「機材話あれこれ」 養父貴×渡辺具義 対談・第5回

養父貴×渡辺具義対談 by 養父貴×渡辺具義 2011年8月6日

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養父貴×渡辺具義対談の最終回は、”機材”をテーマにお話しいただいた。プロがどういうことを考えて機材を選んでいるのかは、多くのギタリストの参考になるはずだ。また、まるで子供のように情報交換をする2人の姿は、音楽への愛情が全開で思わず微笑んでしまうほど。ぜひ、覗き見していただきたい。そしてこの対談の後に、各々が薦められたアイテムを購入したのは言わずもがな!

※上の写真は左が渡辺氏、右が養父氏。養父氏のプライベート・スタジオにて撮影。

最近の自分の中での流行りはレス・ポールなんです(渡辺)

養父:渡辺さんが、いまメインで弾いているギターはストラト? 『サックスに学ぶおいしいギター・フレーズ99+2 ジャズ編』では、ストラトのフロントで弾いている感じだったから、「ああ、ストラト使いなんだぁ」って思ったんだけど。

渡辺:あの本では、”もろジャズ”にしたくないなっていうこともあって、あえてストラトを使ったんですよね。335とかフルアコだと、ロック/ポップス系に応用できるという意図も伝わりにくくなりますし。

養父:もろジャズじゃない人たちにも、アピールしたいということね。なるほど。ラリー・カールトンが好きっていう話だったから、335かなっていうイメージもあったんだけど。

渡辺:今日は335を持ってこようか悩んだんですけどね(笑)。実は僕はずっとストラトがメインだったんですけど、最近の自分の中での流行りがレス・ポールなんですよ(笑)。それで、今日はヒスコレ(Historic Collection)のレス・ポールを持ってきたんですけど……。

養父:ああ、これは良い音してるね。しかも弾きやすいし。

渡辺:レス・ポールのくせに軽いですよね。ちなみにこれは唯一、人から買ったギターなんです。僕は自分で良い音にしていくのがすごい好きなので、中古って全然買わないんですけどね。オールドにかなわないのは分かっていても、新品を買っちゃう、という。

養父:パーツは替えたりしているの?

渡辺:自分で替えたのは、サドルをチタンにしただけです。ペグがグローバーなのは、前のオーナーが替えたみたいですね。

養父:そうなんだ。チタンはやっぱりサステインが伸びる?

渡辺:サステインも伸びますし、分離がすごく良いですね。養父さんのこのギターは、どういうものなんですか?

養父:Shin’s Music製のいわゆる”お仕事ギター”で、シングル-シングル-ハムという構成です。シングルが3つだとハードな感じの歪みが出ないから、リアはハムバッキングにしている。現代っぽい感じのギターですね。

渡辺:このハムバッカーは?

養父:セイモア・ダンカンのANTIQUITYで、ちょっとオールドっぽい感じなのかな。

渡辺:実は僕はいま、”お仕事ギター”が無いんですよ。いままではジェフ・ベック・モデルのストラトを使っていたんですけど、やっぱり、リアはハムが欲しいじゃないですか? 密度がギュッと締まった歪みが欲しい場合がありますから……。

養父:そうそう。

渡辺:シングルだと「カラーン!」って強すぎて。

養父:分かる。そういうときを考えて、僕もリアだけハムにしているんだよね。じゃあいまは、メインが335とレス・ポールと、ジェフ・ベック・モデルのストラト? 男っぽいねぇ。

渡辺:いやぁ、あまりに男気すぎるんで(笑)、”お仕事ギター”としてPRSを買おうかと思ってはいるんですけど。

養父:PRSは良いよね。売れているのには、やっぱり理由がありますよ。抜群に良い音だからね。”お仕事ギター”としても、最適でしょう。

渡辺:すごい飛んできますし、良い音ですよね。特に海外のハードロック系のギタリストには、使っている人が多いですね。

養父:ちなみに、今日持ってきたレスポールなんかでスティーヴ・ヴァイ的な演奏をするのは難しいの?

渡辺:いまとなっては難しいと思います。やっぱり09の弦を張って、アイバニーズのギターで……ってなりますよね。

養父:やっぱりそういうことなんだ。テクニカルなセットアップが必要になる。

渡辺:そうですね。

機材選びの旅は行くも地獄、戻るも地獄(養父)

養父:渡辺さんが最近オススメの機材って何かありますか?

渡辺:いきなりピックの話になりますけど(笑)、V-Pickって知ってます? お手軽に良い音がでるので、オススメです。でも、最近ちょっと反省して、使うの止めようかなって思っているくらいなんですけど(笑)。

養父:手軽に良い音が出るんだったら、全然良いんじゃない?(笑)。うん、これは弾きやすい。カッティングも全然問題無いね。手のなじみも良いですし。

渡辺:いやー、でも使っていると下手になるんじゃないかなっていう不安も出てきて(笑)。倍音がすごく出るし、ちょっと弦に引っかかる感じも良いんですよね。クッと。

養父:ニュアンスで勝負する人は、弦に引っかかる感じが欲しくなる。V-Pickには、それがあるよね。レスポンスが早くてカッティングがしやすいピックを探しているんだけど、なかなかその両方っていうのは無いんだよね。

渡辺:V-Pickにはいろいろ種類があるんですけど、これはV-LPL(Large,Pointed,Lite)というモデルです。ちょっと高いけど、耐久性はあるから良いと思いますよ。削れ方も良いですし。

養父:そっちに行こうかな(笑)。

渡辺:と言いつつ、実は別のピックもポケットには入れていたりするんですけどね。

養父:次に行こうとしているのは、何なの?

