著者たちの語らい--Kelly SIMONZ & 加茂フミヨシ(1)

加茂フミヨシ式ギター・トレーニング by 編集部 2009年10月9日

Kelly SIMONZと加茂フミヨシの対談が、ここに実現した。Kelly SIMONZ(ケリーサイモン)は、14歳でギターを始めてわずか3年でラウドネスのオープニング・アクトに抜擢された天才ギタリスト。ハリウッドの音楽学校MIの在学中よりバンドやセッション・ワークを展開し、1999年にアルバム『Silent Scream』でメジャー・デビュー。その後、”ヒューズ・ターナー・プロジェクト” のオープニング・アクトとしてヨーロッパ・ツアーを敢行するなど、世界的な活躍を続けている。そして今年8月には、究極の技巧派教則本『超絶ギタリスト養成ギプス』をリットーミュージックから出版した。これを迎え撃つ加茂フミヨシも”超絶ギタリスト”として、これまで様々なジャンルの猛者と対談&ギター・バトルを繰り返し本コーナーを引っ張ってきた。果たしていかなる対談になるのか?!

 
▲左/Kelly SIMONZ 右/加茂フミヨシ

 

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※Kelly SIMONZのプロフィールは、このページの下を参照

大切なのは「イメージング」と「目標」

加茂フミヨシ:大阪のご出身なのですね。大阪の音楽シーンから影響を受けた部分はありますか?

Kelly SIMONZ:高校生まで大阪に住んでいて、当時の大阪は「西高東低」といわれるほどハード・ロック/ヘヴィ・メタルが盛んでしたし、自分自身が少なからずライブ・ハウスに出ていた事で、当然影響を受けたとは思いますが、やはり家庭環境の方が大きいかなと思います。

加茂:僕はハード・ロック/ヘヴィ・メタルを聴き出したのがかなり遅くて、高校生の時に初めて歪んだギターの音を聴き、これは悪魔の音楽だと思ったりしました(笑)。

Kelly:ラウドネス、アースシェイカー、44マグナムといえばもう僕らの世代は皆憧れの存在だったのでないでしょうかね。当時はラウドネスも大阪城ホール・クラスでライブをしていたので、メタルにも夢がありましたよ(笑)。

加茂:僕の家庭には残念ながらハード・ロック/ヘヴィ・メタルがなかったです。。くぅ〜っ! Kellyさんは、お兄さんもギターを弾いていたのですよね。とすると、最初から洋楽が聴ける環境にあったのですか? 中学校の時だと、洋楽聴いている人ってなかなか周りにはいないですよね?

Kelly:ギターを始めたきっかけが兄だったので。兄の弾くラウドネスですね(笑)。10歳年上の姉がABBAなどを聴き、5歳年上の姉がUKロックからハード・ロックまで幅広く、さらに3歳上にメタラー兄貴(笑)がいたので、洋楽も幅広い世代の音楽が家に流れていました。その全てに影響を受けたのでラッキーでしたね。小学生からポリスを聴いていたので(笑)。もちろん家の外では話が合いませんでした(苦笑)。

加茂:小学生でポリスですか、僕スティングの大ファンなんですよ! 良いなぁ〜! 僕はわけもわからずパット・メセニーとかバッハとか聴いてました。音楽はその時代、僕にとっては習い事だったので、積極的に聴くわけではなくエレクトーンの宿題として聴いてたんですよね。もっとポピュラーの洋楽を聴いておきたかったなぁ〜と今は思いますよ!

Kelly:スティングは、僕も一番のフェイバリット・アーティストなんですよ。だからこそ自分も歌ってるんですがね。彼の声のトーンそのものが好きですね。……ラリー・カールトンも、一番上の姉が野口五郎さんのファンだったのでよく聴いてました(笑)。多分野口五郎さんが好きだったんでしょうね。姉のマニアックさに感謝です。それから僕の小学生の時のテーマソングはクィーンの「バイシクル・レース」です。意味も分からず「バーイセコッ!」って歌ってました(笑)。大阪弁のセコイっていう言葉に似てたから余計に親しみやすかったのでしょうきっと(苦笑)。

加茂:Kellyさんの教則本『超絶ギタリスト養成ギプス』に掲載されたインタビューに書かれていたことですが、中学校2年の4月にギターを始めて4ヶ月後にはラウドネスの曲が4曲弾けるようになっていた、というのは凄いです! ビデオを見てコピーしたそうですね。

Kelly:自分の家にはビデオデッキすらなかったので、友達の家に行ってラウドネスのビデオを見せてもらい、脳裏に焼き付けて(笑)、家でイメージ・トレーニングの毎日でしたね……。今でも人に教える時に一番大切にしてるのは「イメージング」ですが、自分はこの時に会得したものだと思っています。

加茂:コピー譜は見なかったのですか?

