“延長戦”を続けるお茶の間シンガー/ソングライター、馬場俊英のアコースティック・ツアー

ライブ/イベントレポート by 編集部 2010年6月3日

昨年は日比谷野音、C.C.レモンホールと2度ほど公演を拝見させていただきましたが、今回は”Acoustic Circuit”と銘打ってのツアーだけに、アコギ・マガジンとしては見逃せません。ちなみにツアーは6月後半まで続きますので、興味ある方はオフィシャルHPでご確認を。

馬場俊英 on Acoustic Circuit!(5月23日@渋谷C.C.レモンホール)

“もともとアンサンブルが好きだったので、ついバンド・アンサンブルでのデモ・テープを作っちゃうんですよね。ギター1本で完結する作り方は少ないなあ。歌詞とメロディが半分くらいできると、アンサンブルの中でどうなるか?を模索するのが常で”。

かつてのインタビューでそう語ってくれたとおり、アコースティックの原点を持ちながらバンドにこだわる馬場さんとしては、今回の編成(アコギ×2、アコピ、エレベ、パーカッション)はひとつの理想形かもしれません。

ツアー継続中ということもありセットリストの詳細は記しませんが、『人生という名の列車』(2006年)以降の作品からが中心。いずれの楽曲にも、やわらかさ&やさしさ通常比3割り増しのアコースティック・アレンジが施されていました。そのせいか、怒れる部分が強かった新作『延長戦を続ける大人たちへ』からの楽曲は少なめだったように感じました。ただしアコースティックをルーツとする楽曲がほとんどなので、歌との距離感は絶妙。より鮮明に彼のメッセージが染み入った次第です。

マーティンD-42を持つ馬場さん、隣にはテイラーを抱える馬場(一嘉/サポートg/通称:BABI)さん。アンサンブルの核はこのふたりのアコギで、歌のハーモニーも”W馬場”によるもの。BABIさん、ギターはもちろんのこと、歌もかなりうまいです。また、エレキ・セットよりもその実力のほどがつぶさに伝わり、ことナイロン弦でのスパニッシュ・スタイルはお見事でした。

中盤、「明日の旅人」のみ弾き語りで披露。これは、自らよりもうひとまわり若い世代に向けた、ストレートなメッセージ・ソング。馬場さんは、青臭いとも取られかねないメッセージを、臆面もなく放つことができる。それが彼の良さであり、また聴き手の多くが嫌味なく受け取れるのは、送り手に押しつけがましさや暑苦しさ、そして嘘臭さが驚くほどないからだと、歌声を聴きながら改めて気づいた。

ところで、今回のステージにはベンチと街灯が設えてある。演出の真意のほどはわかりませんが、30〜40代にはひりっとくる「一瞬のトワイライト」では、そこを見つめることでサウダージな感慨が。その後、最新シングル「待ち合わせ」にて、初めてベンチの意味が明らかに。映画『孤高のメス』のイメージ・ソングとなるこの曲の背景や、”待ち合わせ”これすなわち”約束”と語る姿に、このシンガー/ソングライターは歌うべきことがたくさんあるんだな、また、表現すべきことの自在郷に近づいているなと勝手に感心してしまいました。そしてやっぱり、アコギが似合うとも。

この日、馬場さんはいくつかのドレッドノートを持ち替えていました。写真のマーティンD-42、遠目なので確証はありませんが、D-28、はたまたコリングスD2Hかな。そしてこの曲、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」では、自らトレードマークと言うチェリー・サンバーストのギブソン・ダヴ。う〜ん、やっぱり映えますなあ。そして、この前向きな歌の力は、アレンジを問わないなとも、改めて。

どのアーティストであっても、そのアーティストのファンとすれば、ライブというのは音楽を聴きに・観に行くということ以上に、会いに行くという感覚が大きいかもしれない。こと馬場さんの場合はそんな向きが多いように思える。本人はそれを最もわかっているようで、客席へ感謝の念を絶やさない。その最たる例として、終演後、その日のセットリストをメッセージ付きで配っている。その行間にはこう書いてあるようにも思える。”家に帰るまでが馬場俊英のライブ”。いつだって彼のライブには、まるで遠足のようなワクワク感と懐かしさ、喜びで溢れている。

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