ライブレポート/BUCK-TICK

ライブ/イベントレポート by 編集部 2009年7月13日

B-T流ギター・ロックは、最新型の今が一番おもしろい

2009年7月1日(水) NHKホール

今年2月に、アルバム『memento mori』を発表したBUCK-TICKがホール・ツアーを4月より行ない、7月1日、2日のNHKホールでファイナルを迎えた。デビュー以来、単純なギター・ロックの枠に留まらず、アンビエントやテクノ、ノイズ、アヴァンギャルドなど、メイン・コンポーザー今井寿(g)の鋭敏な感覚を取り入れた広範囲にわたる自由なサウンドを展開してきた彼らであるが、近年はギターを前面に押し出したバンド・サウンドへと回帰。そしてこれがまた、単純な言葉ではあるが、たまらなくカッコいいものに仕上がっている。特に『memento mori』は、20年を超えるキャリアの中、新たな代表作となりうるほどの傑作と言え、当然それにまつわるツアーにも期待が高まるというものだ。

オープニングはアルバム同様、今井のリフから始まるソリッドでクールなロックンロール「真っ赤な夜-Bloody-」。ステージ背後に十字架のライトが点灯する中、2回目のAメロでは早くもステージ中央に今井、櫻井敦司(vo)、星野英彦(g)がそろい、観客を煽る。ギターはふたりともセミアコ・タイプ(ギブソンのES-335か?)のようだ。続く「Les Enfants Terribles」もノイジーなギターが交錯するロック・チューン。2Aでは今井がリード・ボーカルを取り、ソロではモジュレーションがかかったような不思議な音色で、曲全体のノイジーさとは裏腹なメロディアスなプレイを見せた。

今井と言えば、シンセ・ギターにも代表される”ギターらしくない音でのプレイ”もシグネイチャー・プレイのひとつだが、「Baby,I want you.」でのテルミン・ソロや、沖縄音楽的な雰囲気もある「Memento mori」、空を翔るようなスケール感のある「HEAVEN」でのアームとサスティナーを駆使したプレイ、幻想的な「謝肉祭-カーニバル-」での独特の壊れたスケールによるシンセ的な浮遊感のあるフレーズ、「Lullaby-Ł」でのスティール・ギター的なニュアンスのプレイなど、多彩な表現方法は健在で、その音感覚の鋭さにはあいかわらず舌を巻く。

その一方、B-T流歌謡ロック「アンブレラ」でのキャッチーな単音リフや、バラード「Message」でのクランチーな音色での美しいオブリの絡み方、樋口豊(b)がエレクトリック・アップライト・ベースを奏でた「Coyote」の前奏でのジャズ・ブルース的なアコギなど、いわゆるギタリストらしいプレイにもセンスの光る部分が多く、改めてギタリストとしての実力を感じさせた。

今井がそうやって自由にプレイできるのも、ジャズマスターやグレッチ、レス・ポールなどとギターを持ち替えつつ、クールに構えた星野が仕事師としての役割をしっかりと果たしているからこそだろう。「アンブレラ」でのジャキジャキとしたウラ打ちカッティング、「Message」でのベーシックなアコギ、今井の単音プレイを支える「Lullaby-III」のシャープなカッティング、2本のギターが絶妙に絡み合うリフがロックンロールな「天使は誰だ」などを聴くと、BUCK-TICKが実にバランスのいいツイン・ギター・バンドであることを再確認する。そんな中、星野の単音リフで始まり、今井とのハーモニー・リフへと展開する「MOTEL 13」では、星野のブルース・ロック的な渋いオブリ/ソロも堪能できた。

ライブ本篇はアルバム曲を中心に進められ、「謝肉祭-カーニバル-」、「Lullaby-III」の流れでは、アルバム・ジャケットのモチーフにもなっている骸骨のフィギュアを櫻井が持ち出してひとり芝居を演じる場面や、「天使は誰だ」の前には曲中のコール&レスポンス曲中のコール&レスポンス”愛 愛 LOVE LOVE”を観客に練習させる場面も。本篇のラスト「HEAVEN」のエンディングでは、リフをループさせた今井がその上で自由にギターを奏でる。まさに感性のままに奏でられる音塊といった印象だが、特にまとめることもなく今井が演奏を終了し、ループが鳴り響く中、退場。う〜ん、らしい(笑)。

アンコールは「Alice in Wonder Underground」、「スパイダー」、「ICONOCLASM」とノリの良い楽曲が続く。特に渦巻くグルーヴに乗せて、今井のヒステリックな単音リフと星野のキレのあるカッティングが交差する「ICONOCLASM」の濃度は、いつにも増して濃かった。

鳴りやまない歓声にこたえた2回目のアンコールは、今井のディレイ・フレーズからなだれこんだ、最新シングルでもある「GALAXY」。そして、今井の”ギタリストらしい”王道ソロも聴ける「NATIONAL MEDIA BOYS」。彼らのゴス・サイドとポップ・サイドが融合した個性的すぎる展開を見せるこの曲の持つ高揚感はすごい。メンバー紹介(星野紹介時に、上手サイドの照明が暗すぎたのか「続いて、ギター!……どこ行った?……」と櫻井が星野を見失ったのはご愛敬:笑)を挟み、ヤガミ・トール(d)が2ビートのリズムを叩き出すと客席からも大きな歓声が上がり、「LOVE ME」。まさにラストにふさわしいメジャー感のあるアッパー・チューンに合わせて、オーディエンスが左右に手を振る。

「続けていく」ということ自体がなかなか困難な中、20年以上にわたって不動のメンバーで活動を続け、確固たる世界観を保ちながらも飽くなき音楽の探求を続けてきた彼ら。その積み重ねてきたものは果てしなく偉大だ。早くも今秋には、スタンディング・ツアーが決定している。今のBUCK-TICKは、これまでにも増しておもしろいぞ!

【SET LIST】

01.真っ赤な夜-Bloody-
02.Les Enfants Terribles
03.Baby,I want you.
04.MOTEL 13
05.アンブレラ
06.勝手にしやがれ
07.Message
08.Memento mori
09.Jonathan Jet-Coaster
10.Coyote
11.謝肉祭-カーニバル-
12.Lullaby-III
13.天使は誰だ
14.スズメバチ
15.セレナーデ-愛しのアンブレラ-Sweety-
16.HEAVEN

〜ENCORE1〜
17.Alice in Wonder Underground
18.スパイダー
19.ICONOCLASM

〜ENCORE2〜
20.GALAXY
21.NATIONAL MEDIA BOYS
22.LOVE ME

文:中村健吾(ギター・マガジン編集部)
撮影:柴田恵理

TUNECORE JAPAN