ライブレポート/FRIED PRIDE

ライブ/イベントレポート by 編集部 2009年2月26日

結成10周年のスペシャル・ステージに見る、達人の達人たる所以。

FRIED PRIDE Live 10th Anniversary
2009年02月14日・東京国際フォーラム ホールC

暗転した途端、ステージ・スクリーンに彼らの足跡、アルバム・ジャケットが次々に映し出されていく。デビュー・アルバムを発表した2001年から毎年、律儀に1枚ずつアルバムを重ねてきたことが再確認できる。

ジャズの名門コンコード・レーベルより日本人として初めてのリリースとなる、まさに記念すべき1st以降、時にシーラEやマーカス・ミラー、マイク・マイニエリなど豪華ゲストの彩りを得ながら、プログレッシブに、ヒップに紡がれた作品たち。

10周年。FRIED PRIDEとしてのディケイド。ジャズ・シンガー、という通り一遍なイントロダクションが間抜けに思えるほど、すこぶるファンキーでブルージィな魂の歌唱を聴かせるShihoと横田明紀男の出会いは10年以上前にさかのぼる。バンド形態の活動が最初だった。そこからミニマムで自由に活動しやすいデュオという形を選び、FRIED PRIDEと名づけてからの歩み。その集大成となる祝祭である。

2月14日、バレンタインの夕刻、年齢層もさまざまなカップルや親子連れ、業界関係者、そして一見してそれとわかる少なからぬギター・マニアがお祝いに駆けつけた国際フォーラムで、ふたりはどこか重責を噛みしめるような、一曲、否、一弾一声入魂の姿勢・構成を叩きつけた。

横田のプロフィールは今さら不要だろう。達人、そう呼ぶに相応しいギタリストである。ステージにはギターが2本のみ、横田が絶対の信頼を置くホセ・ラミレス2CWEとゴダン・マルティアック・ジャズという潔さだ。この2本、ナイロン弦とスティール弦、さまざまなギターを弾いてきた横田が導き出したひとつの回答とも言えそうだ。

レオン・ラッセルの代表作「Song For You」の名アレンジでしっとりと幕上げする。Shihoの太く安定した低域と、横田のナイロン弦を細かにスライド&ビブラートさせる粘っこい表現は、続く「Close To You」も同様、静かに情熱的で、いきなり心振るわされる。達人は、それにしても達人だ。1ノートの情報量がとてつもなく多いのに、ノート自体もとてつもなく多い。別段ギタリストでなくとも、もとい某かの楽器演奏者でなくとも、そのすごさは一聴してわかる。

そんな横田を前にShihoが言う。”横田さんのギターしか知らなかったから、これが普通だと思っていた”。満場の観客は一様にこう思ったはずだ。”全然普通じゃない”。

しかし、そんな横田にも弱点がある。Fried Prideファンにはお馴染み(?)、精神面の弱さ(本人談)だ。彼らのステージ前半では必ず横田を盛り上げる観客参加型の儀式が執り行われている。それは彼に、スーパー・ギタリストとして、またユニット牽引者としての意識覚醒を促す、”リ~ダ~!”コールである。会場中がその声に包まれると、生まれ変わりを誇示するべく上着を脱ぎ捨てるリーダー。ここからが本気モードだ。

▼”リ~ダ~!”コール後。見よ、この自信に満ちた表情を。

そもそもファンキーな資質を持つ「Dig It !」はよりファンキーに。マルティアック・ジャズに持ち替え、押尾コータローよろしく(と言ったら失礼か)バシバシと指板をタップしまくる。このイキイキとした感じ。

実はこの日、横田のギターの師匠である潮崎郁男も会場に駆けつけており(一方でShihoの歌/ピアノの師匠も来場)、この晴れ晴れとギターを弾く愛弟子の表情を、ほっこり笑顔で温かく見守る姿が印象的だった。
 
歌詞を吟味するような歌唱が印象的だった4thアルバムの表題曲のあと、押尾コータローがステージに招かれる。手にはグレーベンMD。横田と押尾、ふたりのLOVE&RESPECTな関係は、最近では押尾が主催するイベント”GUITAR PARADISE 2008″でも披露&実証されたとおりで、美しい融和はもちろん、互いに火をつけあう様も見物でもある。

6th『Musicream』収録の、JBばりのファンキーなオリジナル「Words With Wings」。押尾とのかけ合いに注目が集まる中、Shihoはエンディングのシャウトを観客に強要、練習までするという。終いにはシャウトとともにジョン・トラボルタのあのポーズをしろ、と。達人ギタリストふたりに何度もエンディングを弾かせ、観客に何度もシャウトとポーズをとらせ(年齢層高めの方への配慮はアリ)、という女王様っぷりは……なかなかに気持ちよかった。

横田のナイロンはトータル・サウンドの芯を、押尾のスティールは輪郭を、それぞれ意図せず担当し、気持ち良くバランスする。リズムのキレはもちろん抜群。中盤のソロ。押尾の指が指板をすべり出す。前半は珍しくオクターブ奏法を見せ、後半にきらびやかなタッピングを決めるというナイス構成。そのまま横田がバトンを受ける。太いサウンドのままシングルノートがズラズラ紡がれる、圧巻。そしてお決まりの2小節ごとのコール&レスポンス。これにはShihoも満足そうにニッコリする。もちろん最後のポーズもバッチリ(?)決まった。

▼老若男女問わず、はいポーズ!

