【音源付】著者たちの語らい--野村大輔&加茂フミヨシ(3)

加茂フミヨシ式ギター・トレーニング by 編集部 2008年8月22日

【ゲスト】野村大輔(3) 野村氏の今後、加茂フミヨシとのセッション…etc.

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教則本の著者たちの素顔に加茂フミヨシが迫る対談!
今回は「野村 vs 加茂」のギター・バトル音源付き!!

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▲野村大輔(左)と加茂フミヨシ(右) ※撮影:鈴木千佳
→野村大輔プロフィール→第1回の対談(野村氏のルーツ、プロを目指すきっかけ…etc.)はこちら

→第2回の対談(野村氏の教則本秘話、ギターフレーズ…etc.)はこちら

→「著者たちの語らい」のコンセプトはこちら

→「野村大輔と加茂フミヨシのギター・バトル」はこちら

講師としての苦労は?(加茂)

加茂:野村さんは、10代でギター講師を始めて、プロダクト・スペシャリストもやってて、スゲェって思ってましたよ。

野村:いやいや、19~20代前半なんて、ぜんぜん食えなくて。実家で助かったなって感じでしたよ。

加茂:僕は25歳で講師になったんだけど、その頃、会話が苦手だったんだよね。

野村:人と?

加茂:うん、人と会話できなかったの。僕は22歳のときから1日15時間ギターの練習始めたのね。で、その練習期間中ってほとんど誰とも口きかなかったのよ。

野村:すごいね。

加茂:23歳の終わり頃から、音楽コンテンツを作る仕事を始めたんだけど、基本的に営業の人が仕事を取ってきて、僕はクリエイターとして作る仕事をしてたから、会話というよりは集中してとにかく作り、後の時間はギターの練習、みたいな自分の中にベクトルが向いた生活だったんだよね。それで、25歳から講師を始めたものの、生徒と会話の仕方がわからなかった。今こうやってしゃべれるようになったのって講師をしたおかげなの、実は。

野村:いやー、僕もたいへんなことありましたよ。19歳で講師なんて、若すぎて。

加茂:講師仲間から見ても若く見られるよね?

野村:そうそう、だからもう「おまえ本当に弾けんのかよ?」って感じで。生徒さんたちもそういう目で。

加茂:それでどうしたの?

野村:最初は弾き倒しました(笑)

加茂:デモ演だ。

野村:そう、それで納得してもらって。そんな感じで、最初はちょっと大変でしたね。

加茂:どのくらいまでそんな感じでした?

野村:前の先生から引き継ぎして、最初の何回か、1カ月くらいは、そんな感じでしたね。でも人生経験でいったら、40~50歳代の生徒さんからみたら、こっちは全然人生経験ないわけですから、僕のスタンスとしては、「ほかは全然ダメだけど、ギターのこの部分だけは教えられますよ」っていう感じでやったんです。

加茂:現在、デモンストレーターの仕事もいっぱいやってるでしょ? すごく技術がいるなぁって印象を受けたんだけど。どういうことに気をつけてやってるの?

野村:やっぱり、全員初対面の人が来るわけですから、その中には上手い人もいれば、初心者もいる。マニアックな人もいるし、その製品について全然知らない人もいる。だから来た人全員が「面白かったな」って思ってもらえるデモをするように心がけています。

加茂:具体的には?

野村:バランスなんですよね。教則本も楽曲もそうなんですけど、バランスがうまく整うかどうかが勝負だと思ってるんです。全体の流れというか。

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加茂:なるほど。

野村:だから、マニアックな話もするけど、初心者にもためになる、というようにね。そういうのをうまく散りばめていけば、トータルで問題がなくなるっていうか……トータルがどうなるかっていうのをいつも考えてますね。

加茂:それは、仕事をやりながら経験値としてつかんだもの?

野村:そうですね。だから最初は全然できなかったですよ。マニアックな話ばかりしてお客さんがいなくなっちゃったりとか。バランスをどうしたらいいかは、何回かやらせてもらってつかんだものですね。

加茂:なるほど。野村さんは、もともと人間性として謙虚なんだね。協調性があるんだよね。

野村:それはバーで働いたりしてたからかもね。

加茂:サッカー部も?

