Vol.01 お仕事交遊録~奥田創史(テレビ朝日プロデューサー)編

本間昭光のプロデューサーEYES by 編集部 2012年3月10日

みなさん、こんにちは、本間昭光です。キーボード・マガジン2012年SPRING号より、僕の連載”本間昭光のプロデューサーEYES”がリニューアルし、この”お仕事交遊録”を紙面と連動させて、ここに掲載します。このコーナーは、僕の仕事において付き合いのある人との対談をお届けします。記念すべき第1回目のゲストは、テレビ朝日『SmaSTATION!!』のプロデューサー、奥田創史氏。彼とは『ミュージックステーション』(以下『Mステ』)のAD時代からの付き合いがあり、今回はテレビという映像を作る人間から見たキーボーディスト像について話を聞きました。

Section1
TVで目立つには

自分で画になるということをイメージする

本間 今回は、キーボーディストの地位を向上させたいということで、奥田さんにいろいろ意見を伺えたらと思っています。奥田さんは、長年『Mステ』の番組制作に携わってきましたが、キーボーディストがTVで目立つにはどうしたらいいでしょうかね?

honma-peyes_part1-1.jpg

奥田 キーボーディストが目立つというのは、永遠のテーマですよね。でも、ボーカル、ギター、ベースの前列3人に立ち向かうのは難しいですよ。

本間 キーボードが据え置きの楽器という悲しさですよね。同じ据え置きでも、ドラムほど派手ではないし。

奥田 そうですよね。だからYOSHIKIさんが、イントロでピアノを弾いたあとに、走ってドラム・ブースに行くのを見て、衝撃を受けましたから(笑)。ずっとカメラで抜かないといけないようにさせられているというのは、テレビ・マンからすると衝撃でしたよ。

本間 なるほど。僕らが打ち合わせをしていて、いつも悩むのが、どんな番組を出ても、『Mステ』でもほかの番組出ても、言ってみればキーボーディストはオマケになってしまうんです。全面に出ることはまずない。

奥田 ただ、僕らからすると、そういうYOSIHIKIさんみたいに、抜かざるを得ない人、これは抜いたら画になるな、というのはあるんですよ。

奥田  もちろんYOSHIKIさんは、バンドのビジュアル面でもリーダーだとは思いますが、曲がピアノから始まれば撮りますし、走ったら撮りますし、ドラムに座っても撮る(笑)。ただドラムは激しいので、専用の固定カメラまで用意していたんですよ。そんなのYOSHIKIさんくらいですね。追いきれなくてもずっと画は撮りたいので。あと、ユニットなど、人数が少ない場合は、撮りますよね。スキマスイッチの常田(真太郎)さん、accessの浅倉さん。それから動きが大きな人。例えばHOUND DOGの箕輪(単志)さんは、片手で弾いて、もう片手はずっと拳を上げている。あれは抜かざるを得ないです(笑)。ほかには小室(哲哉)さんは、動きは小さいんですけど、僕にしたら、わけの分からない機材に囲まれているので(笑)、それが画になる。

honma-peyes_part1-2.jpg

本間 つまり自分で画になるということをイメージしないと、撮る側も撮りようがないと。

 

奥田 そうですね。あと、変わった楽器を置くと、抜きたくなります。ローズという楽器ありますよね?  前にローズを持ってきたバンドがいたときは、”カッコ良いなー”と思って、これは撮ろう、となりましたからね。

本間  ビンテージ楽器のカッコ良さというのはありますよね。ただ、キーボードのビンテージものって、一部を除いて、カッコ良くないと言うか、壊れていたりするんで(笑)。ギター、ベース、ドラムはカッコ良いんですけどね。

自分でTVサイズを作った方が良い

奥田  そうなんですね。あとはですね、僕が思うに、キーボーディストが曲を作っていると、自分においしいところを入れて作るんですよ。例えば、SOPHIAの都君が作った曲だと、ちゃんと都君がおいしい場面があったりする。目立つオカズを入れたりね。そうすると、”あー、そこは抜いてほしいのね”って僕らも分かって、カット割りができるんです。

本間  なるほどね。キーボーディストが抜かれるためには、自分においしいシーンを作ると。それは良いアイディアですね。

奥田  そう。”ここは僕を映してね”ってことが、分かりやすいんですよ。で、多分そういう人は編曲もやっているんで、自分でTVサイズ(注:TVで演奏する際の曲の長さ)も作れると思うんです。レコード会社の場合は、キーボードが目立つ部分をカットしがちなので、自分でTVサイズを作った方が良いです。

本間  それは分かります。

奥田  本間さんが神経注いだところが、ザッとカットされますよね?

