真鍋吉明ソロ・アルバム『ルチル』全曲解説&使用ギター・プレゼント

マガジン連動 by 編集部 2012年11月13日

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世代を超えたファンを持つザ・ピロウズのギタリスト、真鍋吉明が初のソロ・アルバム『ルチル』を発表した。昨年話題となったギター・コンピレーション・アルバム『TIME MACHINE』に参加した経験がきっかけとなり生み出されたのがこの作品だ。発売中のギター・マガジン12月号ではアルバムのコンセプトについて詳しく聞いているが、ここではそれぞれの楽曲について詳しく解説してもらった。

真鍋吉明による『ルチル』全曲解説 | PRESENT FOR YOU”Sago Rutile”

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阿部樹(秋田県)

『ルチル』

  1. 1211110-rutile.jpgGrace to You
  2. Rutile
  3. Daybreaker
  4. News for You
  5. The Child of Wheat
  6. All Creation (Let’s Go Leone!)
  7. Gemini
  8. Sweet Little Deal
  9. Beautiful Struggle
  10. Where Do You Go
  11. Beautiful Struggle(Karaoke) 

Masterd Records LNCM-1010

真鍋吉明による『ルチル』全曲解説

●1曲ごとに解説をお願いします。「Grace To You」はシューゲイザー的な音作りですね。

○そうですね。ビッグなサウンドなんです。自分の葬式に流してほしいランキングNo.1のバッハの「G線上のアリア」って曲がありまして、いつかはあれをモチーフにロックの曲を作ってみたいと思ってました。それが今回実現しました。デモテープの段階ではもっとループ寄りな、ダンス寄りなアプローチだったんですけど、プロデューサーから、生のバイオリンを入れたほうが絶対楽曲が強くなるという意見をもらって、伊藤彩さんという方に入れていただきました。そしたら、思い描いていた以上にサウンド感が自分の狙ったものになったとても幸運な曲です。

●「Rutile」、これはコード感が不思議な曲ですね。

○これは一番自分では自信がなかった。自分では大好きだったんですけど、マイナーでもメジャーでもない不思議な調性の曲で、不思議な感じがとても好きなんですけど、一般受けはしないだろうなと。でも、アルバムの中の隠れた名曲になるかもなみたいな感じでプレゼンしたら、スタッフの方にはとても気に入っていただいて。これはイイ!と。この曲はとてもシンプルなので、バッキングもソロも1stテイクを超えられなかった。ソロも最初に弾いたそのままが収められてます。自分の中では半信半疑だったんですけど、逆に認めていただいたうれしかったのでアルバム・タイトルにもなったという。自分の中では特別な曲だったので、理解してもらってとてもうれしかった。”ルチル”はルチル・クォーツから来てます。自分が身につけてるものですけど、いろんな意味でトータルでパワーを与えてくれるみたいな感じもあったので、今回アルバム・タイトルに相応しいかなと思いました。今回、(サゴ ニュー マテリアル ギターズで)ルチルというギターを作って、一見白なんですけど、ルチル・クォーツっぽい加工がしてあります。

●これはギターとベースの絡みが不思議なハーモニーを作ってますよね。

○そう、どっちやねん?って突っ込まれるような。調性を行ったり来たりしてる曲なんですけど。常に転調転調を繰り返してる。

●サビは渾身のチョーキングで弾いてますね。

○あれは自分のスタイルですね。ピロウズでもよく使ってる。チョーキングで半音なり一音なり弾きながら、不安定ながらもロックのフィールを出すっていう、自分が得意としてるスタイルなんで。派手なファズを踏みながらあれを弾くという明確なイメージがありました。

