アーチ・エネミー・スペシャル・ライブ!

ライブ/イベントレポート by 編集部 2012年5月30日

去る4月、アーチ・エネミーが日本公演のラストとして急遽開催したスペシャル・ライブの模様をレポート!

先の日本公演では、アンジェラ・ゴソウ(vo)が加入して初のフル・アルバムとなった『ウェイジズ・オブ・シン』(01年)の完全再現ライブが予定されつつも、今年に入りクリストファー・アモット(g)が再脱退。横浜ブリッツ公演はソールドアウトしていたものの、同アルバムでのオリジナル・ラインナップで人気作を全篇演奏することはかなわなかった。

マイケル・アモット(g)曰く、昨年末本人から申し出があったということだったが、言われてみれば、ラウドパーク11でのインタビューでクリストファーと話をしていた時、彼は終止うつむき気味で元気がなかった。当日はあまり気にはならなかったのだけれど……インタビュー時の、あの顔にかかった影は、渡航による疲労からだけではなかったのだろう。

クリストファーの脱退を友好的に受け止めたバンドは、新たに以前ツアーで知り合ったアメリカ人ギタリスト、ニック・コードルをツアー・ミュージシャンとして起用。まだパーマネントなメンバーになるのかは未確定のようだが、ツアーにあたり行なわれたリハーサルでは上々のポテンシャルを見せてくれたようだ。

そして、マイケル、アンジェラ、ニック、シャーリー・ダンジェロ(b)、ダニエル・アーランドソン(d)という新ラインナップにて、2012年の日本ツアーが行なわれた。

今回ここでレポートするのは、渋谷AXから始まり大阪ビッグ・キャットで幕を下ろしたツアーの後日に行なわれた、スペシャル・ギグの模様。

そもそもは大阪公演ののち韓国でのフェスに出演予定だったが、そのフェスが中止(延期となる可能性も)になったために急遽滞在を延長。原宿アストロホールにて2日間、特別なライブが行なわれることになったのだ。

さあ、前振りが長くなってしまったが、早速当日(スペシャル・ギグ初日:4月19日/木)の熱狂をお伝えしよう!

フロアは開演前から多くのファンで賑わっていた。もちろんアーチ・エネミーの人気を考えれば当日の会場はかなり小さなサイズになるが、ショー開催の発表は前日、しかも両日とも平日(木曜&金曜)ということを考えれば、いかに彼らが熱狂的なファンをたくさん持っているバンドかということがわかるだろう。

またこの日のコンサートが単なる追加公演ではなく、”ファン投票でランキングした人気曲をカウントダウン方式で演奏する”という、メタル……いやポップ畑でもレアな方式が取られているところも、ファンにとっては見逃せない大きな要素になっていた。

開場時間を少し過ぎた頃、場内が暗転。そして『ウェイシズ・オブ・シン』の冒頭同様、イントロダクションからの「エネミー・ウィズイン」がスタートした。”トップ10″がカウントダウン式に演奏されるということは、本曲が人気10位ということだ。しかし、10位だろうが何位だろうが、演奏が始まってしまえば関係ない。ほんのイントロ・リフが終わったあたりで、すでにステージ前のスペースに人が転がり落ちてきている! そう、早くも熱狂レッドゾーンに突入なのである!

 

注目は何と言ってもニックだ。まだ20代の若手ということもあるのだろうか、マイケルやアンジェラが大仰にステージ・アクションをこなす中で、彼は上手で冷静にギターをあやつる。マイケルと同じブランド、ディーン製のランディVシェイプを手に、長いストレート・ヘアを前に垂らしながら、落ち着きつつも確実にバンドのクラシック曲をプレイしていく。逆光の中で長髪を揺らそのシルエットは、それこそ10数年前のクリストファーを想起させるものがある。

 

 

アンジェラの短い挨拶から「イン・ディス・シャロウ・グレイヴ」(9位)〜「フィールズ・オブ・ディゾレーション」(8位)と、ランキングは新旧のチューンになだれ込む。「イン・ディス〜」は『ライズ・オブ・ザ・タイラント』(07年)、「フィールズ〜」は1st作『ブラック・アース』(96年)からの楽曲だ。発表時期は10年以上違うがどちらのサウンドも真新しく、「フィールズ〜」でのギター・ハーモニーもまったく違和感なく聴かせてくれた。練習熱心だったというニックの成果がしっかり発揮されたシーンだ。

投票結果7〜5位としてプレイされたのが、「ネメシス」、「ビリー・ミー・アン・エンジェル」、「デッド・アイズ・シー・ノー・フューチャー」。これらは常から聴くことのできる定番曲(……って、”人気曲を演奏”なのだから、多くの曲でそう言えるが/苦笑)だが、やはりこう連続して聴けるというのはうれしい。

ステージが小さい分アンプ間の距離は短く、またそれ以上にドラムが近い! ダニエルはこのセクションでの流れで挟むべきではないパートを入れ込んでしまったようだが(昨日はマイケルが間違えたそうbyアンジェラ)、それにしても彼のプレイは激しくも正確だ。普段はPAを通したサウンドで聴こえるドラムも、フロア前方ではかなり生々しく聴こえ、その正確ではありつつもマシン的ではないところが、このヘヴィなアンサンブルをさらに暴力的にさせる。

 

 

