【音源付】著者たちの語らい--天野丘&加茂フミヨシ(3)

加茂フミヨシ式ギター・トレーニング by 編集部 2008年10月31日

【ゲスト】天野丘(3) 天野氏のギタートレーニング法公開!

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教則本の著者たちの素顔に加茂フミヨシが迫る対談!
今回は「天野 vs 加茂」のギター・バトル音源付き!!

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▲天野丘と加茂フミヨシ ※撮影:鈴木千佳
→天野丘プロフィール→対談第1回目(少年時代はサックスからギターへ)はこちら

→対談第2回目(実例を挙げてジャズ理論解説&指南)はこちら

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→「天野丘と加茂フミヨシのギター・バトル」はこちら

濃淡にこだわった2ndソロ・アルバム

加茂:天野さんはこういう著述活動もしつつ、ご自身の音楽活動もされています。

ファースト・アルバムの『A SWEET DELUSION』ではツェッペリンみたいな雰囲気もあって、多彩なアプローチを感じたんですが、先日発売されたセカンド『Dedications』では、よりストレートなジャズで勝負している感じがありました。これはどういう経緯だったんですか?

天野:ファーストの時は、やりたいことがありすぎて、それを全部入れちゃったんですよ。ツェッペリンみたいにギンギンに歪んだものもあるし、4管のハーモニーをバックにしたものも、サックス・カルテットもある。

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加茂:自己表現のすべてを入れた、と。

天野:ちょっと多彩すぎた感じだよね。それを何回も聴いているうちに思い出したんだけど、常日頃から「天野君のギターの音は水墨画みたいだね」って言われていたんだ。

加茂:それわかるなあ。

天野:白もあれば黒もある、灰色にしても白っぽいものから黒っぽいものもある。つまりモノトーンのグラデーションだよね。本当の緑とかが入っているより、僕はこっちなんだなって思い直して、セカンドみたいになったんだ。

加茂:色彩感も含めた変化ですか。

天野:そうだね。モノトーンの自分を、もっと自信を持って受け入れようと思ったんだ。だからトリオでしかやらないと決めたし、エフェクターも全部はずしちゃった。アンプのリバーブ一本ですよ。

加茂:なるほど。

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天野:でも濃淡って出すのが難しいんだよね。ちょっと濃い、ちょっと薄い、それを出すのが大変だたね。

加茂:レコーディングの日数はどのくらいでしたか?

天野:いつもどおり2日間でした。

加茂:2日ですか? 曲作りは?

天野:それまでに書きためていたからね。

加茂:演奏活動をしながら作曲も?

天野:ライブで人とやるときはスタンダードを弾くことが多いからね。だから曲を作るっていうのは、自分のやりたいものだけ書いているような感じだよ。自分のバンドのミュージシャンのイメージは強烈にあるし、それで曲を書けば、彼らに合ったものになるんだ。

加茂:天野さんの曲作りっていうのは、メロディとコード進行ができている状態ですか?

天野:僕の場合は、そのふたつが同時に浮かばないとダメ。

加茂:バックのサウンドについては?

天野:ベースやドラムは全然考えていない。メロディとコード進行だけで、そこから先はアレンジだと思っているから。

加茂:でもインプロヴィゼーションのパートなんかもあるわけですよね。

天野:うん、それはあるけど、でもギター一本で成立しない曲っていうのは、僕にはないね。

加茂:お話を聞いていてたびたび思ったんですけど、天野さんの音楽へのこだわりっていうのは徹底していますよね。ミスター・ストイック! でもすごく穏やかなんですよね。そこが面白い。

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天野:わかんないよ~。すごくイヤなやつかもしれない(笑)

加茂:いやいや、そうじゃないことは卓球大会でわかっています(笑)。宮脇さんとは違う(笑)

(編注:宮脇氏が卓球部出身者なのに、卓球のキャリアが浅い天野氏に手加減なしで試合をして勝利した、ということを加茂氏は皮肉っている。宮脇氏のブログ参照)

天野:(爆笑)

天野流デイリー練習メニュー

加茂:ハハハ。ところで、ギターのトレーニングについて、もう少しうかがいたいんですけど、天野さんが自身を向上させるために普段からやっている練習とかを教えてください。

天野:そうだな~。まずは起きたらやることから。

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加茂:起きたら!?

