【ライブ・レポート】Jim Boggia ジム・ボジア〜無名実力派シンガー/ソングライターの日本公演

ライブ/イベントレポート by 編集部 2011年5月25日

2011年05月03日@鎌倉Cafe Goatee
去るゴールデン・ウィーク中、米フィラデルフィアから、知名度こそ低いが音楽の実力がありエンターテインメントもある、ギター、ウクレレ、ピアノによる弾き語りを軸に活動するシンガー/ソングライター、ジム・ボジアが来日公演を行なった。
場所はJR鎌倉駅からほど近くにあるCafe Goatee。同店の12周年アニバーサリー・イベントとして、ジム、そして数十名のファンによる、小規模ながら彩り豊かな祝祭となった。

名も無きストーリーテラーの魅力

ジムはパワー・ポップ系なんてくくられるのかな。その魅力は、ブルー・アイド・ソウルとも形容できる一面と、外連味なきポップ・ソングの再解釈術に大きく集約されそうだと感じた。そして何よりも、ハスキーで心のこもった、ピッチ安定感の高い歌唱は、誰しもを引きつける力を持っていると断言したい。

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▲焼酎好きというジムさん、焼酎を持って「カンパ〜イ!」

失礼ながら彼のオリジナル作品などの予備知識をほとんど持たないまま初日公演に伺った私は、その最大の影響源というビートルズ曲(この日は「レディ・マドンナ」)を始めとするカバー・センスにまず心奪われた。

流麗なフィンガリングを見せたディランの「北国からの少女」。今夏のフジロックへの来日も決まっているフェイセズの「ウー・ラ・ラ」、思えばジムのsusコード使い方のうまさはロン・ウッド的だし、その歌唱の向こうにロッド・スチュワートまで見えてきた。聴かせもので言えば、ハーモニックスをちりばめた「青い影」も見事だった。

さらに絶品なウクレレ・アレンジを施したブルース・スプリングスティーン初期の傑作「サンダーロード」から「オーバー・ザ・レインボウ」へのメドレー。そもそもストーリー性がしっかりした「サンダーロード」は、ジムが語る物語を前に誰もが息を飲み、そして確実に心をふるふると動かされながら見入る他なかった。

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他方オリジナル曲の充実ぶりにも、こういった偉大なるポップ・ソングに育まれたあとがしっかりとうかがえた。特にビートルズ・コードをふんだんにちりばめたクレバーかつジェントルなコード・プログレッションは、その最大の魅力。

プレイング・スタイルも多彩で、フラット・ピックを用いたファンキーなカッティングから達人的なフィンガースタイル(時にはクラシカルなフォー・フィンガーも!)まで、伴奏楽器としてのみならず、インストゥルメンツ・ソリストとしても一流であるのがよくわかった。

小規模ライブのススメ

YouTubeで彼の名前をたたけばいくつかオリジナル曲も味わえるが、中でも魅了されるのは1stアルバム『Fidelity Is the Enemy』(2001年)に収録される、この日もハイライト的に演奏された「Several Thousand」や「Black and Blue」あたり。

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前者は、数は少ないながら動きのあるコードからグッド・メロディを紡ぎ出す名品で、集まったコアなファンとともに大合唱。後者も強いメロディを持ったバラードで、ピックを持ってのストロークからピックを握り込んでの繊細なフィンガー・アルペジオまで披露、こういったピアニシモをしっかりコントロールできるダイナミクス感覚にも、彼の魅力を見つけることができた。6弦をまるでナイロン弦のように温かく響かせる親指のコントロール術も絶妙だった。

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ちなみに使用ギターは、ギブソン・ニック・ルーカスのリイシュー・モデル。小ぶりで胴厚というプレイアビリティの高さ、ボリュームがしっかり出る点などをお気に入りの理由として挙げてくれた。ピックアップはK&K製でブリッジ裏に3つの素子を貼り付けるタイプ。そしてD.I.直での出力。人を感動させるのになにもハイ・コストなシステムは必要なしといったところか。

彼のような極めて質の高いアーティストが人知れず来日し、本当に耳聡いファンだけがそれを享受し、アーティストを支え、再び人知れず帰っていくという現実。私はここに何か強い歪みを感じてならない。情報は以前よりも溢れ、アンダーグラウンドにも目は届きやすくなり、つぶやきが大きな伝播を呼んでいるが、情報を受ける側の感性、もしくは目の向け方、音楽への関わり方は、以前とあまり変わらないばかりか、「現場」から遠ざかっていることのほうが多いのではないか。これはあまりにもったいないと思う。これまで私はホールにも武道館にもドームにたくさん出向いた。そこには往年の、あるいは新進のアーティストたちが華々しくステージを舞っていた。しかしこの日、キャパ数十人のカフェには、それらと変わらないレベルの、むしろそれらよりも豊かに現在の息吹を感じさせる音楽があった。しかもファースト・セットとセカンド・セットの合間なんかには、アーティストも主催者もお客さんも関係なくともにリラックスし、話までできてしまうのだ。

小さい規模ながら良質なミュージシャンを招聘し続ける今回のCafe Goateeを始め、BaffaloやThe Music Plant、TABなどの活動にも目を向けてみると、アコギ好きのミュージック・ライフはより充実するかもしれない。

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