【ライブ・レポート】奥田民生ひとりカンタビレ(2010年5月7日@渋谷AX)

ライブ/イベントレポート by 編集部 2010年6月3日

ライブハウスに観客を入れて,楽曲をレコーディングしていく様子を見せ,楽曲が完成するや即配信!という”奥田民生ひとりカンタビレ”ツアー。ここでは,5月7日の渋谷AXでのレコーディングの模様をレポートしていこう。

開演時間をやや過ぎて到着すると,すでに民生はドラム・セットの中。しかもキャンプ用品のタープで覆われていて姿は見えず(笑)。ドッタ,ドドタッという音が会場に鳴り響くだけという,通常のライブではあり得ない空間であった(モニターには映っていたけど)。これが一発OKということで,さくさくとベース録りに移る。取り出したのはモズライトの真っ赤なモデル。ダブルカッタウェイでホロー・ボディというルックスだ。先ほど録ったドラムをPro Toolsで流しながら,ピック弾きでプレイする民生。その丸みを帯びた音色から,フラットワウンド弦が張られていたと想像できる。一回つるっと弾き終えて”なんか硬いな〜”,”もっかいやっていいスか?”などと独り言に近い言葉を吐きつつ,フェンダー・ベースマンのアンプのボリュームをちょいと上げて再挑戦。民生いわく”多少ズレることによって味が出る,という説もある”と煙に巻きながら,めでたく終了と相成った。観客拍手! 

ここで客席の様子を紹介すると,フロアには椅子とサイド・テーブルが用意されており,入り口で配られたお菓子などを食べながら,のんびりと観覧する形式。野球場ばりにビール・サーバー持った売り子も回ってくる。人によっては焼きそば食べてるし……。やるほうもマイペースなら,観るほうも同じ。おそらく民生にしか作り出せない空間だろうなあ。

さて,ステージではリズム・ギターを録る算段になった。やおら黒いギブソンES-335を抱えてマーシャルへ無造作に突っ込む。まだプロトタイプという製品で,クリーン・サウンドがきれいに出るとのことだ。中指,薬指を使うフィンガーピッキングのアルペジオ・セクションと,4つ打ちのピック弾きを切り替えながら録っていく民生。一度弾いたあと,それぞれ別録りに変更。”もともとそのつもりだったんだ!”って,なぜ忘れていたのかは不明(笑)。しかしフレーズを間違い,ずっこけた瞬間に照明が真っ赤に。スタッフも心得ております。

tamio01.jpg

 

なんやかんやでOKを出し,続いてアコギを重ねる。1本目のストロークではお馴染みのギブソンJ-45が登場。コンデンサー・マイクを使うため,”静かに!! 手拍子なんてもってのほかですから!”などと観客席に笑いながら注意を呼びかける。サウンドホールからの距離は約15cmといったところか。録音後,コマンド・ミスで消去してしまったようだが,アンドゥで無事に回復。ホッとする民生。2本目のアコギは小さめなボディのギブソンB-25。これに4fカポをして3連のフレーズを弾く。レンジが狭いこのギターはパーカッション的な役割を与えているのだそう。イントロや間奏にも入れられた。

tamio03.jpg

 

お次はパーカッション。タンバリンと鈴を両手に持って交差させるのだが,その(ちょっと猿の人形みたいな機械的な)仕草が客席のツボに入ったらしく笑いが巻き起こる。笑わないように,こちとら真面目なんだから!”とたしなめられるオーディエンス。本番はバッチリ静粛にしていたのは見事。ここでバッキングをひと通りチェックし,無事にOKが出た!

いよいよ次はギター・ソロ。出てきたのは59レス・ポール。「大迷惑」のイントロやオジー・オズボーンのフレーズを弾いたりしてウォーミングアップするたびに客席大盛り上がり。民生も自賛していたが,この音が素晴らしかった。通常のライブでは,これだけ59の音だけを聴く機会なんてないだろうが,まさに王者の音って感じ。フレーズも考えてきたというだけあり,なんと一発OK。終わりのほうにプラグインでディレイをかけてソロも終了!

少しばかりの休憩を挟んで,ハイライトである歌入れがスタート。民生は灰色の事務椅子に腰掛けたまま,シュア57でさくっとレコーディングする。大体いつもこんな感じのスタイルだそうだ。一回リハをやってノドを温めてから本番。間奏のあとを歌い直したくらいでほぼ一発でOK。軽妙なトークと飄々とした語り口で忘れがちになるが,これはものすごい速さであり,プロ中のプロが見せる集中力と技術の高さに震えがくるほどだ。さらにヘッドフォンの左耳だけはずしながらダブルのボーカル録りを行なう。プレイバックを聴きつつ,客席も一緒になってズレを探すあたりがおかしい。Bメロはクール・ファイブみたいな追っかけパートなのだが,ここはなんとPro Toolsのトラックをコピペでずらして終了。なんてことはないのだが,実際に編集作業を見慣れていない人たちは大喜びで,むしろこの日一番盛り上がり,民生もピースサインでこたえるのであった。その後,ハモリやらサビ裏の”う〜”っていう低いコーラスやらを録って,ついに完成。サービスでボーカル・トラックのみでプレイバックしてくれたのだが,これが心地いいこと極まりなし!

tamio04.jpg

 

質疑応答コーナーなどを挟んで,ミックスが終了し,いよいよ楽曲を試聴する。タイトルはズバリ,「ひとりカンタビレのテーマ」! 雨の中,ひとり自室でレコーディングする男を淡々と描いた歌詞は,まさに今回のライブにピッタリと言えよう。じっくりと聴き入ったあとは,大きな拍手とともに大団円。約3時間半にわたるレコーディング・ライブは非常に観ごたえある試みだったと実感した。なお,この楽曲を始め,本ツアーで制作された楽曲はこちらのサイトで配信されているので,ファンならずともぜひ購入してはいかがだろうか。

【奥田民生ひとりカンタビレ特設サイト】
【奥田民生ひとりカンタビレ楽曲購入サイトmora】

TUNECORE JAPAN