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野村:そうそう(笑)、先輩厳しいし。もう完全に体育会系。「おはよーございますっ!」って感じで。

加茂:ああ、ギター・マガジンの野口編集長も「野村さんは大きな声での挨拶と、笑顔が印象的」って言ってましたもん。

野村:そうそう、デカイ声で挨拶。体育会系出身(笑)。いまだに出ちゃうんだよね。

加茂:体育会系出身の人が音楽をやった場合って……やっぱりスポーツの中でははっきりと勝ち負けの判断をされちゃう世界で生きてきてると思うから……音楽に対しても勝ち負けにこだわる人が多いような印象が少しあったんだよね。

野村:その傾向はあるかもしれませんね。

加茂:でも、野村さんのプレイってそれを感じないよね。さらっと自然体な感じで。そういうところがすごく好きなんだけど。

野村:それは性格かな。サッカーのときはもちろん「勝ちたい」っていうのはあったけど、あんまりギターでは……。でもね、若い頃は何度か、セッションに行くとバトルみたいになったことありましたよ。

加茂:それって今、全然感じないんだけど。

野村:そう、そのときに、もうイヤになっちゃったの。「お前どのくらい弾けるんだ?」みたいな。そういうテクニック披露が。

加茂:ああ、それで、この自然な感じに。

野村:そうそう、セッションでギタリストが何人か集まると、なにかしらバトルっぽくなるじゃない? 昔はそれで、やり返したりもしてたけど、だんだんそういうの疲れちゃって。それって音楽じゃなくて……音楽やってるようなんだけど、音楽じゃないなって思って。単純に技巧でしょ?「これって全然アーティスティックじゃないよな~」って思ったんですよ。これはなんか違うなぁって。20代半ばくらいでそう思いましたね。

加茂:そこに気づくってのがすごいな。なかなか気づけないよ。それって、若くしてビートルズを聴いてたってことも含めて、才能なんだろうね。

野村:才能っていうか……そういう揉め事がもともとあんまり好きじゃないし。それより楽しいセッションの場のほうが好きだったんですよ。

ロベン・フォードにはすごいドライブ感を感じる(野村)

加茂:技術的な意味でのギタリストの目標は?

野村:やっぱり好きなのはロベン・フォードですね。ああいうふうに弾きたいなと思いますよね。

加茂:ブルース&フュージョンって感じかな?

野村:もともとイエロージャケッツやったり、マイルスとかもやってるからね。今やブルースかな。すごいなって思ったのは、あの人ダンブル・アンプ使ってるし、もちろんとても良いギターを使っているけど、すごい突き抜けてたんですよね。僕、ものすごく近い距離でロベンのプレイを見たことあるんですけど、これ以上にロックな人いないじゃんって思った。

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加茂:へえ、ロック?

野村:そう、ロック。どんな歪んでいる人たちよりもハードなドライブ感だった。

加茂:ラテン系のカッティングとかもやるよね?

野村:やってるやってる、多いよね。サンタナとセッションもしてたし。

加茂:カッティングにバリエーションがあるなってイメージが。

野村:うん、うまいですよね。あの人ティアドロップのピック使ってるんだけど、本当にスレスレにしか当てないの。

加茂:そうそう、そういう弾き方だよね。

野村:そうすると、バツーンって音が出るでしょ? そこがね、はずさないんだよね、それを。

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加茂:ボイシングも多彩で。

野村:そうそう。これは深いなぁって思っちゃうんだよね。

加茂:野村さんはそういうのも研究してるんだ。

野村:そうですね、なんとかああいうふうになりたいなって。

加茂:来月(2008年8月)、一緒にロベンの曲をセッションする予定なんですよね。楽しみですよね。

野村:ええ、勉強会としてね。ほら、一人じゃわかんないこともあるじゃない? そういうのをいろいろ聞きたいなって。

加茂:僕なんて全然違う解釈になっちゃうから、面白いよね、きっと。

野村:加茂さんの解釈、聞くのが楽しみですよ。

加茂:野村さんの今後のアーティステックな部分での目標は?

野村:やっぱり、ソロアルバムですね。僕自身が好きなことを、単純にやりたいなと考えてていて。でもきっと大変だと思いますけど。

加茂:楽しみですね。

上達のためには自分を客観視することが大事(野村)

加茂:最後に読者にメッセージを。

野村:上達するためには、天狗になったらアウトなんですよね。そうなったらすべては終わるなって思いますよ。だから、上達するっていう以前に、自分の今のプレイがどうなのか、冷静に把握しなきゃいけないと思うんです。それで初めて変わっていけると思うんですよね。これでいいやって思った瞬間に見えなくなると思います。だから僕も、自分のプレイが今どうかなっていうのは、よく考えますよ。冷静に判断して、練習していく。あとは、一般リスナーとして自分のプレイを聴いてみるっていうのも大事ですよね。録音したりビデオに撮ったりしてね。今は携帯でもムービーが撮れるから、いい時代ですよ。それで客観視して、どうやったら良くなるか考えるってことですかね。

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加茂:分析するってことね。

野村:そうそう。

加茂:プロになりたいって人に対しては、どんなアドバイスを?

