ライブレポート/デレク・トラックス・バンド日本ツアー(初日)

ライブ/イベントレポート by 編集部 2007年12月6日

元ギター・マガジン編集部員による、ちょっぴり濃い口なレポートをお楽しみください。

PHOTO:Masayuki Noda


日本ツアー初日(2007年11月25日)の恵比寿ガーデンホール。

当初予定していた恵比寿リキッドルームの2daysが即完。追加公演12月1日(土)のチケットも瞬く間に完売、もう1本追加されたのが図らずもこの初日となったわけです。

17時30分開場。JR恵比寿駅の長いオートウォークを抜けた先、クリスマス仕様のイルミネーション、そして偶然にも満月に照らされたムード満点の恵比寿ガーデンプレイス。多くのカップル。その陰に南部男の集団。いいですねえ。その容貌から多くがギター弾きじゃないかと推測できます。私には列をなす多くの方の左手薬指に、コリシディン・ボトルが見えた気がしました。

2階ロビーの喫煙スペースで一服していると、向こうから変酋長がやってくる。ギター・マガジン・ブログ読者には周知でしょうが、無類のミュージック・ジャンキーである変酋長もまた、見える人には見えるコリシディン・ボトルを持つひとり。相好の崩しっぷりを見るに、そうとう楽しみにしていた様子。開演時間が迫るとギター・マガジン編集部からS口、F兄貴、ベース・マガジン編集部のKと続々集結。1階シート・スタイルの最後列で観戦とあいなりました。

前置きばかりで失礼しましたが、18時10分いよいよ開演。ステージを注視すると下手側に2台のフェンダー・スーパー・リバーブ(黒パネル)。よし、いつものデレクのセットに間違いなし。さあジワッと潤む眼の先にメンバーが上手から登場してきます。万雷の拍手。デレクの手にはいつもの2000年製SG61リイシュー。そうそう、きたきた! デレク・トラックス・バンド(DTB)のステージは毎日セットリストが変わる。特に1曲目は何がくるか予想できないわけで、もう頭から期待が高まるばかり。

“ふわ~ん”とやわらかに鳴ったスライド・トーンにハモンドが絡む。一瞬のブレイクののち、一気に音量が上がる。マイク・マティソン(vo)の歌唱をフィーチャーしたソウルフルなナンバー「I Know」。不勉強にもこの曲の詳細はI don’t knowなのですが、どうでしょう、ゴスペル・ルーツなカバーではないかと思いました。スライド・バーが指板を目一杯駆け抜ける、震えたつオープニング。

続けざまにお馴染み、奇才ローランド・カークのカバー「Volunteered Slavery」へ。この曲、過去に『ライヴ・アット・ジョージア・シアター』『ソングラインズ』と続けて収録されたDTBには欠かせない1曲。ながらその容貌は日々刻々と変わる。たとえば、前者ではkey=Fのフル版、後者ではkey=Cに落としたオープニング版と化け、本日はkey=Cながら新しいリフを組み込んだフル版で演奏された。コフィ・バーブリッジ(k,flute)のフルートとスライド・ギターのユニゾンによる幕開けは、なんらかの民族儀式の序章を告げるような荘厳な雰囲気で、高揚感を揺さぶります。さらに音を切らさず、「Key To The Highway」のリフに入る。これは昨年のクラプトン・ツアーの再演を観るようで、クラプトンにデレクの紹介を受けたと思しき人たちが大きな声援を送っている。

うん、デレクの音は間違いなくあの音だし、アンサンブル・サウンドも素晴らしい。ただやはりステージから遠く、音も若干遠いのが原因なのか、座って観ているからなのか、はたまた単に夢見心地なのか、2004年に渋谷クアトロ~日比谷野外音楽堂で体験した、あのグワッと圧倒される感じが足りない気がするのも確か。む~ん、でも遠くピンスポットに浮かび上がるデレクの姿は、これまで何度となく観てきたデュアン・オールマンのブート映像に重なるものがあり、なんだかわかりませんが、ありがたや~と拝伏。

