【ライブ・レポート】第二回純音楽祭り(遠藤賢司バンド、頭脳警察、ZAZEN BOYS)

ライブ/イベントレポート by 編集部 2009年10月8日

不滅の男が歌い叫ぶ、魂の純音楽

2009年9月20日@渋谷クラブクアトロ

還暦を過ぎてもなお、一切の衰えを知らない不滅の男、エンケンこと遠藤賢司。先頃、レコード・デビュー40周年となるニュー・アルバム『君にふにゃふにゃ』をリリースしたばかりだが、今度は自らが主催する”第二回純音楽祭り”を2デイズで敢行。1日目は遠藤賢司、泉谷しげる、曽我部恵一というラインナップでアコースティックを中心に聴かせたが、2日目は遠藤賢司バンド、頭脳警察、ZAZEN BOYSという、これまた濃ゆ〜い面子がそろった。2日目の模様をお伝えしていこう。

まずはジャブとばかりにエンケンがひとりでアコースティック・ギターを持って登場。のっけから70年発売の1stアルバムの1曲目であり、いまだにライブで歌い続けている「夜汽車のブルース」を披露した。何十年もの間、全身全霊を込めてかき鳴らされてきたことでアコギのボディ・トップは痛々しいほどに削れはがれている。だが、エンケンに選ばれたギターたちは……たとえ頻繁に弦を切られたとしても……本望なはずだ。1本のギターで鳴らしているとは思えない、ある意味パーカッションの役割も果たしている激しいストロークを聴かせたのちは、繊細過ぎるフィンガーピッキングが印象深い「僕は涙がこぼれて落ちた」。こちらは最新作に収録されている楽曲だが、世界観は代表作「カレーライス」に近い。その静と動が180度入れ替わる様もエンケンの魅力だろう。オープニングのラストは、エモーショナル過ぎるハーモニカとノンストップのストロークが呼応する「おぉい!みんな!」。心の奥底に潜むモヤモヤを叫び散らしているのか、”ぶっ殺してやる!”という言葉とともにエンケンがステージを去ると、会場に残された熱気、余韻は、何とも形容しがたいざわめきへと変わった。

続いて現われたZAZEN BOYSの演奏の完成度に驚いた人も多かっただろう。個人的には約2年ぶりに観たが、その時と比べてもバンドのアンサンブルは相当強固なものになっていた。「honnoji」や「Riff Man」、「MABOROSHI IN MY BLOOD」といったキレキレのキラー・チューンを出し惜しみなく披露していた。鉄壁のリズム体はもちろん、白いテレキャスを持った向井秀徳(時にはキーボードも)の存在感はさらに増し、ストラトキャスターを武器に変態フレーズを炸裂させるカシオマンこと吉兼聡のギターも圧倒的。彼らがこの先どのようになっていくのか? 期待を持たずにはいられないステージであった。

エンケンとほぼ同時期にデビューし、近年再び精力的な活動を見せている頭脳警察は、ゼマイティスのアコギを持ったパンタ、遠藤賢司バンドのドラムも務めるトシ(石塚俊明/ここではパーカッションで参加)、さまざまなミュージシャンを支えてきたギタリスト=菊池琢己からなる3人編成。シンプルなアレンジに乗ったメッセージ性の強い歌に、いろいろな思考を巡らせた人も多かっただろう。

さて、会場もすっかり温まったところで、再びエンケンが登場。今度はオレンジのグレッチを手にし、爆音で「ビートルズをぶっとばせ」を歌い、弾き倒す。そのサウンドのパワフルさ、音の艶は、瞬時にして会場の空気を変えた。ギターをぶらさげながらドラムセットに腰を下ろすと、左手でギターをフィンガリングしながら、右手に2本のバチを持ち、力いっぱいタイコを鳴らした。時にはギターをフィードバックさせながら、そのノイズに乗せてリズムを刻み、グルーヴを作った。そこに広がる宇宙をエンケンひとりが生み出しているという事実……この圧巻のパフォーマンスは何度観ても驚愕してしまう。