今度はサプライズ。横田が一度観てみたかったと言い残し、ステージをあとにする。そう、Shihoと押尾によるデュオだ。お題は、押尾が3月リリース予定の初のカバー作『タッジー・マッジー』にも収録する「Lovin’ You」。ちなみに、こちらのアレンジは素晴らしいの一語に尽きる。その手があったか!というアイディア満載。AGM Vol.40にてスコアを掲載予定なのでお楽しみに。閑話休題。表現力に満ちた声とギター、ふたりでしっとりラブリーに歌い上げる。優しい低音でリズムを導きながら、歌の合間にハーモニックスを投げ入れる押尾。この日初めて彼を観るという人も多かったはずで、その倍音の美しさとマジカルな両の手さばきに酔いしれたに違いない。

再び暗転すると、下手の天上から花びらが散り始めた。下では超本気モードの横田がホセ・ラミレスを構えている。ビブラートを交えて情感たっぷりに紡がれるメロディ、神妙な表情、静かな立ち上がりだ。粒のそろったアルペジオが会場を包む。そして荒々しいラスゲアード、はじき出されるハーモニックス、これぞまさしくギター・オーケストレーション。これだけ激しい曲なのに指使いがとてもキレイだ。やはり横田は、類い希なるテクニシャンであり、表現者である。ココゾ!のシーンで演奏されることの多いこの「スペイン」は、ギタリストとしての全力を投影できる数少ない楽曲なのだろう。この日はいつにも増してディープ・インパクトな出来だった。

今度は横田の畏友と呼べばいいのか、宇崎竜童が登場する。宇崎が手がける赤坂のライブ・バーNovemberEleventhに出演して以来のつき合いだそうで、よくよくセッションしている仲でもある。ここでは宇崎のデビュー曲でもある「知らず知らずのうちに」をフィーチャー。燻し銀の歌唱を真摯にバックアップした。

Shihoが合流してもう1曲。今度は宇崎もアコギを持つ。プレイヤーとしての自らを卑下しつつも、キレのあるストロークを披露する。ダウンタウンブギウギバンドの「サクセス」だ。男と女の低音がぶつかり溶け合うハーモニー。妙な色気を発散している。オリジナルのシンプルなコード進行に、フックを与えていく横田。スパイスの分量も的確だ。熱く、甘いセッションとなった。

中沢剛(perc)が合流しての後半は、16ビートで疾走するお馴染みの「Smoke On The Water」、リズム・アプローチや細かなスラーのうまさが光る「Unbreakable」と、彼らの足跡における重要でグルーヴィな楽曲が並んだ。本編最後のオリジナル曲「泣き顔ロケット」は、”泣き顔なんてロケットに載せて飛ばしてしまえ”というふたりの優しいメッセージをかわいらしく表現したシンプルな楽曲。ギター・プレイ自体も比較的シンプルで、”歌を伝える”というミュージシャン横田の考えがうかがい知れる。とはいえ彼は決してバックアップ・ミュージシャンではない。あくまでフロントマンであり、リーダー。そんな立ち位置もはっきりと見えるステージだった。弱腰でひょうひょうとしたMCにはいちいちずっこけてしまうのだが、それが彼の人間的な魅力を際立たせてもいた。

▼全員のセッションは、いわずもがな、温かく、熱く、優しい音の紡ぎ合い。



“ギターは弾くんじゃない、はじくんだ!”。全力の横田を観ていると、そう言われている気がした。ただ漫然と音を並べるのではなく、強い意思を持って、その1音をはじく。すべてが必然的な音。贅を尽くしているようで無駄のないプレイ。アニバーサリーのこの日、達人の達人たる所以を見せつけられた思いだ。表現者としての熟成期、ふたりの次なる10年への期待は大きい。

文:渡辺真一(アコースティック・ギター・マガジン編集部)
写真:Takahide Okami

[SET LIST]

01. Song For You
02. Close To You
03. Dig It !
04. That’s My Way
05. Words With Wings(with 押尾コータロー)
06. Lovin’ You(Shiho&押尾コータロー)
07. Spain(横田明紀男ソロ)
08. 知らず知らずのうちに(横田明紀男&宇崎竜童)
09. サクセス(with 宇崎竜童)
10. さよならの向こう側
11. Smoke On The Water
12. Unbreakable
13. 泣き顔ロケット

─Encore1─
01. 君の瞳に恋してる
02. You’ve Got A Friend(with 押尾&宇崎)
─Encore2─
03. Imagine

[FRIED PRIDE 公式サイト]

[押尾コータロー 公式サイト]

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