さぁ、カウントダウンも残り少ない。第4位となったのは、これもお馴染み「ジ・イモータル」だ。ヨハン・リーヴァ最後のスタジオ作である『バーニング・ブリッジズ』(99年)の1曲目である本曲は、ヘヴィかつ動きのあるリフ、哀切とスリルが同居するギター・ソロ、イーヴィルながらキャッチーなボーカルという、まさにこのバンドを体現したナンバーと言える。当然アンジェラは自分のものとして豪快に歌っているが、このころにはニックもステージ前面で自身をアピール。上昇フレーズもほぼ同様のラインを弾きつつ、ラスト前で独自の動きを入れるなど、早くもバンドにうまく融合している様を観せてくれた。ちなみに彼のプレイ・スタイルは、どちらかと言うと正統的&クラシックな感じ(クラシカルという意味ではない)。指をバッチリ立て、かつかなり軽やかにピッキングするその動きから、しっかりとギターを勉強したのかなという印象を受ける。ウォーレン・デ・マルティーニ的な、80sテクニカル・メタル・スタイルと言えるかも。

そう言えば、同曲が出た頃はまだマイケルはレス・ポール・タイプを弾いていたな……と、ちょっとノスタルジックな気持ちにもなったものです。

 

 

先程ちょっと順番を誤ったダニエルだが、ここで本来のリズム・フレーズをプレイ。シャーリーと合わせ、今までの流れとは違う雰囲気を作り出した。が、今日集まったファンにしてみれば、この流れなら……という感じだろう。第3位は「ブリッジ・オブ・デステニィ」。どちらかと言えばタメの効いたパートがメインとなるので、本曲が3位なのは実はちょっと意外だった!?

ここまでステージが小さい/近いという話をしたが、そのことで最も顕著に感じるのがシャーリーのデカさだ。ヘッドバンギングをしながらのベース・プレイは迫力満点。アンジェラにひけを取らず、ステージでのビジュアルの核になっているのは彼だろう。なお、以前ちょっと痩せたかなと思っていたが、ややリバウンドの嫌いアリ。

 

 

「ブリッジ〜」のエンディング・ギターが叙情的なハーモニーを紡ぎ、そのメロディに合わせ、オーディエンスも大きく拳を振り上げる。まるでコンサート自体を締めくくるかのような雰囲気だが、まだあと2曲、ランキングは残っている。そしてそのメロディが終わった瞬間、今度はサイレン音がフロアを包む。これは間違えなく「ブラッド・オン・ユア・ハンズ」(『ライズ・オブ・ザ・タイラント』/07年)だ!

比較的新しい作品からの曲だが、プリング連発のオープニング・リフ、目まぐるしいヴァース・パート、そしてその後の緩急をつけた流れ……まさに日本人好み(まぁ、世界の皆さんも好きでしょうが!)の1曲と言え、2位という位置も納得である。マイケルは言わずもがな、ニックも手首の動きを大きく使ったピッキングで、リフからソロまで正確にこなす。相変わらず表情の変化は少ないが、アンプから聴こえるサウンドは、もうすでにアーチ・エネミーそのものだ!

 

 

ついに、1曲を残すのみ。たぶん、多くの人は”この曲だろう”と自分の推しナンバーを想像していたに違いない。まだまだ”TOP10候補”の曲は残っているから。果たしてどの曲が人気No.1の称号を得るのか……。

“悲しいけれど、これで最後。この曲が日本で一番なのね”とアンジェラに紹介され、直後ギター・イントロに導かれ始まったのは、「シルヴァーウィング」! スピード・パートからヘヴィさを誇張したリフ、メジャー調とも言えるギター・メロディなど多様なセクションで構成された本曲は、デス・メタルはもちろん、美メロ・ファンにも十分にアピールすることができる、まさにNo.1にふさわしいナンバーと言えるのでは!? もちろん”あれ、俺の思っていた曲じゃないぞ”という人も少なくなかっただろうが、イントロが1周した頃にはもうそんな予想は関係なく、フロアは大狂乱となってステージに熱波を送っていた。

演奏曲数こそ通常のフル・コンサートに比べれば少ないが、同曲後半のゆったりとしたインスト・パートあたりでは、ステージのメンバーもファンも”非常に満足”という顔でそのメロディに浸っている様子だ。なにせすべて聴きたい曲で構成されたショーなのだから、ある意味すごく贅沢。んー、満足まんぞく。

 

 

10曲の演奏を終え、コンサートは終演か……と思いつつ、とは言えもう少し聴きたい!というのが心情。早くも起こったアンコールにこたえ、こちらもまだ演奏したりないという顔でメンバーが再集結。小さいステージゆえに十分なテクニシャン・スペースはないものの、各自自ら楽器の再調整を行ない、「レヴォリューション・ビギンズ」が始まった。

スピード・チューンが多かったトップ10だけに、こういった(デス・メタルの中では)ハネたナンバーは耳に新鮮で、かつ体のノリ方も変わってくるので本日のアンコールには持ってこい。コーラスではフロント陣もステージの前方に出て、そろってジャンプ! そして続く「ウィ・ウイル・ライズ」を最後にバンドはまたステージから姿を消した。

フロアからは最後のアンコールが起こったが、ここで”これより握手会を行ないます”というアナウンスがあり、ショーはこれで終わりとなった。

“人気トップ10をカウントダウンで”という企画は、全体の構成という点では流れが一辺倒になってしまうところもあるが、おいしい曲ばかり聴けるという趣向には、コアなファンも納得&満足な一夜だったことだろう。

ほかのバンドでもこういう企画があると楽しいな……と思うが、これはアーチ・エネミーが素晴らしい曲を多数持ち、なにより継続的に人気があるというから成立したもの。誰も彼もできることではないのである。まさに、アーチ・エネミーの真価を観たステージだった。

 

 

 

アーチ・エネミー・オフィシャルHP(日本語)

レーベル・オフィシャルHP(日本語)

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