これは何のジャンルかと聞かれたら、“Chicago Poodleというジャンルです”、と答えられる楽曲ができた/花沢耕太(Chicago Poodle)

インタビュー by キーボード・マガジン編集部 2014年10月8日

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ピアノ・ボーカルの花沢耕太を中心とする“ピアノ名曲工房バンド”、Chicago Poodleが、4枚目のフル・アルバム『Life is Beautiful』をリリースした。タイトルどおり“人生”をテーマにした本作は、巧みなコード進行で彩られたポップ・ソングから、憂いを帯びたバラード・ナンバー、シンセ・サウンドを大々的に導入したアップ・チューンで、さまざまな“人生”を聴かせてくれる1枚。本作のすべての楽曲を手掛ける花沢に、アルバムの制作について話を聞いた。

メロディ・ラインにこそ
一番自分自身が表れる

ーーーーニュー・アルバム『Life is Beautiful』のコンセプトを教えてください。

花沢 2月に「シナリオのないライフ」というシングルを出しまして、それをきっかけに、“人生”をテーマにしたアルバムを作りたいと思ったんです。僕らはこれまで、もうちょっと勢いのあるものをテーマにして歌ってきたんですが、今回は自分たちの人生を見つめ直すような思いを、歌詞に反映させていきたかったんですよね。

ーーーー収録曲はマイナー調のものが多いのが、意外でした。

花沢 それは意識したところなんですよ。“Life is Beautiful”というタイトルが決まったとき、自分的にはほとんどの曲をマイナー調にしたいと思ったんですよ。よく“人生は美しい、素晴らしい”と言いますが、実際そんな人ってなかなかいませんよね。やっぱり誰もが酸いも甘いもいろいろな経験をして、初めて人生って良いものだなって思う。僕らもバンドを続ける上で思い悩んだりした経験もしているし、そういうことも含めて、今のChicago Poodleで人生を歌ってみたら、どういうアルバムになるんだろう、という思いで制作していったんです。

ーーーー曲作りは、これまでと同じように、ピアノに向かって英語風の歌詞を口ずさみながら作るスタイルで行ったのですか?

花沢 はい、そうですね。

ーーーーでは、レコーディングで使った機材は?

花沢 キーボードやシンセ系の音源は、ネイティブ・インストゥルメンツのKompleteやMassiveを使いました。ほかは、生で録ったものも多いんですよ。「Latata」は導入はシンセが入ったデジタル感の強い楽曲なんですが、間奏は生のパーカッションのアグレッシブさをフィーチャーして、ピアノも生で演奏し、情熱的なラテンっぽいフィーリングを出しています。

ーーーーレコーディングはどのように行っていったのでしょうか?

花沢 レコーディングは歌をどのように聴かせるか、ということに特化して行っていきましたね。出来上がったオケや歌詞に対して、どれだけ自分のボーカルがその曲の持っているものに近付けられるかというのが、今回のレコーディングの大きなテーマだったんです。例えば、「泣いたらええ」では、始めはすごくがなって歌っていたんですよ。だけど、1回家で聴き直したら、これだと泣けないなという感じがすごくして。これはもうちょっとそっと優しく、“泣いたらええやん”っというふうに歌い直したんです。ほかの曲でも、そういうふうに言葉の温度感を大事にしながら歌っていきましたね。

ーーーー「答エアワセ」などでは、シンセサイザーが導入されていますが?

