【音源付】著者たちの語らい--河野和比古&加茂フミヨシ(3)

加茂フミヨシ式ギター・トレーニング by 編集部 2008年12月5日

【ゲスト】河野和比古(3)「『自虐のギター練習マニュアル』は、基本的なところに重点を置いている」

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教則本の著者たちの素顔に加茂フミヨシが迫る対談!
今回は”自虐的な”ギターバトル付き!

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▲河野和比古と加茂フミヨシ ※撮影:鈴木千佳

→河野和比古プロフィール

→対談第1回 →対談第2回

→「著者たちの語らい」のコンセプト

プロが教える耳コピのコツ

加茂:河野さんは採譜の仕事もされていますよね。つまり曲が送られてきて、ベースやドラム、キーボードを含む全パートを耳コピして楽譜にしていく仕事。これは大変ですよね。

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河野:大変ではありますけど、意外と自分がうまくなるためには必須の練習だったんですよ。……ギターのスタイルって音楽理論や基礎練習は先生に教えてもらったり、教則本やDVDで自分で勉強できますけど、自分がカッコいいなって思う音楽やプレイがあったら、そこが一番重要で、何がカッコいいのかを自分からどんどん耳コピして探らなくちゃいけない。だから仕事になる前から、日課として採譜的な作業は毎日していたんです(笑)。

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加茂:日課!!!自虐ですね!(笑)。

河野:ハハハ!そうですか? 僕の場合はセッションとかに出る様になって、上手いプレイヤーとかも目の当たりにする様になると、ついていけないのがくやしくて(笑)。そこから色んな音源を片っ端からテープに落として毎日ラジカセで耳コピして研究してました。コピーしたフレーズを自分なりに消化出来る様に工夫したりして・・・。あとはベースとかドラムとか他のパートもコピーして、オリジナル曲を作るときの参考にしたりとか。

加茂:もしかして絶対音感の持ち主ですか?

河野:いえいえ、そんなことはなく、ギター持たないと拾えないです。

加茂:全パートをギターで拾うんですか?

河野:バンドスコアを採譜する時はそうですね。加茂さんみたくキーボードは弾けないですし。

加茂:すごいなぁ! 例えば、1曲バンドスコアを作るにはどのくらいの時間が必要ですか?

河野:僕は作業が遅いんで(笑)。仕事でやるバンスコだと見やすく綺麗に書いて行きたいので、なんだかんだで平均2日で1曲ぐらいのペースでやってますね。

加茂:例えば僕がプロデュースしているバンドの音源と歌詞カードを渡せば、2日後にはバンド・スコアになって返ってくるわけですか!

河野:加茂さんが、そこで速弾きソロを弾いていなければね(笑)。

加茂:ハハハ。でも、ドラムならではの譜面の書き方とかもあるわけですよね?

河野:ドラムとかは一番苦労しましたね。教則本とかビデオを買って勉強しましたね。あとブルースハープとかも買って練習しましたし(笑)。

加茂:自虐的だな(笑)。ちなみに、採譜の仕事ってピークだとどれくらいやりました?

河野:多い時で、アルバム2枚に単発が何本か。まあこれは流石に手分けしてやりましたけど。

加茂:ちょっと待って! アルバム2枚ということは20曲以上!? ひと月でですか? さっきと話が違うじゃないですか(笑)。

河野:ハハハ。あれが限界ですね。

加茂:う~む。。。ところで、僕のところにも「どうすれば耳コピができるようになりますか」っていう質問が来るんですけど、何かとっかかりってありますか?

河野:まずは曲のキーを探ることですね。例えばその曲のトニック・コードが最初に出てくるわけではないので、まずキーの概念をつかむことですよ。

加茂:それにはどうすればいいでしょう。

河野:僕の場合、習っていた先生のもとでいろいろなコード進行の曲を練習しました。例えばAm~AmM7~Am7~Am6みたいなの半音でベースが動く様な定番のクリシェとか、いろいろなキーのコード進行の曲を弾いたおかげで、自然と覚えることができたんだと思います。

加茂:データベースとしてあるわけですね。でも絶対音感じゃないのに音が拾えるっていうのはスゴイ!