渡辺:いや、実は戻っているんですけど。(JIM DUNLOPの)JAZZ IIIのでっかい方に……。

養父:ああ。あれも悪くないよね。

渡辺:ずっとフェンダーのティアドロップのヘビーを使っていたので、形状はそれに近くて、尖っているものということで……。

養父:ピック探しの旅も、永遠に終わらない(笑)。じゃあ、ケーブルなんかはどうですか? 僕が最近良かったなって思っているのは、PRSが出しているケーブル。これは、最近の中ではすごい衝撃だったかも。楽器店で何本か高級ケーブルを弾き比べてみたら、抜群に良かった。レスポンスが早いのと、ちょうど良いところに音色が集まってくれる感じで。単にハイファイだと、嫌な成分も出ちゃうんですよ。だけど、それがちゃんと音楽的なところになっていて、しかもレスポンスが早い。渡辺さんはどこのを使っているの?

渡辺:僕はアンソニー・ジャクソンが「最高!」って言っているパッケージの……ああ、そうそう、レクストですね。もともと音域なんかがベースにすごく良いって書いてあったんですけど、そのままギターで使っています。もう、全部出してくれるんですよね。しかも、すごく色気のある感じもする、という。”弾き手次第のケーブル”っていうところはありますけどね。

養父:ああ。上手いプレイも、ヘタなプレイもそのまま出ちゃうっていうね。でも、それは正直で良いですよね。

渡辺:そこが誤魔化せるケーブルは、ちょっと男気に欠ける(笑)。でも、ケーブルって全然気にしなかった時期も長かったんですけど、弾き比べをしてしまうと……。

養父:違いが分かると、元には戻れない(笑)。だから、どんどん元には戻れない道を突き進むしかない(笑)。行くも地獄、戻るも地獄、みたいなね。だったら行っちゃうしかない! っていうことでしょう。

渡辺:知らなければ良かった……っていうことですよね(笑)。

養父:そうそう、知っちゃうとね。やっぱり、より良い演奏をしたいわけじゃない? ただ難しいのは、例えばケーブル1本を替えただけでも、システム全体のバランスが変わってしまうことはあるわけで。そうなると、全部見直さないといけなくなる。自分の中でもシステムを変更するタイミングを計らなければ行けないし難しいですよね。だからアイテム選びもまた、終わりの無いゲームということになる。

渡辺:本当にややこしいですよね(笑)。

機材選びにおいては出したい音のイメージが必要(渡辺)

養父:エフェクト関係は、どんなものを使っています? 僕が特に興味あるのは、歪み系なんですけど。

渡辺:TCエレクトロニックのNOVA Systemというマルチエフェクターを使っています。あれは歪みだけはアナログ回路で、タッチもちゃんとコンパクト・エフェクターの感じが出るんですよね。どのギターで使っても合いますし。見た目は、すごくデジタルな音が出そうなんですけどね(笑)。

養父:プリセットはできるの?

渡辺:できますよ。クランチ・チャンネルとリード・チャンネルとか、そういう感じで使い分けています。しかも、個別に切れるので便利ですね。

養父:コンパクトみたいにも使えるし、マルチでも使えるというね。

渡辺:そうですね。エディットも簡単で、リハでディレイ・レベルを合わせてそれをストアしちゃうとかもすぐできます。

養父:仕事用では重宝しますね。

渡辺:マルチを1つだけだと、セッティングも早く済みますしね。ただ、場合によってはXoticのBBを前に挿すこともあります。養父さんのエフェクト・ボードには、歪み系がたくさん入っていますね。

養父:使うギターによって歪みが変わるので、4種類入っています。335の場合はRATかチューブ・スクリーマーのMODですね。で、フロントのクリーンを少しだけ歪ませるときはRATをよく使うんですけど、これはジョンスコのイメージですね。あの感じが出したいなって。ストラトのシングル用のクランチは(HUMAN GEARの)FINEです。

渡辺:この赤いやつは何ですか?