本間  そうですね。そうか、自分で編集すればいいのか!  つまり、アレンジを自分でやって、必ずおいしい場面を作り、TVサイズも自分で編集すると。

奥田  例えば、本間さんはいきものがかりのメンバーではないですけど、「ありがとう」のイントロは本間さんのピアノ・ソロで始まるじゃないですか。ああいうのは手元からいきたくなるんですよ。

本間  それは分かりやすい例ですね。海外ミュージシャンのパフォーマンスというのは、まさに画面を意識したものですよね。割り切って、あえて演奏っぽくやらない。

奥田  まさにそうですね。あとは、YOSHIKIさんと同じ2つの楽器を演奏するという方式でいくと、センチメンタルバスなども必然的に目立ってましたね。2つやると自然と映る面積がでかくなるので(笑)。

本間  なるほど。太鼓と鍵盤ですね(笑)。参考になる意見、ありがとうございます。

次のページ:Section2 音楽番組制作の仕事とは

Section2
音楽番組制作の仕事とは

本間 奥田さんが『Mステ』をやっていたころの仕事について伺いたいのですが。

奥田 はい。例えば演出の場合、まずプロデューサーがアーティストをブッキングして、それから曲に合わせたセットを美術の方と話し合いつつ、曲のTVサイズを決めます。そこでます、レコード会社との戦いです(笑)。”この2小節削ればあと5秒減らせるのでは?”"いや、これを削ると曲が死ぬ”とか、しょっちゅうですね。

honma-peyes_part1-3.jpg

本間 生放送なので、本当に1秒の戦いですよね。何とかその1秒をタモリさんからもらいたいとか(笑)。

奥田 ありますね(笑)。それから、どんなふうに映像を流すか、”カット割り”をします。どんな画を抜いていこうかと決めるんです。僕としては、バンドもやっていたので、メンバーも平等に抜こうと心がけていました。傾向として、バンドをやってた人のカット割りは、バンドに対して優しいと思います(笑)。テレビ見ていて、バンドのメンバーが一杯映るなと思ったら、バンド経験者がカット割りしているはずですよ(笑)。

本間 そうなんですね(笑)。でも現場を見ていて思うのは、僕らは、1曲のみの出演で、その1曲だけでも大変なのに、それを1時間やっている、しかも毎週。番組スタッフは本当にすごい仕事量なんですよ。僕らからすれば信じられない。並大抵ではできない仕事だと思うから、尊敬に値するんです。

奥田 でも、僕らからすると、CDを作ってらっしゃる方って、本当に命をかけて作っているのが分かるんですよね。作曲、編曲、作詞、演奏そしてスタッフも含め。世の中でCDを出している人の中で、どうでもいいと思って出しているCDは1枚もないと思っているんです。それをTV側としたら残酷な編集をしなくてはいけない場面があるのですが、何とかしてその曲の良さを伝えたい。テレビ・マンが一番うれしいのは、僕らが紹介したことによってその曲が、人が売れることなんです。それによって、また番組も盛り上がればいいですよね。そういう相乗効果でやっていきたいと思っているんです。『Mステ』は、そこを分かっている人たちがやっているから、長寿番組になっているのかなと。そこが自慢できるところなんです。弊社の番組で申し分けないんですが(笑)。

テレビ・マンが一番うれしいのは、僕らが紹介したことによってその曲が、人が売れること

honma-peyes_part1-5.jpg

本間 僕から見ても、『Mステ』の現場は本当に信頼し合っていると感じるんです。アーティストもサポートのミュージシャンも楽器スタッフもテレビ側のスタッフも、カメラマンもプロデューサーも、みんなが信頼しきっている。そうじゃないと、あのスピードで、1時間枠はできないですよ。絶対。

奥田 そうかもしれないですね。そもそも生放送で歌う、というのが番組を作る上ですごくハードルが高いんですよ。さらに、キーボード1台にしても、すごい速さで移動させないといけないですし、もちろん絶対に傷つけてはいけない。ミュージシャンが転ばないように配慮するとか、リスペクトがお互いにあるから、良いものができるのかな、と思いますね。

本間 長年の信頼関係がありますよね。まず第一にあるのが、音楽を大切にしてくれるということなので、みんなあの番組には出るんですよ。嫌という人はいないと思いますよ。スタッフもみんな音楽を愛している人たちなので、奥田さんも含め。だから、キーボーディストがもっと目立って、番組を盛り上げようと(笑)。

奥田 ぜひ、目立っていただきたいですね。余談なんですけど、僕、今回キーボード・マガジンの取材を受けるという話を社内でしたら、”そういうのがあるんだな”という反応がほとんどだったんですが、部長だけが”俺、『リズム&ドラム・マガジン』買ってるよ、同じ会社だろ。受けろ受けろ”と言ってくれて。実はその人も『Mステ』出身なんです(笑)。

次のページ:Section3 鍵盤人口の裾野を広げるために

Section3
鍵盤人口の裾野を広げるために

奥田 キーボーディストの地位向上のためには、鍵盤人口の底上げも考えなくてはいけませんね。ちなみに本間さんは、どんなきっかけで鍵盤を?