天野:そう(笑)。まず、スタンダードでも自分の曲でもいいから、とにかくメロディを完全に覚えている曲のメロディを弾いてみる。

加茂:暗記している曲ですか?

天野:うん。でも、完全に覚えている曲なんて4~5曲あれば十分だよ。100も200も覚える必要はない。それより、何回弾いても飽きない曲を持つことだね。で、僕の場合はたとえば「オール・ザ・ シングス・ユー・アー」。これを、イン・テンポじゃなくていいし、つっかえてもいいから、とにかく1曲弾き通す。それを弾くことでその日の調子をチェックするんです。それで10数分。

加茂:なるほど。

天野:次にインプロヴィゼーションなんだけど、まずコードが弾けないとダメ。これはいい加減なところがあっちゃダメで、きちんと弾きます。それから、そのコードの音だけで、メロディを作ってみる。コード・トーンだけで弾いてみるんです。

加茂:リハーモナイズとかアウトとか難しいことは一切抜きですね。

天野:うんそう。それで最後まで弾けたら、ソロの練習なんですけど、そのときはオルタード・トーンとか違うスケールとかを使ってもいい。ただし、完全に自分が理解しているものだけですね。

加茂:曖昧にはしないわけですね。

天野:そのときは4分音符だけとか8分音符だけ、4分音符&8分音符のみ、とかを事前に決めて、それを守るんです。

加茂:それはなぜですか?

天野:そうすることによって、メロディとリズムのコール&レスポンスができてくるんですよ。作曲するみたいにインプロヴィゼーションすることができるようになってきますね。これが20分くらいかかる。

加茂:これだけで30分以上ですね。

天野:次は、メチャクチャにやる(笑)。

加茂:メチャクチャ?

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天野:元の曲に対して、どれだけアウトに行けるかを練習する。自分にとってのアウトサイドっていうのはどういうものかっていうのは、すごく興味を持って研究しているテーマなんですよ。

加茂:なるほど。

天野:たとえば「オール・ザ・ シングス・ユー・アー」の始めのFm7をC7だと思って弾いてみる。つまり、書いてあるコードに対して必ずドミナントから始めてみたりするわけです。

加茂:それって、正しいコードがバックで鳴っているときでも大丈夫なんですか?

天野:バッチリ! 実際にやってみようか。

(加茂氏がコードを弾き、それに天野氏がドミナント・スタートのメロディを乗せる)

天野:ね? 大丈夫でしょ? アウトサイドの音を使うっていうことは、元のコードにない音で弾くわけだから、リハーモナイズするしかない。それを、8分音符や1拍ごとに元のコードに戻ると決めてやれば、インプロヴィゼーションの幅も広がるんだ。

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加茂:う~ん、なるほど~。

天野:コード進行として表に書いていない音で演奏するんだけど、コード進行自体は表のまま。つまり完全にアウトしていくわけじゃないんだよね。僕としては、そこまで含めてインサイドのプレイだと思っているよ。

加茂:深いですね。

天野:メロディを完全に覚えていて、コード進行もわかる、それでいてアウトサイドのことも考えられるだけの余裕がないとダメ。だから完全に覚えている曲で練習するんだよ。

何かができた時に、それで終わりと思うな!

加茂:たとえば、天野さんの教則本の中で、今説明していただいた練習にオススメの曲はありますか?

天野:そうだね、『はじめてのジャズ・ギター』なら「オール・ザ・ シングス・ユー・アー」と「アイ・ヒア・ア・ラプソディ」。「酒とバラの日々」もいいね。『弾けちゃう!ジャズ・ギター』なら「枯葉」かな。

加茂『はじめてのジャズ・ギター レパートリー増強編』だとどうですか?

天野:僕がこのテの練習をするのに一番好きなのは「不思議の国のアリス」だね。

加茂:へぇ~、意外!

