【ライブ・レポート】渡辺香津美 TOCHIKA 2010

ライブ/イベントレポート by 編集部 2010年10月25日

ギター生活40周年を迎えた香津美からのゴージャスな贈り物

2010年9月5日(日)@東京国際フォーラム

6月の半ばにインタビュー(他誌で)した時は、すでにこの東京ジャズ2010にマイク・マイニエリとともに TO CHI KA 2010 として出演することが公表されていたものの、メンバーは交渉中という段階だった。でも、香津美は”まだ決定はしていないが、期待していてほしい”なんて自信に満ちた意味深な発言をしていた。それもそのはず! 後日発表されたのは、ウォーレン・バーンハート(k)、オマー・ハキム(d)、マイク・マイニエリ(vib)、マーカス・ミラー(b)というメンバー構成。これを見てのけぞった往年のファンは多いことだろう。なにせこれは1980年の大ヒット・アルバム『TO CHI KA』リリース時における日本全国8ヵ所ツアーのメンバーそのものなのだから……。まさに30年の時を経た快挙だ。同時にギター生活40周年を迎えた香津美からのゴージャスな贈り物と言えよう。

満席の東京国際フォーラム ホールAで幕を開けたコンサートは、いきなりアルバム『TO CHI KA』(80年)1曲目の「リキッド・フィンガーズ」でスタート。続けざまに同アルバムから曲順どおりに「コクモ・アイランド」とくれば観客の反応も鋭い。アルバムを代表するかのようなハイ・テンションなナンバーが続いたあと、中盤はジャズのスタンダードや香津美/マーカス/オマーの3人によるアルバム『Mobo』(83年)からのナンバー、香津美のエレアコとマイクのデュオによるアルバム・タイトル曲「トチカ」,マーカスのベース・ソロなどバラエティに富んだ内容。終盤はアルバム『Mobo』中の難曲「遠州つばめ返し」、そして80年の当時日立Lo-DのCMに使われた「ユニコーン」でキマリだ。キャッチーなメロディと洗練されたアレンジ、強力な16ビートにスリリングなギター・ソロ……これが興奮せずにいられるだろうか? そして、スタンディング・オベーションと鳴りやまない拍手の中、アンコール曲「マンハッタン・フル・ダンス」が観客のフュージョン魂にとどめを刺す。ウォーレンとマイクの美しい旋律、マーカスとオマーによるテクニカルなリズム・セクション、どれもが最高に素晴らしい。しかし、香津美のギターあってこその、この世界観。誰にでもおいそれとできる演奏ではない。だからこそ我々はいつまでもあこがれ、追い続けるのだろう。

近年はエレクトリックからアコースティックまで、またソロ・ギターからジャズ回帰など幅広い活動を展開している香津美だが、このようにストレートにギターを弾き倒している姿は久々に見たような気がする。確かに、このくらい激しく弾く、というのもギターという楽器の持つひとつの魅力であるはず。30年前を凌ぐ勢いで、しかしながら大人としての節度をもって暴れた香津美のギターにはワイルドさを増した円熟味が感じられ、あの頃をリアル・タイムで体験している僕の目にはとても眩しく映った。聴きたかったものを聴いた、そしてもう一度観たかったものを観た、そんな満足感一杯のコンサートだった。

SETLIST

1. LIQUID FINGERS
2. COKUMO ISLAND
3. IMPRESSIONS
4. HALF BLOOD
5. TO CHI KA
6. SAYONARA
7. 遠州つばめ返し
8. UNICORN
ENCORE
9. MANHATTAN FLU DANCE

※本記事はギター・マガジン2010年11月号より転載したものです。

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