ステージは、オールマンズに縁が深~いキング・カーティスの「Soul Serenade」、そしてジレンマを表現したであろうオリジナル曲「So Close, So Far Away」と続く。両者とも甘くジャジィなテイストで場内を優しく包み込む。と同時に、心の揺れを見事に表した後者などは、彼らの演奏能力の高さを静かに物語っていた。

ここでようやくデレクが口を開く。下手から順繰りのメンバー紹介。27日までの3日間、ステージ上で彼が言葉を発したのはこのメンバー紹介のみだった。とてもシャイな性質なのだろうけど、取材の折りなんかは真摯で雄弁。自らの音楽、ギター・プレイなどについていつも熱っぽく語ってくれる。今回のスペシャル・インタビュー(ツアー終了後に行なう予定)が実に楽しみです。

ステージを見やると、マティソンがイスを二脚運んでくる。そしてギター・テクニシャンがデレクに手渡したのは、リゾネイター・ギター! ザワざわZAWA。昨年のクラプトン・ツアーでもアンプラグド・コーナーがありましたが、もしや……。リゾネイター特有のコ~ン!としたサウンドとともにブルースが飛び出してきた。

2ndアルバム『アウト・オブ・ザ・マッドネス』にも収録される「Preachin’ Blues」。もちろん、デルタ・ブルースの始祖、サン・ハウスのあれだ。むほほほっと唸っていると、メドレーで「Soul Of A Man」へ。これはデレクの奥方スーザン・テデスキもアルバムでやってましたね。

実はここ最近、ステージ中盤にブルース・タイムを必ずはさんでいる彼ら。漏れ聞こえてきた情報によれば、次作はどうも”ブルース”になるようで、ここらがそのひとつの答えなんじゃないでしょうか。

で、驚いたのは次。今度はビザ~ル・ギター(グヤトーンかな)を運んできたテク。椅子のうしろにはビンテージのフェンダー・ツイード・デラックス。グッシャリ歪んだチープな音で「Rollin’ & Tumblin’」と同じチェンジの「Meet Me At The Bottom」が始まった。目をこじ開けてギターをよーく見ると、5フレットにカポ。おへ!? すべてのkeyをオープンE(ノン・カポ)で弾いてきたデレクが、カポ!?

そういえば2007年2月号のインタビューで、”カポを使わないのはたまたまだよ”なんて語っておりましたけど。しかもですね、通常このテイストのリフを弾くにはオープンG系にするのが定石。ということは、デレクもオープンGなのか~!? うんにゃ。これはどうもkeyがA。つまりオープンEのまま,2~4弦を工夫してあのリフを作り出したよう。いや~~さすがデレク! 5カポにした理由……これはインタビューでも聞いてみたいのですが、2~4弦を使ってのリフになるぶん、高音感を稼ぐための処置だったのでは?なんて邪推しましたが、さて。

スミマセン。つい長くなってしまいましたが、ライブはまだ中盤なんです。

ブルース・タイムはもうちょい続きまして、お次も2nd収録の「44 Blues」~「Done Got Over」のメドレーで、しかも今度はダンエレクトロ(赤塗装/2リップスティックPU)を手に始まっちゃった。

「44 Blues」はオールマンズのステージでもお馴染みのまったりたっぷりなブルース。「Done Got Over」は一聴「Feel So Bad」にも聴こえますが、似て非なるブルース。ブルースはみんな同じに聴こえるって? いやいや、それぞれに物語があるんです。そこがブルースの面白いところですから。

そうそう、先の「Meet Me ~」以降の3ブルーズはバンド・アンサンブルなんですが、なんとベースのトッド・スモーリーもグヤトーン・ギターを手にしているんですよ。ピック弾きでベース・フレーズを奏でるっちゅーこのスタイル。もろハウンド・ドッグ・テイラーではありませんか! DTBのブルース指向、そうとう本気なようです。

