【ライブレポート】オールマン・ブラザーズ・バンド with エリック・クラプトン(1)

ライブ/イベントレポート by 編集部 2009年8月26日

2009年3月に行なわれたオールマン・ブラザーズ・バンド結成40周年記念のスペシャル15公演”デュアン・オールマン・トリビュート・ラン”。はるばるNYのビーコン・シアターに取材に向かった編集部員の渾身のレポートをお届けしよう。この日はエリック・クラプトンがゲスト参加! まずは第1回目をご堪能あれ。

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過日話題になったローリング・ストーンズのライブ体感型エンタメ映画『シャイン・ア・ライト』の舞台であり、長らく続いた改修工事により1929年建立というその歴史的美に磨きがかかったNYCのコンサート・ホール、ビーコン・シアター。

オー ルマン・ブラザーズ・バンド(以下:オールマンズ)は1991年より、毎年3月(例外年もある)に約3週間に及ぶ連続公演”The Beacon Run”をここで行なっており、それはかつてのフィルモア・イースト公演に見立てた特別なステージとして、ファンのみならず多くのミュージシャン、マスコ ミの耳目を集めてきた。

1969年3月26日というバンド結成の日から40年を数える今年は、イントロダクション・メッセージ(上写真)のとおり、デュアン・オールマンという偉大なるギタリストのトリビュート・ランとして2009年3月9日に幕を開け、同28日までの計15公演が行なわれた。
そしてデュアンの名のもとに、アメリカン・ルーツ・ミュージックの巨人、もとい、まさしく”Living Legend”たちが全員集合。それはまるでザ・バンドの”あの日”のようで、フェスティバル時代の今日においてもことほどさように豪華な顔ぶれが揃う機会はそうないはずだ。

初日のタジ・マハール、レヴォン・ヘルム、ラリー・キャンベルに始まり、ジョニー・ウィンター、ロス・ロボス、バディ・ガイ、トレイ・アナスタシオ&ペイジ・マッコーネル(フィッシュ)、ボズ・スキャッグス、ランディ・ブレッカー、レニー・ホワイト、スタンリー・クラーク、ロバート・ランドルフ、ジョン・ハモンド、ボニー&ベッカ・ブラムレット(残念なことに、参加が予定されていたであろうデラニー・ブラムレットは昨年末に死去)、スーザン・テデスキ、トミー・タルトン&スコット・ボイヤー(カウボーイ)、シェリル・クロウ、ブルース・ホーンズビー、トム・デュセット、ロン・ハロウェイ、ジェリー・ジェモット&バーナード・パーディ&ジミー・スミス(キングピンズ)、ジミー・ヘリング、ボブ・マーゴリン(マディ・ウォーターズ・バンド)、サニー・ランドレス、ジョン・ポッパー、ビリー・ギボンズ(ZZトップ)、ジミー・ホール(ウェット・ウィリー)、キッド・ロック、アイヴァン・ネヴィル、チャック・リーヴェル、ボブ・ウィア&フィル・レッシュ(グレイトフル・デッド)などという強力な面々が日替わり定食状態。主旨のとおり、”在りし日のデュアンと親交の深かったミュージシャン”を中心にアレンジされたそうだ。

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写真左:3月16日公演にゲスト参加したジョン・ハモンド(右) 写真右:3月17日公演にゲスト参加したシェリル・クロウ。(Photo:Alan Schwartz)

2000年にバンドを離れたオリジナル・メンバー、ディッキー・ベッツの参加こそ叶わなかったが、バンドの代表曲「Statesboro Blues」の手本版(当時のギターはジェシ・エド・デイヴィス)の演者であるタジとの熱演や、デュアン最高のギター・ソロとの呼び声が高い「Loan Me a Dime」(ボズ・スキャッグス)の再演、セッションマン・デュアンの音楽的実力の幅と厚みを示すジャズ~R&B勢の参加、伝説のフィルモアやアトランタ・ポップ・フェスにも参加していたブルースハープ奏者トム・デュセットの久方ぶりの合流、”三頭政治”と呼ばれたザ・バンド&グレイトフル・デッドとの連携、そんな一方でZZトップのビリー・ギボンズがゲストの回には、オールマンズのメンバー全員がビリーよろしく髭とサングラスで登場、その名も”Billy Gibbons and The Allman Brotherzz”という洒落の利いた演出まで、各日興味深いテーマで沸かせ、アニバーサリー・ランを彩った。

