ライブレポート/ROCK LEGENDS(スモーキー・メディスン)

ライブ/イベントレポート by 編集部 2008年5月10日

34年の時間を埋めた奇跡のファンキー・グルーヴ。やっぱりCharはカッコよかった。

ROCK LEGENDS(スモーキー・メディスン)
2008年4月20日・JCBホール

前日の四人囃子&クリエイションの興奮冷めやらぬまま足を運んだJCBホール。あのスモーキー・メディスンの完全復活ライブが今夜実現する。

若き日のCharが在籍した、おそらくは日本で一番有名な”アマチュア・バンド”。Charファンでその名を知らぬ者はいないだろう。しかし、一枚のアルバムも残さず解散したため、そのサウンドは当時をリアルタイムで体験した者の頭の中にしかなかった。

スモーキー・メディスソ(佐藤準は不参加)としての再結成やCharのレコーディングへの参加など、これまでにも散発的にメンバーが集うことはあったが、佐藤参加の再結成ライブは初めてである。

『ギター・マガジン』2008年4月号森園勝敏との対談でCharはスモーキー・メディスンを”どろどろしたものを俺と準でどれだけポップにしようかっていう考えでアレンジしてきたバンド”と評していたが、それだけ佐藤の占めるウェイトは大きいようだ。

同じインタビューでCharは”俺らは永遠のアマチュアみたいなところがあるから、何をしてもOK。でも真面目にやる”と語っていた今日のライブ。一体どんな展開になるのだろうか。

1973年の東京、Char、鳴瀬喜博(b)、金子マリ(vo)、佐藤準(k)、橋本章司(d)というスーパー・ミュージシャンが集ってバンドを結成した奇跡。その意味を今夜、僕は知ることになるだろう。期待に胸が躍る。

ライブは18時16分にスタートした。ステージいっぱいにスモークが立ちこめるというベタな演出がムードを盛り上げ、佐藤が神秘的なSEを弾き始める。すぐにほかのメンバーが登場して会場は割れんばかりの拍手に包まれた。

Charは近年メインで使用しているフェンダー・カスタム・ショップのマスター・グレード・ストラトキャスターを手にして、ゴリゴリにハードなリフを弾き始める。

どこからどう聴いても70年代ハードロックなこの曲はChar作曲、金子マリ作詞で内田有紀に提供した「Baby’s Universe」だった。順当といえば順当な選曲だが、まだ手の内がわからない会場はいまひとつ乗り切れない感じ。そんなことなど意に介す様子もなく、Charはのびのびとギターを弾いている。

2曲目は金子の初ソロ・アルバム『MARI FIRST』に収録されていた「Street Information」で、ようやくこの先の展開が読めてきた。金子をフロントに置き、Charはサイドマンに徹して、淡々と自分の役割をこなしている。

こういうCharを見るのは、考えてみれば貴重な機会である。しかし、ここぞという時には、突如としてフロントマンに変貌し、分厚い音で自己主張している。というか、自然とそうなってしまうのだ。踏み込むワウにも力がこもっているように感じられた。

続く2曲も『MARI FIRST』からの曲で、序盤は”金子タイム”ということのようだった。

ここまでの印象は、ハードロック・バンドそのもの。ナルチョの音もデカかった。この頃には、ステージと会場はグルーヴを共有していた。そして、”このバンド、いい”と心から思わせてくれた。

ここでCharがMC。

「どうもこんばんは。アマチュア・バンドのスモーキー・メディスンです。今日はアマチュアのためにこんなに多くの人に集まってもらってありがとう」

そして、メンバーをひとりひとり紹介する。結成当時の、先輩後輩の関係を学年単位で説明しながら。

そして演奏されたのはジェフ・ベック・グループ(以下JBG)の「Situation」だった。客席から歓声が上がる。ファンの間では周知のように、スモーキー・メディスンはJBGに範を取ったバンドである。続く「I Got To Have A Song」もこれまたJBGの曲で、待ってましたのファンキー・チューン。結局のところ、続く3曲もJBGのカバーだった。