河野:相対音感しかなくても経験で勘を養えるし、あせらずやっていけば結構行けちゃうと思いますよ。あと聴こえづらい所もその場所だけ何度も集中して聴いて行くと段々聴こえてきますしね。難しい所は少し聴いて、書いての繰り返しでやっていくことです。そうすればどんな曲でも必ず耳コピは可能です。要は根気の勝負ですね(笑)。

絶対音感の人の方が音を採るのは早いと思いますが、逆に音が聴こえすぎて苦労する時もあるんじゃないですかね。例えば絶対音感ならではの正確さ故にそれこそラップや単なるノイズまで音階に聴こえちゃったりして(笑)、ポップ・ミュージックってそういうのの塊ですからね。

目からウロコのドリアン発展法

加茂:インプロヴァイズについても聞きたいんですが、河野さんはアドリブをどういうものだと考えていますか?

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河野:そうですね、最初の頃は本当に自由、何を弾いても良いって思って色々と勝手なフレーズを弾いていましたけど、今はジャズとかフュージョンの雰囲気を出したい時は様式的なフレーズも重視していますね。やっぱりそうした流れでカッコいいフレーズとかがあると思いますから。

加茂:そういうフレーズはストックしている?

河野:なんだかんだと指グセの様な形でありますね。耳コピしたフレーズが弾きやすいポジションとかで残っている感じです。またコピーしたフレーズがどういう風に成立しているのか考えて、そこからなんとか自分なりにフレーズを作ってみたりもしていますね。

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加茂:ストックを増やしながら、分析する、と。日頃からそういう練習をしているんですか?

河野:そうですね。あと、曲で練習するっていうことが大事ですよね。

加茂:それはスタンダードを?

河野:ええ。スタンダード曲とかも練習してみたりとかします。

加茂:ジャズとフュージョンだと、またアプローチは違いますか?

河野:フュージョンだと、ドリアン一発みたいに一つのモードをいかにカッコ良く発展させる流れになりますよね。もちろん当然ロック的な音色をガンガンに使いつつ盛り上げて行っても良いですし。

一方スタンダード曲では極力音数は必要最小限にフレーズで歌わせるとか・・・。それとあまりロック的に歪ませたりとか、過激なアプローチをしていると、他の方から怒られる場合もあるのでこの辺も注意が必要ですね(笑)

加茂:そのドリアンの発展法で、何か教えてくれませんか?

河野:一番オーソドックスなのは、ドリアンとミクソリディアンを組み合わせたり、リディアンの分散フレーズを入れてみたり・・・それからDmの時にA7へインポーズしちゃう方法。これは最初はラリー・カールトンのビデオで知ったことなんですけど、その他にも色々なプレイヤーがやっていますよね。

DドリアンとDメロディック・マイナーを組み合わせるのも、そこから来ています。つまり、Dドリアン、レ(5弦5フレット)、ミ(5弦7フレット)、ファ(5弦8フレット)、ソ(4弦5フレット)、ラ(4弦7フレット)、シ(3弦4フレット)、ド(3弦5フレット)、レ(3弦7フレット)にはC♯(3弦6フレット)は出てこないんですけど、A7にインポーズしてラ(4弦7フレット)・ド♯(3弦6フレット)・ミ(2弦5フレット)っていうトライアドを入れて発展させるわけです。(Ex-1

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その他でも例えばDmの所でAオルタードスケールのフレーズを使ったりも出来る訳です。

加茂:おお!これはこの対談のアクセスが上がりますよ! ところで、ギタリストとして、河野さんご自身を向上させるためにやっている練習などはありますか?

河野:普段は、さっき言った様なフレーズや曲を耳コピして練習したり、それらのアイディアを使って自分なりに作曲したりする事ですね。

加茂:じゃあ、採譜の仕事もそれに結びついている?

河野:そうですね。やっぱり採譜は仕事でもありますが、自分にとっては目標とするギタリストのソロや曲を分析する為の手段として無くてはならないですね。

加茂:では、ギタリストしての目標はなんですか?

河野:昔セッションで先輩に言われたことなんですけど、「ギターはあまり弾きすぎちゃいけない」ってことですね。若い頃はソロになると攻撃的になっちゃって、速弾きとかもして音を詰め込みがちだったんですけど、一般の人が聴いても良いものじゃないとやっぱりダメ。もちろん、速弾きは僕も大好きなんで練習はしますけど、ギターは必要最低限の音数で歌っているようなプレイが究極の形じゃないかなと思います。・・・でも自分はまだまだ道のりは遠いですね(笑)

プロとして必要なスキル

加茂:歌っているようなギター・プレイという面で目標のギタリストなどはいますか?