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また、筆者が体験したのは3月19、20、21日の3日間で、実はこの日程に、昨年末頃からエリック・クラプトンの参加が噂されていた。

60~70年代から活動を続けるロック・バンドは、近年復活組を合わせると意外と多い。しかし、ビッグ・ヒットを持つその多くが昔取った杵柄で”延命”しているように見えるのは、往年のファンならば永遠なるマンネリズムと理解していてなおいささか寂しい思いもある。

オールマンズはどうか?
確かにデュアン・オールマンの求心力は今もって強く、1969~71年までに作られたナンバーがセットリストの中核をなす。しかしながら、バンド復興期を担ったウォーレン・ヘインズを始め、今をときめくデレク・トラックス、オテイル・バーブリッジ(b)という新たなる血を得て、伝統を強く尊重しながらもそこに革新を与えるという、結成当初のバンドが標榜していた姿勢で活動できている点で懐古趣味にとどまる他者とは異なり、過去の曲にも新たな息吹をもたらし続けている。ここ重要。この空気感、そしてスピーカー・コーンから放出される熱を帯びた振動を、聖地ビーコンで、アニバーサリー・イヤーだからこその気合いの入った演奏で、体験したかった。

 

2009年03月19日@Beacon Theatre

一眼レフ・カメラの持ち込みと動画撮影を禁じる注意の声、そして危険物携行の有無を確かめるエントランス・セキュリティを経ると、中世ヨーロッパの宮殿を 思わせる風景が広がる。噂を凌ぐ美しさに思わず息を飲む。

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なんでも、かつてのフィルモア・イーストと近い雰囲気を持つ内観なのだとか。ロビーから場内への ドアで再びチェックを受けて入場。見上げるとひっくり返りそうな高い天井。奥行きはさほどなく、1階後方席においてもステージの遠さは感じない。そして写 真のとおりの美しさだ。長旅の疲れも吹っ飛ぶ高揚感がむくむく沸き上がる。

ステージ上にズラリと居並ぶギター・アンプ。ウォーレンはお馴染みCesar DiazのDC100とソルダーノがメインのようで、デレクについてはあとになって知ったが、いつもの64年製フェンダー・スーパー・リバーブの代わりに、PRSのニュー・スタックをメイン使用した模様。正規ラインナップとは異なるルックスからプロトタイプかもしれない。また、ソルダーノにもプラグインされているのを確認できた。そして見慣れぬフェンダーの(57ツインと思しき)ツイード・アンプも2台ほど。

 

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暗転を合図にいよいよ3時間に及ぶショーが幕を開ける。暗闇の中、ステージ後方のスクリーンに冒頭のメッセージが浮かび上がる。静かに写し出されるデュアン・オールマンのフォト・スライド・ショーをバックに、ウォーレン&デレクが「Little Martha」を爪弾き始める。「Little Martha」。プレイヤーとして傑出した実力とアイディアを持っていながら、決して華のあるソングライターではなかったデュアン。これは彼の数少ない代表作と言える美しい小曲だ。今回の”The Beacon Run”におけるシンボリックな幕開けである(15公演中7公演が「Little Martha」スタートだった)。オリジナルはアコギ×2の構成だが、ウォーレン&デレクはともにギブソンES-335。ボリュームを絞ったクランチ・トーン、なめらかなフィンガーピッキングで聴かせる。低音をやわらかくサポートする程度にオテイルも参加する。美しいアンビエントに早くも心がブルッとくる。

 

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グレッグ・オールマン(vo、hammond organ、g)のカウント出しでそれとわかる、今にもデュアンの神がかったスライドが聴こえてきそうな「Statesboro Blues」。スライドはウォーレン。フィルモア版を下敷きにした行儀良くも熱っぽいトーンで滑走する。もう何千回も演奏してきただろうあの名イントロからの98小節。還暦を優に超えたオリジナル・ドラマーのふたり、ブッチ・トラックスとジェイモーによるシャッフルの、新たなる曲へ挑むかのような新鮮さと歯切れの良さが嬉しいではないか。バンドがいかにこの曲を大切にしてきたかが、その演奏ぶりからひりひり伝わってきた。

続くエルモア・ジェイムスから拝借した「Done Somebody Wrong」は、やはりデュアンの狂気染みたスライド・ワーク、時にリズム&グルーヴのすべてをスライド・バーで根こそぎ持っていってしまうようなプレイが絶品だったブルース。

