ジョーダン・ルーデス(ドリーム・シアター)インタビュー キーボード・マガジン2019年SPRING号より

インタビュー by 通訳:川原真理子 Photo by Mark Maryanovich 2019年4月4日

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2019年2月、およそ3年振りとなる待望の新作『ディスタンス・オーヴァー・タイム』をリリースしたドリーム・シアター。オーケストラを従えて制作された壮大なコンセプト・アルバム『ジ・アストニッシング』から一転、本作は彼らの本領である“プログレッシブ・ロック”という言葉がまさにぴったりくる、ヘビーでエネルギーに満ちあふれた内容となっている。もちろん、ユニゾン・プレイやテクニカルなソロなど、ジョーダン・ルーデスらしいキーボードは満載。バンドに加入して20年という長い道のりを経て、ジョーダンはどのように作品の制作に向かったのか。たっぷりと語ってもらった。

いろんな楽器をそろえてすぐに手が届くようにしておきたい

●『ディスタンス・オーヴァー・タイム』は前作『ジ・アストニッシング』からおよそ3年振りの新作です。前作は、オーケストラを従えた壮大な作品でしたが、今作は“ロック・アルバム”に仕上がっています。どのようなコンセプトがあったのでしょうか?

JORDAN これはコンセプト・アルバムではない。それは間違いない。それぞれの曲からなるアルバムで、どの曲も違う。ルーツに戻ったアルバムと言えるね。『ジ・アストニッシング』よりもハードなロック・アルバムだ。

●ルーツに戻った作品だということで、どのように曲作りをしたのでしょうか? 従来と違うやり方、または昔に戻ったような方法だったのでしょうか?

JORDAN 『ジ・アストニッシング』は、ジョン・ペトルーシと僕が書いたアルバムなので、ほかのアルバムのやり方とかなり違っていた。ジョンと僕はドリーム・シアターのメイン・コンポーザーだけど、前作は2人だけで部屋に引きこもって全体を書いた初めてのアルバムだった。映画のスコアやブロードウェイの音楽を作るような感じだった。とても楽しかったけど、今回のアルバム『ディスタンス・オーヴァー・タイム』では、バンドとしてのエネルギーがまた戻ってきたので、ワイルドでクレイジーなアイディアがいろいろ出てきたよ。みんなで秘密の場所に逃げ込んだ……ニューヨーク州北部に、古い納屋を改造した素敵なリハーサル・スタジオを見つけたので、メンバーはそこに集まって、再び活気を取り戻して、お互い旧交を温めることにしたんだよ(笑)。そこで全員が楽器とともに時間を過ごして、曲作りを行った。あのエネルギーは、アルバム『トレイン・オブ・ソート』の時とちょっと似ていたな。バンド全員が1つの部屋に集まって、徹底的に話し合って、バンドらしく作業した。

●そのやり方は新鮮だった?

JORDAN 僕は最初ちょっと不安だったんだ。大勢の大人が集まって、まるで合宿生活を送るような感じだったからね。でも実際にやってみたら、とても実り多かったし、楽しくもあった。曲作りも速く進んで、すごく集中することができた。料理の腕をふるって、ステーキやハンバーガーや鶏手羽を焼いたりするメンバーもいたり。みんなでよく笑ったよ。アルバムの曲作りはそういう良い雰囲気の中で行なわれたんだ。

●レコーディングもそこで行なったのですか? それとも、別のスタジオで?

JORDAN 当初は、そこに2〜3カ月間滞在して曲作りをするだけのつもりだったんだけど、実際には1カ月以内に曲は出来上がったし、そこでの生活がすごく楽しくて、素晴らしい空間だったから、そこを本格的なスタジオにすることにしたんだ。すると突然たくさんの箱が到着して、機材が運び込まれた。物を借りたり買ったりして、納屋だったリハーサル・スタジオを素敵なレコーディング・スタジオにしたんだ。そうやって結局そこにとどまることになって、曲作りが終わると、全員がいつものようにそれぞれのパートを録り出した。そうしてアルバムが出来上がったんだ。

●ジョーダンは、どういった機材を持ち込みましたか?

JORDAN キーボードをたくさん。曲作りの時は大抵、いろんな楽器をそろえてすべてにすぐに手が届くようにしておきたいんだ。もちろん、いつものようにコルグKronosがあったし、ローランドRD-2000、アートリア MatrixBruteもあった。あと僕は今、新しいハモンド・オルガン、XK-5にハマっている。とても楽しいよ。この楽器は、今回のアルバムの大きな部分を占めたんだ。僕にとってスタジオは、音のパーティ会場なんだ。思い付いたことを何でもやれるので、インスパイアされる。素晴らしいソフトウェアもいろいろあったしね。ドリーム・シアターはオーケストラ・サウンドを多用するから、イーストウエストなどのオーケストラ・サウンド・ライブラリーを使った。あと、このアルバムにおける重要だったソフトは、シンソジーのIvory。ピアノ・サウンドにはこれを使ったんだ。とてもいいよ。あと、アウトプットArcadeという新しいソフト・シンセも良かったね。スペイシーな音を出すためにこのソフトを使った。

●今、名前の挙がったものはすべてリハーサルの段階であったのですか? レコーディングの際に加えたものはありましたか?