Kelly:楽譜はやはりどうしても、本人が採譜したものでない場合、間違っている事も少なくないので(苦笑)。また、4ヵ月後に文化祭で発表するという「課題」があったからこそ実現できたのだと思います。やはり何事も、目標がしっかりしている事が結果を生み出す要因になるので。

加茂:イメージングは確かに大事ですよね。イメージが無いと何も創造できないですから、重要なポイントですよね。また、高校生のうちから目標をしっかりと定めているという点が素晴らしいです。全国の軽音楽部&サークルの方にも是非読んでいただきたいお話です!

Kelly:中学3年で本格的にギターを始めた時、手ごたえを感じたんです。今までやってきた何よりも。……だから「コレはいけるんじゃないか」とギター暦半年で思い立ったら、次はもう「アメリカに行くしかない」と思ってました(笑)。だから高校時代は、渡米するための資金稼ぎとギター練習のみでしたね。お陰で勉強は強烈に「低域」につっこみましたが(笑)。

加茂:インタビューによると、ビギナー時代からノイズを出さないことに気を遣っていたそうですね。そのような「気づき」は自然とあったのですか?

Kelly:昔は今のようにどこのスタジオにもマーシャルが置いてあるなんて事はなかったので、ジャズ・コーラスでオーヴァードライブとディストーションを併用していたりしていました。しかもギターはストラトです。そうした中、ノイズは悲惨なほどあったので、「無駄な音」に対する感覚は物凄く鋭くなりましたね。当然昔はノイズ・サプレッサーなどはプロの道具でしたから(笑)。

加茂:そうですよね〜。確かに、ストラト+JC+オーヴァードライブ+ディストーションはノイズが多いかもしれませんね。でも、それが無駄な音を排除する感覚につながったわけですね。

Kelly:『超絶ギタリスト養成ギプス』の一部で紹介しているボリューム奏法なんかも、そうしたノイズ対策で身に付いた技術ですね。自分の場合、曲の隙間のブレイクでもボリュームは必ず下げます。たまに自分のボリュームを全く気にせず不快な音を出している若者がいますが(笑)、そうした人にはまず、そこを集中的に意識させて改善させますね。

加茂:イングヴェイ・マルムスティーンのコピーも相当されたそうですね。彼の奏法に関しては、情報が少なくて、どうやって弾いているのかわからないという時代が長かったですよね。Kellyさんも試行錯誤をかなり繰り返されたとの事ですが。

Kelly:まぁラッキーだったのは、ファンの間で言われる彼の神がかりな時代を、ライブで直に見られたことですかね。もちろん今も素晴らしいですが、その頃のブート・レコードはほとんど買いましたし、全てのライブ・バージョンのソロもコピーするほど拘りました(笑)。MTRにイングヴェイの曲を録って、別トラックに自分の演奏を録音し、常に身の程を知る(笑)、という作業の繰り返しですね。残念ながら近道は無く、「量をこなす事で高い質を見極める」というレベルに達するまで、ひたすら繰り返しました。それが結果になったと思ってます。

加茂:全てのライブ・バージョンのソロですか? それも神がかりですよ!!(笑) MTRをそういう発想で利用するのも凄いです。

Kelly:毎回やっていたコピー・バンドで、ソロを気分で変えてたのですよ(笑)。今回はどのバージョンで弾こうかな?みたいに(笑)。あと、MTRでもなんでも「自分の演奏を常に聴く」事が大切だと思ってます。

加茂:僕はイングヴェイは『オデッセイ』が一番好きなんですよ。

Kelly:教則本の中の名盤セレクションをご覧いただければ分かるとおり、僕も同じです(笑)、『オデッセイ』はジョー・リン・ターナーのソウル寄りの跳ねたメロディラインが、イングヴェイのヨーロピアンなスタイルと上手く融合された作品ですね、「クリスタル・ボール」なんかもう、そのミックス具合がなんともいえない名曲だと思います。

加茂:高校生でラウドネスの前座を任された時、楽屋で高崎晃さんのカッティングやジャズ&フュージョン系フレーズを聴いて、自分も沢山の音楽ジャンルを聴こうと思った、との事ですが、たとえばメタル系におけるスケールと、ジャズ&フュージョン系におけるスケールの解釈の違いなどで悩んだ事はありましたか?