本間 幼稚園のオルガン教室で習っていて、その流れでそのまま。ほかにもギター、ドラム、ベースなど、ひと通り全部やったんですけど、鍵盤人口が少なかったので、バンドを組んでも”俺、鍵盤やるわ”となるんですよ。

奥田 なるほどなるほど。

本間 ただ当時はキーボードの全盛期で、どんなバンドにもキーボードが入っていたから、まだ良かった。それからどんどんキーボードの地位が微妙になっていったんですよ。

奥田 僕もピアノをやっていて、高校生のころに、バンドでキーボードを頼まれてやっていたんですけど、どうやってもキーボードは目立てませんでしたね(笑)。ボーカル、ギター、ベースにはかないませんでした。僕、悲しい話が1つあって、僕は中学高校が一貫の学校で、大学も持ち上がりだったんですけど、別のところに受験をしたんですね。もし、持ち上がりで大学にいったら、”アイツはキーボードのヘルプだ”みたいに思われていたと思うんです。でも、別の大学に入ったので、僕のことは誰も知らないですよね。だから、最初の自己紹介のときに、”ずっとバンドをやっていまして、ボーカルやっていました”って言ったんです(笑)。

本間 (笑)。

奥田 歌ったことなかったですけど(笑)。でも、その瞬間にそれを言うのが大事なんです。そうしたら、”俺ギターやってたんだ”という人などが集まってくるんですよ。でも、実際は全く歌ったことはないから、そこからヤマハ・ボーカル・スクールに通ってつじつまを合わせる作業をしたわけなんです(笑)。

honma-peyes_part1-6.jpg

“こんな人も弾き語りもやりますライブ”というのは、どうでしょう

本間 例えば、これから新しい音楽番組を作るとして、キーボーディストやプレイヤーが増えていくようなアイディアって何かあります?

奥田 僕は関西出身だったので見れなかったんですが、『イカ天』とか、あと弊社の『Break Out』といった音楽番組は、底上げになったとは思うんですよ。あと、ヤマハのポプコンとかのコンテストとかも。

本間 それはありますね。ただ今は、そういう音楽系の番組はなかなか視聴率が取れないんでしょうね。だから難しい。

奥田 そうですね。カリスマ性のあるキーボーディストが出てくるといいと思いますが……。

本間 カリスマ……そうですよね。キーボード・ヒーローが必要、というのはあると思いますね。

honma-peyes_part1-4.jpg

奥田  前から思っていたことがあるんですけど、1つアイディアとして、ピアノ弾き語りをする人を集めてライブやったらいいなと。実はいっぱいいるじゃないですか、鍵盤弾ける人って。aikoさん、絢香さん、KinKi Kidsの剛君。ミュージシャン以外にも今田耕司さんとか山崎邦正さんとか。ピアノを弾きたいと思う動機って、弾き語りをしたい、というのがあると思うんです。

本間 それは面白いかもしれないですね。

奥田 “こんな人も弾き語りもやりますライブ”というのは、どうでしょうか。平井堅さんのKen’s barではないですが、ちょっと大人の雰囲気な感じでやるのもいいし、ポップな感じでやるのもいい。ピアノと一緒にやるというのをメインにして、”鍵盤ってカッコいいんだな”と、見せれば、鍵盤人口の裾野を広げるのにいいかもしれませんね。

本間 良いですね。僕がそこで1つ伝えたいのは、”上手に弾けなくてもいいんだ”ということですね。というのは、気持ちで弾いている人の方が、実は伝わるものがあるんですよ。もちろん”うまく弾く”というジャンルもあってしかるべきなんですけど、あまりそこばかりにこだわらずに、”好きに弾いていいんだよ”というのも伝えたいなと。この前、松任谷正隆さんのパーティに行ったとき、ユーミンが弾き語りをやったんですね。なにも難しいことはしないシンプルなコード弾きなのに、すごく伝わるんですよ。素晴らしいと感じた瞬間でした。でも、そのアイディアはすごくいいですね。裾野を広げるプロパガンダになるかもしれない。

奥田 むしろ、みんな出たがるんじゃないですかね。楽しいですし絶対。

本間 そういう場を作って、テレビ朝日さんで放送してもらって(笑)。

奥田 そうですね(笑)。

本間 そのアイディアは膨らませていきたいですね。今日はありがとうございました。

奥田  ありがとうございました!

本間昭光

大阪府出身。作編曲家、キーボーディスト、プロデューサー。4歳よりピアノを始め、アマチュア・バンドでキーボードを担当する。松任谷正隆に作曲、アレンジを師事、その後本格的に活動を開始する。現在は、いきものがかりをはじめとし、ポルノグラフィティ、浜崎あゆみ、和太鼓チーム、倭の音楽プロデュースなど多数のアーティストを手がける。(www.bluesofa.co.jp/

奥田創史

テレビ朝日『SmaSTATION!!』のプロデューサー。映画部配属後、『ミュージックステーション』のADを約6年務める。その後ディレクターとして番組制作を行い、現職にいたる。本間とは、ポルノグラフィティ「アポロ」の演出時からの付き合いがある。(www.tv-asahi.co.jp/ss/

いきものがかり
『NEWTRAL』

エピック:ESCL-3829

「歩いていこう」「地球」「センチメンタル・ボーイフレンド」で、サウンド・プロデュース&アレンジで参加しています。

TUNECORE JAPAN