【連載】泣きのギター研究会(6)ジミ・ヘンドリックス

泣きのギター研究会 by 編集部 2008年12月9日

語られていたようで語られていなかった”泣きのギター”に迫る企画! 「これぞジミ流”泣きのギター”!」と言いたい曲をピックアップ。

研究員1号:みなさんコンニチハ。今週も”泣きのギター”で楽しんでください!

研究員2号:本日はちょっとお知らせがあるのです。

1号:はい。実は小社より、”泣き”のギターにスポットを当てた教則本『極めよ! 泣きのギター道』が発売されるのです。

2号:エクササイズ(譜例)を用いて、いわゆる”泣き”のソロの弾き方や盛り上げ方を解説しています。発売は2008年12月19日です。よろしくお願いいたします。

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『極めよ! 泣きのギター道』
ロック・ギタリストのための”歌う”ソロ・トレーニング

著者:森山 直洋
A4変型判/104ページ/CD付き
1,680円(本体1,600円+税)
2008年12月19日発売

→詳細はリットーミュージックホームページで

1号:さてさて、最近一部地域で(笑)にわかに話題になってきた”泣きのギター”ですが、今回はどんなギタリストをご紹介するかというと……

2号:前回はメタル方面にも手を伸ばしましたが。今回はまた違った方面ですね。

1号:先日、特別番外編で、ペンネーム・のぶさんが、スティーヴィー・レイ・ヴォーンの「LITTLE WING」を投稿してくれましたね。

2号:はい、ジミヘンの曲ですが、”ジミのバージョンよりドラマチックに感じる”というご意見でしたね。

1号:今回は、そのジミ・ヘンドリックスを取り上げましょう。

2号:おお、本家のほうの登場ですね!

1号:また別の視点からの”泣き”に迫ります。お楽しみください。

2号:このように何人かのアーティストがカバーしている曲は、さまざまな角度から興味深い考察ができますね。

1号:そうですね。皆様のご意見も引き続きお待ちしていますよ。応募はいつものように下記の投稿フォームからお願いしますね。

[追記]投稿の受付は終了しました。

ジミ・ヘンドリックス

(文:細川真平)

ジミ・ヘンドリックスのギター・プレイを表現するのに、”泣き”という言葉はあまり合わないかもしれないですね。

“吼える”とか、”叫ぶ”とか、”雄叫びを上げる”とか……激しく、のたうち回りながら自分の内面をさらけ出す、といったイメージのほうがしっくり来るという方も多いような気がします。

ですが。

個人的に、「これぞジミ流”泣きのギター”!」と言いたい曲が2曲あります。

とっくに廃盤になってしまっているのですが、『ヘンドリックス・イン・ザ・ウエスト』というライブ盤。これは彼の死後に出されたもので、何カ所かのライヴ音源の寄せ集めなのですが、いやもう、すごすぎるライブ盤なのです。

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ジミ・ヘンドリックス
『イン・ザ・ウエスト』

まず1曲目から怒涛の「ジョニー・B・グッド」。このスピード感と切れ味は、もうあり得ないですね。中学のときに初めて聴きましたが、今でも聴くたびにノックアウトされてしまいます。

ソロの中で音色が変わる部分があるんですが、そこは歯で弾いていたということをあとで知ってさらに驚いたり。

今ではこの曲は、『ヴードゥー・チャイルド』というアルバムと、ボックス・セット『The Jimi Hendrix Experience』(輸入盤)に収録されています。また、映像は、DVD『ライヴ・アット・バークレイ』で観ることができます。

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ジミ・ヘンドリックス
『ブードゥー・チャイルド:ザ・ジミ・ヘンドリックス・コレクション』

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ジミ・ヘンドリックス
『The Jimi Hendrix Experience』(輸入盤)

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ジミ・ヘンドリックス
『ライヴ・アット・バークレイ』
ユニバーサル ミュージック