Kelly:正直に言ってしまえば、たぶん僕は今でもそこまでモードやスケールに対して拘りはないですね。その場で自分が歌いたい事をギターで弾いている感じなので。……そういうことにコンプレックスを持ちやすいメタル系の人たちは、是非とももっと自然に全ての音楽を捉えてもらいたいですね。結局は自分が何をしたいかを明確にさえすれば、フュージョンであろうとメタルであろうとしっかりした「音」が出せると思っています。

加茂:何ができるかではなく、何をしたいかが大事ということですよね。

Kelly:そうです、何でも出来るからって凄いと思ってるのは若いうちだけで(笑)。コレだけは負けないというものが一つあるだけでやっていける世界ですからね。

教則本『超絶ギタリスト養成ギプス』について

加茂:『超絶ギタリスト養成ギプス』を執筆することになったきっかけや、構想から制作にかけての段階で考えていたことを教えてください。

Kelly:正直いいまして、自分が人にギターを教えることすら、昔は全く想像していない事だったので、まさか教則本を執筆するとは思って無かったです。ただ友人の小林信一くんが「地獄シリーズ」で一世風靡している事は凄いなぁと思っていて、その彼から「ケリーも興味はないか?」という連絡がありまして、「やれるものならやってみたい」と返事した事がきっかけですね。あとは企画・編集担当の鈴木さん(リットーミュージック出版部)のイメージする事に、出来るだけ応えたという(笑)。

加茂:教則本は、技術的なレベルやターゲットを決めるのに悩みますよね。

Kelly:そうですね。やっぱり超絶といっても無茶苦茶な本では教則にならないだろうという事で「レベル」の点で悩みましたが、鈴木さんが「ケリーさんが難しいと思う事は全て超絶ですよ」といわれたので、コレは難しい!と思うものを10コぐらい決めて、そこから簡単なものにしていくというイメージで制作しました(笑)。

加茂:Kellyさんでも難しいと感じるエクササイズが収録されているわけですね! それは凄まじい!

Kelly:おかげで上手くなりました(笑)。

加茂:これで練習する人たちに注意してほしい点はありますか?

Kelly:やっぱり「精度」には拘ってほしいですね。人からはよく「プロはどのぐらい正確に弾けるんですか?」と聞かれるんですが、そういうときは「プロでも人間だから完璧ではないし、良い意味での誤魔化しが上手いのもプロの条件だ。ただし8〜9割の”精度”がないと”弾けるフレーズ”とは言わない方がいい」という話をします。

加茂:『超絶ギタリスト養成ギプス』を読んだ人、挑戦した人からの反応がすでにKellyさんのもとに届いているかと思いますが、そうしたユーザーの反応を見て、どう思いますか?

Kelly:タイトルこそ「超絶」ですが、実際自分が力を入れたのは「トーン」への拘りだったんですね。速く弾くだけなら他にメカトレの本が沢山あると思うので、「ニュアンス」を出す事に拘りました。そうした部分が少なからず読者に伝わっているようで嬉しかったです。……あとまぁ一応表向き一般的な教則本ではありますが、もともと僕の事を知っている人たちにとっては「50%ぐらいKelly SIMONZ」的なものだと思って購入してくれている人が多いと思います(笑)。それから、同世代(40歳前後)の人たちからの「新たな気持ちでギターを頑張る気になりました」という意見も嬉しいですね。

加茂:これで「Kelly SIMONZ 50%」ですか! 100%だとどんな凄まじいことになっちゃうんですか!?

Kelly:いえいえ(笑)、50%というのは「自分らしさ」という意味です。……本来ならイメージ的にもっとクラシカルなものを期待していた人も少なくないと思うのですが、僕自身は、難易度は高いけれども「一般的な教則もの」として考えていたし、担当者の鈴木さんの「70%ハード・ロック、30%ジャズ/フュージョン」というオーダーに応えた経緯もあるので、そういう風に言いました。……「Kelly SIMONZ 100%」にするなら、もっと「泣き」と「クレイジー」な部分が必要です(笑)。

加茂:『超絶ギタリスト養成ギプス』には、カッティング、ウォーキング・ベース、モード、のエクササイズが収録されています。シュラプネル系のプレイが満載のこの教則本で、このようなプレイも紹介したのはなぜですか?

