【ライブ・レポート】デイヴ・メイスン~米南部指向を持ったもうひとりの伝説的英国人ギタリスト 78年の初来日以来,中野サンプラザのステージへ!

ライブ/イベントレポート by 編集部 2011年1月20日

[2011年01月17日@中野サンプラザ]

エリック・クラプトンよりもひと足早く米南部音楽に傾倒し、60〜70年代に輝く多くのロック名盤に足跡を残してきた英国人ギタリスト/シンガー・ソングライター、デイヴ・メイスン。
この久方ぶりの来日を前に”スワンプ・ロックの秘宝!”という宣伝文句が踊ったが、その音楽の魅力は”スワンプ”だけにとどまらない。進取の気性に富み、キャリアを通して安寧の拠りどころを持たなかった彼は、確かにアメリカ南部の音楽を大きな素養としたが、その類い希なるメロディ・センスと作編曲能力の高さで、ポップに、ファンキーに、アダルト・オリエンテッドに、はたまたゴスペルや南国音楽まで聴かせ、流行や新しいテクノロジーにも常に柔軟だった。一方、ギター・マガジン2010年6月号の最新インタビューでは、”細かいことには頓着しない”というレイドバックな気風も見せ、人間性が音楽によく表わていることを再確認させてくれた。
“(トラフィックのメンバーとして)ロックの殿堂入りアーティスト、デイヴ・メイスン!”とのアナウンスに導かれ、1993年の前回公演より実に18年ぶり、すっかり恰幅のよくなった御仁がサンプラザのステージに姿を見せた。

ボーカル志向という魅力

いきなり響き渡る、『流れるままに』(78年)に収録される名曲「 Let It Go, Let It Flow」のギター・ハーモニー。大喝采。ファンにすればお馴染みのキーの高い楽曲だが、透度の高い声が真っ直ぐと射るようにスピーカーから放たれる。ジミヘンやMJ、ストーンズとセッションしてきた”Living Legend”の、想像していたよりも俄然強い現役感が嬉しいではないか。

終演後に今回帯同した5人のバンド・メンバーについて調べてみてビックリ。ギタリストは、メイスンの78年ツアー以降をバックアップ、もともとはクライテリア・スタジオの箱付きセッションマンとして、クラプトンやピーター・フランプトンなどの録音にも参加したことがあるJohnne Sambataro。ベーシストのGerald Johnsonにいたっては、かの名ライブ盤『ライヴ〜情念』(76年)でもプレイしていたという。Geraldは知る人ぞ知る名ギタリスト、レス・デューデックとも交流が深いそうで、個人的には二度ビックリ。他3名もそれぞれにキャリアあるセッション・ミュージシャンで、メイスンの最新作『26 Letters〜12notes』(2008年)でもサポートを務めている、Alvino Bennett(d)、Tony Patler(k)、Alex Drizos(g、k、perc)という面々。ちなみに、Johnneはおもにボーカル/コーラスとしてセッションに関わることが多く、メイスンやクラプトン、はたまたロジャー・マッギンやスティーヴン・スティルスらの作品ではその美声で貢献している。セットが進む中で、オリジナル・スタジオ盤に聴ける厚いハーモニー・ワークがしっかりと再現されていることに驚いた人も少なくないだろう。このバンドは”歌える”という付帯的条件をもって集められたのではと思うほど、全員が驚くほど歌に長けている。そう、メイスンの音楽の根幹はアダルト・オリエンテッドではなく、ボーカル・オリエンテッドにあるのだ。

110120-m-live-1.jpgギタリスト・デイヴ・メイスン

“最初のジャパン・ツアーは、ここ、だったんだ。34年も前さ。随分長いこと経ったけど、またここに戻ってこられて嬉しいよ”。そう第一声をあげるメイスン。セットリストを見ておわかりのとおり、最新作『26 Letters〜12notes』からの(10)(11)、ジェラルドが指揮したブルースの(9)を除けば、70年代のソロ作から選曲されたまさにベストと呼べる内容。初来日の78年公演と被る楽曲も多かろう。

そんな中、序盤に演奏されたトラフィック・ナンバー「Forty Thousand Headmen」に一段と大きな声援が飛ぶ。先のインタビューでは、”トラフィック時代のギター・ソロのほとんどは、スティーヴ・ウィンウッドが弾いていた”という仰天発言も飛び出したが、ステージでは原曲にないギター・ソロまで入れたアレンジで披露。レース・センサー×2、セイモア・ダンカン×1という仕様のフェンダー・カスタムショップ製テレキャスターにワウをかけながら、マイナー・ペンタ一発でサイケデリックなサウンドを聴かせる。これは……、正直意外だった。他の曲でもかなりの角度でワウをかませたソロをとるのだが、果たして彼はこんなワウ・プレイヤーだったろうか。18年前も34年前も観ていない筆者にとって、勝手に思い描いていたメイスン像とのズレはあったが、確たる”ギタリスト・メイスン”が観られたことは、当たり前と言えば当たり前なのだが、嬉しかった。しかし、名盤『アローン・トゥゲザー』(70年)の「Look At You, Look At Me」では、”スワンプ・ロッカー”としては禁断の(?)ライトハンド奏法まで披露! 単調な3連にずっこけはしたが、すっかり度肝を抜かれてしまった。にしてもあれはネタだったのか?

