【音源付】著者たちの語らい─菊田俊介&加茂フミヨシ(3)

加茂フミヨシ式ギター・トレーニング by 編集部 2009年2月27日

【ゲスト】菊田俊介。対談最終回「ブルースは、People’s Music」。ギター・バトル音源付き!

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▲菊田俊介 ▲加茂フミヨシ
Photo:Kenji Oda

→対談第1回 →対談第2回

→「著者たちの語らい」のコンセプト

■海外でセッションに参加するときの心得
[編集部注:この対談は2009年1月から2月にかけて、菊田氏(シカゴ)と加茂氏(東京)の間で、Eメールで行われました。]

加茂:菊田さんのCD付き教則本『飛入り歓迎! ブルース・ギター・ジャム・セッションR 伝説再臨』では、菊田さんのギターとのコール&レスポンスを疑似体験できる音源も入っていて、その点が非常に珍しいと思いました。

菊田:ブルースっていう音楽が、昔からコール&レスポンスの形をとってきたし、今でも、バンド内でよく行われます。あるいは、バンドとお客さんのコール&レスポンスもあるし、とてもブルースのルーツに根ざした手法なんですね。

加茂:教則DVD『シカゴ・ブルース』では、「シカゴ”ブルース・シティ”ガイドブック」が非常に面白かったです。シカゴに行った際にはこのガイドブックを見ながら是非観光したいと思います。

・・・ところで海外でセッションに参加するためには、やはり英語は必ず必要ですよね? 一体どの位まで英語を勉強したら良いのでしょう?

菊田:英語はもちろんできるにこしたことはないですよね。あとは英語の音楽用語も大切ですね。たとえば、キーがGで、5度のコード(D7)から始まるような曲は”G on five(5)”と言うし、曲を終わる合図として”Let’s go home”と言う事もよくあります。

そのへんは、実際に参加しないとわかりにくい部分でもあるんだけど。なので、細かい失敗を恐れず、とにかく勇気を持って参加してみる事ですね。けっこう失敗から学ぶ事のほうが多かったりするしね。

加茂:海外に行って初めてブルース・セッションに参加する人のために、何かアドバイスをいただけないでしょうか。

菊田:まずは、ギターのチューニングを出番までにしっかりしておくのが最初にすること。そして、ペダル類はなるべく持ち込まないこと。名前を呼ばれてから、ステージに上がってもたもたする時間をなるべく省くためですね。

とにかくステージに上がったらすぐにでもプレイできる体勢にしておくのが他のミュージシャン達への配慮であり、基本でしょう。

加茂:役に立つアドバイスです。

菊田:あと、自分のソロでは、2~3コーラスを目処に思い切り好きなように弾けばいよいので、特に問題はないけれど、ソロ以上に大切なのがリズム・ギターですね。いろんなリズムのノリ(シャッフル、スロー、16系、8系など)で、最低2種類くらいのリズム・パターンは身につけておきたい。

ギターが2人いる場合は、相手のプレイを聞きながら、相手がコードを弾いていれば、歌のあいだにオブリを入れるとか、ベース・ラインを弾くなど、相手と同じプレイにならないように心がけるといいと思います。

加茂:大切ですね。

菊田:あと、これもまたとても大切なんだけど、一緒に参加したミュージシャンにはなるべく話しかけて、知らない曲があったりすればどんどん聞くことですね。曲も覚えるし、オリジナルが誰なのかわかれば、尚いいね。

加茂:ここで、言葉の問題が起きてくるわけですね。話し掛けるためには英会話が絶対に必要ですよね。

菊田:What was a name of the song?とか簡単に聞けば、むこうもわかりますよ。けっこうミュージシャンってお互いによく理解し合えますから。

加茂:スタンダード曲を「記憶しておく」ということはセッションにおいて重要ですか? 譜面の初見で弾くのではなく、やはり覚えているということも重要なのでしょうか。

菊田:ジャズのReal Bookのようなものはブルースにはないですし、譜面に頼らず、とにかく曲を耳で覚えるほうが良いでしょう。シカゴのブルース・シーンでは譜面を見ながらプレイするミュージシャンはいません。

ブルースがもともと口移し、耳移しで伝えられて来た音楽なので、曲もプレイの仕方も、何度もやって体に染み込ませるやり方ですね。セッションで譜面見ながらプレイしていたら、ブルース初心者だと思われてしまうでしょうね。

■地元のバンドに共演を頼む理由

加茂:日本にもセッション系ライブハウスがありますが、集客の問題などもあり、音楽業界全体も景気の影響を受けていると思います。CDもなかなか売れない時代になってきて、レコード会社やレーベルも頭を抱えている現状もあります。そこでセッション系ライブハウスやブルース・シーンを盛り上げていくために、菊田さんのご意見を是非聞かせていただきたいです。

菊田:これは、もう、やらせていただくチャンスがある場所、時を利用して、ブルース・ライブ、あるいはセッションをコツコツやっていくしかないんじゃないですか?

