著者たちの語らい--河野和比古&加茂フミヨシ(1)

加茂フミヨシ式ギター・トレーニング by 編集部 2008年11月21日

【ゲスト】河野和比古(1) 「風変わりなコード感に惹かれてしまう」

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教則本の著者たちの素顔に加茂フミヨシが迫る対談! この対談からギター上達の秘訣を盗め!!

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▲河野和比古と加茂フミヨシ ※撮影:鈴木千佳

【河野和比古 プロフィール】

1971年、東京生まれ。音楽好きだった父親の影響もあり、幼少の頃から洋楽を中心にヒット・チャートを聴き始める。15歳ではじめてエレキ・ギターを持った当時はヘヴィ・メタル一辺倒だった。その後セッション活動を精力的に行い、ジャズ/フュージョン、ロックの奥深い世界を知る。現在はギタリストとして、また講師や音楽ライターとして活躍中。最新刊は、極端な(でも実は真面目な)エクササイズで話題を呼んでいる『自虐のギター練習マニュアル ~負荷フレーズ33』

【河野和比古 公式サイト】

MY GUITAR & MUSIC PAGE

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映画音楽で培われたジャズ感覚!?

加茂:河野さんのライヴを観る機会があったんですけど、普通のロックの人が弾くフレーズじゃないっていう印象が強かったんですよ。まずルーツを教えてください。

河野:僕は子供の頃に父が映画の評論の仕事などをしていて、その関係でよく映画を見たりサウンドトラックなんかも聴いていたんですよ。『ET』のジョン・ウィリアムスとかをはじめ色々とですね。

加茂:身の回りにそういうレコードがたくさんあった、と。

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河野:そうですね。日常的に聴いていました。でもどちらかというと映画が好きでその延長といった感じですけど、自分が見た映画の色んなサントラを聴いて、これはあそこのシーンのやつだなと思ったり・・・もうちょっと大きくなると「ザベストテン」みたいな普通の歌謡曲も聴いてましたけど。

加茂:へえ~。ただ、歌謡曲にしてもジョン・ウィリアムスにしても、ギター・プレイっていうのには結びつきませんね? ギターのルーツは何ですか?

河野:僕が本格的に楽器をやりたい!と思ったのは中学生の時。その頃は小林克也の”ベストヒットUSA”をテレビで見たのをきっかけに洋楽にとにかくハマっていまして、最初はキーボードがやりたかったんですよ。

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加茂:僕はその頃キーボード弾いてましたよ!!河野さんは例えば、どんなアーティストの曲を弾こうとしたんですか?

河野:ワムとかハワード・ジョーンズ、デュラン・デュランとかですね。

加茂:ああ! むちゃくちゃカッコイイですよね。

河野:だから未だに80年代な感じのシンセの音とか大好きですし(笑)。

それから当時のピーター・ガブリエルとかプリンスとかは、かなりプログレッシヴなことをポップスのバックボーンでやっていたりもした。普通に♭5とか♯11の音が出てくるんですよ。ジョン・ウィリアムスとかの映画音楽も、♯11とかリディアンっぽい響きを普通に使っていた。

何故か自分はいつもちょっと風変わりなコード感に惹かれてしまうんです。正直、その頃はギター・サウンドよりも、ティアーズ・フォー・フィアーズとか、キーボードが中心の物が好きだったんですね。

加茂:確かに当時は、キーボードが活躍する音楽が多かったですよね。

河野:でもキーボードは高くて買ってもらえなかったんです(笑)。……で、ギターを持っている友達がいて、それを聴いて「エレキ・ギターもキーボードみたいにコードが弾けるし、エフェクターとかで音が変わるし面白いな」って思ったんです。

とにかく楽器を始めたかったんで、いとこからギターをもらったんですよ。それで段々ハード・ロックを聴くようになったんですけど、ちょうどスティーヴ・ヴァイが出てきた頃で、ヴァイとかジョー・サトリアーニもリディアンとかを使っていて、同じような感触があったんですよ。

加茂:ヴァイの『パッション&ウォーフェア』の1曲目なんてオーケストレーションされてますもんね。

河野:ええ。で、もうちょっと後で僕がギターインストに興味を持つきっかけになったのがサトリアーニ。『サーフィング・ウィズ・ジ・エイリアン』が好きで。ヴァイはまだデイヴィッド・リー・ロスのバンドにいた頃で、脚光を浴び始めたばかりでした。その影で「ヴァイの師匠ですごい人がいる!」っていう話がでてきたりして……。

加茂:カーク・ハメットもその人の弟子だ!って。

河野:そうそう! それで速攻で聴いてみたんです。

加茂:サトリアーニはコピーしましたか?

