Char 3 nights ライブ・レポート

ライブ/イベントレポート by 野口広之(ギター・マガジン編集長) 撮影:山内聡美 2014年2月10日

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終始、凛とした緊張感が張り詰めた最高のステージだった。これまでも、ある特別な瞬間に特別な出会いによってのみ生まれた“歴史的ライブ”はあったに違いないが、今夜がまさにそれだった。旧友ロバート・ブリルと佐藤準を迎えたChar 3 nightsの2日目。夜の六本木は、大きな感動に包まれた。

ロバート・ブリル、佐藤準ら旧友が集結。初期3作をスリリングに再現した歴史的なステージ。

2013年12月28日@EX THEATER ROPPONGI

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ロバート・ブリルと言えば、昔からのファンには釈迦に説法だが、Charとはアマチュア時代からの付き合いで、1stアルバム『Char』、2nd『Have A Wine』、3rd『Thrill』のグルーヴを叩き出した伝説のドラマーである。日本に住んでいた70年代には、竹内まりや、浜田省吾、庄野真代など多数のアーティストのレコーディングに参加。その後、ロサンゼルスに渡ってプレイを続け、若き日の今剛が渡米して作った1stアルバム『STUDIO CAT』(80年)にも全面的に参加している。80年代には映画『トップ・ガン』のテーマ「愛は吐息のように」を世界的に大ヒットさせたグループ“ベルリン”のメンバーだったこともある。

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76年のCharのデビュー・アルバムは、ロバートと同様にアマチュア時代からたびたびプレイしていたジョージ・マスティッチ(b)と佐藤準(k)、そして渡米して探し当てたジェリー・マーゴシアン(k)によってレコーディングされている。“一枚目のCharはバンド名。ロバートとジョージのリズム・セクションじゃなかったら「Smoky」はああはならなかった”とたびたび語るように、ここにはCharの思い描くバンド・サウンドがあった。それは、日本になかった東京発の日米混成グルーヴ。デビュー後、このオリジナル・メンバーでライブを行なったのは、新宿、下北沢などでわずか1ヵ月だけ。「気絶するほど悩ましい」が大ヒットして全国区になる前のことだった。

あれから、30年以上の月日がたち、アーティストとして成熟していく中で、ある意味、原点である当時のグルーヴを再現したいという思いはCharの心にもあったのかもしれない。そしてその日が実際にやって来たのである。ジョージとジェリーはすでに故人となったが、近年の最重要パートナーである澤田浩史(b)が加わり、そして3rdアルバム『Thrill』の片面をともにレコーディングしたゴダイゴのミッキー吉野(k)をゲストとして迎えるという、現在考え得る最強の布陣が集結。港区に新たに誕生した都市型ライブ空間、EX THEATER ROPPONGIにて、2013年を締めくくるChar 3 nightsの幕が開いたのだった。

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Charは白い上下のスーツで静かに登場した。ギターは白の67年製マスタング。「Shinin’ You、Shinin’ Day」が始まった途端、大きな歓声が上がる。近年聴き慣れた演奏よりテンポがゆっくり目でどっしりとしたグルーヴ。これがロバートか! そして「かげろう」。ロバートとやるのだから、セットリストは当然初期の曲が中心になるのは予想していたが、どうやら1stアルバムの曲順通りに進行していくようだ。Charの右うしろには、いつものマッチレスではなくハイワットのヘッドとキャビネットが置かれていた。その横にもう一台キャビネットがあり、上にフェンダーのスプリング・リバーブが載っている。いつもより歪みを押さえた粒立ちのはっきりした音が清々しい。曲順通りなら次は「IT’S UP TO YOU」のはずだが、これはジェリーがリード・ボーカルだったためかカットされ、「視線」、「NAVY BLUE」と淡々と続いていく。そしていよいよ「SMOKY」。本家ロバートの“スパッパッパッ!”が鮮やかに決まり、会場からは溜息が漏れた。ここからラストの「朝」まで曲順通り。MCはほとんどなく、演奏に集中して、ピシャッと締めくくった。何か清々しい緊張感が持続している。これから何が出てくるのだろうか。

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小休止を挟んで第二部がスタート。「過ぎゆく時に」。『have a wine』の1曲目だ。ギターは、ボディにラインのあるフロントにハムバッキングを載せたレプリカのマスタングに持ち替えていた。第一部同様、ひたすら演奏に集中するChar。会場は固唾を呑んで見守る。同アルバムから大半の曲が演奏され、「逆光線」のうれしいオマケも付いた。ここでは楽曲のエピソードなど若干のMCも挟まれる。終盤ではストラト(カリズマ)に持ち替えて、CM用にCharがアレンジした「My Favorite Things」、そしてレア・トラックの「The Leading of The Leaving」というエモーショナルなインストも披露された。

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そして再びの小休止。このあとはアンコールということらしい。再びライン入りのマスタングを持ってCharがステージに現われた。結論から書くと、以後は『Thrill』の完全再現だった。レコードとまったく同じ音の「You Got The Music」。モジュレーションをたっぷりかけた「闘牛士」。そして、近年のライブで突如セットリスト入りした「波」……。すべてが完璧だった。
3枚目までのCharは、スティーヴィー・ワンダーやアイズレー・ブラザーズなどの黒人音楽やスティーリー・ダンなどのAORから強い影響を受けていた時期である。16ビート。洗練されたスケールの大きなアレンジ。そこにキーボードは欠かすことはできず、楽曲の構成もアルバムを重ねるごとに緻密かつキメの多いものになっていった。JL&C期のようにメンバー各人が火花を散らすプレイが売りというのではなく、歌を中心に据えた高度なバンドのアンサンブルこそが“スリル”だったのだ。それを30年以上たった今やろうとした時、ぬるい演奏をしたのでは話にならない。おそらくCharの頭にははなから“再現”などなく、“超越”しか考えなかったのではないだろうか。各メンバーもそれに応えた。ロバートの正確無比なドラム、佐藤準とミッキー吉野の超絶なキーボード。円熟など放棄した、スピード感のある完成度の高い演奏だった。おそるべき大人たち。

終盤、「表参道」でCharはゴールドトップのレス・ポールに持ち替え、次なる「Wondering Again」では残る力を振り絞って、完全燃焼のプレイを見せた。一音一音感情を込めながらほぼオリジナルどおりに弾いたギター・ソロは、間違いなくこの日のハイライトだった。

いっときたりとも目が離せないライブだった。ギタリストとしてだけでなく、シンガーとして、ソングライターとしてゼロからイチを生み出すCharというアーティストの本質を目の当たりにした。本人にも大きな達成感があったに違いない。聞くところによると、3日目の最後には男泣きしたという。この3夜を終えて、Charの中に何が芽生えたのか僕は今とても興味がある。

 


 

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