【イベント・レポート】キーボード・マガジン・フェスティバル 2015

ライブレポート by キーボード・マガジン編集部 2015年10月5日

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2015年9月20日(土)にラフォーレ・ミュージアム六本木で行われた本誌主催の鍵盤楽器イベントキーボード・マガジン・フェスティバル2015の模様をお届けする。

本誌主催による初の鍵盤楽器イベント『キーボード・マガジン・フェスティバル2012』から三年が経過した。たった三年という年月でもテクノロジーの進化や流行によってその時代を彩る製品は様変わりする。

そんな2015年を反映した数々の新製品、 そして浅倉大介、Kiyo、戸田宏武、Hello,Wendy!、minus(-)といった日本の音楽シーンで活躍するアーティストのパフォーマンスが体験できる『キーボード・マガジン・フェスティバル 2015』が9月20日ラフォーレミュージアム六本木にて開催された。キーボード/シンセサイザー・ファンを魅了したステージ、ブースの熱気をここから感じ取っていただきたい。

 

浅倉大介 × kiyoトークショー

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浅倉の前にはROLAND JD-XAYAMAHA reface CS、kiyoの前にはステージにはKORGのオルガンCX-3、YAMAHA Motif XF、そしてkiyoの後ろには本人がオルガンよりも先に買ってしまったと語るレスリー・スピーカーが鎮座する。

あらかじめフェス前に読者から寄せられた「初めて買ったキーボードについて」、「キーボーディストになったきっかけ」、「オリジナル音色を作成するコツ」、「かっこよくキーボードを演奏する方法」、「楽曲制作の手順」、「今後あったら欲しいシンセサイザー」そして最近、浅倉が購入した「Emerson Moog Modular Systemについて」など多岐にわたる質問に答えるスタイルでトークショーは進行した。参加者は二人のあたたかくユーモアあふれる人柄に魅了され、会場全体がアットホームな雰囲気に包まれていた。

二人のキーボードへのアプローチは対照的だ。初めて購入したシンセサイザーがROLAND SH-101という浅倉は当時、シンセサイザーとコンピューターを組み合わせると複数のパートでのアンサンブルが演奏できて、しかも自分の脳で鳴っている音が表現できることに魅力を感じ、シンセサイザーの道しかないと思ったそうだ。その後、急激な技術の進歩を目の当たりにし、シンセサイザーがアナログからデジタルに移り、MIDI規格で各社の機材がつながり、そしてトータル・リコールが可能になったことで、さらに面白さを感じたという。

最近は分厚い音を一個作って、ステップ・シーケンサーで入れたフレーズを再生しながらツマミを回すことで音色がどんどん変わっていく音の世界が好きだと、実演しながら語った。

一方、もともと家族がピアノをやっていた影響でキーボードを始めたというkiyoは、音楽はバンドでやることが当たり前だと思い、一人で音楽を作るという概念がなかったそうだ。バンドの中での音作りに関しては特にギターに負けない様にエフェクトをドライの状態にして定位を真ん中にし、オクターブを複数重ねてギター・ソロに挑んでいるという。またライブ会場ごとに違う鳴り方を考慮してリハーサルの段階でその場で音作りを行なう。そのため各会場ごとの音色データをアーカイブしているこだわりは、浅倉が語るように、普段から細やかな配慮や気遣いができるkiyoならではだろう。

そして、アナログの良さを分からないままデジタルシンセサイザーを使っていたため、古いビンテージ・シンセサイザーの音を再現すること、そして木製のオルガンは特に興味があるとも語った。

かっこいい演奏の仕方についてについての質問に対し、無理してパフォーマンスをするより、音楽に身を任せていたら自然と体が動いていたという方がよいのでは、とアドバイスする浅倉。オルガンだとグリッサンドがオススメですねと、kiyoはレスリー・スピーカーを最高速に回転させながら実演し、会場を沸かした。

 

Hello, Wendy!