河野:ギターを初めてすぐにはそういうのは無理で、それから2、3年してからやってみたんですが、とてもじゃないけど完コピは出来なかったです(笑)。でもリフとかテーマとか弾ける所を中心にコピーして。あと『ALWAYS WITH ME, ALWAYS WITH YOU』みたいなバラードを超ゆっくりのテンポ(笑)でフィンガリングの練習みたいに(笑)弾きましたね。

加茂:あの曲、十分難しいっすよ(笑)

ハード・ロックとの出会いと五線譜の壁

加茂:河野さんのルーツだと、クリーン・トーンのカッティング・ギターとかがまずありそうですけど……。

河野:そうなんですけど、やっぱり最初はできないですよ。まずはパワー・コードで8分を刻むようなことをしていましたね。で、そのあとに練習したのがアースシェイカーの「MORE」でした。中学3年から高校ぐらいの話ですけど、その頃はハード・ロックをよく聴いていたし、コピーもしていました。アンセムとかラウドネス、聖飢魔IIとかですね。まわりでギターを弾いている人も多かったですし、自然な流れでしたね。

加茂:ルーツとは全然違いますね。

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河野:その頃になると、”ベストヒットUSA”を聴いているヤツはダサい。これからはちょっと悪いハード・ロックだって感じもあったんですよ(笑)。

加茂:ハハハ。そうだったんですか?。

河野:それからは速弾きとかも練習しましたよ(笑)。

加茂:なるほど(笑)。でも、”ベストヒットUSA”的なポップスとハード・ロックって全然違うサウンドじゃないですか。スッと入れたんですか? 僕もハワード・ジョーンズやA-HAがムチャクチャ好きなんですけど、ハード・ロックの歪んだギターっていうのが受け入れられなかったこともあったんですよ。

河野:わかるわかる。僕も生で聴くまではノイズの塊だと思っていました。なんだコレ?って、キワモノっぽく感じていましたよ。ただ、友達が目の前でアースシェイカーを弾いた時、すごくカッコ良く思えたんです。

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加茂:生で聴いて価値観が変わった、と?

河野:ええ。チョーキングとかを見て、ギターって良い音だなって思いました。

加茂:ああ、なるほど。そういえば僕も、ギターを始めてからハード・ロックとかが好きになりましたね。……ただ、もうひとつ気になるのが、そこからジャズ/フュージョンにはどうやって行ったのか、なんですよ。

河野:ギターを始めてすぐ、習いに行ったのがジャズ/フュージョン系のすごいプレイヤーの方だったんです。当時僕はメタリカとかメガデスとか、ハード・ロックやヘヴィ・メタルを弾きたかったんですが、その先生のレッスンは最初から五線譜を使っての厳格なレッスンだったんです。

加茂:おお、五線譜!

河野:今思うとプロとして必要な技術を一から教えてくださるような、濃い内容のレッスンだったんですね。今の自分のギタリストとしての基礎はその時に出来た感じですから。

加茂:それはいくつぐらいの話?

河野:はじめてレッスンをしていただいたのは15~16歳ですね。でも当時というとギターと言えばハード・ロックのリフしか弾いた事がなかったんで、最初は全然だめ(笑)。タブ譜しか見たことなかったのに、レッスンではいきなり五線譜が出てきて・・・ギターでも五線譜あるんだ!ぐらいの(笑)。あたりまえですけど当時は相当のカルチャーショックでしたよ(笑)。

加茂:それはそうですよ(笑)。

河野:ただ、その先生の影響で段々とラリー・カールトンとかのジャズ/フュージョン系も聴くようになったんです。と言っても、習い始めて2~3年はやはり邪念を振り払えずに(笑)メタル一辺倒でギターヒーローを夢見ていましたけど。

加茂:メタリカですもんねぇ。じゃあ、ジャズ/フュージョンが好きになったきっかけは?

河野:メタルからサトリアーニという流れでギターインストに興味を持ったんですが、ジャズ/フュージョンといっても最初はどんなプレイヤーがいるのかも全然知らなかったんですね。とにかく雑誌とかを参考にしながらひたすら色々と聴いていって。

・・・で20歳ぐらいで聴いたパット・メセニーの『スティル・ライフ』や、ジョン・スコフィールドの『ブルー・マター』が自分の中では大きな出会いで、特にジョンスコのファンクビートと攻撃的にアウトするフレーズの嵐にやられてしまいました(笑)。4ビートのジャズではちょうど同じ時期にマイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』を聴いた時に、それらとはまた全然違う深遠な感じの世界を感じて、そこから60年代あたりのホーンジャズもカッコいい!という様な感覚になりましたね。

ひたすらスケール練習の日々

加茂:何度もひっぱりますけど(笑)、60年代あたりのホーンジャズだと、ハワード・ジョーンズから比べると古くさい音だし、そういうところで聴けなかったりもすると思うんですよ。前回の語らいでも話しましたが、例えばデフ・レパードが好きな人は、そのままレッド・ツェッペリンには行けないと思うし……音質が違いすぎるでしょ?

