【連載】泣きのギター研究会(13)ランディ・ローズ

泣きのギター研究会 by 編集部 2009年1月27日

語られていたようで語られていなかった”泣きのギター”に迫る企画! 今もその死が惜しまれるランディ・ローズ。

研究員1号:みなさんコンニチハー。寒いですけど、みなさんお元気ですか?

研究員2号:今回は、いよいよこのギタリストの登場ですね。

1号:ハイ、夭逝のギタリストです。

2号:私は、トリビュートのライブ盤のジャケットを見るだけで本当に泣きたくなります。

1号:そうですよね。泣きのギターも素晴らしいけれど、やはりその死が惜しまれます……。

2号:オジーに抱えられて楽しそうに笑っているランディのステージ写真のジャケットは、ホント泣けますよ。

1号:そうだね……。ではランディの”泣き”をじっくりお楽しみください。

2号:みなさんのご意見も募集しております~。下記の”投稿フォーム”から、ご応募くださいね。

[追記]投稿の受付は終了しました。

ランディ・ローズ「ミスター・クロウリー〈死の番人〉」

(文:舩曳将仁)

先日、近くの自動車教習所で催された、交通安全講習会なるものに参加してきた。交通課の警察官が来て、交通事故を起こさないための注意や指導を行なってくれるのだが、多数の参加者を前にして、担当の警察官は明らかにアガっていた。

「避けられない事故はあります!」

と、開口一番に切り出したのだ。度肝を抜かれる参加者。

その後で、いくら事故に注意するよう力説されても、「でも避けられない事故があるんだろ?」と説得力ゼロ。警察官も何だかおかしいと気付いて軌道修正しようとするが、もうグダグダ。

「ですから十分に注意していただきたい。注意しても避けられない事故はありますが……いや、注意すると何とかなることもあります。でも注意しても何ともならないから避けられない事故なわけで……えーっと、じゃあビデオ見ましょう」

えー、ビデオに逃げちゃったよー!

ということで、リハーサルは大切だよなという……ではなくて、事故を起こさないよう気をつけましょうという講習会でした。まあ、警察官から学んだというよりは、その後に見た渡辺いっけい主演のビデオから学ばせてもらったのだが。

と軽い感じで話を始めたが、事故で命を落とすというのは本当に悲劇だ。誰もそれを予期せず、何の前触れもなく生を奪われてしまう。後には深い悲しみが残るだけ。あまりにも非情だ。

ランディ・ローズのことを思うとき、そんなことを考えずにはいられない。

1956年12月6日、ランディ・ローズは音楽学校を経営する両親の元、カリフォルニアに生まれた。母から音楽理論やクラシック・ギターの手ほどきを受け、14歳で兄とヴァイオレット・フォックスというバンドを結成する。17歳の頃にクワイエット・ライオットを結成。ところが、1978年のデビュー・アルバム『静かなる暴動』、1979年のセカンド・アルバム『暴動に明日はない』は、日本のみの発売に終わってしまう。

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クワイエット・ライオット
『静かなる暴動』

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クワイエット・ライオット
『暴動に明日はない』

ランディ・ローズはクワイエット・ライオットを離れて音楽講師の仕事などをしていたが、ブラック・サバスを脱退したオジー・オズボーンのバンド・メンバーになるべくオーディションを受ける。

オジーは小柄で金髪のランディを見て女性かと思ったそうだが、ギターを弾き始めると一変。”まるで神が乗り移ったみたいだった”というランディのギターにオジーは魅せられ、自らのバンドの初代ギター・パートナーに起用を決めた。

1980年、オジー・オズボーンの記念すべきデビュー・アルバム『ブリザード・オブ・オズ~血塗られた英雄伝説』が発売されると、英7位、米21位のヒットを記録。勢いに乗る彼らは、1981年11月にセカンド・アルバム『ダイアリー・オブ・ア・マッドマン』をリリース。オジーとランディに加え、クワイエット・ライオットでベースを務めたルディ・サーゾ、ドラムのトミー・アルドリッチ、キーボードのドン・エイリーという布陣でアメリカ・ツアーを開始する。

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オジー・オズボーン
『ブリザード・オブ・オズ~血塗られた英雄伝説』

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オジー・オズボーン
『ダイアリー・オブ・ア・マッドマン』

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そのツアー中の1982年3月19日、ツアー・バスに乗って、テネシー州ノックスビルからフロリダ州レイクランドに向かう途中でのこと。