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バッファロー・ドーターの大野由美子を中心に、AZUMA HITOMI、Neat’s、マイカ・ルブテで結成されたシンセサイザー・カルテット。普段はアナログ・シンセサイザー中心でセットを組む彼女たちだが、今回は各メーカーの最新機種中心で構成されていた。リズム以外はすべてリアルタイム演奏でハーモニーが紡ぎ出される。

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▲大野由美子
(使用機材:MOOG Minimoog Voyager、 ROLAND JD-Xi、KORG Volca Beats)

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▲AZUMA HITOMI
(使用機材: KORG ARP Odyssey、ROLAND TR-606)

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▲Neat’s
(使用機材: YAMAHA reface CS)

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▲Maika Leboutet
(使用機材: ROLAND JD-XA)

 

戸田宏武

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モジュラー・シンセサイザーに囲まれたまるで実験室のようなセットの中、疾走感のあるビートに複雑なサウンドが絡み合った独自の世界観を作り上げていた。

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浮遊感のあるボーカルと対照的に、フロントにセッティングされたモジュラー・シンセからは、時折激しいノイズが放たれる。シンセサイザーという楽器の奥深さや可能性が感じられるステージを見せてくれた。

 

minus(-)

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元SOFT BALLETの藤井麻輝、森岡賢によるユニット、minus(−)。演奏が始まると同時に観客は立ち上がり、彼らの長年で培われた経験と卓越した技術から生まれるその強いサウンドが会場を埋め尽くす。

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レンジが広く迫力のあるサウンドに、自然と体が揺さぶられる。美しいメロディと緻密なサウンド・プログラムにサポートの生ドラムが重なり、観る者を圧倒していた。

 

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キーボード・マガジンの連載コラムにも連動した内容で、キーボーディストという視点から、独自の打ち込みテクニックを披露。リアルな生演奏に近づかせるために施すテクニックをビフォー・アフターで紹介することで、楽曲内のパートの存在感の違いが確認でき、会場の人たちもうなずいていた。最後はJanne Da Arcのyouとの共作で、解説に使用した楽曲「キライ」をベースに、自らのキーボード・プレイでステージを締めた。

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浅倉大介

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トリを務めるのは、シンセサイザー・マエストロ浅倉大介。オープニングのトークショーで、シンセサイザーにはセオリーがなく、技術が進化する度に音楽のジャンルも変わり、新しい時代の音ができるところが一番楽しいと語っていたとおり、各メーカーの最新機種に囲まれたセットとなった。それらを縦横無尽に操作し、躍動感あふれるパフォーマンスで、リアルタイムでしか鳴らせないサウンドを披露する。

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終盤にはkiyoもパフォーマンスに参加し、キーボード・バトルを展開。会場を大いに盛り上げ、フェスティバルの幕を閉じた。

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出展ブース

会場には各メーカーの最新機種を試すことができる展示ブースが設けられ、こちらも常時多くの人だかりができ盛り上がった。

また、YAMAHA、ROLAND、KORGブースにおいては、Hello,Wendy!のメンバーが今回のパフォーマンスで使用したシンセサイザーについてのトークショーも開催された。

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YAMAHA

先日発売され話題のrefaceシリーズ4機種がすべて展示された。すでに発売されているreface DXCSに加え、10月1日に発売のreface CPYCも試奏できた。

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refaceシリーズには小型スピーカーが内蔵されているが、よりリアルなサウンドを体験してもらうためにモニター・スピーカーとしてTHR10が使われていた。
THR10はギター/ベース・アンプであるがAUX INを搭載しており、ワイドなステレオ出力が特長。今回のrefaceシリーズとの組み合わせは、コンパクトさをコンセプトにした新しい提案として今後も評価されることだろう。

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refaceシリーズそれぞれの個性をいち早く体験するべく多くの人が集まっていた。

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■ YAMAHA ★ Hello,Wendy!

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YAMAHAブースに登場したのはHello, Wendy!でreface CSを演奏したNeat’s。もともとシンセサイザーのプログラムは得意ではないがreface CSは直感的でとてもわかりやすかったという。特にPOLYからMONO、そしてポルタメントのON/OFFとピッチの変化の速さを1つのスライダーでできるところが気に入っている、ハイグレードな鍵盤が採用されていることもあってミニ鍵盤の演奏も問題なかったと語った。reface CS自体には作った音色は記憶できないが、iOSデバイスをUSBで本体と繋ぎ、専用アプリを使うことで音色の管理が行える。また音色のアイコンは好きな画像をカスタマイズすることができる。Neat’s自ら作ったアイコンをタップして、今回のライブで使用したプリセットを音色を切り替えて紹介していた。

 

KORG

先日発表されたばかりのLiverpoolほか、KronosARP OdysseyMOOG Sub 37などが展示されていた。多くの機種が体験でき、こちらも多くの人でにぎわった。

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なかでも人気だったのが先日発表され話題となったLiverpool。これはジョン・レノン&ポール・マッカートニーの名曲が収録されているアレンジャー・キーボードで、キーやテンポを変えたり、特定のパートをミュートしたマイナスワン演奏なども可能。大胆なユニオン・ジャックのパネル・デザインも来場者の目をひいて、試奏する人たちが絶えなかった。

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また、今年KORGが復刻させて大きな注目を集めたARP Odysseyが限定モデル含め全機種展示されていた。全モデルとも仕様は同じだが、来場者それぞれが気に入ったモデルを試奏していたようだ(下写真、左からRev.1、Rev2、通常モデルのRev.3)。

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■ KORG ★ Hello,Wendy!

