バンド・アレンジを成功させるために

加茂フミヨシ式ギター・トレーニング by 編集部 2008年10月10日

【第48回】作曲について(8)

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バンド・アレンジは”曲の最終形”。

いくら良いメロディが思い浮かんでも、それを反映させるバンド・アレンジで失敗してはすべてが台無しです。

理論的な知識などは既存の本に書かれているので、ここでは「バンド・メンバー間でのコミュニケーションの取り方」などに着目し、話を進めていきます。

Q:デモ音源からアレンジを固める際、注意すべき点というと?

A:
歌モノの場合、一番大事なことは、ボーカルの声がバンドの音に合っているかどうかです。

どんなにカッコいいリフでも、ボーカルに合っていなければ台無しです。

最近は、ボーカルの声質も特に重要視される傾向があります。ギターリフをひとつ作るにしても、ボーカルの声質とぶつからないか、ということにも注意したいところです。

楽器パートだけカッコいい……このような歌モノのアレンジは良くありません。

場合によっては、パワーだけでもOK。ボーカルのメロディ・ラインを生かすために、各パートを考えることが重要なんですね。

ちょっと難しく言うと”演奏する側の楽しさ”から”聴かせる楽しさ”への転換が必要かもしれません。

バンドで好きなように演奏するのは楽しいですよね。その姿勢は間違いではないのですが、聴いてくれるお客さんがあっての音楽です。だから、自分たちの演奏をより良く聴いてもらうためにはどうしたらいいか……そのことを重要視してアレンジすると、良い結果が生まれるかもしれませんよ!

Q:バンド内でよく意見が分かれます。そんな時はどうすればよいのでしょうか?

A:
そういう場合は、時間がかかってもいいので、すべての意見を試してみるといいと思います。

誰かの意見のみを試すようなやり方をしていると、バンド解散の危機になりかねません。

それから、僕は「短時間で仕上がった」とか「合理的なやり方で出来上がった」っていうのが実はあんまり好きではありません。意外と非合理的なものの中に答えがある場合もありますからね。

余談ですが、先日宮脇俊郎さんと対談してびっくりしたことがあります。

彼は『グングンうまくなる究極のプレイ・フォーム』という本を出しているくらいだから、演奏や音楽に対してすごく合理的な人だっていうイメージがありますよね? それが実際は、ものすごい頑固で非合理的な人なんですよ。僕は彼のそういうところが好きです。ぜひ、対談も読んでみてください。

→宮脇俊郎との対談はこちら

で、話を戻すと、非合理的で時間がかかってもいいので、バンド・メンバー全員が納得できるような音源を作ってください。そのデモ音源をライブなどで配布したり、ネットで配信したり、いろんな人に聴いてもらう機会を作っていきましょう。

やはり、第三者の意見が一番中立で公平ですしね。ときとして聴き手の……それも、音楽のことをあまり知らない人の意見こそが、一番冷酷な評価であることがあります。

しかし、ネガティブな意見を言われたからといって、そのことを引きずらないでくださいね。立ち直りの早さも才能のひとつだと思います。

僕の経験の中にも、忘れられない出来事があります。

大学の時……あれはいつだったか正確には覚えていませんが、あまり接点のないクラスメイトがいたんですね。

試験前だけ、なぜか連絡を取り合って勉強する(笑)という大学特有(?)の付き合いでした。で、僕はその勉強会場にギターを持って遊びに行ったんです。

実を言うと、その勉強会場で僕がギターを弾けば場が盛り上がる……本音としては、少しは「スゲェ!」と褒めてもらえるかな、なんて思い上がっていたんですよ。で、そのクラスメイトの前で得意気にギターを弾いたんです。

その時に返ってきた言葉が「キミってすごく器用なんだね」って(笑)。

その器用ってのがどんな意味なのかはわかりません。前向きに考えると大学の勉強もやって、ギターもやって……っていう意味だったのかもしれないけど、僕にはそういうふうに受け止められませんでした。

“音楽性がないのに指だけ動いてる”……そう言われているように受け止めたんですね。それで、すごくショックを受けたんです。でも、あの時期にそういうストレートでナチュラルな意見を言ってくれる人がいなかったら、今僕はプロになっていないと確信しています!

だから、音楽やっていない人の意見を、技術を持っていない人の意見こそを大事にしてくださいね。

Q:コンテストで審査員ウケする曲作り/デモ音源作りの方法を教えてください。

A:
結果にこだわらず、音楽を楽しんでいる姿をアピールしてください。

僕自身もバンド・コンテストの審査員をやらせていただいたり、プロダクションに届いたデモ・テープを渡され、そこで感想を求められることがあります。その時に感じるのが、「スポーツのように勝ち負けにこだわっている人が多い」ということです。そういったバンドは、固い演奏になりがちなんですね。

曲作りのノウハウが仮にあったとして、そのとおりに曲を作っても、肝心の気持ちが抜けていたり、意外と重要な要素がズボッと抜けていたりすると思うんですよ。

コンテストの勝ち負けより、音楽を楽しむこと、音楽に真っ直ぐ向き合っている姿勢ということを勝負してほしいと思います。そこに本質がある気がします。

それにコンテストで優勝した人が必ずプロになるわけでもないですし。仮にCDデビューしたとしても、デビューは到達点ではなく、スタートラインですから。

だから楽しみながら音楽に取り組み、音楽を続けていく姿勢ということこそが何より大切だと思いますよ。

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【著者のつぶやき】

音楽を続けていく……という言葉について。この原稿を書いた日は10月1日夜。そう、この日はK-1MAXで魔裟斗選手が世界チャンピオンに返り咲いた日です。

僕はテレビで魔裟斗選手の応援をしていたので、優勝した時は泣けました。いやホントに。

で、一番最後のコメントが「15歳から始めて、15年間やってきて、ひとつのことを頑張ると良いことがあるんだと思った。みんなも、いろいろとあるだろうけど、途中で投げずに続ければ、結果はどうであれ、充実できると思う」という言葉でした。

素晴らしいです。

僕はギタリストですが、魔裟斗選手の試合のようなギターが弾けるようになりたいと思いました。

加茂フミヨシ

加茂フミヨシ

超絶技巧ギタリスト/クリエイターとして活躍する。傍ら、最先端エレキ・ギター奏法の求道者としても、多くのヒット作教則本を発表。2011年に、スティーヴ・ヴァイがバークリー音楽大学で記録した“世界最大規模のオンライン・ギター・レッスン”のギネス世界記録に挑戦。ヴァイの“ギター・レッスン受講者4,455人”の記録を“8,776人”に更新し、イギリスのギネス・ワールド・レコーズより日本人ギタリストとして正式承認される。世界に名を刻んだエレキ・ギター界の伝道師である。



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