【連載】泣きのギター研究会(11)ジミー・ペイジ

泣きのギター研究会 by sakaguci 2009年1月13日

語られていたようで語られていなかった”泣きのギター”に迫る企画! ジミー・ペイジ「貴方を愛しつづけて」

研究員1号:みなさんコンニチハー。寒い日が続きますね。

研究員2号:ホント寒いですー。でも今日も元気に泣きのギター行きます!

1号:えー、今回は、おそらく日本よりはもっと寒いであろうイギリスのアーティストです。

2号:大御所です。

1号:しかしながら……

2号:??

1号:執筆者細川氏は、日本の文豪たちとの共通点を見出しています(笑)

2号:どうぞお楽しみください~!


ジミー・ペイジ「貴方を愛しつづけて」

(文:細川真平)

“泣きのギター”曲には邦題がよく似合う。
まるで富士と月見草との関係のように。

いや、ウソです。

テキトーに思いつきで言ってみました。

すみません、太宰はん。

でもですね、確かに”泣きのギター”曲にはいい邦題がついたものが多いんですよ。

「哀愁のヨーロッパ」でしょ。
「パリの散歩道」でしょ。

…………。

ふたつだけかいっ!

いえ、まさか。
決定的な邦題があります。

「貴方を愛しつづけて」レッド・ツェッペリン。

……でも、これほぼ直訳じゃん。

甘い。

「貴方」とするか、「あなた」と平仮名にするか、「貴女」とするか、そして「つづけて」を漢字にするか平仮名にするか。それらによって雰囲気はガラリと変わります。これは、そういう細かい部分にまで目が行き届いた、素晴らしい邦題なのです。

あのさ、今は「貴方」だけど、国内初回盤LPの帯を見ると、「貴女」ってなってたの知ってる……?

ちゃん、ちゃん。
お後がよろしいようで。

■「貴方を愛しつづけて」収録CD

20080105_zakkwyld.jpg

レッド・ツェッペリン
『レッド・ツェッペリンIII』

ワーナーミュージック・ジャパン

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そうじゃなくて。まだ終わりませんから。

とにかくですね、”泣きのギター”3大名邦題が、「哀愁のヨーロッパ」「パリの散歩道」「貴方を愛しつづけて」だと、私は思うのです。

ほらもう、どこか演歌的なニオイがあって、タイトルからしてすでに”泣き”の気配がするじゃないですか。

「哀愁のヨーロッパ」は、原題に”哀愁の”と加えただけですが、ここにはコペルニクス的転回を感じます。まさにカントが言うように、「人間の認識が外部にある対象を受け入れるのではなく、人間の認識が対象を構成する」わけですね。オッホッホッホッ(変酋長かよ)。

「パリの散歩道」は”散歩道”だからいいんです。「パリの遊歩道」だったら泣けません。ただ、残念なのは、ここはパリを漢字で、「巴里の散歩道」としてもよかったかな、と。これはやりすぎでしょうか?

さて、この3曲には共通点があります。

どれも短調(マイナー)だということです。

“泣きのギター”曲=マイナー、と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、それは違います。たとえば、この特集では範囲が広がりすぎるために除外されているブルースには、長調(メジャー)の曲が圧倒的に多いですね。ギターは泣いているのに。

つまり、メジャー・キーなのに、どこかマイナーの薫りがする……それはブルー・ノートが使われているからであり、その雰囲気をブルージーと呼ぶのだと思います。

ま、はっきり言うと、マイナー・キーでギターを泣かせると、ベタベタになる可能性大なんです(笑)。ちょっと間違うとやりすぎになったり、品がなくなったりという危険性をはらんでいます。

「パリの散歩道」はそうとうギリギリです。いや、“セクスィー部長”のテーマとして使われたということは、ひょっとしたらNHK的には、あれはギリギリの範囲を超えている、という判断だったのかもしれません。

そういう意味では、マイナーでありながら、ベタベタ感・品ナシ感を適度に抑えつつ、”泣き”との見事なバランスを取っているのが、「貴方を愛しつづけて」なのです。

ジミー・ペイジは、基本的にはCマイナー・ペンタトニックを使っているのですが(キー=Cm)、そこにDとG#というペンタ・スケール外の音をうまく交ぜてフレーズを紡ぎ出しています。これが素晴らしく効果的なのです。

泣いている合間に、頬にこぼれた涙をふと振り払う仕草に似ている、とでも言いましょうか。
 ↑ ここでは、自分の愛する人のそんな仕草を思い浮かべてみてください。

ずばり”泣き”の部分で言うと、4分9秒あたりからの1音半チョーキングにつきます。これはもう、”泣く子と地頭には勝てぬ”感が横溢する”泣き”であります。女性がその魅力と魔力とずるがしこさを最大限に発揮し、身をよじって泣いている(もしくは泣きまねをしている)かのような……。

こんな”泣き”にだまされてしまうと、最終的には「われ泣きぬれて蟹とたはむる」なんてことになりかねません。

諸兄におかれましては、くれぐれもご注意のほどをお願い申し上げます。

あれ、何の話でしたっけ?

[細川真平]

[レッド・ツェッペリン 公式サイト]

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【著者プロフィール】
細川 真平(ほそかわ しんぺい)

音楽ライター。

ギター誌、音楽誌、ムック等の記事を多数執筆。ジェフ・ベック、スティーヴィー・レイヴォーン等、CDライナーノーツも多数手がける。

『ギター・マガジン』では「ロック・レジェンド紳士録」を、当サイトでは「GENTLY WEEPS – ギターとアルバムを巡る物語」を連載中。

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