●あそこですっきりしますよね。

○そうなんです。モヤモヤしたものが。そこまでみんなに付き合ってもらわないと、ただモヤモヤして終わっちゃうんで。最後まで聴いて下さい。

●「Day Breaker」はちょっとブルージィな感じのリフで始まります。開放弦絡みのブルースっぽい感じがいいですね。

○ギター・インストでブルージィな曲を1曲っていうのはアリなパターンだと思うんですけど、この時代に生きてる自分としてはジェフ・ベックも好きだけどBECKも好きだよと(笑)。アーシーなフォーク・サウンドもBECKにかかればあそこまでおもしろくできるんだという考え方が自分のサウンドメイクにもありまして、常套句的なブルースをやるよりは、BECK的なアプローチでリフを料理してみようみたいな感じで。ブルージィな進行なんだけど、あまりブルースを感じさせない、自分なりのおもしろいアプローチができました。結局、リフだけで終わらずに、展開をもう一個付けました。まさにBECKを意識したアレンジでしたね。アコギをループさせながらおもしろいアプローチをできないかと。リフはずっと弾いてるわけではなくてループさせてます。ドラムもループしてますし。アプローチとしてはスタンダードなブルース・スタイルではまったくない。

●サビがいきなりキャッチーになりますね。

○そうなんですよ(笑)。たぶんブルースだけで持ってけるっていうよりは、キャッチーな展開があったほうがおもしろいんじゃないかなって。あそこでブルース・リックでソロをとるというアプローチも当然ありますけど、それをあえてしないほうが何回聴いてもおもしろいんじゃないかなと。

●全体のテンポは変わってないと思うんですが、サビであのフレーズが出てくるとスピードアップしたように感じるんです。瞬発力がありますね。

○そこでまたファズを踏んでますしね(笑)。自分の入魂がそこから始まる。

●「News For You」はアコギの音がおもしろいですね。これはシミュレーターですか?

○アルバム用に楽曲を作っている時に、なんか変わったアプローチはないかなと思って、行きつけの楽器店に行きまして、何かおもしろいものはないかと探したんです。そこでカポを買いました(笑)。あんまり自分ではカポというアプローチは使わなかったんです。カポを使ったら、変わった曲ができるかと思って、家に帰ってきて5フレットにあれを付けたら瞬間的にできた曲がこれ。あのストロークをしてみたら、おもしろい響きだなと思って、アコギでまずそれをレコーディングして、次にLine6のVARIAXでアコギのシミュレーションを混ぜました。ギブソンとかマーティンとかいろんなアコギの音が出るんですよ。カポを使ったのは、自分の中の引き出しからジョニー・マーを引っ張ってきて、あのスタイルをやってみました。5フレットでCのコードを押さえた時に、すでにあのイントロができあがった。あとでジョニー・マー的にメロディを付けていきました。

●VARIAXのシミュレーションの音は何にしたんですか?

○12弦の音です。6弦のアコギの5カポの音とオープンの12弦でやってます。エレクトリックのネックでアコギの音が出ますんで、プレイ的にはアコギでは不可能な展開ができるのは重宝しますね。今回、アコギの音はかなりVARIAXで出してます。「Day Breaker」もアコギとVARIAXを2本ダビングしてブレンドしてます。マイキングで録ってないんで、不思議な感じになるんですね。それをEleven Rackを通して、アンプのヘッドを抜かして、マイキングだけでセレクトしてやってますんで、今まで録ったアコギと明らかに違うんですけど、馴染みがとてもいい感じですね。

●「The Child Of Wheat」は、一個のモチーフを延々ループして、コードを変えながら壮大な展開にしていますね。

○この曲はジェーンズ・アディクションみたいなオルタナ臭のするリフを展開させるアプローチをしてみようかなと思いました。どこまでこれで引っ張れるか?みたいな(笑)。モチーフを展開させていく。これはけっこう人力で弾いてますね。カッチリ弾くと逆におもしろくなかったので、手で弾く生々しさというか、延々リフを弾くおもしろさがある曲です。弾いてても楽しいなと。