ぐんぐんぐんぐん演奏のテンションが上がってくる。目で確認できるのだ。それは、当時のライブでもよく演奏されていた「Going Down」でハイライトを迎えた。バンドは序盤のヘヴィロックから、ここにいたって完全なるファンキー・グルーヴへと変化を遂げていた。ああ、このスリル。これがスモーキー・メディスンなのか。感動が胸にこみ上げた。

次なるコーナーはバンドのオリジナル 「Song For My Life」で始まった。Charと金子のツイン・ボーカルが今さらながら耳に新しい。

「Strange Space」でCharはギブソンSGに持ち替えて、うねりまくるカッティングを披露。これだ。「闘牛士」で初めて聴いて、心底しびれて以来、もう30年以上も慣れ親しんで手本としてきたスリリングで安定感のあるカッティング。Charがことあるごとにくり返す”16ビート”とは何か。その答えがここにあった。

もはや最高潮の盛り上がりの中、待ってましたの「Joy To The World」。当時の十八番だったスリー・ドッグ・ナイトのカバーである。

そして、ストラトに持ち替えて「Show What You’ve Got Inside Of You」へなだれこむ。この曲はCharのソロ・アルバム『MOON CHILD』に収録されたもので、スモーキー・メディスンのメンバーが集って演奏されている。ライブでのプレイも堂に入ったもので、惚れ惚れするようなグルーヴが渦を巻いていた。

ここで本篇終了となったが、凄まじいアンコールにすぐさまメンバーは引き戻された。すかさずCharがMC。

「お言葉に甘えて残業させていただきます。日曜日の残業は高くつきますよ」

アリーナ席が総立ちとなった。そしてオリジナルの「Never Ending Road」、『MARI FIRST』に収録の「Honey」が披露された。そしてラストはやはり『MARI FIRST』から「Don’t Cry My Baby」。極太のハードロックだった。Charはゴールドトップのレス・ポールで華麗なプレイを聴かせた。

これで本当に終わりのはずが、鳴りやまぬ拍手。このバンド、すごい。おそらくは同じクオリティで34年前にこのバンドが存在していたのだと考えると体が震える。しかし、今日のライブがその年月を埋めた。目の前にいる彼らがすべてだ。

拍手にこたえて再びステージに上がったCharは「やる曲ないんすよね。精神的にも体力的にも目一杯なんで」と言いながらも、心底うれしそう。

会場からは、あれをやれこれをやれと、リクエストが飛ぶ。やがてCharがゆったりとしたブルースを弾き始め、大きなセッションへと発展していく。ステージ上でタバコの煙をはき出しながら歌う金子マリ。すべてが様になっている。大きな感動を会場のすべての人が共有し、大団円を迎えた。

この日、集った人の中に、Charにあこがれてギターを弾き始めた人は相当数いただろうと思う。何を隠そうこの僕もそのひとりだが、Charのように弾きたいと願って、あっと言う間に30余年。少しも追いつくことはない。

それでもCharがギターを弾き続けるのを見て、その変わらぬカッコよさにあこがれ、ギター人生の指標としてきた。それは今後も変わらないだろう。僕と同じ思いの人が多数いたことを確信するのである。

文:野口広之(ギター・マガジン編集長)
写真:吉浜弘之/テレビ朝日

【SETLIST】

1. Baby’s Universe
2. Street Information
3. 永遠の愛を捧ぐ
4. Get To Paradise
5. Situation
6. I Got To Have A Song
7. Tonight I’ll Be Staying Here With You
8. Glad All Over
9. Going Down
10. Song For My Life
11. Love Tou More(~A Lachtkey)
12. Strange Space
13. Joy To The World
14. Show What You’ve Got Inside Of You

--ENCORE–
15. Never Ending Road
16. Honey
17. Don’t Cry My Baby
etc.

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