ツアー・バスの運転手であるアンドリュー・エイコックがセスナ機を運転できるというので、遊覧飛行をすることになった。まずはドン・エイリーがセスナ機に乗り込んで空中散歩を楽しむ。オジーやルディ・サーゾは、ツアー・バスの中で休息をとっていた。ドン・エイリーに続いて、スタイリストのレイチェル・ヤングブラッドとランディ・ローズがセスナ機に乗り込む。

セスナ機は二人を乗せて飛び上がったが、翼がツアー・バスに接触。セスナ機は近くの家屋に突っ込んで炎上する。オジーやルディ・サーゾらが見ている前で、ランディ・ローズは燃え盛る飛行機とともに25歳という短い一生を終えたのだった。

ランディ・ローズが残したフル・オリジナル・アルバムは全部で4枚。クワイエット・ライオット時代にはまだ個性を感じさせないことを思えば、彼の特質が表れていたのはオジー時代のわずか2枚ということになる。

その特質とは、クラシックの素養に裏打ちされた、きらびやかで華麗なギター・プレイだ。同時代にギター・ヒーローとなったエディ・ヴァン・ヘイレンのワイルドな魅力とは異なる端正さがあり、ソロでもクラシックのヴァイオリンやピアノのソロを思わせる、シャープで研ぎ澄まされたという印象が強い。

ところが、1987年に発売されたライブ・アルバム『トリビュート~ランディ・ローズに捧ぐ』を聴くと、ライブでは非常に荒々しく弾いていたことがわかる。

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オジー・オズボーン
『トリビュート~ランディ・ローズに捧ぐ』

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どの曲でもアルバムとほぼ同じようにソロを弾いているのだが、テクニカルなプレイも力技で押し切っており、「クレイジー・トレイン」終盤に聴かせる、これでもかといわんばかりのチョーキングでは、ランディの沸き立つ感情が爆発しているかのようだ。

『トリビュート~』は、ランディのアグレッシブかつエモーショナルなギターが聴ける名ライブ盤だが、そのなかでも、極め付けの一曲として紹介したいのが「ミスター・クロウリー〈死の番人〉」である。

『ブリザード・オブ・オズ』収録のオリジナル同様、荘厳なキーボードに導かれて曲がスタート。この曲には2回のソロがあるが、最初のソロでは強烈な”泣き”のチョーキングとクラシカルなフレーズをコンパクトに披露。この時点でアルバム以上のエナジーを感じさせるが、これはまだプロローグ。

再び歌メロが続いた後、オジーの歌とともにゆったりとした哀愁のフレーズが登場。ここで緩和しておいて、いよいよクライマックスのソロへと向かう。こちらはいきなりクラシカルなフレーズから入り、やがて官能的なフレーズへと滑らかに移行。その情熱が冷めるかと思うところで、再びマシンガンのように弾き倒して一気に高みへ昇りつめていく。

アルバムの華麗さとは一味異なる、胸を打つ熱さがここにはある。ランディが顔をしかめてギブソンの白いレスポール・カスタム(僕にとってランディのギターといえばこれ)に魂を注ぎ込んでいる姿が目に浮かぶ。ひとつのソロの中に盛り込まれた押しと引きの絶妙なコントラスト、嵐のように押し寄せるクラシカルな旋律、胸が張り裂けんばかりのエモーショナルなプレイ。泣くよな、こりゃ。

ただし、ルディ・サーゾなどが証言しているように、ランディのベスト・プレイはこんなものじゃなかったらしい。まだ、これ以上だったとは?! それが残されていないのは残念すぎる!

誰もランディがこんなに早く天に召されるとは思わなかったのだろう。

彼はオジーのバンドを離れてクラシック・ギターの腕を磨きたいという希望も持っていたという。ソロでクラシック・アルバムを作っていたかもしれない。

それを経て再びオジーと合流していたら、果たしてどんな音楽が生まれていただろうか。新たなランディ・ローズ・モデルのギターが登場したり……などと想像しても、すべて叶わぬ夢になってしまった。

この曲を聴くたびに、”神が乗り移ったプレイ”を生で見られなかった悔しさがこみ上げてくる。そういう意味でも泣けてくる一曲だ。

[舩曳将仁]

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[オジー・オズボーン 公式サイト](英語)

【著者プロフィール】
舩曳将仁(ふなびき まさよし)

著書に『ブリティッシュ・ロックの黄金時代』『英国ロック博覧会』(ともに青弓社・刊)

音楽雑誌や音楽関連書籍に多数寄稿。

現在、育児奮闘中。

[舩曳将仁サイト:猫杓子骨董音楽堂]

[舩曳将仁ブログ:猫が茶を吹く昼下がり]

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