イメージどおりだったのはそのアコースティック・サイド。アルバムでのアコギ率が高い彼だけに、近年愛用するアルヴァレズ・ヤイリの12弦モデルをチューニング違いで2本を用意し、セットリストの半数近くの曲で力強いストロークから力加減が均一のアルペジオまで、存分にゴージャスな12弦トーンを響かせた。こと中盤の(6)〜(8)などがハイライトだった。唯一残念に感じたのは、エレアコ草創期からそれらをステージ使用してきた同年代のバンド・ギタリストの多くが、今なおドンシャリなピエゾ・トーンを”割り切って使っている”なんて発言しているのを散見するが、メイスンもまたこの限りにあるだろうことか。アコギ核でバンドでもプレイするジャクソン・ブラウンよろしく、今少し積極的なアコースティック環境の音作りを期待したい。とはいえ、そんなアコギ曲からよくわかるのは、彼の楽曲は骨格/演奏内容とも極シンプルながらアレンジが良いという点。もちろん、これはどの曲にも通ずる魅力で、シンプルなコードの数々を宝の山に変えるような作編曲術には群を抜く才能を感じる。さらに新曲(10)などでは、自らの歌に呼応するオブリガードにも光るものがあった。このあたりが”歌心に富む”と賞される所以だろう。

一方でエレクトリック・サウンドの良さは特筆しておきたい。時代と機材の変遷とともにエフェクターを介したサウンド変化を見せてきたメイスンだが、今回の来日公演を体感する限り、生音中心というのが基本姿勢のよう。歪み系の扱いは、アタックによってはサステインがしっかり残るクランチ+αといったラインで、ブルース・ロック好きにはストライク・ゾーンのサウンド・メイキング。必殺のワウ以外では、ディレイを効果的に使っていて、足下の動きを遠巻きに見る限りいくつかサウンド・プリセットを作って呼び出していたよう。ギター・マガジン2011年3月号(2/13発売)では今回メイスンが使用した機材レポートが掲載される予定なので、詳細はそちらでご確認を。

スペンサー・デイヴィス・グループの大ヒットも!

ステージ終盤はやはり有名曲のオンパレード。再びトラフィックから「Dear Mr. Fantasy」をセレクト、このダーク&ウェットな感じは、オリジナル・スタジオ盤よりも71年のライブ盤『ウェルカム・トゥ・ザ・キャンティーン』に聴ける雰囲気に近いか。思えば、このライブ盤で聴けるワウ・ソロがメイスンその人だったとリマインドした次第。この日は前半でJohnneの泣きのブルース・ソロをフィーチャーし、後半で自らの、ロックはこうでなきゃ!と言わんばかりのペンタ・ソロを爆発させた。そして、70′sロック・ファンなら誰しもが知る(14)(15)へ。デラニー&ボニーやベンEキング、最近ではデレク・トラックス&スーザン・テデスキもカバーしている「Only You Know and I Know」は、『ライヴ〜情念』の雰囲気そのままに、レイドバック&スワンピーに披露。やはりオリジネイターは素晴らしい! これはもう、素直にそう感じる。

本編最後は、”ジョー・コッカーが有名にした曲”とのイントロデュースから「Feelin’ Alright」を。奇跡のトラベリン・バンド、マッド・ドッグス&イングリッシュメンでのジョーの歌唱(とエレクトリック・ダンス)は絶品なわけだが、これもやはり、オリジナルのゆるタイト、もしくはまったりファンキーなアレンジはひと味もふた味も違うと言えばいいか。鍵盤とパーカッションをフィーチャーしたお馴染みのイントロがかかると、ついギターが弾きたくなってしまう。あの隙間に短いフレーズを撃ち込みたくなる、なぁんて感覚は、会場に足を運んだ方ならわかってもらえるかと。ウズウズしながら静かに見守っていた客席も踊り出す人がちらほら。演奏内容は『ライヴ〜情念』のそれよりもラフだった印象だが、大いに盛り上げてもらい、本編終了。

アンコールの2曲はお約束。とはいえ、いつも音源とのみ向き合ってきた身からすれば、生でこれらの楽曲が味わえるのはしみじみ感慨深い。スペンサー・デイヴィス・グループ、正直久しく聴いていないなぁと思いながら⑯を、ジミヘンのオリジナル版ではメイスンはアコギ参加だったのになぁと思いながら⑰を、それぞれ遠く昔日を見つめながら噛みしめるように味わった。場内を埋め尽くすいつかのギター少年も、同じく懐旧の念をくすぐられていたはずだろう。

なお終演後は、会場販売されるCD購入者全員(!)を対象にメイスン本人がサインするというファン狂喜のイベントも催された。親日家を公言し、ファンを大切にする御仁だけに、次回開催は意外と早いかもしれない。

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SET LIST

  1. Let It Go, Let It Flow
  2. World in changes
  3. Forty Thousand Headmen
  4. So High
  5. Look At You, Look At Me
  6. Every Woman
  7. Sad and Deep As You
  8. We Just Disagree
  9. You Got Me Runnin’
  10. Good 2 U
  11. Let Me Go
  12. Shouldn’t Have Took More Than You Gave
  13. Dear Mr. Fantasy
  14. Only You Know and I Know
  15. Feelin’ Alright

ENCORE

  1. Gimme Some Lovin’
  2. All Along the Watchtower

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