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KORGブースではAZUMA HITOMIがトークゲストとして登場。今回ライブで担当したARP Odysseyについて語った。アナログ・シンセサイザーに造詣の深いAZUMAだが、この復刻版のOdysseyについては、特にその“音”に魅力を感じたそう。また、当初Rev.3デザイン・モデルのARP Odysseyを所有していたが、どうしてもホワイト・パネルのRev.1が欲しくなり入手したとのこと。同じ仕様でもデザインが違うと見えてくる風景が違うと言う。プリセットが保存できないので、ライブでの瞬時な音の切り替えには、変更するパラメーターをあらかじめ決めるなど工夫して対応していると語り、実際ライブで使用した音作りを披露した。

 

ROLAND

この夏発売されて話題となっているアナログ/デジタル クロスオーバー・シンセサイザーJD-XAを中心にJD-XiAIRAシリーズFAシリーズ、そして先日発表されたばかりのJUNO-DSシリーズが国内初披露されて話題となった。

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JUNO-DSは、簡単操作、高音質、そして軽量設計というバンドのキーボーディストに最適なシンセサイザーだ。61鍵盤モデルと88ピアノ鍵盤モデルの2ラインナップが用意されている。ピアノ音源と鍵盤のタッチの相性もよく、今後ステージ上で多く見られる日も遠くないだろう。初心者にもお薦めのさまざまな要素のバランスが取れたライブ・キーボードだ。

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またブースには小室哲哉、浅倉大介、松武秀樹、土橋安騎夫のサイン入りのJD-XAが展示されていた。

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■ ROLAND ★ Hello,Wendy!

ROLANDブースにはHello,Wendy!からマイカ・ルブテが登場。Hello,Wendy!ではポリフォニック・パートを担当している彼女が今回使用したJD-XAについての魅力を語った。Hello, Wendy!は4人各々がシンセサイザーで音を重ねていくと、帯域がぶつかってしまい、まとまらないサウンドになりがちだという。そんなときもJD-XAにはハイパス・フィルターが独立して分かりやすい場所にレイアウトされているので、演奏中に曲にあわせて低域をコントロールすることができて便利だったそう。普段ビンテージ・シンセサイザーを使用しているがJD-XAのような新しいシンセサイザーもとても魅力的だと語った。

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Wurly’s!

ここ最近世界的注目されているモジュラー・シンセサイザーを中心に展示されていた。

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手軽に入手しやすいユーロ・ラック規格のモジュラー・シンセサイザーが日本でも人気が高い。シンセサイザーの音作りの知識が必要であるが、習得すると自分で 好きなモジュールを集めてケーブルでパッチングするたびに新しい発見があり、行動に対してのレスポンスが早いところがハードウェアならでは。使えば使うほ ど自分だけのオリジナル楽器として個性が出てくるところが魅力的だ。

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スタッフによる実演に興味をもって立ち止まる人たちも多くみられ、熱心に質問している人もいた。

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UVI

過去のシンセサイザーをアーカイブ化したユニークなソフト・シンセサイザーでしられるUVIブースでは現行ラインナップの音源をすべて体験が出来るように展示されていた。

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今回イベントでは、90年代を代表するデジタル・シンセ4機種(YAMAHA SY77、KORG M1、ENSONIQ VFX、ROLAND D50)を再現したソフトウェア・シンセサイザーUVI Digital Synsationsが来場者全員にプレゼントされた。また、先着50名にUVIのピアノ音源Grand Piano Model Dもプレゼントされたこともあり、開場前から長い列ができ、開場後すぐに配布が完了した。

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リットーミュージックのブースではフェス限定キーボード・マガジンTシャツ、アーティスト・グッズ、キーボード・マガジン、教則本などを販売。多くのグッズが完売した。

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15:00〜20:35という5時間半にもわたる本イベントはご覧のようにメイン会場、出展ブースともに多いに盛り上がりをみせ、無事終了。キーボードの楽しさ、魅力を存分に感じられたイベントとなった。

 

TUNECORE JAPAN