【ライブ・レポート】Plastic Tree

ライブ/イベントレポート by 編集部 2010年9月1日

猛暑が日本列島を襲った2010年8月。Plastic Treeが、13日の金曜日かつ仏滅、そしてお盆という何とも言えない日に、自身3度目となる武道館単独公演を行なった。そんな外の世界の喧噪からは完全に切り離された、独自の世界を築き上げた唯一無二のライブの模様をレポートする。

2010年8月13日@日本武道館

13日の金曜日、仏滅。Plastic Treeが自身3度目の武道館公演を行なったのは、お盆のそんな一日だった。

オープニング・ムービーのあと、メンバー紹介のようにひとりひとりの写真が映し出され、ナカヤマ アキラの幻想的なアルペジオが鳴り響いて「水葬。」でライブは幕を開けた。水の中にいるような少しくぐもった揺らぎ感のあるサウンドでのアルペジオが心地よく体に染みこんでいき、低い重心でうねるベース、シンプルなドラムが混ざり合い、会場がじっくりとPlastic Treeの空気に満たされていく。

ナカヤマはトレードマークのワッシュバーンN4を構え、ギター・ソロではアーミングを駆使したノイズをまき散らし、アルペジオ押しの歌バックではラストのサビのみ歪みを強くしたサウンドで曲全体の緩急を操っていく。

静寂のアルペジオからブレイクビーツ的なリズムとディストーション・サウンドに切り替わる「1999」、ディレイ・アルペジオからメタル的な刻み、エフェクティブなリード・プレイなど、サウンド/プレイともにめまぐるしい展開を見せる「梟」を経て、有村竜太朗(vo)の”いきなりですがカウントダウンします。3、2、1、発射”のMCのあと「ロケット」。ワーミーを使い普通のコード・プレイを”フレーズ”に仕立ててしまうセンスの良さを感じるイントロが印象的な楽曲だ。

続けて水色のストラトに持ち替えて「トレモロ」。曲名どおりトレモロがかかったアルペジオでのAメロがニクい。有村もES-335を抱えて穏やかさと轟音を行き来する「バルーン」、太いベースが土台を築く上でナカヤマが全篇クリーン・アルペジオを展開した「サナトリウム」と続くセットリスト。独特のはかなさや哀切感が表現された楽曲に浸っていく感覚が心地よい。

エレクトロ感とニューウェーブ感のある最新シングル「ムーンライトーーーー。」でジャズマスターを手にしたナカヤマ。続く、「懺悔は浴室で」では、本当に前曲と同じギターかと思うような轟音コード・ワーク、ノイズまみれの間奏、妖しい音色/旋律で彩るサビのバックなどとプレイ/音色ともに振れ幅の広いところを見せつける。さらに、これまたワーミーが活躍し、アルペジオが浮游する「「月世界」」では、左手だけでのトリルやタップも駆使したソロをワウをかませながらさらりと折り込む。

ここで、スーパーリーダーこと長谷川正(b)のMC。”夏といえば祭り、祭りと言えば……焼きそば、金魚すくい、踊り!”と強引な連想ゲームに続いて、有村が”みんな、プラ踊りできますかー!?”。……プラ踊りって(笑)。楽曲で展開される非日常的な世界観とは違った、天然系のキャラクターによる脱力MCも独特な彼らの魅力だ。

果たして、観客に”プラ踊り”をさせるべく、次の曲は「ダンスマカブラ」。同期で流されるエレクトロなシンセ、骨太なディストーション・べースに挟まれて、ナカヤマは鮮やかな赤のレス・ポールでメタル的なリフ・ワークを展開する。2Aではハイ・ポジションを多弦にわたって速弾きするシーケンス・リックをくり出し、ワーミー・ソロから、ステージに設置されたキーボードでのノイズ系ソロも披露した。

その勢いのまま、CD音源よりも速いテンポで突入した「ナショナルキッド」では、スピーディに展開されるギター・ソロが要注目。シーケンシャルな速弾き、6弦から1弦までスピーディに駆け上がるフレーズなど、実際に弾いてみるとかなり難度が高いテクニカルなものだが、これ見よがしなプレイではないのが彼らしい。ソロに限らず、彼のギター・プレイにはそういったものが多いように思う。まさに”職人”の面持ちだ。

逆ランディVを持ち7弦ギターの音域での重低音リフを、ピッキング・ハーモニクスも滲ませながらキレよく聴かせる「Ghost」はディレイ・トリックのプリイントロから、擬音にするなら”ッンゴーッ!”とヘヴィ・リフに切り替わる瞬間がいつも気持ちいい。