ブルースってもともと、時代の波には影響されにくい音楽だと思います。アメリカにおいても、日本においても、自分が経験したところでは、地方都市なんかでもセッションを設けている店はけっこうあるし、若いミュージシャン達もたくさんいる。けっして悲観する状況ではないと思いますね。

ブルースのCDを何十万枚も売れ、となると、それは厳しい注文かもしれない。でも、ブルースの好きな人が集まって、ちょこっとセッションしたりライブしたりできるお手軽さが、ブルースの良さで楽しさですからね。

加茂:納得です。

菊田:そう言う意味でも、僕は自分のやれること、やるべき事がたくさんあると思っています。

大都市だけでなく、地方の音楽やブルースシーンにも何かポジティブな影響を与えられればと思い、ツアーでも地元のバンドに共演をお願いしていますしね。これからももっと広い範囲で続けて行きたいと思っていますよ。

加茂:素晴らしいご意見だと思います。コツコツやることが一番重要ですよね。

・・・さて次はギターの練習方法についての質問なのですが、菊田さんがご自身を向上させるために普段からやっている練習を一部公開してもらえませんか?

菊田:僕は練習は嫌いです(笑)。練習としてギターはほとんど弾かないですね。週に4、5日のペースでギグをやっているし(シカゴの場合は1時間のセットを3回)、日曜は教会でゴスペルもプレイしているので、家でやるのはどちらかというと、ウォームアップ的なものか、あるいはギター・レッスンでやる内容が多いですね。

ただ、ギターの一番基本なんだけど、右手と左手のタイミングがずれていると修正する様にはします。とにかくスローなテンポで、易しいブルースのフレーズやチョーキング、曲なんかを両手のタイミングをしっかり合わせながら弾く。

生徒に良く言うのは、どんなに難しいフレーズでもゆっくりのテンポで正確に弾きながら指に馴染ませること。あとは少しずつテンポを上げていくだけですから。早く弾きたければ、ゆっくり正確に練習する。これは一番の近道ですね。

加茂:スケール練習はしますか?

菊田:しないですね。必ずブルースのフレーズ、あるいは何でも良いから音楽として聞けるメロディを弾く。練習の時でも必ず音楽をすること。なぜなら、練習で弾いた事がそのまま本番にも出るわけで、ソロを弾いてても機械的なスケール練習になっちゃいますからね。

加茂:練習で弾いた事がそのまま本番になる、言い換えれば本番では練習した事以外は出来ないということですよね。つまり、菊田さんは練習しているという意識でない状態で練習されている、とも言えますよね。

・・・ところで、技術的な意味でのギタリストとしての目標はあるのですか?

菊田:まずは、頭の中に流れるメロディを充実させる事です。そのメロディが全て歌であるようでありたい。そして、指はそれら頭の中に浮かんで来たメロディを取りこぼす事無く忠実に、確実に捕らえる。それに尽きるんじゃないでしょうかね。

加茂:なるほど。やはり歌う事は重要ですね!

■ブルースは、People’s Music

加茂:アーティスティックな部分での菊田さんご自身の目標はありますか?

菊田:ギターに関して言えば、一音一音が光り輝くようなエネルギーを持って、リスナーに届いて欲しい。聞く人の心のひだにまで染み渡るような音を届けたい。同時に、オリジナルを含めた自分の音楽としての世界をどんどん広げてゆきたいですね。

僕の場合は、もうブルースが根底にあるのは絶対に変わらないだろうから、その上にいろんなエッセンスを積み重ねていければ、と思いますね。結果的にそれがブルースと呼ばれるか呼ばれないかは別としても、心にどんどん入り込んで行く音楽を作って行きたい。

その為には、自分自身がもっともっと懐の深い人間として成長していく必要があるでしょうし、単に形の上での音楽ではなく、人生経験から学んだものを表現できればいいですね。

加茂:僕も、菊田さんのお話を伺ってもっともっと成長していきたいと思いました! では、プロ・ギタリストを目指して、菊田さんの教本で練習している読者の方に一言メッセージをお願いします。

