【ライブレポート】GUITAR HARMONIZE Vol.2

ライブ/イベントレポート by 編集部 2009年11月12日

渡辺香津美、野呂一生、矢堀孝一、是方博邦、マーティ・フリードマン、ギターの名手5人が赤坂に集結したギター・イベント

10月11日(月)@赤坂BLITZ

渡辺香津美が提唱するギタリストによるギターのためのライブ・イベント、GUITAR HARMONIZE Vol.2を観てきた。昨年から始まったこのイベントは、香津美をホスト役に腕の立つギタリストを集め、ギターの素晴らしさ、そしてギターが生み出すハーモニーの素晴らしさをアピールしようというものだ。昨年は渋谷のC.C.レモンホールを舞台に、野呂一生、山本恭司、野村義男、天野清継、小沼ようすけが出演。ソロで、デュオで、トリオで、そして全員で、とめまぐるしく組み合わせを変えながら、ここでしか聴けない極上のギター・ミュージックを聴かせてくれた。ギターとギターのハーモニーが生むエクスタシー。それこそこのイベントの醍醐味である。ジャンルを超えた名手の共演は、晩秋の渋谷に歓喜の渦を巻き起こしたのだった。

そして今年の第二回は場所を赤坂BLITZに移して開催された。メンバーは、野呂一生、是方博邦、矢堀孝一、そしてマーティ・フリードマンという名手4人。”なるほど”と”意外”が絶妙に入り交じった人選と言えよう。中でも一番の意外はマーティ・フリードマンではないか。ギター・マガジン10月号では、香津美とマーティ・フリードマンの対談を行なったが、そこで香津美はマーティに打診した理由を語っていた。いわく、NHKの『英語でしゃべらナイト』などいくつかマーティの出演番組を見て興味を持ち、ソロ・アルバムを聴いたらますます惹かれたからだという。”マーティさんのギターは基本的にはものすごいメロディックですよね。テクニカルなだけじゃなくて、すごいメロディ・ラインがある。ギターがボイスみたいに歌っていて。すごく好きなんです”と香津美。この対談では、ライブの展望を語ってもらったのだが、すでに互いが互いに影響を与え合っていることが読み取れ、ライブ当日にどんな音楽が生まれてくるのかドキドキしたものだ。マーティがしきりに言っていた”しゃべるよりジャムりたいね!”という言葉も強烈に印象に残った。そして”キミの聴いたことのないギター・サウンドが聴けるぞ!”という殺し文句も。

▲渡辺香津美(左),野呂一生(右)

まずステージに登場したのは香津美と野呂だった。野呂はいわば不動のパートナーで、昨年同様、このデュオがイベントの重要な核となる。オープニングは香津美の「コクモ・アイランド」。香津美はPRSのシングルカット、野呂はヤマハのシグネイチャーSGを使っていた。ラテン系のノリが心地よく、ふたりのギターが溶け合う。続く「アーリー・ビギニング」は野呂の曲で、彼ならではのさわやかなメロディが響き渡った。

▲矢堀孝一

ここで野呂と矢堀孝一が入れ替わる。ソロ・アルバムをレコーディング中だという矢堀はその中から「ブルームフィールド」を披露。さすがのギター巧者だけあって、抜群のテクニックを見せつける。アラン・ホールズワース直系のスムーズなフレージングが印象に残った。演奏後、うなずき合う矢堀と香津美。楽しそうだ。そしてお次はカバーで、これがなんとコルトレーンの「ジャイアント・ステップス」。一説にはジャズミュージシャンが最も恐れる曲だという。この難曲をまずは香津美のリードで始め、スゴいテンションでスウィングしていく。両者ゆずらないアドリブ合戦。矢堀のホーンライクなギターがお見事だった。

 

▲是方博邦

その熱気も冷めやらぬまま、是方博邦が加わる。”ブルースをやるしかない”と言って始めた曲は「ジョージア・オン・マイ・マインド」。師匠筋に当たる大村憲司の得意曲でもあった大スタンダードだ。ブルースが出自の是方だけあって、そのギターは野太くそして鋭角的。サンバーストのストラトキャスターで空間を切り裂くような音を聴かせる。後半は3人のギターバトルに突入した。

間髪入れずに次の曲が始まる。香津美の人気曲「遠州つばめ返し」だった。イントロからいきなりキメキメのトリプルギター。変則フレーズをユニゾン&ハモでピタリと決めて、その後ジャジィな展開へ。是方が途中、突然ディストーションを踏んでギンギンのソロを聴かせる。香津美も負けじと弾きまくる。そう、どうやら香津美は負けじと弾きまくるようなのだ(笑)。事前のインタビューでは”そういうことのないようにしたい”と語っていたが、無理だったようだ。しかし、昨年と明らかに違うのは、抑制を効かせていたところ。去年より明らかに見せるツボを心得ている。相手を引き立てることを第一に考え、出るところは出る、そういう姿勢がはっきりと伝わってきた。