河野:常々、好きなプレイヤーはいますね。最近ではセッションギタリストのディーン・ブラウンっていうプレイヤーが凄く好きなんですが、グルーブしまくりのカッティングから、ソロもシンプルなんだけど凄くフィーリングとか個性を感じます。

・・・あと全然タイプは違うんですが、カート・ローゼンウィンケルっていうギタリストがいて・・これがまたアラン・ホールズワースみたいなフレーズを、ジョージ・ベンソンみたいに文字通り歌いながら弾くんですよ! とんでもないアウトのフレーズも弾くんだけど、そこまでもきっちり歌っている!

加茂:すげえ!

河野:スタンダードから打ち込みを使ったオリジナル曲までやっちゃう人なんですけど、そんな自由自在の境地は凄くカッコ良くて触発されますね。当然、自分は彼らみたいな神の様な人達とは(笑)レベルや目指すべき方向性は違うんですが・・・とにかくオリジナルでカッコいい世界を作って行く事を目標にしたいですね。

加茂:僕もホールズワースは好きで、実は彼のモデルも持っていたんですよ。それが……身長183cmだとスタインバーガーは似合わないし、テニス部?って言われたこともあった(笑)。すぐに売っちゃいましたよ(笑)。

河野:ハハハ!でもスタインバーガー羨ましいです(笑)。僕も昔から欲しいんですよね~(笑)。

加茂:ところで、河野さん自身は”プロ・ギタリスト”っていうものをどう考えているか教えてください。

河野:プロっていうのは、自分がやりたいことだけやれる訳ではないですよね。チームワークで共同して何かを作っていくっていう心構えが大事ですよ。

加茂:そのためのスキルも必要ですよね?

河野:なるべく多くのジャンルのオイシイ所を知っておくにこしたことはないですね。

加茂:僕がよく聞くのは、プロになりたいっていう人のほとんどがバンド・デビューを目指しているんですよ。それはもちろん良いことだけど、バンドだけやっていると、河野さんのようなスキルは身につきませんよね? これはどうすればいいですか?

河野:そうですね。バンドはメンバーが集まらないとか、前に事を進めるのが色々と大変ですよね。でもそうしたバンド活動と平行してギタリスト的な探究心を忘れずに色々と幅も出して行って欲しいですよね。そうした小さな努力の積み重ねでバンドの方もレベルアップ出来るハズだし。

加茂:バンドって、メンバーがひとり欠けただけで停滞しちゃいますからね。河野さん自身は、プロとしての活動と、自身のアーティスティックな活動というのを分けて考えている感じですか?

河野:そうですね。昔から創造的なところにはあこがれがありますし、新しい音楽を作れたらいいなとは思っています。ギターが入っていない音楽とかも意識して聴いていますしね。

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加茂:では最後に、河野さんの教則本の読者や、この対談を読んでいる人にメッセージをお願いします。

河野『自虐のギター練習マニュアル』は、基本的なところに重点を置いているっていう良さがあると思います。クロマティックな運指とかピッキングの角度ですね。そういう部分って、プロになる、個性的な音を出すとかいう以前に大切なものなので、プロを目指す人やプロとの差を縮めたい人に活用してほしいですね。

加茂:ありがとうございます。先日僕も聞かせてもらったばかりなんですが、河野さんの曲はどの曲もすごくカッコいい。ぜひとも河野さんの曲で1曲セッションをお願いします。

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河野:こちらこそ。では、僕の新曲の「Improvisation Song」でセッションしましょう。このコード進行はちょっと変わってますヨ~。僕もまだ上手く弾けるか分からない状態ですが、自虐的な感じでこれでいきましょう(笑)。よろしくお願いします!

加茂:うわー、僕も自虐にならないと弾けなそうだ・・・(笑)

[河野和比古との対談・完]

※再生ボタンをクリックすると、河野和比古と加茂フミヨシのギター・バトルが始まります。vs河野和比古「Improvisation Song」(フュージョン)


【この音源について】

河野氏と加茂氏のギター・バトルは、河野氏のオリジナル曲「Improvisation Song」だ。

リスナーに、河野氏のフュージョン・ギター・インプロヴァイズを十分に堪能してもらえるように、このような曲名がついているのだろう。まず、この曲のコード進行に注目したい。

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この4小節の繰り返しであるが、楽曲のKeyを特定する事も難しい進行だ。

まずは、m7(♯5)というコードが多用されている事に注目したい。このコードはLA系フュージョンで良く聴かれる事が多く、ハイラムブロックや、スコット・ヘンダーソン等のトップ・ギタリストも使用していることで知られる。