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河野:確かに時間がかかりましたね。急にジャズ/フュージョン一色という訳ではなくて、ラリーカールトンとかロベンフォードを知ってからも平行して、サトリアーニとか、その流れでアラン・ホールズワースとか、プリンスとかTOTOとかも好きでしたね。そういう音楽を聴きながら練習したり自分で曲を作ってみたり、19歳とか20歳くらいまではそんな感じでした。

色々と聴いてはいても、フレーズやコードをコピーする感じはそんなになかったですね。その後セッションとかにも出かける様になって徐々にパットメセニーとかジョンスコ以降のギタリストをコピーする様になってきました。

加茂:ホールズワースは良いですよね!!僕も大好き!ジョージ・ベンソンとかは?

河野:ジョージ・ベンソンは、当時はまだまだ分からなかったですね。

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加茂:まさか、歌手のイメージが?(笑)

河野:それもありますし、僕の中では彼はもっと渋いストレートのジャズっていうイメージでしたね。当時はメタルから入った気質もあって(笑)、やはりスコットヘンダーソンやマイクスターンとか、攻撃的なプレイをするギタリストが好きでコピーしてました。でも20代後半からはジョー・パスとか王道のジャズギターも逆にクールというか、カッコ良く感じる様になって聴く様にもなりましたけどね。

加茂:なるほど。次に技術的なこともお聞きしたいです。僕もそうだったんですけど、多くの人はハード・ロックからジャズ/フュージョンに転向する時にかなり苦労すると思うんですよ。やっていること、考えていることが全然違いますからね。河野さんは苦労しませんでしたか?

河野:う~ん、むしろ、ギターに関しては当時80年代後半のハード・ロックって、ギターでリフとかソロとかを終止きっちり埋めて行くような、曲ごとの決まった型があって、しかも超絶な速弾きソロもある。その点ジャズ/フュージョンはギターの役割が少し違って、型がないというかもっとスタイルが多様ですよね。

加茂:確かに。

河野:少なくとも自分は当時のギターヒーローの様な超テクニカルな速弾きは出来なかったし(笑)。それにレッスンを通してコードやスケールを段々覚えてくると、今度はその使い方とかバリエーションとかに興味が出て来てきた時期だったんで、自然とフレーズとかコード進行のバリエーションがより多彩なジャズ/フュージョン系の方向に流れて行ったんですよね。

加茂:じゃあ、ジャズ/フュージョンでは具体的にどんな練習をしたんですか?

河野:最初は、ひたすら色んなコード進行を覚えたりスケールの練習です。あと、教室ではモードとかも勉強しましたし、スタンダードやアドリブの取り方も教えてもらいました。MTRで録ったコード進行に合わせてアドリブの練習をしたりもしていましたね。

加茂:それが15~16歳の時?

河野:いえいえ! MTRを買ったのが確か18歳頃ですから、そのころから徐々にですね。ハード・ロックから入ってそんなに急に枯れられないですよ(笑)。2~3年かけて段々と枯れてきたというか(笑)でもそのぐらいの頃ギターもフロイド・ローズ付きのからストラトにしたりして、急にストイックになりましたね(笑)。

加茂:河野さんは非常にストイックですよね!自虐的とも言える(笑)枯れるきっかけとかはあったんですか? 例えば失恋したとか(笑)。

河野:あった、かも……(笑)。いや、ではなくてですね(笑)。腰を据えてプロを目指そうと思ったのもその頃ですし、ギターに対しての意識が変わって来たんですよね。それまではギターといえばハードロック一辺倒だったんですが、それをちゃんと楽器としてギターをマスターしたいというような。

加茂:プロを目指すなら、ロックだけじゃダメだっていう考えだったわけですね。

河野:そうですね。自分にはギターヒーローは無理かも知れないけど、とにかくギターが好きでしたし。何か音楽に携わる仕事が出来る様になりたいから、やはりスケールやコードといった基礎をしっかりやっておこうと思いました。それになんといっても僕のプロ・ギタリスト像っていうのは、スタジオミュージシャンであり優れたジャズ/フュージョンギタリストの教室の先生でしたから。

[この対談は次回に続く。乞うご期待!]

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【河野和比古の著書】

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『自虐のギター練習マニュアル ~負荷フレーズ33』
A5判/112ページ/CD付き
1,680円(本体1,600円+税)
2008年3月22日発売

生卵、スクワット、アイマスク、体温計、太もも叩き……新発想の超練習フレーズ集!

加茂フミヨシ

加茂フミヨシ

超絶技巧ギタリスト/クリエイターとして活躍する。傍ら、最先端エレキ・ギター奏法の求道者としても、多くのヒット作教則本を発表。2011年に、スティーヴ・ヴァイがバークリー音楽大学で記録した“世界最大規模のオンライン・ギター・レッスン”のギネス世界記録に挑戦。ヴァイの“ギター・レッスン受講者4,455人”の記録を“8,776人”に更新し、イギリスのギネス・ワールド・レコーズより日本人ギタリストとして正式承認される。世界に名を刻んだエレキ・ギター界の伝道師である。



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