養父:Blackstarっていうチューブ系の歪み(HT DISTX)で、本当はメタル専用マシンみたいなのを、”ドライブの目盛り1つだけ”って感じで使っています。ちなみに、もっと歪ませると、こんな感じ(笑)。

渡辺:弦の感じをちゃんと出しながら、歪んでいる。良いですね。

養父:Blackstarは何種類かあって、緑色のヤツ(HT DUAL)をよく見るかな。そっちはもう少しクランチ気味なんだと思うけど、まだ試していない。実はBlackstarは、エフェクト・マニアの人に教えてもらったんだけどね(笑)。

渡辺:マニアの人は、知識の量がハンパじゃないですよね。ところでこのボリューム・ペダルは、足の動きとの連動感がすごく良いですね。見ただけでも分かります。

養父:カーブが良いですよね。ボリューム・ペダルって音質変化が大きいんだけど、これは試した中では一番音質劣化が少なかった。カーブもなかなか良い感じだし、オススメです。Shin’s Music製(PERFECT VOLUME PEDAL)ですね。

渡辺:音を上げていくと、最後に一気にレベルが上がってしまうモデルもあって、ボリューム奏法みたいなことをしようとすると困る場合がありますよね? でもこれは、音が出る感じと動きが一致している。良いですね。

養父:ポッドも医療用のもので、相当こだわっているみたいですよ。そういえば、いわゆるシミュレーター系ソフトは使ったりします?

渡辺:録音するときは結構使いますね。あとからエディットできるのは、やはり便利です。歪みの量を変えたり、もうちょっと丸くしようとか、オケに合わせて変えられますから。いま使っているのは、Amplitube Fenderですね。

養父:ああ、Amplitubeは評判良いよね。

渡辺:Amplitubeにもいろいろラインナップがあるんですけど、Amplitube Fenderにはフェンダーしか入っていないんですよ(笑)。どうせ僕はフェンダーしか使わないから……って思って。

養父:さすが(笑)。

渡辺:面白いのは、実機ではあんまり好みじゃないスーパーソニックが、ソフト上のはすごく良いんですよ。まあ基本的にはフェンダー公認だけあって、どのモデルもすごく似ていますけどね。お店でパソコンで試奏したときも、普通に試奏しているみたいですごく楽しかったです。クランチの音なんかも良い感じで、かなり長い間弾いちゃってましたね(笑)。ただ、本当に仕事のことを考えたら、マーシャルやオレンジなんかも入っている方が良いでしょうけど……。

養父:Pro Toolsなんかも、最近はシミュレーターがすごい良いらしいしね。僕自身は”アンプ野郎”なんだけど、これは完全に趣味の領域(笑)。特に録音では、シミュレーターが有利なのは分かります。結局、機材選びもエンドレスっていうことになっちゃいますが、こだわることで良くなる余地があるなら、少しでも底上げしたいというところですよね。ギターの上手い、ヘタって70〜80%は腕だと思うんですけど、だからといって残りの20〜30%、機材選択などで損をするのはもったいない。そういう感覚もあるんですよね。

渡辺:あと機材選びにおいては、イメージがないと意味が無いですよね。”良い音の出るオーバードライブ”という一般的なものは、どこにも売っていないわけで。やっぱり自分の出したいイメージがあって、それに近いものをチョイスしていくのが本当でしょう。そのイメージが無いままお店で試奏しても、「ああ、良い音だ」とは思えないはずですからね。

養父:分かる。だから結局は、どういう音楽をやりたいのか、どういう演奏をしたいのかが大事になってくるんだよね。

(養父貴×渡辺具義 対談・完)

養父 貴(ようふ・たかし)プロフィール

’88年に渡米しバークリー音大に入学、ギターと作/編曲を学ぶ。帰国後は楽器メーカーのデモンストレーターとしてプロ活動をスタート。その後は主にJazz、Fusion系のバンドに参加しCDをリリース。2009年からは渡辺貞夫グループに参加し、国内のみならずアメリカ、カナダ、南アフリカなど、海外のジャズ・フェスティバルでも演奏している。現在までに倖田來未、mihimaruGT、鈴木雅之、上田正樹、平原綾香、SEAMO、相川七瀬、黒瀬真奈美、伊東たけし、ウィル・リー、アダム・ホルツマン等のアーティストのレコーディングやツアーに参加。J-PopからJazz、Fusionまで、ジャンルの垣根を越えた幅広い活動を行っている。’05年には1stソロ・アルバム『Feelin’ Right』をリリース。またミュージック・カレッジ・メーザー・ハウスではギター・インストラクターとして後進の指導も行っている。『ギタリストのための全知識』、『ギターで覚える音楽理論』(小社刊)。

ギタリストのための全知識 ギターで覚える音楽理論

渡辺具義(わたなべ・ともよし)プロフィール

19歳で渡米、ハリウッドのMusicians Instituteに入学。在学時、特にジャズやフュージョンのスタイルを学ぶ。卒業後は、アドバンス・クラスを9ヶ月講習し、さらにロス・ボルトンやデ イブ・ヒルのプライベート・レッスンも受ける。帰国後、都内専門学校で講師を務めるほか、シンガーのサポート・レコーディングや、自己のバンド等で活躍中。著書には『ギター・コードまるわかりBOOK』、『必ず身に付く! ギタリストのための譜面力UPドリル』、『ギタリストのためのオープン・コード事典』、『一生使えるギター基礎トレ本』、『一生使えるギター基礎トレ本 ソロ強化編』、『サックスに学ぶおいしいギター・フレーズ99+2ジャズ編(共著)』がある(すべて小社刊)。

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