き、そのイメージどおりの音をそのままレコーディング・スタジオでも使う……そんな理想の音楽生活を夢見させてくれる一流のエレピだと思う。

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WALDORF

Zarenbourg

480,000円(税別)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

問い合わせ
フックアップ
TEL: 03-6240-1213 http://www.hookup.co.jp/

【SPECIFICATIONS】
鍵盤数:76鍵(ファタール社製ウェイテッド・ハンマーアクション・キーボード)●音源システム:フィジカル・モデリング、サンプル・プレイバック、6オペレーターFM●容量:4GBダイレクト・ストリーミング・メモリー●音色数:プリセット=7、ユーザー・サウンド=21●最大同時発音数:100●エフェクト:7(コーラス、フランジャー、フェイザー、エコー/リバーブ、オートワウ、EQ、オーバードライブ)●その他:ドイツEMES社製 2.1chアクティブモニターシステム●端子類:LINE IN(L/R)、LINE OUT(LEFT、RIGHT/MONO)、MIDI(IN/THRU/OUT)、USB、S/PDIF、PEDALS(CONTINUOUS/SUSTAIN)、AC IN、SDHCカードスロット●外形寸法:1200(W)×620(D)×830(H)mm(付属スタンド使用時)●重量:38kg

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