テーマメロディーが終わって、1分26秒から、河野氏のギターソロ。この様なコード進行上でソロをとるのは、河野氏が言う所の「恍惚難易度MAX」な状態となっている(笑)。

特に出だしはC♯m7(♯5)~Bm7(♯5)~G♯m7(♯5)と難解だが、河野氏はこれをA~G~Eの変化系コードと解釈している。この解釈の仕方は、例えばC♯m7(♯5)は、コード・トーンに着目して(C#、E、A、B)→”Aadd9 on C♯”のように捉えるとよいだろう。

河野氏は、さらにEm7=Em7/A7=A7(AonC♯) という解釈を加えて、EmペンタもしくはEドリアンをメインにこのコードにアプローチしているようだ。4小節目ではAm7のドリアンに含まれるGトライアドとクロマチックの組み合わせで1弦10フレットのビブラートに繋いで、そこからGメジャーペンタ、B7のクロマチックフレーズに変化している。

8小節目ラストは本対談で河野氏が解説していたm6のアルペジオの変化系だ。9小節目からは、ファズをonにしてからEdimアルペジオを使ったりして少し”変態”な外れた感じも出している。まさに河野氏の本領発揮と言った”自虐フレーズ”が満載なソロとなっている。

2分24秒からは、加茂氏のギター・ソロ。

加茂氏はこの曲が送られてきたときに、何が何だかさっぱりわからなかったようだ(笑)。加茂氏曰く「理論的に分析出来ないので音感を頼りに弾いた」というアプローチが展開されている。

加茂氏は、最初の2小節は音感を頼りにコードをA~G~Eと解釈して、A7を想定したAミクソリディアンを基本にフレージングしているようだ。

しかし、河野氏の解釈「Eドリアン」と、加茂氏の解釈「Aミクソリディアン」は、E、F#、G、A、B、C#、Dという同じ構成音によるスケールなので、河野氏の理論展開と加茂氏の音感による解釈が一致しているところが面白い。

この曲では加茂氏の普段のプレイからは珍しく、ピッキングを少なくしたレガートなフレーズが中心となっている。タッピングは一切使われていなくストレッチによるレガート・フレーズのようだ。河野氏のソロに呼応したと思われる、アウト感あるソロを楽しんで欲しい。

3分21秒からは、加茂氏と河野氏の掛け合いだ。ここでもアプローチの違いを十分に楽しむ事が出来る。

エンディング部では、対談中にも出てきたアラン・ホールズワースを思わせる河野氏によるクリーントーンのコード。河野氏は、このコードを「六本木コード」と命名していた(笑)。恐らく、ホールズワースが以前六本木にあるライブハウス「ピットイン」によく来日していたことを示唆しているのだろう。

音楽に対して自虐的なまでに真面目で、さらに独自の世界観を持っている河野氏の音楽を楽しんでもらいたい。

(ギター・マガジン・オンライン編集部)

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【河野和比古 プロフィール】

1971年、東京生まれ。音楽好きだった父親の影響もあり、幼少の頃から洋楽を中心にヒット・チャートを聴き始める。15歳ではじめてエレキ・ギターを持った当時はヘヴィ・メタル一辺倒だった。その後セッション活動を精力的に行い、ジャズ/フュージョン、ロックの奥深い世界を知る。現在はギタリストとして、また講師や音楽ライターとして活躍中。最新刊は、極端な(でも実は真面目な)エクササイズで話題を呼んでいる『自虐のギター練習マニュアル ~負荷フレーズ33』

【河野和比古 公式サイト】

MY GUITAR & MUSIC PAGE

【河野和比古 著書】

『自虐のギター練習マニュアル ~負荷フレーズ33』
A5判/112ページ/CD付き
1,680円(本体1,600円+税)
2008年3月22日発売

生卵、スクワット、アイマスク、体温計、太もも叩き……新発想の超練習フレーズ集!

加茂フミヨシ

加茂フミヨシ

超絶技巧ギタリスト/クリエイターとして活躍する。傍ら、最先端エレキ・ギター奏法の求道者としても、多くのヒット作教則本を発表。2011年に、スティーヴ・ヴァイがバークリー音楽大学で記録した“世界最大規模のオンライン・ギター・レッスン”のギネス世界記録に挑戦。ヴァイの“ギター・レッスン受講者4,455人”の記録を“8,776人”に更新し、イギリスのギネス・ワールド・レコーズより日本人ギタリストとして正式承認される。世界に名を刻んだエレキ・ギター界の伝道師である。



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