【イベント・レポート】スペシャル・セミナー「誰でもわかるFM音源」

ライブレポート by キーボード・マガジン編集部 2015年11月13日

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FM音源のサウンド・メイキングに興味を持つ人たちを対象とした福田裕彦氏によるセミナーが開催された。その模様をレポートする。

80年代初頭、画期的なデジタル・シンセサイザーが登場した。その名はYAMAHA DX7。FM音源を搭載し、それまでのアナログ・シンセサイザーの概念を覆す表現力豊かなサウンドは、世界中の多くのミュージシャンを魅了し80年代を代表する電子楽器となった。その後FM音源は、PCMシンセサイザーの台頭により徐々に姿を消していくことになるが、今年2015年reface DXとして復活劇を遂げた。FM音源はバラエティに富んだ音色を得意としているが、理論や音作りにおいて苦手意識を持つ人は少なくない。

本セミナーで講師を務めたFMサウンド・プログラムのスペシャリストの福田氏は80年代に、生方則孝氏との共同開発によるDX7用音色ソフト「生福」を発売し、それまでのDX7のポテンシャルを一気に上げたことでもよく知られている。このセミナーは「reface DXの誕生により、我々FM音源リアル・タイム世代は、若い世代にFM音源の理論、音作りの方法を伝える義務がある」という福田氏の熱い思いから実現した。東京会場は、参加希望者が殺到し急遽クラスが追加されるほどの人気で、福田氏のわかりやすい解説と楽しいトークによりとても充実したセミナーとなった。

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アナログ・シンセサイザーはVCO(オシレーター)で生成された基本波形をVCF(フィルター)で音の明るさ、VCA(アンプ)で音量を設定して音が作られていく。つまり元々あった倍音をフィルターで削る方式で、これらは減算方式シンセサイザーと呼ばれる。PCM音源はこの基本回路のオシレーター部分をデジタル波形に応用したものであり、現在のシンセサイザーの基本的な考え方となっている。

ちなみにreface CSはこのアナログ・シンセサイザーの発音構造をモデリングした音源を搭載し、フェーダーを動かして直感的な音作りが楽しめる。

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一方reface DXに搭載されている音源は、Frequency Modulationの頭文字を取ってFM音源と呼ばれ、その名前の通り発音の周波数を変調させて作る音源方式である。当日福田氏もreface CSを使って実演していたのだが、アナログ・シンセサイザーのVCO波形にLFOでビブラートをかけ、そのスピードを高速にしていくと側帯波という別の倍音が出て音色が変化する。これがまさにFM音源の音作りの基本原理で、このビブラートのことを福田氏は「くすぐり」と擬人化して解説していた。つまり、波形のくすぐり方を変化させることにより多彩な音作りが可能になるというわけだ。

ちなみに、アナログ・シンセサイザーはVCOで生成された波形にモジュレーションをかけて音を加工していくが、FM音源はモジュレーションを使って直接音を作り出す。これが従来のシンセサイザーとFMシンセサイザーとの音作りの概念が大きく異なる点だ。

またアナログ・シンセサイザーはVCOーVCFーVCAの回路で1音しか鳴らすことができないので、和音を鳴らしたい場合はこの回路を複数用意しなくてはならない。しかしFM音源の場合はデジタル回路の時間分割処理というメリットを活かし、同時に異なる音階の波形を作り出すことができる。したがってポリフォニック・アナログ・シンセサイザーがとても高価な時代に、16音ポリフォニックのDX7が248,000円で登場したことはとても衝撃的だったのだ。

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このようなFM音源の理論をハードウェアに実装するために考え出されたのが「オペレーター」という概念だ。これがYAMAHAのFM音源の最大の特徴といって良いだろう。オペレーターはフェイズ・ジェネレーター(PG)、サイン・ウェーブ・メモリー(SWM)、エンベロープ・ジェネレーター(EG)で構成される。SWMにはサイン波の波形が格納されており、PGの読み出し速度でサイン波の音高が決まる。そのPGの読み出し方を「くすぐる」ことで、サイン波とは違った複雑な波形を作り出すことができる。

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オペレーター1つでは単純にポーというサイン波しか鳴らせないが、オペレーターを組み合わせることでさまざまな波形を生み出すことができる。オペレーターは縦に積むか横に並べるしかできない。このオペレーターの組み合わせをアルゴリズムと呼ぶ。

ちなみにreface DXは4オペレーター、12アルゴリズムのFM音源である。

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reface DXのアルゴリズムの種類

縦に積むことは上のオペレーターが下のオペレーターに変調していることを表す。つまり上のオペレーターが下のオペレーターをくすぐっていることを表している。
ちなみに下をキャリア、上をモジュレーターと呼ぶ。