菊田:技術的なことを学ぶのはとても大切だけど、同時にエンジョイして楽器に触れ、プレイすることは絶対に忘れないようにしましょう。僕は、ギターを始めて30数年になるけど、今でもギターを弾くのが大好きです。だからこそここまで続けられた。みなさんも、しっかりプレイを楽しんで長く続けてください。うまくなればその分楽しみも増えますからね。

あとは、自分の中に閉じこもらないで、音を他の人とシェアして喜びを分け合う気持ちをいつも持ちながらプレイに臨んで欲しいです。特にブルースは、People’s Music。人々の生活の中で生まれて発展して来た音楽。歌を通して悲しみや喜びを共有して来た。だからこそ100年以上にわたって聞き継がれて来たのだと思いますよ。

ジュニア・ウェルズが生前僕に残してくれた言葉を紹介しましょう。

Don’t play for yourself, play for the band, play for people.
(自分の為にプレイするのではないよ。バンドと一緒に、人々に向けてプレイするんだ)

ぜひその気持ちを持ちながら、プレイして欲しいですね。

加茂:ありがとうございました。では日本ツアー終了後の、今後の活動予定を聞かせてください。

菊田:春になるとココとのツアー、フェスティバル出演の季節になるので、各地に出向きつつも、JWウィリアムスなどシカゴの仲間達とのレギュラー・ギグもやっていきます。秋にはたぶん台湾ツアーや、日本ツアーも入るのではと思うし、ライブDVDも年内に発表する予定でいます。

さらに来年は、シカゴ・デビュー20周年なので、日本でも大きなイベントをやりたいなと思っているところですよ。新作アルバムも来年には出したいですね。

加茂:素晴らしいご活躍ですね。・・・最後に「著者たちの語らい」恒例となったギター・バトル音源についてですが、今回は『飛入り歓迎! ブルース・ギター・ジャム・セッションR 伝説再臨』の付属CDの音源を使ったバーチャル・セッションにさせていただきました。僕のギターを重ねた完成音源は、すでに菊田さんにお聴きいただいたようで、非常に光栄です。

菊田:プロのギタリストに失礼だけど、加茂さんはさすがうまいっすね(笑)。とても楽しませていただきました。いつか、ステージでジャムできる日を楽しみにしています。それまでお互いに充実した活動を続けていきましょう!

こちらこそ、ここまで深く突っ込んでブルースや音楽について話せてとても嬉しかったし、勉強になりました。ありがとうございました!

再生ボタンをクリックすると、菊田俊介と加茂フミヨシのギター・バトルが始まりますvs菊田俊介「60’s風ブルージィ・ソウル」(ブルース)


【この音源について】

このギター・バトルは、教則本『飛入り歓迎! ブルース・ギター・ジャム・セッションR 伝説再臨』の付属CDに収録された楽曲「60′s風 ブルージィ・ソウル」の”コール&レスポンス・トラック”の音源を活用して制作された。

「コール&レスポンス」とは掛け合いの事で、”呼びかけ”の意味のフレーズを出すと、”答え”を意味するフレーズが返ってくるという、音楽における応答形式の事だ。菊田氏も対談中で語っているとおり、ブルースのルーツに根ざした手法である。

CDの音源に、加茂氏がソロを被せる事によって作られたバーチャル・セッションであるが、音楽的に鑑賞できる粋に達しているところを聞いて欲しい。

演奏の始まりから1分17秒までは、菊田氏によるテーマ・メロディ。このテーマ・メロディを弾いている「音色」を覚えておくと、1分18秒から始まる掛け合いにおいても、どちらが菊田氏でどちらが加茂氏かがすぐわかる。

Key=Gで、G7,C7,D7というコードがメインとなっているので、Key=Gのブルース・スケールでアドリブ可能であるが、途中でA7というコードが1箇所出現するところが通常のブルース曲とは一味違う所だ。(しかし、その事を気にする事なく、Key=Gのブルーノート・ペンタトニックでアドリブが可能なので試してみて欲しい。)

ここでの両者のプレイは対談中にもあった「歌うようなギター・プレイ」というのがポイントになっている。菊田氏の王道であり常套句でもあるブルース・ソロ、さらにグルーヴ感溢れるカッティングと、加茂氏のトリッキーかつバラエティに富んだフレーズが絡み合っているが、両者に共通しているのは「歌おう」としている意識であろう。ペンタトニック・スケールをベースに、メロディアスに演奏するための参考例としてもぜひ聞いて欲しい。

(ギター・マガジン・オンライン編集部)

【インタビュー中に登場する教則本とDVDについて】

『飛入り歓迎! ブルース・ギター・ジャム・セッションR 伝説再臨』

書籍『飛入り歓迎! ブルース・ギター・ジャム・セッションR 伝説再臨』は、『飛入り歓迎! ブルース・ギター・ジャム・セッション』(2004年発行)の続編として、2005年に出版されたCD付き教則本だ。