花沢 この曲は、アレンジ的にちょっと今までのChicago Poodleとは違う感じにしたいと思って。この曲を作っていたとき、スウェーデンのDJのアヴィーチーとか、よく聴いていたんですよ。彼の曲で1番と2番の間奏がすごくカッコ良いものがあって、だけどコードは4つくらいでそんなに難しいことはしていない。そういうアヴィーチーのサウンドを取り入れられないか、ちょっと意識した、というのもありますね。

ーーーー前回のインタビュー(本誌2013年SUMMER号収録)で、サビの頭のコードをメジャー・キーの“C”か、マイナー・キーの“Am”か、どちらでもない“F”の、どのコードから始めるかが重要、と言っていましたが、今回はFから始まる楽曲が多いですね。

花沢 そうですね、「Life is Beautiful」もそうですし、「答エアワセ」もそう、「夢色キャンパス」も、「泣いたらええ」も……最後の3曲以外は全部Fですね(笑)。あまり意識はしていなかったんですが、Chicago Poodleの持ち味というのは、マイナーでもなければメジャーでもないFの響きにあると思っているんですよ。Fから始めると、次のコードはいろいろなところに行けるじゃないですか。Gにも行けるし、Cにも行けるし、Em7でも良いし、E7にも行ける。そういう意味で、Fっていうのは曲を作りやすいんです。それから、やっぱりFからE7に行ったときの切ない響きがメチャメチャ好きなんですよ。「泣いたらええ」や「答エアワセ」にもその動きが出てくるんですが、そのE7に行くために、アタマにFを入れているんです。僕はE7を使うことが多くて、曲の起承転結の“転”のあたりに、E7を挟んでAmに行くっていうのは、なかったら気持ち悪いくらい、すべての楽曲に入れていますね。

ーーーー同じコード進行を使っても、1つ1つの楽曲にいろいろなバリエーションが生まれてくるのはなぜでしょうか?

花沢 コードも大切なんですが、やっぱりメロディ・ラインが大事だと思いますね。僕は、曲の善し悪しを決定するのに、コード進行が占める割合は30~40%ぐらいだと思うんですよ。あとの60%がメロディ。自分が好きでE7やAmを入れるんですが、それはあくまで“こうしておいたら人間の耳は切なさを感じる”という理論で、そこに乗るメロディにこそ自分自身が一番表れると思うんです。例えばそのE7のコードに16分のメロディやブラックなメロディをのせたり、あえてコード・トーンから外した9thのメロディを乗せたり。その方がやっぱり耳に残るとか、そういうのが重要なんじゃないかな、と思います。

ーーーーということは、アレンジしていく上で最初に作ったメロディも変わっていくのですか?

花沢 そうですね、やっぱり歌詞が出てきてから、変えていくことが多いです。何回も試して、このコード進行に一番合うメロディ、このコード進行とこのテンポに合うメロディは何か、追求していきます。今回の曲でも、まだまだメロディは進化できるな、というのはありますけどね。この言葉と文字数でどうするか、1曲1曲突き詰めていけば、もっともっと良くすることはできるな、とは思います。それを言い出すとキリがないんですけどね(笑)。

ーーーーコード進行で言うと、最後のサビに向かって、転調をする流れも特徴的ですよね。

花沢 多いですね。やっぱり最後のサビは劇的にしたい、というのがあって、転調以外にもいろいろなこと試したんですよ。例えば、サビのメロディを変えてみたり、コードを変えてみたり、始めにブレイクを入れてみたり。だけど、なんだかんだ言って転調の劇的さには勝てないんですよね。半音上がるだけでもゾクゾクするあの感じは、転調に勝るものはないと思います。

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作曲やフレーズ作りに
自分の中で核となるものができた

ーーーーそれでは各曲について教えてください。オープニングの「Life is Beautiful」は、手拍子と歌を中心とした導入曲になっていますね。

花沢 そうですね、アルバムが始まる前に、僕の声から始めたかったんですよ。アタマのコードはさっきも言ったようにFにして、明るい中にもちょっと泥臭い、人生の叫びみたいなものを表した1曲ですね。

ーーーーウラ打ちのビートが印象的な「Good-bye, what a wonderful world」はどのように作っていったのですか?

