著者たちの語らい─南澤大介&加茂フミヨシ(1)

加茂フミヨシ式ギター・トレーニング by 編集部 2009年5月15日

「ソロ・ギターのしらべ」で圧倒的な支持を得ているアコースティック・ギターの伝道師、ついに登場!【ゲスト】南澤大介「ギターと名の付く音楽は片っ端から聴いていた」

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▲左が加茂、右が南澤。 撮影:鈴木千佳

【南澤大介プロフィール】

1966年12月3日生。

作・編曲家として、プラネタリウムや演劇、TVなどのサウンドトラック制作を中心に活動中。近作に、NHK教育TV「しらべてゴー!」など。

高校時代にギターの弾き語りをはじめ、のちソロ・ギター・スタイルの音楽に傾倒。マイケル・ヘッジス、ウィリアム・アッカーマンら、ウィンダム・ヒル・レーベルのギタリストに多大な影響を受ける。1992年、TVドラマ「愛という名のもとに」サウンドトラック(作曲:日向敏文)への参加が、プロ・ギタリストとしてのデビュー。

ギター1本でロックやポップスの名曲を演奏したCD付き楽譜集「ソロ・ギターのしらべ」シリーズが異例のベストセラーを続けている。

【南澤大介 公式サイト】

Big South Valley Studio
ソロ・ギターのしらべ(ブログ)

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■ルーツはさだまさし、ビートルズ、プログレ
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加茂:南澤さん、はじめまして。この「著者たちの語らい」企画で僕がいつも感銘を受けるのが、それぞれのギタリストの方のこだわり、つまり”音楽に対する追求心”と言うのでしょうか、皆様が追及されている音楽の深さというものに触れることが出来て自分自身とても刺激を受けるんですよ。

前回はこれぞ王道ヘヴィ・メタル!という小林信一さん、前々回はコンプリートなブルースマン、菊田俊介さん等、本当に突き抜けている方たちと対談させていただきました。

そして、今回はリアル・アコースティック・ギタリストとも呼ばせて頂きたい南澤さんとこうやって対談させていただき、とても光栄です。

ではさっそくインタビューさせてください。南澤さんが音楽を意識したきっかけはなんだったのですか?

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南澤:一番最初は、さだまさしさんですね。それから母親が洋楽が好きで、僕も自然と聴いていたという感じです。

加茂:洋楽というと、具体的には?

南澤:ビートルズを聴き、ちょうど80年代ですから『ベストヒットUSA』が人気でジャーニーとかも聴いていました。中学生ぐらいの話です。

加茂:では、ギターを始めたきっかけは?

南澤:最初はやっぱりさだまさしさんで、僕もフォークの弾き語りをやっていました。

加茂:その弾き語りのスタイルは、今南澤さんが『ソロ・ギターのしらべ』などでやられているソロ・ギターのスタイルとは、かなり違いますよね? 特にアコギだと、コードが弾けるようになればOKで、どちらかというと曲作りや弾き語りの”歌の強化”の方向に向かっていきがちで、ギターテクニックはあまり追求をしないことも多いかと思うんですが、その辺どうだったんですか?

南澤:弾き語りをやっていた時にまず感じたのが、「前奏や間奏で何をすればいいんだろう」っていうことだったんですよ。

加茂:おお! 確かにそうですよね。

南澤:元音源にはリード・ギターとかが入っているわけですよね。まあ、ハーモニカを吹いたりっていうこともあるんですけど、僕はギター1本でなんとかしたかったんです。リードを弾きつつ、コードとかも弾けたらいいんじゃないかなって思ったのが、ソロ・ギターの出発点ですね。

加茂:よ~く、わかります! 僕もボーカルとギターだけでデュオ演奏をする状況が良くあるのですが、やっぱりイントロと間奏が一番困る! ただコードを弾いておしまいっていうふうにはいきませんから。そういう背景でソロ・ギターに必要な技術面にも興味を持ったわけですね。

南澤:そうですね。あと、その頃弾いていたさだまさしさんの曲は、伴奏のアコースティック・ギターもカッコ良くて、それを…ジャカジャカとコードをかき鳴らすんじゃなく…ちゃんとコピーしていましたね。……さださん以外だと、ビートルズやポール・マッカートニーの曲もよくやりました。そのあとはプログレに行っちゃうんですけど……。

加茂:プログレですか!?

南澤:ええ。イエスとかEL&Pとかですね。

加茂:イエスだと「ラウンドアバウト」とかですか?