JORDAN 基本的には、最初からセッティングしてあった。MatrixBruteが来たのは最後の方だったから、レコーディングには使ったけど、曲作りの際には使わなかったね。曲作りとバンドとのリハーサルでは、Kronosをかなり使った。ライブでも使っているけど、曲作りにとても役立っている。すごくパワフルな楽器であるというだけでなく、僕がコルグのシンセを使い始めてからもうかなり経つので、たくさんのサウンド・ライブラリーが出来上がっている。“ジョーダン・サウンド”が山のように入っているんだ。ストリングス、クワイアー、シンセ・リード、スペイシーなサウンドと、いろいろ入っているんで、大抵は求めるものをここからすんなり見付けられる。

●たくさんのライブラリーから、どのように目的の音色を見付け出すのですか?

JORDAN 最終的なキーボード・トラック録りに至るまでの僕のやり方は、曲作りの際に頭に思い描いているサウンドをある程度作っておくということ。オーケストラ・サウンドにしたかったら、オーケストラっぽい音を見つけておく。完璧ではないかもしれない。作り込んでいくにはもっと時間がかかるけど、僕の楽器のどれかからまずは選んでおく。そうしておくと、自分がやろうとしていることを周りに提示することができて、キーボード・トラック録りの時に磨きをかけられるんだ。もう一歩ディテールにこだわろうと思ったら、例えば壮大なオーケストラ・パートだったら、まず壮大なコードで壮麗なサウンドを作ったとしても、スタジオではそれを分解して、1トラックに高音のストリングスを入れて、別のトラックに低音のストリングスを入れる。重ねてあるボイスを別々に分けておくんだ。そうすると、ミキシングの時にコントロールしやすくなるからね。さらに、ツアーに出る時には構築し直して、アルバムでやったことをライブでやれるようにする。しかるべき形で音を重ねて、アルバムと同じようなバランスにする。だから、これは意味あるプロセスなんだ。

 

XK-5の強力なサウンドにはとてもインスパイアされた

●それぞれの曲やキーボードについてお話を聞かせてください。1stシングルになった「アンテザード・エンジェル」は、オルガンがとてもカッコイイ曲ですね。ジョン・ペトルーシのギターとのコール&レスポンスのようになっているパートがありますが、そこで弾いているフレーズはどのように考えるのですか?

JORDAN そういう曲になることは分かっていたから、曲作りの際に僕はソロ・パートをインプロバイズしておいて、アイディアとして入れておいた。そしてキーボード・トラック録りの際、ギター・パートはすでに録り終えてあったので、僕は彼がやったことを聴いて、“僕のパートも同じくらいカッコ良くないといけないな!”と思ったけど、ジョン・ペトルーシのソロの強烈さに合わせるのはチャレンジだった。そして、それをオルガンでやりたいことは僕には分かっていたんだ。僕にとって新しいことだったけど、XK-5の強力なサウンドはとてもカッコ良かったんで、インスパイアされたよ。リードの時は全く別のモードで、クレイジーになって、納得がいくまでやり続けるよ。パンチインして作り込むこともあるけどね。大抵、“ここはちょっと止めて、五線紙にすべてを書き出しておくべきかな”と思ったりもするんだけど、徐々に自分の中で作り込みが完成して、弾きたいことがはっきり分かるようになるんだ。

●2ndシングルの「フォール・イントゥ・ザ・ライト」もオルガンが際立っていて、ソロがカッコイイ曲です。オルガン・ソロはどのように発想するのでしょうか?

JORDAN これまた似たようなアプローチで、ほかのメンバーがご飯を食べに行ったりすると僕が部屋を独占できるんで、そこでやるべきことをやったんだ。あと、音作りもかなりやったね。とても細かいところまでこだわって、バンド・サウンドに切り込んでいける効果的な音にして、ミックスで埋もれないようにすることを心がけたんだ。

●先ほど、XK-5がアルバムの大きな部分を占めたと言っていましたが、そもそも今回はオルガンをフィーチャーしようという思いがあったのでしょうか? それとも、試行錯誤を重ねて行くうちに結果こうなった?

JORDAN 最初からこうしようと思っていたんだ。『ジ・アストニッシング』ではハモンドB-3を使った。本当に素晴らしいB-3とレスリー・スピーカー122のあるスタジオでレコーディングしたんだけど、当初それに対してちょっと抵抗があった。僕はクラシック・ピアノ出身で、そこからシンセサイザーを弾くようになったけど、伝統的なオルガン・プレイはそんなに好きではなかったから。でも『ジ・アストニッシング』を作っていた時、できるだけすべてをナチュラルかつオーガニックにしたかったので、キーボードのオーケストラ・サンドはほとんど使わずに、本物のオーケストラを使った。それで、それらのサウンドと一緒にB-3を使って、好きになったんだ。部屋にいてすごいパワーを感じたんだよ。“これはいい!シンセサイザーとは違うことができる!”と思ったんで、今回のアルバムを作ることになった時、そのエネルギーを作品に取り込みたいと考えたんだ。ルーツに戻ったロック・アルバムを作ることは分かっていたから、これだと思った。ハモンド・オルガンはロック・バンドで使われるものだし、きっとカッコイイだろうとね。

 続きはキーボード・マガジン2019年SPRING号に掲載されています!

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