シッティング・ブルース・セットを終え、ステージはいよいよ後半。再びSGが手に戻ると、なぜでしょうねえ、こちらがホッとした気分になるという。演奏されたのは「Get Out Of My Life」。やはり最近のステージの中核をなすブルース・ロックで、大きなリフを刻む歌伴、B.B.キングばりのチョーク&チョップが炸裂するソロと、戦前風味から時代性をグッと引き戻してくれました。

ブルース色を一変させたのが、必殺のジャズ・スタンダード「My Favorite Things」。待ってました! チェンジのタイミングやソロの小節数も決まっていないインプロ。ブルース・カバーも良いけれど、これがDTBライブの真骨頂でしょう。もともとデレクのスタイルはホーン・ノート(やブルース・ハープ)などからインスパイアされたわけで、ブレス感のあるフレージングが魅力のひとつ。「Greensleeves」や「Cheesecake」などこの手の曲こそ彼の十八番ではないでしょうか。やはりやはり、長尺で展開された本曲こそ本日のハイライトと呼べる出来でした。

なんでもデレクの一挙手一投足で展開が変わるようで、合図はほんのわずかな動きのみ。それを見逃すとチェンジから置いてけぼりになってしまうんだそう。メンバーは音を楽しみがらもデレクの動きに集中。う~ん、とっても良い緊張感。15分強のインプロの中盤、コフィのフルートが軽やかに舞い、ほどよく歪んだギターが道しるべを作り、ベースとドラムのビートが跳ねる。静から動へのダイナミズムに興奮しきり。この日この時にしか味わえないバージョン。いやあ、しみじみ、最前列で音楽に身を預けながら観たかった……。

巨匠ソロモン・バークの大ヒット・カバー「I Wish I Knew」。インスト後のソウルとあってか、歌が冴え、こちらも染み入ります。デレクはパーカッシブに歌のバック・ラインを作り、ソロではロング・トーン~速いパッセージと美しくスライド・バーをさばく。重鎮パーカッショニスト、カウント・ムブトゥの導きで満場の手拍子が起きる。シート・スタイルだったせいもあり、ここにきてようやくステージと一体化した感じ。この手のバンド、ブルーノート系クラブ以外でシート・スタイルをとるのは珍しいこと。オーディエンスの反応がわかりづらいぶん、メンバーもどこかやりづらそうかなとも。リズムがリットし音が止むと、大きな拍手の向こうで本編終了が告げられた。

帰らないで~!の声に呼び戻されたDTB。女性ゴスペル・ギタリスト、シスター・ロゼッタ・サープの名品「Up Above My Head」でこちらの期待にこたえてくれる。う~ん、デレクはこういうアッパー・ソウルな歌伴も最高~! スライドだけじゃない。親指と人差指によるコンビネーション・カッティングや、この曲の途中にはさんだ「Soul Stew」のダブル・ストップなど、ファンキーなアプローチも抜群に素晴らしいわけです。

“サンキュー、シー・ユー・スーン”とヨンリコ・スコット(d)。正味100分。う~ん、早くね? ようやくステージも会場も温まってきたところなのに。アメリカ~ヨーロッパ~アメリカ~日本という強行スケジュールの疲れもあるのか? やはり1Fシート・スタイルにバンドも乗り切れなかったのか? 単に追加公演だから? それともこちらの期待しすぎ?

楽曲を追っていけば内容の良い曲は確かに多かったけど、どこか消化不良な部分も。思うに、クラプトン・ツアーにおけるデレクを期待した人には、「Key To The Highway」やブルース・タイムなど見どころが多かったかもしれない。ただし,デレクのワールド・ミュージック指向……つまり全方向的な魅力を知るファンには、”More!”と思うところも多かったかな。

ともあれ、明日以降どんなセットが飛び出し、どんな演奏内容になるのか、そんな期待を煽られたところで、初日のレポートを終えます。乱文・長文、大変失礼しました!
(渡辺真一/アコースティック・ギター・マガジン編集部)

[ソニー・ミュージック-デレク・トラックス・バンド]
[アコギ・マガジン・ブロク]

『ギター・マガジン』2008年2月号には、デレク・トラックスの来日公演機材紹介および「デレク・トラックスと小沼ようすけ対談」が掲載されています。

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