天野:この曲はね、思いっきりヘンなことができるんですよ。僕もよく練習しています。それから、本には入っていないけど、「ボディ・アンド・ソウル」もオススメです。これらを、自分なりにグズグズにしていく。アウト・プレイって、その人のレベルによって段々と深まっていくものだから、最初はシンプルでもいいんですよ。

加茂:なるほど。最後に、天野さんのギタリストとしての目標を教えてください。

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天野:技術的には、メチャメチャ速いテンポで、弾きたいだけ8分音符を弾けるようになりたい。とんでもなく速いスウィング・ビートの8分で、どこにも無理のない運指で、歌が弾ける(編注:歌えるようなメロディ、要するにメロディアス・プレイのこと)ようになれたら嬉しいな。

加茂:そのための練習もしている?

天野:そうだね。他にもすごい速いテンポの中でどれだけ遅く弾けるかってほうもやってるよ。

加茂:では、アーティストとしての目標などは? ギター・インスト・シーンって必ずしも楽なシーンではないですよね?

天野:うん、そうだね。やっぱりジャズ・アーティストとしてポピュラーになりたいから、自分の書いた曲が人に演奏されるように、スタンダードになるようにがんばっていきたいね。

加茂:なるほど。最後にプロを目指している人に向かってアドバイスをください。

天野:う~ん、まずは、音楽を分け隔てなく聴くことが一番大事だね。ジャズ・ギタリストを目指すなら、ロックや古いポップスも聴いたほうがいい。クラシックもだね。とにかく音楽を聴くことを好きになってほしい。幅も広げなくちゃいけない。

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加茂:お話の端々から感じましたけど、天野さんは進化しなくちゃいけない、前に進まなくちゃいけないっていう意識が強いですよね。

天野:それは大事。だってジャズは必ず、その時代時代のポップスを演奏してきているわけだからね。それは僕が知っている分だけでも1920年代からそう。みんなが知っている曲じゃないと踊ってくれなかったし、それを後から僕らがジャズだってとらえているだけだからね。
それと、その中から、自分が必要と思ったテクニックは、悪びれずちゃんと練習すること。僕も右手のピッキングをさらに進化させたくて今でも練習しているし、ライフワークになっている。加茂さんの書籍『速弾きがうまくなる理由 ヘタな理由』、あれすごい難しいじゃん! あれなんかも練習のネタにさせてもらってるよ。それが僕のプレイの表面に出なくても、音楽をやっていく上で充実しているよ。

加茂:ゲゲッ! た、たいへん恐縮です。天野さんぐらいバリバリ弾けても、まだダメですか?

天野:僕はジャズだけじゃなくて、ロックも好きだし、尊敬しているギタリストも多い。いろんな音楽を弾けるようになりたいっていうのはありますよ。まだまだ追求したい事はたくさんある。練習を続けているっていうことは、必ず僕のプレイにプラスになっているはず。要するに、何かができたときに、それで終わりと思わないほうがいいと僕は思います。

加茂:いやあ~、天野さんの音楽に対するストイックな姿勢、非常に勉強になりました。僕の本なんかも読んでいただいて、非常に光栄です。なので今日は逆に、ぜひ天野さんの教則本に載っている曲で僕とセッションをしていただけないでしょうか? 僕も天野さんの教則本で勉強させてもらいたいので!

天野:OK! じゃあ、ガーシュウィンの「I Got Rhythm」を一緒に演りましょう!

[天野丘との対談・完]

※再生ボタンをクリックすると、天野丘と加茂フミヨシのギター・バトルが始まります。vs天野丘「I Got Rhythm」(ジャズ)


【この音源について】

天野氏の加茂氏のギター・バトルは、天野氏の著作『はじめてのジャズ・ギター レパートリー増強編』に収録されている「I Got Rhythm」。

スタンダード・ナンバーのひとつであるこの曲は、クラシックの作曲家ジョージ・ガーシュウィン」によって書かれたものだ(ほかに有名な作品としては「サマータイム」がある)。

この曲のコード進行を元に「オレオ」も生まれたと言われている。そういったことからも、この曲はジャズの歴史そのものと言ってもよいだろう。それだけに、プレイスタイルにも時代性が反映され続けてきた曲である。