おっと、この曲の話ではなくて。

『イン・ザ・ウエスト』の最後の2曲こそ、私的ジミヘン”泣きのギター”代表曲なのです。

「リトル・ウィング」と「レッド・ハウス」。

もちろん、これらはスタジオ版でも泣いていますが、このアルバムに収録されたライブ・バージョンは最強です。

これらは今では、さっきも出てきたボックス・セット『The Jimi Hendrix Experience』(輸入盤)に収録されています。曲順も「リトル・ウィング」→「レッド・ハウス」と、同じなのがうれしいです。

ところで、この2曲のうちどちらかを選べと言われたら(まずそんなことは言われないでしょうが)、迷うことなく「リトル・ウィング」を取る私です。

出だしの1・2弦12フレットの”ンチャーン”で、もう鳥肌じゃないですか(いえ、無理やり同意を求めているわけではありません)。

で、そのあと6弦開放を鳴らしといて、空ピック一発! ひょえ~! ここでまた、鳥肌クンです。

そして、コード・ノートを活かした見事なフレーズから成る、ギターのみのイントロが続きます。親指で上から6弦を押さえるのがジミの得意技ですが、ここでも親指の活躍なしにはこの雰囲気は出せませんですね。いえ、どっちみちこんな雰囲気は出せません、すみません。

で、ブルージーな歌に行くわけです。力を抜いた、少し投げやりにも聞こえるこのジミのボーカルがまたたまらないんです。

「Anything, anything~」と、ほんの少し力を込めて歌い終わると、いよいよソロです。

が、ソロに行く前に複数の開放弦を鳴らして、それをアーム・ダウンするんですね。

ここを聴くと、うひー、来たっ! と思います。

はい、またもや鳥肌一丁です。

このアーム・ダウンも、すでに”泣き”の一部なんですね。泣く前に思わずついてしまうため息とでも申しましょうか。これがあるからこそ、このあとの2弦15フレットのチョーキングが利くんですね。

このあたりの”溜め”の妙技、これもまた”泣きのギター”の本質の一部ではないでしょうか。

ソロ自体はスタジオ・バージョンとそれほど変わるわけではありません。スタジオで作り上げられた段階で、完成していたと言ってもいいでしょう。

ここで聴ける”泣き”は、それほど大げさなものではありません。

さりげない”泣き”と言いますか(ヘンな表現ですが)。

オトナの”泣き”と言いますか(もっとヘンですが)。

いや、思うんですが、子どもが大声で泣くのは、実は泣いていることのアピールだったりするんじゃないでしょうか。

一方、オトナがひっそりと泣くときには、それはホンモノだったりします。

「リトル・ウィング」の”泣き”は、そういう”泣き”なんじゃないかと、かなり勝手に思っています。

我慢して我慢して、それでも我慢しきれずに嗚咽がつい漏れ出してしまう……そんな”泣き”。
それは、侘び寂びの世界にも通じるような気がします。

さて、スタジオ版のソロとの違いもあります。スタジオ版では2コーラス目に入ってすぐにフェード・アウトしてしまうのですが(それもまた侘び寂びの世界ではあります)、ライブでは2コーラス分まるまるあって、そのあとワウを使っての(ほぼ)無伴奏のソロ部分が追加されているのです。
これがまた、なんと言いますか、泣き終わったあとに涙がひと雫だけ零れ落ちるといった感じの、しみじみとした余韻を残してくれるのです。

このように、派手で激しいギタリストという世間のイメージとは違う彼の姿が、この曲には表れています。

悠然とした中に淋しさがほの見えます。
淋しさの中に優しさが感じられます。
優しさの中に力強さが立ち昇ります。

そんなオトコに私はなりたい……じゃなくて、そんな”泣き”のギターを、私も弾きたいデス。

[細川真平]

[ジミ・ヘンドリックス 公式サイト](英語)

【著者プロフィール】
細川 真平(ほそかわ しんぺい)

音楽ライター。

ギター誌、音楽誌、ムック等の記事を多数執筆。ジェフ・ベック、スティーヴィー・レイヴォーン等、CDライナーノーツも多数手がける。

『ギター・マガジン』では「ロック・レジェンド紳士録」を連載。当サイトでは「GENTLY WEEPS – ギターとアルバムを巡る物語」を執筆。

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