再びN4を持ったナカヤマがステージ・センターの台に立ち、「メランコリック」のイントロを弾き出すと、観客からは「oi」コールが上がる。疾走感と勢い満点のこの曲だが、間奏明けのBメロでは、それまで歪みの刻みだった部分をクランチのストロークにしてメリハリをつけるなど、ノリだけで終わらせないギター・プレイが光っていた。

“またこのテントの中でお会いしましょう”と有村がつぶやいて始まったのは、「サーカス」。透明感のあるアルペジオが、「Ghost」や「メランコリック」で沸騰した会場の空気を収めていく。音源よりもずいぶんと溜めたリズムで進行するバラード調の前半、徐々に熱を帯びテンポもだんだん上がり力強いビートでスケール大きく展開する後半と、ドラマティックな楽曲にグイグイと引き込まれていく。楽曲の持つ熱量の上昇にともない、ナカヤマのギターもヒートアップし、後半の歌メロ・バックでは自由に指板上を翔ける。

「サーカス」エンディングのフィードバックの余韻に浸っていると、リバーブ感のあるアルペジオとドラムのレガートなシンバルが響き始める。本篇最後の曲はポストロックな空気感から一気に轟音ノイズの洪水へと展開していくインスト曲「ーー暗転。」だ。体の中の何かが昇華され、意識がどこかへ持っていかれてしまうような感覚に陥いり、そこに身を任せていると、ノイズ・ギターがループする中メンバーが退場していった。

 

アンコール前、もはや恒例となった感もある”Plastic Tree劇場”の映像がスクリーンに映し出される。

今回は、モノクロ時代のフランケンシュタインやゾンビ映画の映像に各メンバーの顔を随所にコラージュするという作品で、何とも言えない不受理な内容に戸惑っていると、ステージ上に13人のジェイソン(メンバーも紛れている)が登場。

何とも微妙な空気感の中、そのうちのひとりの”コレカラ、サイコウノショーヲ、クリヒロゲテヤルゼー。Plastic Treeノメンバーハ、ドコダー”とのセリフ後、普通にメンバーがマスクをハズして楽器を持ち、有村の”え〜、とんだ茶番劇でしたが……”のMC。ここまで含めて不条理劇場か……。

その後、有村の”何ごっこして遊ぶ?”の声に観客が”ピカソごっこ!”と答えて「ピカソごっこ」。曲中盤ではドラム・ソロ、ベース・ソロときて、なぜかナカヤマはキーボード・ソロを披露したのであった……。

2ビートのリズムがメタルな「puppet talk」でもうひと盛り上がりしてアンコールが終了するも、観客の声は収まらず、再びメンバーが登場してアンコール2。

“ライブで初めてやる曲があるんですけど……一緒に届けてやって下さい。天国まで行け!”という有村のMCに続いて演奏されたのは、最新シングルのカップリング曲「バンビ」。

楽曲的には、自らのルーツでもあるスミスの「ジス・チャーミング・マン」のフレーズをパロディしたりとポップに振り切った内容だが、歌詞が他界した有村の父への手紙であるということが語られているこの曲。心なしか、エンディングで長尺ソロを弾きまくるナカヤマの演奏にも一段と熱が入っているように感じられた。演奏終了後、有村とナカヤマがハイタッチしていたのも印象的だった。

ナカヤマがストラトを持って、本日最後の曲は「記憶行き」。ピアノも取り入れたじんわりと胸に来るバラードだ。エンディング。ナカヤマ渾身のロング・ソロは、ブルージィさもある”泣き”を感じさせるもので、チョーキングのニュアンスが非常に切ない。激しく体を揺らしながら熱演するナカヤマ、そこに天井から紙吹雪が降り注ぐ。

UKロック、オルタナ、グランジ、シューゲイザー、ネオアコ、モダンヘヴィ、エレクトロなどなど、あらゆる音楽要素を飲み込みながらも、確固とした”Plastic Tree”という独自の世界観を提示し続ける彼ら。フロントマンとして強烈な個性を持つ有村の存在感はもちろんだが、そのうしろで剛柔変幻自在にサウンドを作り上げていくナカヤマのギタリストとしての手腕の大きさも、特筆すべきものがある。あらためてそう感じさせられたライブであった。

【SET LIST】
01.水葬。
02.1999
03.梟
04.ロケット
05.トレモロ
06.バルーン
07.サナトリウム
08.ムーンライトーーーー。
09.懺悔は浴室で
10.「月世界」
11.ダンスマカブラ
12.ナショナルキッド
13.Ghost
14.メランコリック
15.サーカス
16.ーー暗転。

〜ENCORE
17.ピカソごっこ
18.puppet talk

〜ENCORE2
19.バンビ
20.記憶行き

Plastic Tree公式サイト◎http://www.plastic-tree.com/

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