Kelly:コレはまさしく以前、自分がコンプレックスに思っていた部分だからかもしれません。シュラプネル系(速弾き)の人たちはシングル・ノートにこだわりを持って練習してきているため、和音系が弱い人が多いのです。僕自身はラウドネスやその他のハード・ロックでは、ソロよりバッキングのサウンドにこだわりを持ってきたので、そうでもなかったのですが、やはりシュラプネル系の若者にとって「ブルース」「ファンク」は苦手意識がありますからね。

加茂:なるほど。

Kelly:また、これらのエクサイサイズは、簡単にいえば「楽器屋でとりあえず弾いてほしい」譜例です(笑)、いきなり速く弾くより絶対カッコいいですから……そのあと思いっきり弾きまくれば、なおさらカッコいいのではないかと(笑)。

加茂:なるほど(笑)。試奏するときも、幅広いジャンルで弾いた方が、ギターの弾き心地も確認できるので良いですよね。

Kelly:そういう意味も込めて若者達には、出来るだけジミヘンの「リトル・ウイング」のイントロを教えてます(笑)。あれが出来るだけでストラトの音の良さはハッキリ分かりますから(笑)。

加茂:メタル系のバンドをやっていても、モード等を使いこなしたいと考える人は多いと思います。Kellyさんのモード攻略法・練習法を教えていただけないでしょうか。

Kelly:モードに関しては「知っていて損は無いけど、使えなければ意味がない」という説明をしていますね(笑)。いかに「実践」で使えるかがポイントです。友達とセッションしたり、スタジオでリハーサルしたり、ライブで使ってみたり……とにかく実践する事ですね。

加茂:理論だけ把握するのではなく、実践の中で使っていく。つまりは実験的に学んでいく、という事ですね。

Kelly:その通りです。思い立ったら手を動かす、さらに実践で使う、という事を繰り返さないと、体で覚える事が出来ませんので。……理論だけは分かってる人の方が圧倒的に多いと思いますよ、そういう人達にいつも間違いを指摘されてるわけですが、まぁやっぱり「音」に変換出来てナンボの世界だと思ってます。

次回に続く)

※この対談は2009年9月にEメールで行われました。

<前回 | 加茂フミヨシ式 一歩先を行くギター・トレーニング | 次回>

Kelly SIMONZ プロフィール

1970年7月1日大阪生まれ。14歳でギターを始めて、わずか3年でラウドネスのオープニング・アクトに抜擢される。高校卒業後にハリウッドの音楽学校 MIに入学。ジャズ・フュージョンのトップ・クラスでギターを学ぶかたわら、ローカル・バンドでの活動やジャム・セッションを重ねる。卒業後には自身のバンドを結成し、さらにアメリカ東部に拠点を移してセッション・ワークやローカル・バンド活動を行った。アメリカでの活動を中心にしていたが、兄の不慮の事故死によりやむなく帰国。

活動拠点を日本に移すと、1998年に自主制作アルバム『Sign Of The Times』をリリース(1年間で約6,000枚をセールスする)。翌年ソロ名義の『Silent Scream』でメジャー・デビューを果たし、同作はハード・ロック専門誌の売り上げチャートで1位を記録する。2002年には”Kelly SIMONZ’s Blind Faith”名義の2ndアルバム『The Rule Of Right』を発表すると同時に、フィンランドのLION MUSICとアルバム契約を交わして世界リリースが決定。その後、グレン・ヒューズとジョー・リン・ターナーによる”ヒューズ・ターナー・プロジェクト” のオープニング・アクトとしてヨーロッパ全土11カ国に及ぶツアーを敢行して、海外でも高い評価を得る。

現在は、ソロ活動と並行して、メロディック・デス・メタル・バンド”Scarlet Garden”やセッション・ワークなど”ハイパー・マルチ・ミュージシャン”と言える幅広い活動を行なっている。

公式サイト http://www.kellysimonz.com/
公式ブログ http://ameblo.jp/kellysimonz/

【教則本】

超絶ギタリスト養成ギプス

【アルバム】

Sign of the Times

Silent Scream

The Rule of Right

加茂フミヨシ

加茂フミヨシ

超絶技巧ギタリスト/クリエイターとして活躍する。傍ら、最先端エレキ・ギター奏法の求道者としても、多くのヒット作教則本を発表。2011年に、スティーヴ・ヴァイがバークリー音楽大学で記録した“世界最大規模のオンライン・ギター・レッスン”のギネス世界記録に挑戦。ヴァイの“ギター・レッスン受講者4,455人”の記録を“8,776人”に更新し、イギリスのギネス・ワールド・レコーズより日本人ギタリストとして正式承認される。世界に名を刻んだエレキ・ギター界の伝道師である。



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