ここで野呂も加わって、アンプラグドに場面転換。4人がずらりと並び、やり始めたのはレッド・ツェッペリンの「天国への階段」だった。イントロのアルペジオから忠実に忠実にオリジナルをなぞる。この演奏に、この世代のギタリストならではの生真面目さを感じたのは僕だけではないだろう。アコースティック4本のインスト版もなかなかいけると思った。ラストのギター・ソロ担当は、野呂から是方へ。チョーキングにも力が入る。続く「地中海の舞踏」はスーパー・ギター・トリオ(アル・ディ・メオラ、パコ・デ・ルシア、ジョン・マクラフリン)でもお馴染みの曲。速弾きラテン・フュージョンの大定番だが、ここではまるで速弾きの神様が乗り移ったような演奏を4人が4人とも展開。相手に負けじとついつい力が入ってしまうのはギタリストの性であろう。特に矢堀と香津美のソロ合戦は圧巻だった。

そしてマーティ・フリードマンがエレキを持って登場。選曲は小椋佳の「愛燦々」で、さすがのJ-POP通らしさを見せつけた。ステージ前に堂々と進み出て、気持ちよさそうにソロをとるマーティ。他の4人はアコギでひたすらストロークを刻む。ゆったりとしたロッカバラードが会場を和ませた。ここで香津美とマーティだけが残り、ふたりで作った組曲風のオリジナル「M&K」を披露した。「哀しみの恋人達」を彷彿させるマイナー・バラードで始まり、泣きのギターをたっぷりと聴かせたかと思うと、一転、アップテンポのハードロックに。盛り上がるだけ盛り上がって、再びスロー・ブルースに帰結した。香津美とマーティ。普通ならあり得ないコラボである。しかし、一皮むけば中身はギター小僧というのは変わらない。それがこの場に立つことによって、あらわになるのは幸運なことだろう。それがギターの素晴らしさなのだから。恍惚とした両者の顔を見ながらそう思った。次曲「クライ・ミー・ア・リバー」でもふたりは泣きのギターを存分に弾きまくった。

そしてライブはいよいよハイライトに。エレキ・ギターを持った5人の合同演奏コーナーが始まった。下手から、矢堀、是方、香津美、野呂、マーティの順で一列に並び、香津美のオリジナル「Mo’ Bop」を演奏。香津美を中心にシンメトリーになる配置はとても見栄えがいい。それぞれがエフェクターをかけてヘヴィな音でガンガン弾きだした。エレクトリック・マイルスかと思うようなファンキーでヘヴィなプレイが延々続く。摩訶不思議なアウト・フレーズを満面の笑顔で決め続ける香津美。カッチョいい! ギターの音を介してステージと客席が同じグルーヴを共有している。そして、もう止めようがないほどの勢いでジェフ・ベックのカバー「フリーウェイ・ジャム」に突入。5人のソロ回しは圧巻だった。ドラム・ソロを経て、有名なテーマ部を一斉にハモった時、このイベントの真骨頂があらわになった。ピタリと合ったタイム感。極上のハーモニー。ギターの音が最高に輝いた瞬間である。しばしのMCのあと、本編ラストはマイケル・ジャクソンの「スリラー」。これは選曲勝ちである。有名なイントロを再現したギター・オーケストレーションは、めくるめくようなハーモニーだった。マイケルの曲はギター・ライクでリフを中心に組み立てられているものが多いが、こうして合奏するにも適しているのだ。5人が5人、素のギター少年に戻ってエキサイティングに弾きまくる。会場も大興奮状態に。そして、満足そうにステージを引き上げていく5人。そこを凄まじいアンコールの拍手にすぐさま引き戻されて披露したのはABBAの「ダンシング・クイーン」だった。これまた選曲勝ち、と一瞬で感じた。よく考えられたアレンジ、的確な音色。斬新なアンサンブルだった。なにより演奏者の顔が喜びに満ちているのがいい。ギターの素晴らしさ、そしてハーモニーの素晴らしさがこれでもかと伝わってくる。

 

▲マーティ・フリードマン

演奏を終えて満足そうな5人。昨年に比べ、コンセプトがよりはっきりしたと感じた。ただ単に大喜利的にギタリストがズラリと並ぶのではなく、それぞれに役割を持たせ、ぞれぞれの特性を生かしながら,名手の芸で”ハーモニー”を演出した。総指揮をとった香津美のプロデュース能力に拍手を送りたい。

 

SET LIST

1.Cokumo Island
2.Early Beginning
3.The Bloom Field
4.Giant Steps
5.Georgia On My Mind
6.遠州つばめ返し
7.Stairway To Heaven
8.Mediterrenean Sundance
9.愛燦々 Ai san San
10.M&K
11.Cry Me A River
12.Mo’Bop
13.Freeway Jam
14.Thriller
ENCORE
15.Dancing Queen

【渡辺香津美オフィシャルサイト】
【野呂一生(カシオペア)オフィシャルサイト】
【矢堀孝一オフィシャルサイト】
【是方博邦オフィシャルサイト】
【マーティ・フリードマン・オフィシャルサイト】

TUNECORE JAPAN