●最後にギター・ソロが出てきますね。これに限らず、ギター・ソロはほとんどの曲でエンディングに集中してます。

○マイケル・シェンカーの影響です(笑)。マイケル・シェンカーはいつもフェードアウト間際にとてもカッコいいことしてるんですよ。もっと聴きたいなと思った頃に消えてしまうんです。それが心に残ってるので、自分作品でもいい感じが出るとあえてフェーダーを絞ってしまう(笑)。これは私のソロなんで、好きなようにやりたかったんですけど、スタッフに聴かせたら短すぎると言われたので、もうちょっと長くしました。

●「All Creation」はレゲエの曲です。

○これはスタッフに、せっかくだからレゲエの曲を入れたほうがいいんじゃないですかと言われたので入れました。得意中の得意なので。すぐ曲を書いて、さあどんな形にしようかなと思った時に、本当にレゲエの曲にしてしまうのもおもしろくないので、クラッシュ的にちょっとパンキッシュなアプローチをしてみようと思いました。ギター・ソロは、アーネスト・ラングリン的なちょっとジャジィなものも交えながら、自分のスタイルでソロを歌い切れたらいいなと思ってできた曲です。一番苦労しないでできたかな。

●「Gemini」は不安感のあるコード進行ですね。

○これもループを繰り返しながら、音楽的に展開するような曲です。これこそ徹頭徹尾同じループが入ってる中で、どれだけ楽曲を発展させられるのかっていうチャレンジでもあった。とにかくこの曲はトレモロ奏法がキーワードになってます。腕に万歩計みたいなのを付けたら、相当な回数になってるはずだというぐらい(笑)。ソロもリフもメロディもほとんどトレモロで攻めてみようというアプローチです。アコギとエレキのループをバックに自分がどんどんいろんなメロディを乗せて、どこまで広げられるのかっていう作曲方法で作った曲ですね。

●やはりひとつのリフをモチーフにしています。

○アコギを持ってサウンドチェックをしてる時に思いついたリフです。自分の中では映画音楽みたいな壮大なものを作りたかった。ちっちゃなリフからそこまで広げられるか挑戦してみようと。その代わり、頭から鳴ってるものは最後まで鳴ってるという。ある意味、自分の中で”マニュエル・ゲッチング魂”が出た作品かもしれない(笑)。一個のリフで押し通して、それにいろんな服を着せて不思議な人物像を作った感じですかね。あとは、自分のトレモロがどれだけ続くのかという。高速トレモロは私のスタイルなので、リフからソロまで全部トレモロで統一したらおもしろいんじゃないかと。自分でおもしろがって作ったところもあるんですけどね。いろんなレイヤーをしてみて。この壮大な感じがどこまでおもしろくできるんだろと。

●「Sweet Little Deal」はバラードです。

○これも最初から用意してた曲だったんですけど、私のミック・ロンソン魂ですかね(笑)。ちょうどピロウズのアルバムを作ってる時にオールド・スタイルのロックンロールのアプローチがあって、グラム・ロックのギタリストを研究してみようかなと思って聴いてみたところ、ミック・ロンソンはなんていい音してなんてカッコいいプレイをするんだと再発見しました。ギターのグラム的なカッコよさ、とても色気のあるギターのスタイルっていうものが自分の中でブームが来まして、ミック・ロンソンが書いたら、どんな曲になるのかを仮想で考えました。さっきのレゲエの曲は、自分がもしクラッシュに入ったら、どんな曲になるのか考えながら作りました。これはミック・ロンソンが自分のアルバムで弾いたら、どんなプレイになるんだろうとワクワクするような感じで、ソロもミック・ロンソン的なアプローチをしてみました。バラードといいつつも、ロックの匂いのする楽曲になればいいなと。

●ギターの音もかなり歪んでますね。

○ちょっと難しかったんですよね。メロディをどう持ってけばいいのかなと。この曲こそヘタするとスーパーのBGMに近いアプローチになりがちだったので、いかにロックの匂いを出すのかにこだわってこの形に落ち着いたんだと思います。ロック的な匂いを意図して付けたような気がしますね。だからソロでワウを踏んだりした。ただスウィートな感じで終わらない曲にしたかったな。ワウもEleven Rackです。エクスプレッション・ペダルをつないでVOXを選びました。

●「Beautiful Struggle」は『TIME MACHINE』に収録されていたもののオリジナル・バージョンですか?