南澤:いえ、アコギ曲や弾き語り曲ですね。イエスだと「ムード・フォー・ア・デイ」(『こわれもの』収録)。EL&Pなら『展覧会の絵』に入っている「賢人」っていう曲とかです。

加茂:EL&Pっていうと、オルガンっていうイメージですよね?

南澤:ええ。キーボードがメインなんですけど、グレッグ・レイクのアコギ曲もなかなか良いんですよ。

加茂:それにしても……さだまさしさんからプログレって……。

南澤:まあ、その間もいろいろあって、直接ではないですけどね(笑)。中学の頃に音楽に目覚めたわけですけど、クラスにひとりは音楽に詳しいやつがいますよね? それで、彼の家に行ってはビートルズのボックス・セットを聴き、高校に入ってからはプログレ好きの友人ができて、「こんなのもあるんだ」って発見した感じですね。その頃は山下達郎さんなんかと並行してプログレも聴いていたというぐらいです。

加茂:先ほど『ベストヒットUSA』というキーワードが出ました。この言葉はこの「著者たちの語らい」で実は多く出てくるのです(笑)。前回の小林信一さんの時にもお尋ねしたのですが、例えばボン・ジョヴィとか、ああいう派手めなロックには行かなかったんですか?

南澤:ジャーニーぐらいまでですね。と言ってもエレキ・ギターのフレーズをコピーするわけでもなく、単に曲が好きだっただけです。あとはデュラン・デュランとかカジャ・グーグー、カルチャー・クラブとかも好きでした。

■ウィンダム・ヒル・レーベルの仕事

加茂:なるほど。さて、南澤さんがプロとしての活動を始めたのは、僕も大好きでよく観ていたTVドラマ『愛という名のもとに』のサントラに参加したことがきっかけですね? 1992年の話との事ですが、これはどういう経緯だったんですか?

南澤:当時、大学を中退してポニーキャニオンでアルバイトをしていたんです。ウィンダム・ヒルを担当しているディレクターの下で、情報デスクみたいなことをやっていました。そのウィンダム・ヒル所属で、野中英紀さんと日向大介さんがやっていたインテリアズというバンドがあって、レコーディングにお邪魔して「僕もギターを弾くんです」なんて話をしているうちに「ちょっと手伝ってほしい」と言われたんですよ。

※編集部注:ウィンダム・ヒルは、ギタリストのウィリアム・アッカーマンが1976年に創設したレーベル。主なアーティストは、マイケル・ヘッジス、アレックス・デ・グラッシ、ピアニストのジョージ・ウィンストンなど。

加茂:へえ~。ちなみに大学は音楽系というわけではなく?

南澤:全然関係ないです。関係ないがゆえに早々に……(笑)。数学科だったんですけどね。

加茂:数学科!? 僕もそうなんですよ! 厳密には応用数学科ですけど(笑)。

南澤:えっ! そうなんですか~! 数学は高校の時から好きだったんですよ。

※編集部注:ここでしばし、線形代数やら行列のn乗やら、ムズカシイ話で盛り上がる。

南澤:まあ、その数学も大学で壁にぶつかっちゃって、大学へはサークルに顔を出しに行っていたようなものでした。軽音ではなく、ギター・アンサンブルのサークルですね。

加茂:それは、どんな音楽をやるサークルなんですか? ジプシー・キングスみたいな?

南澤:う~ん、結構雑多でしたね。軽音は他にあるからそう名乗っていたっていう程度で。バンドもありつつ、アコギを弾く人が十何人いるっていう感じでした。……ただ、そのうちにサークルだけのために大学へ行くのもなんだかなぁって……。

加茂:それでポニーキャニオンに行くわけですね。それは募集とかがあったんですか?

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南澤:これも長い話になっちゃいますが、元々ウィンダム・ヒルの音楽は大好きだったんですけど、当時はインターネットなんかありませんよね。そこで、ファンクラブに入りまして、しまいにはまとめ役というか会報を作ったりもしていたんです。その頃ウィンダム・ヒルの国内販売がアルファ・レコードからポニーキャニオンに移り、担当ディレクターも一緒に移籍したんですが、その際に声をかけてもらったんですよ。

加茂:実は僕もウィンダム・ヒルにはすごい思い入れがあるですよ。僕は今、COMRADE RECORDSというインディーズ・レーベルのレーベルマスターをやらせていただいているんですけど、まさにウィンダム・ヒルみたいなレーベルにしたいんです。音楽を大量生産しなくても、本当に良質な音楽を追求しじっくりと発表していくレーベル。今はインターネットもありますから、そういうことができるようになっていますよね。