書籍の中身は、練習曲のコピー譜と演奏解説が中心だが、随所にエッセイ風のミニ・コラムも散りばめられている。

CDには、練習曲ひとつにつき「フル・パート・デモ演奏」のほか、「ソロ&リズム・ギター用マイナス・ワン」「コール&レスポンス用マイナス・ワン」の3通りのトラックが収められていて、これによって菊田氏および本場シカゴのミュージシャンたちとのバーチャル・セッションが楽しめる。

ブルース・ギターのリズム・パターンやソロ・フレーズをコピーする目的にも向いているが、ひととおりマスターしたあとにも、アドリブの練習に長く使える教則本だ。

『シカゴ・ブルース』

DVD『シカゴ・ブルース』は、1999年に発売された同名のビデオ(VHS)を、2002年にDVD化したもの。「ライブ映像+シカゴ”ブルース・シティ”ガイド」が約67分、教則パートである「ギター・クリニック」が約98分という、計2時間45分の長編。VHS発売当時においては、楽器教則ビデオとしてはかなり異例の仕様であり、2本組みだった。

付録の小冊子には完全コピー譜が収録されているが、DVD化にあたって特別付録「シカゴ”ブルース・シティ”ガイドブック」が追加された。このガイドブックでは「キングストン・マインズ」や「バディ・ガイズ・レジェンド」など14のブルース・クラブが、菊田氏自身の文章により紹介されている。この店には誰々が出演する、ここはスペアリブがおいしい、ジャム・セッションは月曜日・・・などなど、旅行者にはありがたい内容だ(ただしデータは2002年当時のもの)。

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【菊田俊介 プロフィール】

1966年、栃木県宇都宮市生まれ。86年、ボストンのバークリー音楽大学留学のため渡米。90年、同校卒業と同時にシカゴに移住。以来シカゴのブルース・シーンで活躍する。

94年からキングレコード、M&Iカンパニー、ブルーソックス・レーベル、エヴィデンス・レコードより9枚のCDを発表。

2000年より”ブルースの女王”の愛称で知られるシンガー、ココ・テイラーの専属ギタリストに抜擢され、世界各区地のフェスティバルやシアター、クラブで演奏活動を行っている。04年、テレビ番組”An Evening with B.B.King”のハウスバンドのリーダーとして、B.B.キングと共演。

05年、台湾のTAIWAN BLUES BASH 2にソロ・アーティストとして初のヘッドライナーで出演。06年、ココ・テイラーのアルバム『Old School』のレコーディングに参加。07年、7年ぶりのソロ・アルバム『Rising Shun』をリリース。08年、ココ・テイラーとともに、エアー・ジャマイカ・ジャズ・アンド・ブルース・フェスティバル、シカゴ・ブルース・フェスティバル、ケネディ・センター・オナーズ等に出演。

2009年、「菊田俊介Japan Tour 2009」のため来日。

【菊田俊介 公式サイト】

Shun Kikuta’s Website
菊田俊介ブルース日記(ブログ)

【菊田俊介の教則DVD/教則本】

DVD『シカゴ・ブルース』
DVD『R&Bギターの常套句』
DVD『ブルース・ギターの常套テクニック』
書籍『飛入り歓迎! ブルース・ギター・ジャム・セッション』
書籍『飛入り歓迎! ブルース・ギター・ジャム・セッションR 伝説再臨』

【菊田俊介の最新アルバム】

『Rising Shun』(2007年)

【菊田俊介のアルバム(主要作品)】

『ゼイ・コール・ミー・シュン』(1995年)
『シカゴ・ミッドナイト』(1996年)
『ライブ・アット・パークタワー・ブルース・フェスティバル/菊田俊介&J.W.ウィリアムス』(1997年)
『ハート・アンド・ソウル/Shun Kikuta and Nellie”Tiger”Travis』(2000年)

加茂フミヨシ

加茂フミヨシ

超絶技巧ギタリスト/クリエイターとして活躍する。傍ら、最先端エレキ・ギター奏法の求道者としても、多くのヒット作教則本を発表。2011年に、スティーヴ・ヴァイがバークリー音楽大学で記録した“世界最大規模のオンライン・ギター・レッスン”のギネス世界記録に挑戦。ヴァイの“ギター・レッスン受講者4,455人”の記録を“8,776人”に更新し、イギリスのギネス・ワールド・レコーズより日本人ギタリストとして正式承認される。世界に名を刻んだエレキ・ギター界の伝道師である。



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