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くすぐることで音色が変わるのであれば、くすぐり方が変われば出てくる音色も変わるはずである。例えば、このくすぐり方を経時的に変化させるにはどうしたら良いだろうか。
オペレーター内のエンベロープ・ジェネレーター(EG)に注目してみよう。

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reface DXのオペレーター内のEG設定画面

単独で存在するオペレーターのEGは鍵盤を押したときの音量の変化を設定できるが、このオペレーターを上に積んだ時、つまりオペレーターがモジュレーターとしての役割を果たす場合のEGは、キャリアに対してのくすぐりの強さの変化に変わる。これにより鍵盤を弾いた時にFM音源の独特な音の変化が得られるという仕組みだ。

一般的なシンセサイザーと比べて、FM音源の音作りが難しいと言われるのは、選んだオペレーターによって作られる音色がイメージしにくいという点が大きい。これは何回も試行錯誤を繰り返し経験を積むことが必要だと福田氏は語る。

そして機材を扱う際には、その仕様を理解しながら、自分が知っている知識の中で何が作れるかイメージすることも重要だ。例えばオペレーターを横に並べた場合、それらの音は単純に混ぜ合わされて出力されるので、オルガンが複数のサイン波で構成されているということをあらかじめ理解していれば、以下のアルゴリズムを使えば、オルガンの音ができることが簡単に思いつくだろう。

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※12という数字はreface DXのアルゴリズムのパターンの番号

 

 

また、プリセット音色からは、音作りのコツを学ぶこともできる。

例えば、reface DXのプリセット音、Bank1-4「LegendEP」の構成をみてみよう。
これはFM音源の代表的なきらびやかエレクトリック・ピアノの音色だ。

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FM音源を代表する有名なエレクトリック・ピアノ

この音色では、モジュレーターを積んだオペレーター1、3が重ねられて出力するアルゴリズムをが使われている。

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LegendEPで使われているアルゴリズム

オペレーターはON / OFFすることができるので、それぞれのオペレーターがどんな音色をしているか確認してみよう。

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聞き比べた結果、オシレーター1ではエレクトリック・ピアノの基本的な音を担当し、オペレーター3は金属的なキラキラした部分を担当していることが分かった。

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さらに、それぞれのオペレーターの周波数を見てみるとオペレーター4だけ高い。

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つまりキラキラした音が、オペレーター4はオペレーター3を高速でくすぐっていることによりできた音であるということが予想できる。

 

また、FM音源の音作りで重要なのがフィードバックだ。これはオペレーターの出力信号を自分に戻すことができ、オペレーターの掛け合わせでは難しい変調ができる。

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6オペレーター、32アルゴリズム仕様のDX7は、6つのうち1つにフィードバックがかけることができた。フィードバッグの量は0〜7段階で変えられ、ホワイトノイズを出すことが出来る。

しかし、4オペレーター12アルゴリズム仕様のreface DXはすべてのオペレーターに対してフィードバックが使え、しかも精度が向上し、0〜127で数値を設定できる。そのためきれいなノコギリ波や矩形波も作ることができるようになった。

オペレーターとアルゴリズムの種類だけに注目すると、DX7の方が音作りの幅が広いようにみえるが、reface DXの方が少ないオペレーターで基本的な音決めがやりやすくなり、その後フィードバックを駆使して理想のサウンドを追い込んでいくことが出来る。しかもreface DXにはエフェクターも搭載している。まだ体験したことのないFM音源の新しいサウンドに出会える楽しみが増えたといってよいだろう。

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このような3時間にもわたるマニアックな内容だったが、あっという間に時間が過ぎ、楽しいセミナーとなった。昨今のシンセサイザーの多くは膨大なサウンド・ライブラリーから音を選ぶ傾向にシフトしつつあるが、このreface DXはまた改めてシンセサイザー本来の音作りの楽しさを教えてくれる、そんなシンセサイザーであることが実感できた。

reface DXは、コンパクトなサイズながら本格的なタッチのミニ鍵盤仕様で、電池駆動可能、そしてスピーカーまで搭載されていて、どこでも好きな時に楽しめる。FM音源の音作りを極めたい人にとって、これほど適したシンセサイザーはないだろう。

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 誰でもわかるFM音源セミナー@大阪のお知らせ

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大阪:11月21日(土) 13:00〜16:00  受講料:無料

東京での大盛況を受け、定員を20席追加しました。
予約受付・詳細につきましてはこちらをご覧ください。予約受付11/13(金)17:00 ~ 11/17(火)23:59まで

→スペシャルセミナー 「誰でもわかるFM音源」

http://jp.yamaha.com/news_even…/music-production/fm_seminar/

 

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