今度はデレクがスライドを操る。彼の場合、リスペクトの念をオリジナル・ラインで表わすのが常。柄にもなくバリトラ&ダブル・ホワイツPU搭載の59レス・ポールで攻めのラインを紡ぐ。中盤のキメを経て、コリシディン・ボトルは一気に20f上まで駆け上がる。その迷いのなさにまた震え立つ。音も抜群にいい。ギター2本、ドラム2台、パーカッションにベースにハモンド・オルガン。この大所帯の中で、調和を図りながら主張を持たせるサウンド作りの難しさを、過去にデレクは語ってくれたことがある。ひたすら気持ち良く享受する一方のこの素晴らしいサウンドが、メンバー/スタッフ全員の試行錯誤とミュージシャンシップの果てに生み出されている事実。そこにまた感動してしまう。

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▲この日の公演では披露されなかったが、「Melissa」ではグレッグがギブソンJ-200を弾き語る姿も観られた。

「Revival」「Woman Across The River」「Don’t Keep Me Wonderin’」と代表曲が続く。そんな中で気づくことが多々あった。まずはバンドにおけるデレクのポジション。プロモーション用のバンド・アー写などでは古参勢の陰にかくれてはにかむ小僧っ子といった印象だが、どうしてどうして、ステージの中央、彼がイニシアティブを握る時間は驚くほど多い。構成の流れを指示するシーンなどからは、メンバー間の年齢差を超えた音楽的信頼関係がくっきりと浮かび上がっていた。
また、特にドラマーのふたりはデレクの音と動きに注意を傾けている様子で、例えば、ギター先導の場面転換に真っ先に反応するのはブッチだった。一方で、飽和気味のギター・ジャムをきれいにエンディングへと導くのはオテイル、お疲れのジェイモーは時折りバックステージへと消え、その交代要員としてマーク・キニョネス(perc)が嫌な顔ひとつせずジェイモーのドラム・セットに座る、など、普段音源や映像に向かっているだけでは気づくことがなかった、バンド間の役割分担や関係性を広く見渡すことができたのも、やはり生ならではだろう。

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ステージ・スクリーンに映し出される”ライト・ショー”も楽しみのひとつ。70年代初期のステージではゼラチン・ライトを駆使したサイケデリック・アートとして話題になったわけだが、これはオールマンズの蛇行を続けるインプロと相まり、良からぬ輩が良からぬモノで良からぬ状態に突入しやすいという”時代”ならではの総合演出でもあった。
現在はデジタル映像編集技術の飛躍的向上により、細かな配色美とダイナミックな展開、またバンド・サウンドとの見事なシンクロを実現。相も変わらず紫煙ゆらゆらな御仁ならずとも、脳内にモノアミン神経伝達物質が駆けめぐること必至で、オールマンズのシンボルであるマジック・マッシュルームの残像が、翌朝までまぶたに焼きついてしまうほどだった。

▲ライト・ショーのみならず、デュアン・オールマンの動画と舞台をシンクロさせる仕掛けもあった。

これだけは観たかった!というのが、1stアルバムに収録されるグレッグの代表作であり、ステージではハイライト~エンディング・ナンバーとして大きな見せ場になっている「Whipping Post」。個人的に、インプロのなんたるかの一切をこの1曲に学んだ。[chorus 2]を挟んで展開されるギター主導のふたつのジャム。10数分に及ぶ物語は、毎演異なる起伏を見せ、静から動へと魂揺さぶるダイナミズムを湛えながら道を切り拓いていく。A-Bm-Cというシンプルな骨格の上に肉づけされた、たくましく美しい稜線。デュアン・オールマン&ディッキー・ベッツ、ディッキー・ベッツ&ダン・トーラー、ディッキー・ベッツ&ウォーレン・ヘインズ、ディッキー・ベッツ&ジャック・ピアソン、ディッキー・ベッツ&デレク・トラックス、デレク・トラックス&ジミー・へリング、デレク・トラックス&ウォーレン・ヘインズ、ギタリストの組み合わせが変わってもその本質が揺らぐことはなかった。