天野氏によるイントロ~テーマ・メロディが流れた後に、1分12秒くらいからのファースト・ソロは天野氏。

天野氏のソロの内容は、ビバップ的な解釈を基にしたブルージーなスタイルと言える。が、ブルース・ギターのそれというよりは、レガートを多用したホーンライクなフレーズが中心になっている。

ジャズ初心者のソロは単に覚えたフレーズを曲にはめ込むというスタイルが多く見られがちだが、天野氏のソロはまるでボーカリストのような歌える要素が多く、メロディアス・プレイのお手本として聴いてもらいたい。

2分10秒くらいからのセカンド・ソロは加茂氏によるもの。

加茂氏は、天野氏のギターとアンプで全く同じセッティングで弾く事を希望したようだ。氏曰く「セーム・シュルトのリングパンツを履いて試合をしたピーター・アーツ」をイメージしている、というなんとも良くわからないコメントが返ってきた(笑)

加茂氏は、多分にコンテンポラリー・ジャズの香りのする新感覚のプレイに終始している。同じスケールを使用しても、これほどまでにリズムアプローチ・音の組み立てが違うだけで全く違う聞こえ方をするというのが驚きに値する。ソロのラストは、加茂氏らしい怒涛のオルタネイトピッキングが続いている(笑)

終始リラックスした二人のジャズ・セッションをお酒を片手に楽しんでほしい(未成年はお酒厳禁!!)

(ギター・マガジン・オンライン編集部)

【天野丘 プロフィール】

1963年6月25日、東京生まれ。

6歳からピアノを始め、11歳でアルトサックス、12歳でトランペット、高校時代にテナーサックスに転向。ギターを始めたのは13歳から。

Roots音楽院で沢田駿吾に師事しジャズを学ぶ。卒業後、セッション活動を開始。これまで、鈴木勲(b)、小沼ようすけ(g)、宮之上貴昭(g)、寺井尚子(vln)、川嶋哲郎(sax)、大橋勇武(g)等と共演し、国内ライヴ・シーンで活躍。

2004年8月に初リーダー・アルバム『A SWEET DELUSION』を発表。2008年8月にはセカンド・アルバム『Dedications』をリリースする。

FMチャッピー77.7MHz「What’s Jazz」ではメイン・パーソナリティを務める。音楽活動の傍ら、JazzLife誌において”ギター版キース・ジャレット”とも評された自身のインプロヴィゼーション・ノウハウをまとめた著書、『はじめてのジャズ・ギター』『はじめてのジャズ・ギター レパートリー増強編』『弾けちゃう!ジャズ・ギター』をリットーミュージックより出版。

【天野丘 公式サイト】

ギタリスト天野丘の音楽

【天野丘・著書】

『はじめてのジャズ・ギター~カラオケCDでジャズ・セッションを体感』
K4変型判/152ページ/CD2枚付き
2,940円(本体2,800円+税)
2006年9月28日発売

『はじめてのジャズ・ギター レパートリー増強編~カラオケCDでジャズ・セッションを体感』
K4判/128ページ/CD2枚付き
2,940円(本体2,800円+税)
2008年2月15日発売

『弾けちゃう!ジャズ・ギター~黄金のポピュラー&スタンダード・ソング集』
K4変型判/72ページ/CD2枚付き
2,310円(本体2,200円+税)
2007年7月27日発売

【天野丘・CD】

『Dedications』
gu roove
2,800円
2008年8月20日発売

『A SWEET DELUSION』
What’s New Record
WNCJ-2134/2,800円
2004年発売

『First/天宮』
(コ・リーダーアルバム)
ポリスター
MTCJ-1025/2,800円
2001年発売

加茂フミヨシ

加茂フミヨシ

超絶技巧ギタリスト/クリエイターとして活躍する。傍ら、最先端エレキ・ギター奏法の求道者としても、多くのヒット作教則本を発表。2011年に、スティーヴ・ヴァイがバークリー音楽大学で記録した“世界最大規模のオンライン・ギター・レッスン”のギネス世界記録に挑戦。ヴァイの“ギター・レッスン受講者4,455人”の記録を“8,776人”に更新し、イギリスのギネス・ワールド・レコーズより日本人ギタリストとして正式承認される。世界に名を刻んだエレキ・ギター界の伝道師である。



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