花沢 これは展開の読めない曲にしたかったんですよ。サビではスティーヴィー・ワンダーを意識したコーラスを聴かせたり、最後のサビではサックスやトランペットを入れジャズ・ビートにしたり。

ーーーーコーラスは、今作の随所で入っていますよね。

花沢 そうですね。ハモリもたくさん入れていますし、ウーアー・コーラスも入れていますし。これは、僕が全部オーバーダブして入れているんですよ。なので、「答エアワセ」では、サビに僕が25人くらいいたりするんです(笑)。自分のルーツとして、昔アカペラをやったりとかもしていたこともあるし、バックストリート・ボーイズや、今だったらワン・ダイレクションなどの多重コーラスのサウンドってやっぱり気持ち良いんですよね。人間の声って、バッチリハモると、ドレミでハモっていても気持ち良く聴こえるんですよ。ピアノなどの楽器でドレミを一緒に弾いても気持ち良くならないんですが、コーラスでのドレミのハモリは気持ち良い。そういうコーラス・ワークってすごく面白いと思って、一番気持ち良いコーラス探すために、1曲1曲スタジオで試行錯誤していますね。

ーーーーアニメ『名探偵コナン』のエンディング曲にもなった「君の笑顔が何よりも好きだった」は、どのようなことを意識ましたか?

花沢 意識したのは“和”で、ヨナヌキ(ペンタトニック)調のメロディを、この曲では特に意識しましたね。ただ、サウンドはディスコ調のR&Bだったりするんですよ。ヨナヌキ音階って僕大好きで、今までのChicago Poodleの曲でも結構ペンタトニックの曲ってあるんですが、それにディスコなビートを組み合わせた1曲ですね。

ーーーー「LaTaTa」のシンセ・リフもペンタトニックを感じます。

花沢 そうですね。この曲は制作の最後の方にできたんですよ。打ち込みの曲なんですが、ただの打ち込みじゃ面白くないから、生のパーカッションも入れて、もっともっと華やかにしようと作っていきました。コード進行的には同じくシンセが入っている「答エアワセ」と似ているんですよ。「LaTaTa」も「答エアワセ」も、最初はF-E7-Amなんですよね。なので、対比させるためにアレンジでちょっと違うことをしたいなというのはありましたね。

ーーーー花沢さんが一番印象深い曲はどれになりますか?

花沢 「Good-bye, what a wonderful world」は、僕らにしか出せない音、という感じがして気に入っていますね。展開もそうですし、ウラ打ちのレゲエというか、スティングの「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」みたいなテイストを入れつつも、最後はテンポも速くなって、ジャズ・ビートになって、トランペットが出てくる。ジャズなのかポップスなのか、と聞かれたら、これはChicago Poodleというジャンルです、と答えられる楽曲になったんじゃないかなと思います。

ーーーーアルバムが出来上がってみて、どんな感想を持ちましたか?

花沢 自分の中で、核ができたような感じがしますね。やっぱり何が大事かというと、メロディ・ラインと楽器のフレージング。耳に残すためには、どういうフレーズが良いのか、この1枚でより見えた気がします。Chicago Poodleにとっては、人生を振り返る1枚になっているんですが、個人的には作曲の方法を突き詰めることができた。これからもどんどんコードのバリエーションも増やして、耳に残るようなフレーズを考え出していかなくてはならないな、と思わせてくれた、自信につながる1枚ですね。

ーーーー今後やりたいことは?

花沢 ゲームなんかをやっていると、“僕だったらこんなBGMを作るなあ”って思うことがあるんですよ。だから個人的に、一度そういう仕事をやってみたいと思います。ゲームだけではなく、映画音楽にも挑戦したい。まだそういう予定はないんですが、インストの曲を作る仕事があったら、ぜひやってみたいと思っています。

 

『Life is Beautiful』

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01. Life is Beautiful
02. 答エアワセ
03. 夢色キャンパス
04. 泣いたらええ
05. 君の笑顔がなによりも好きだった
06. Good-bye, what a wonderful world
07. LaTaTa
08. 空遠く
09. with
10. シナリオのないライフ
11. just my special lady

 

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