南澤:確かにそうですね。

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加茂:やっぱりジョージ・ウィンストンとかの音楽は素晴らしいですもん。あと今僕は、場面によってはエレキをハードに弾いたり、オーバーダビングを重ねて計算したアレンジ作品などいろいろやっていますけど、南澤さんの『ソロ・ギターのしらべ』みたいなシンプルだけどアコギの音色をじっくりと味わえるようなアルバムも将来的には出してみたいんです。

※編集部注:加茂氏は、自分の2ndソロ・アルバム『ノスタルジア』の中で、ジョージ・ウィンストンの名曲「Longing/Love」を取り上げてカバーしている。
■作曲家にシフトした理由

加茂:南澤さん自身は、弾き語りのギターからソロ・ギター・スタイルに移行するうえでどんな練習をしたんですか?

南澤:自分の中では自然な流れだったのでハッキリ意識はしていないんですが、ソロ・ギター的なことも少しやり始めた大学時代は、ギターと名の付く音楽は片っ端から聴いていましたね。よく聴いていたのはFMで、FM情報誌を買っては番組表で「(ギター)」とか「(g)」って書いてある番組をチェックしていましたよ。

加茂:番組表に楽器も書いてあったんですか!? それは便利ですね。

南澤:はい、そういう番組でラリー・コリエルだとかウィリアム・アッカーマン、アール・クルーなどを知るわけです。ウィンダム・ヒルにハマったのもそういう流れですし、そこからコピーなんかも始めましたね。

加茂:ピック弾きでリードを取るようなこともしていたんですか?

南澤:ピックでも弾いていましたけど、遊び程度で下手でした(笑)。……実は、ギタリストとしての自分を俯瞰で見ている自分がいて、「ギタリストとしてはこの技術じゃダメだな」って見切った時があるんですよ。

加茂:それまではギター1本で、と考えてたわけですよね?

南澤:ギター1本というより、フロント・アクトですね。いわゆる弾き語りのスタイルです。ただ、大学の頃に「この歌とギターじゃ……」って思ったことがあって……。

加茂:そうだったんですか。でも、南澤さんは現在ギター演奏はもちろん、サントラやプラネタリウムの音楽、CMや演劇、ゲームなどに曲を提供されて、作曲家という面でも活躍されています。ちょっと暴論なんですが、ギタリストってどうしてもセッション活動が中心で、作曲というほうにはなかなか行かないですよね? 譜面を渡されて、それに対してどうアプローチするかっていうほうが興味の対象として強かったりもする。南澤さんは作曲家にシフトしたきっかけがあったんですか?

南澤:まずはギターを、そしてソロ・アクトとしての自分を、見切ったっていうのがありました。と同時に、元々YMOも好きでシンセにも惹かれていたんです。シンセ、特に今の打ち込みだったら、バンドを組まなくても何でもひとりでできるし、もっと言えば自分が演奏しなくてもいい。それで満足のいく音楽が作れるんだったら、それでもいいかなって思ったのは大きいですね。

加茂:イメージ的にアコギの人っていうのがあるから、それは意外ですね。DTMはいつ頃から始めたんですか?

南澤:え~と、DX7(ヤマハのシンセサイザー。1983年発売)が出た頃で、それはまだまだ高価で買えず、コルグのPOLY-800をバイトして買いました。高校生の頃かな? で、それを弾きながらタスカムのポータ・ワンに録音していたのが最初ですね。

加茂:おお~、懐かしい機材ですね~!

南澤:それからは単体のシーケンサー、ローランドのMC-500を買い、Macが良いという話を聞いてはIIciというモデルを買いましたね。

加茂:IIci……!? 僕が覚えている一番古いマックはQuadraです。

南澤:ああ、そのちょっと前のモデルですよ。それは100万円近かったですね。

(この対談は次回に続く!)

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加茂フミヨシ

加茂フミヨシ

超絶技巧ギタリスト/クリエイターとして活躍する。傍ら、最先端エレキ・ギター奏法の求道者としても、多くのヒット作教則本を発表。2011年に、スティーヴ・ヴァイがバークリー音楽大学で記録した“世界最大規模のオンライン・ギター・レッスン”のギネス世界記録に挑戦。ヴァイの“ギター・レッスン受講者4,455人”の記録を“8,776人”に更新し、イギリスのギネス・ワールド・レコーズより日本人ギタリストとして正式承認される。世界に名を刻んだエレキ・ギター界の伝道師である。



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