○私がミックスしたものということですね。自分はこれを表現したかったんだよという原型のバージョンとして出しました。ギターも入れ直してます。オムニバスだとちょっと遠慮があったと思うんです。きれいな服を着てパーティに行った、みたいな(笑)。こっちは普段着です。ファズも思いっきり出してますよ。 この曲だけは、オレンジのアンプを鳴らして録ってます。

●「Where Do You Go」はまさにバラードですね。

○バラードは自分の中では禁じ手だったんですけど(笑)。アルバムに何かうっとりするような要素が欲しいっていうリクエストをいただきまして、自分の中ではのけぞってギター・バラードを弾くのは想像ができなかったんですね。ただ、この中で足すとしたらギター・バラードしかないなと思ったので。それなら作ってみようかと。いざ作ってみたんですけど、難しいじゃないですか。メロディがよくないと成り立たない。デモ段階では自分でつたないピアノを弾いていたんですが、アプローチを変えて、青柳誠さんにピアノを弾いてもらいました。展開もピアノのパートを多くして、楽曲を包み込んでいただいて、素晴らしい出来になったなと。これも、自分の引き出しをうまく開けてもらった感じです。恥ずかしくてできなかったこともいざやってみると、本当に弾いてて誇りに思える曲になりました。青柳さんのプレイも素晴らしかったですし。アルバム自体がいろんなレイヤーをしてきた作品だったので、この曲だけはどの場面でもギターが1本しか出てないんですよね。満足できる形になりましたね。

●これはいわゆる泣きのギターですが。

○そうですね。(泣きのギターは)どこか自分の中で照れくさい気持ちがあったんです。ロック・バンドのギタリストとして囲いを設けてたっていうか、凝り固まってたところもあります。そのくせギター・バラードはよく聴いてたんですよね。ゲイリー・ムーアも好きですし、フランク・マリノも好きだし。でも、自分でアプローチしようという気持ちはなかったにもかかわらず、ギタリストとして弾いてて気持ちいいもんだなと。感情の赴くままに弾いて、普段は絶対に行かない20フレットあたりをチョーキングするなんてことはないので、新鮮だったですね。

●「Beautiful Struggle」にはカラオケ・バージョンが収められてます。このわけは?

○ギター・キッズ向けに楽しめる要素も入れました。バックトラックに合わせて弾いて欲しかったんです。もしくはこれに歌を乗せたっていいしラップを乗せたっていいし、そういうのを聴かせてほしいっていう気持ちです。なんでもいいから自分の思うものを乗せて、いつか僕に聴かせてよって感じですね。YouTubeに乗っけてもいいし。あとは、バックトラックをこんなふうに作ってるんだよっていうネタばらしにもなる。自分自身がバックトラックを聴いたらおもしろいと思うので。

PRESENT FOR YOU
Sago Rutile

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大阪のサゴ ニュー マテリアル ギターズがカスタムメイドしたルチル。ジャガーをひと回り小さくしたアルダーのボディに、サゴ独自のサーモウッド処理されたメイプル・ネックをジョイント。コントロールは1マスター・ボリューム、1マスター・トーンといった仕様だ。アルバム『ルチル』でメイン・ギターの1本として使用された。

真鍋本人が実際に使用したこのギターをプレゼントします。下記のフォームに必要事項を記入して応募して下さい。または、ギター・マガジン12月号の付属ハガキからも応募できます。応募締め切りは2012年12月11日(火)。厳正なる抽選のうえ当選者を決定します。当選者は2013年1月13日に本サイトにて発表します。また、ギター・マガジン2月号誌上でも発表します。 

ギター・プレゼントに応募する!
※募集は終了しました。

 

4910029331220-thumb350x.jpegギター・マガジン2012年12月号

表紙巻頭特集は横山健。真鍋吉明のインタビューとギター・コレクションも紹介している。

 

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