そしてこの日、1stセットも終盤、突如轟いたベース・リフに驚きと喜びの声が上がる。通常なら、本編最後かアンコールと相場が決まっているのに……。昨年、C型肝炎の影響からツアー・キャンセルしたグレッグだが、力強くうなるハスキー・ボイスが完全復調を告げている。Run初日から好調ぶりは伺えたが、日を増すごとにその声は瑞々しく響いている。場内は割れんばかりの大合唱。さすが外国人。
テーマ・リフ後の1stソロは、このラインナップに落ち着いてからはデレクがとることが多かったが、ここでデレクはウォーレンを指差し、”Go!”指令を発令する。ちょっと面食らった感じのウォーレンだが、そこはギター・ソロ巧者、5フレットを軸に右へ左へと旅を出発させた。手には太いフィギュアの入ったレモンドロップ・レス・ポール。スラーを交え、”運指の教科書”のような美しい指さばきで徐々に加速していく。例えば、デレクがスケール・ライクなアプローチを見せる際は、オープンEチューニングゆえにポジション移動が慌ただしくなる(とはいえ華麗だが)。一方、ウォーレンのそれに無駄な動きは見られない。太い指なのに、まあ器用に動くこと。
打楽器の3人は、ギターのフレーズに呼応するよう細かにフレーズを変えている。それはバッキングにまわったデレクも同じくで、ベースのモチーフを据えながら符割とタッチを大胆に変え、”うねり”の創出に貢献している。互いに反応し合い、補完するという理想的なインタープレイ。つまり、単なる”ギター・ソロ”パートでないことを証明している。デュアン&ディッキー組の引き出しからおいしいところのみを抽出、じっくり丁寧に配合しながら最高のトーンを場内に注ぐギター・バリスタ、ウォーレン。彼の知的なフレーズが会場を満たすと、[chorus 2]へ突入する。

 

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デレクが舵をとる [chorus 2]明けは、明度と速度、そして音量をグッと落とし、ボリューム奏法を交えた”クールダウン”から。次第、スケールの狭間を流れていくような、デレクらしい短いパッセージが次から次へと紡がれる。アタックも徐々に強くなり、右手中指&薬指を弦に叩きつけ始める。悲鳴のようなチョークアップ、右手人差指1本での激しいラスゲアード。沸点まで上り詰めたと思えば再びクールダウン、とまさに息をもつかせぬ展開。バンドもデレクのフレーズを追いかけ、追い越し、先の読めない展開がゆえのスリリングさを煽る。

静の場面、後半の加速に向け、左手薬指にコリシディン・ボトルが装着される。1ピッキング+横方向移動の息の長いフレーズでバンドを牽引しながら、再度、山の頂きに向け遠慮なく疾走を開始する。スライド・プレイにおいても、押弦のそれと変わらない細かな符割がまた強烈だ。いかなる時もポーカーフェイスを崩さないデレクが、眉間にシワを寄せ寄せ、右手は手首のみならず肘を大振りさせる。Amスケールを噛みしめるように全員で駆け上がっていく本曲最大の見せ場、キメの時がいつ訪れてもおかしくない会場全体の高揚感が、いつもより長く持続する。まだだ。デレクはそう言わんばかりに22フレットを超え続ける。これにはたまらず鼻血ブー。この興奮は、生の空気振動からくる身体と心の震えだが、単純明解、これまで親しんできたどの音源をも凌ぐ演奏/表現力の高さに心底感動してしまったのだ。ここまでやるか。デレクの凄まじい狂気を感じた。

[第2回に続く]

 

 

20090813_AllmanClapton_Ph3.jpg【会場紹介】

ビーコン・シアターはニューヨーク、マンハッタンのアッパー・ウェスト・サイド、72丁目とブロードウェイに立地する1929年建立の中規模コンサート・ホールだ。シート・スタイルで2,894人 のキャパシティを持つ。

そもそもは映画館として建設されたが、音響特性の素晴らしさから多くのR&B~ロック・バンドが愛用するホールとして機能。昨夏よ り$1,600万をかけた改修工事が行なわれ、2009年2月に竣工した。中世ヨーロッパの建造物を思わせる美しい装飾・内観は一見の価値あり。ちなみに 2009年5月には、ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世がここで法話を行ない話題となった。

ビーコン・シアターから車で15分の距離にフィルモア・イースト跡地(外観はそのまま)がある。真ん中のレンガ色の建物がそれ。目の前の通りは、フィルモアのオーナーであったビル・グレアムの名がつけられている。

 

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▲写真左2枚がビーコン・シアター。右2枚がフィルモア・イースト跡地。

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