湯川トーベン(b)と石塚俊明(d)が登場し、ようやく今日のメインアクトである遠藤賢司バンドのメンバーがそろうと、さらにもう一段ギアを入れ替えるかのように(それまでも十分過ぎるほどパワフルだったが)パワー全開で「不滅の男」を披露。アコギをストロークするのと同じ様相でエレキ・ギターを爆音で弾き鳴らした。続いてゆったりとしたアルペジオが響きわたり「荒野の狼」が始まる。ここではホワイト・ファルコンを用いて長尺のギター・ソロを奏でたが、観客に背を向け、ドラムの前に仁王立ちし、時にアーム・バーを使いながら、それこそ狼が遠吠えをあげるようにギターを叫ばせていた鬼気迫るエンケンの姿は、ジミ・ヘンドリックスやニール・ヤングなど、偉大なるギター・ヒーローたちを想起させるほどに凄まじかった。その後は最新作から「君にふにゃふにゃ」、「フォロパジャクエンNO.1」を演奏しきったところで、役者たちはステージをあとにした。

エンケンのパワーに負けじとばかりに会場が一体となってアンコールを催促すると、恒例の「東京ワッショイ」がスタート。途中でエンケンが引っ込むと、石塚俊明と湯川トーベンそれぞれのソロ・タイムに突入。ZAZEN BOYSにも負けないテクニックと熱い心意気で、その巧者っぷりを見せつけてくれた。再びエンケンがステージに現われて、これまた圧巻のギター・ソロを聴かせると、今度は湯川トーベンがパンタや向井秀徳をステージに引き連れて、全員で大合唱が始まった。もちろん会場も一体となって”わっしょい♪わっしょい ♪”と盛り上がる様は、まさに”純音楽祭り”にふさわしいひと幕だったと言えるだろう。

その後、祭りのあとの静けさを演出するように、エンケンはひとりマーティンD-35を手にお馴染みの「夢よ叫べ」を熱く歌い上げた。普段ならここで終演となるのだが、今回は驚きのクライマックスが控えていた! 突如、ステージが暗転すると、会場にはあらかじめ用意されていた「僕の音楽は本当に良いの」が流れ出した。センチメンタルなアコギで始まり、途中数本のギターとドラムが重なり、狂おしいほどのハーモニカが飛び交う8分にも及ぶ大作だ。ステージ中央でギターを背負い、ひと言も発さないエンケンは、自分の音楽に合わせ、まるで何かに取り憑かれたかのように、ゆっくり、ゆっくりとステージ上を擦り歩く。能の型のようなものだったと思うが、そのエンケンならではの世界観に会場中が釘付けとなり、息を飲むほどの緊張感が会場全体に包み込んだ。その異様な8分間が経過すると視線の先のエンケンは消え、そして約3時間半にも及んだ純音楽祭りは幕を閉じたのだった。デビュー当時からエンケンを応援しているおじさん、エンケンと目当てのバンドが対バンした際に思わず魅せられた若者など、客層もさまざまだったが、誰もが大満足そうな表情をしていたのは印象的だった。

ところで、皆さんにはぜひ「僕の音楽は本当に良いの」の歌詞を熟読してほしいと思う。

“自分が年寄りで頑張っているから評価されているのか? 自信がないよ……”

といった類の葛藤が赤裸々に歌われている。還暦を過ぎ、レコード・デビュー40周年のレジェンドとも呼べるアーティストが、ここまで正直に自分をさらけ出せるものだろうか? 今日のエンケンのライブを観た人たちは、口をそろえてこう言うだろう。

あなたの音楽は本当に素晴らしいと。

SET LIST

〈前半弾き語り〉
1.夜汽車のブルース
2.君は涙がこぼれて落ちた
3.おぉい!みんな!

〈後半遠藤賢司バンド〉
1.ビートルズをぶっとばせ
2.不滅の男
3.荒野の狼
4.君にふにゃふにゃ
5.フォロパジャクエンNO.1

〈アンコール〉
1.東京ワッショイ
2.夢よ叫べ
3.僕の音楽は本当に良いの

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