野村:メールでもそういう相談がよくあるんですけど……わからないんですよね、僕も(笑)

加茂:たしかに。僕もわからないもの。

野村:プロになりたいって思っててなれる人もいるし、なれない人もいるし。思ってなくてもなれる人もいるし。

加茂:自分のスタンスは大事だとは思うけど。

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野村:ああ、自分の立ち位置って大事ですよね。僕は昔、プロになろうって思ったとき、とにかく1円でもいいから稼ごうって思った。

加茂:すごいハングリーだね。今、すごくプロとしての鋭さを感じたよ。

野村:アマチュアで、稼がないけど上手い人はいっぱいいる。でも僕は、1円でもいいから、ギターでお金を稼いでいきたいって思った。だから何でもやろうと思った。なんでもいいからやって、頑張ろうって。

加茂:そういうふうに言えるのがすごいよね。

野村:僕は加茂さんが、すごいと思うよ。ヨガやったり、早朝に練習してるとか。本気で朝練してるなんて、僕、初めてそういう人に会いました。ホント、加茂さんのこと尊敬してるんですよ。

加茂:ありがとうございます。僕のヨガは(編注:本コラムでも言及)、右手のフル・ピッキングの習得のためだったんだけど、僕がお世話になっているヨガの先生は音楽好きだけど、当然音楽の専門的なことはまったくわからないわけ。でも、その先生は野村さんと同じで、絶対天狗にならないし、自分を常に向上させるような努力をしている。そういうところにすごいインスパイアされてね。そこで受けた影響をギターに取り入れたいって純粋に思ったのよ。野村さんの、体育会系だったにも関わらず、その自然体な感覚に僕は凄く憧れますよ。僕はそこにまだ到達できてない気がするから。

野村:自分ではよくわかってない部分なんだけどね。

加茂:いろいろ目に見えない苦労はあると思うけど。だから爽やかなんだよね。

野村:何も考えてないんだけどね、本当に(笑)。周囲に、いい人に恵まれるってのもあると思うし。いい人間関係を築くのは大事ですよ。いつ誰がどこで助けてくれるか分からないですからね。もちろん変な下心は抜きでね……。

加茂:今日は、本当に充実した対談ができてよかったです。野村さん、今日の記念に僕とセッションして下さいよ!

野村:ぜひやりましょう! では、『ギター・エチュード 15の最強練習曲』に入っている僕の作曲した「Wavester」って曲で演りましょうか!

加茂:お手柔らかに御願いします(笑)

[野村大輔との対談・完]

※再生ボタンをクリックすると、野村大輔と加茂フミヨシのギター・バトルが始まります。

vs野村大輔「Wavester」(ポップ)


【この音源について】

この音源では、書籍『ギター・エチュード 15の最強練習曲』の付属CDに収録されている「Wavester」(作曲:野村大輔)のバック・トラックに合わせて加茂氏と野村氏のギター・バトルが展開されている。かなりのレア・トラック!! 同書をお持ちの方は聴き比べてみるのも面白いだろう。

トラックが始まって、前半のソロが加茂フミヨシによるものだ。ここでは完全なクリーン・トーンでのソロになっているが、一部加茂氏らしいワイドなスウィープ・フレーズ等も聞ける。

後半のクランチ・トーンによるソロが野村大輔によるものだ。野村氏のルーツでもあるブルースをベースにしたソロを基調にしながらも、要所要所に鋭い速弾きも織り交ぜられている。

ラストは二人の掛け合いになっている。完全に一発テイクのアドリブで収録したと思われる、遊び感覚あるソロ・ワークを楽しんでほしい。

(ギター・マガジン・オンライン編集部)

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加茂フミヨシ

加茂フミヨシ

超絶技巧ギタリスト/クリエイターとして活躍する。傍ら、最先端エレキ・ギター奏法の求道者としても、多くのヒット作教則本を発表。2011年に、スティーヴ・ヴァイがバークリー音楽大学で記録した“世界最大規模のオンライン・ギター・レッスン”のギネス世界記録に挑戦。ヴァイの“ギター・レッスン受講者4,455人”の記録を“8,776人”に更新し、イギリスのギネス・ワールド・レコーズより日本人ギタリストとして正式承認される。世界に名を刻んだエレキ・ギター界の伝道師である。



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