26ジャンルをマジ弾きしています! ”なんちゃって”ではないんです… | 加茂フミヨシ インタビュー

インタビュー by 編集部 2012年2月15日

26ジャンルをマジ弾きしています! ”なんちゃって”ではないんです… | 加茂フミヨシ インタビュー

▲手に持っているギターはFender USA N3 American Deluxe Stratocaster Ash Aged Cherry Burst

現在のギター・シーンで必要とされるテクニックのすべてを兼ね備えた超絶ギタリスト、加茂フミヨシ。長年にわたるスタジオ・ワーク&ギター講師生活と、理系大学出身者らしい分析能力に裏づけされた演奏メソッド&奏法分析には定評がある。そして2011年4月に行ったオンライン・ギター・レッスンが、あのスティーヴ・ヴァイの打ち立てたギネス世界記録「Largest Online Guitar Lesson」を更新。新ギネス記録としてギネスワールドレコーズから認定された。そこで、今や世界のギター教育者となった加茂のギター・プレイやギター上達のコツなどに迫ってみた。

ギネス記録のニュースが国内外に広まっているようですね。

加茂 2011年末に入って、いろんな新聞で報じられたんですよね。自分もびっくりしました。海外についてはやっぱりJapan Timesで報じられたのが大きかったんじゃないですかね。

あのスティーヴ・ヴァイの記録を更新して世界記録を樹立した感想はいかがですか?

加茂 もちろん,うれしいです。ですけど、ギネスのことについては、自分は福島県いわき市の友人に活力を送りたくて、”不可能なことにチャレンジしたかった”という面が大きいんです。だって、以前の記録保持者はスティーヴ・ヴァイさんだったんですよ。ギター始めた時からの憧れのギタリストで、まさに”神の領域”に達したミュージシャンですよね。ギネス記録にチャレンジしたいって言った時に、ほぼ僕のまわりの全員が”記録更新は不可能だ”と言いましたからね。だから組織みたいなもので記録に挑むんじゃなくて、とにかく自分ひとりで挑戦したんです。ここが重要なポイントなんですよ。

周囲が皆不可能だと言っているのに,自分だけで挑戦するのは相当タフだったのでは?

加茂 そうですね(笑)。ヴァイさんの記録に挑戦すると決めてから、自分でいろいろなことを行なったので大変でした。ですが、古い友人が自分のことを助けてくれたんです。特に、高校時代、大学時代の友人の助けが大きかったです。記録をイギリスに送ったあとは、認定されるかどうかでメンタル的に追い込まれたんですが(笑)。でも、そもそもこれは不可能なことなんだと思うようにしていました。ギタリストとしてヴァイさんを本当に尊敬していますが、その一方で、”ギター・レッスンに関しては自分は負けてない!”と思うようにして、心の中で自分を奮い立たせていたんです。

ギター・レッスンですけど、加茂さんのレッスンの特徴を教えてください。

加茂 そうですね、自分は音楽のレッスンを”歴史の継承”ととらえるようにしています。現代の音楽は、単一のジャンルというよりもさまざまなジャンルのミックス……つまり音楽の歴史を複雑に組み合わせて作られていることが多いですし。つまり音楽の歴史的な学習の意味も含め、さまざまなジャンルに対応できるギター・プレイの力を養うことが大事だと思うんですね。

だから前述の“ニコニコけいおん部”のオンライン・ギター・レッスンは、6つのジャンルを紹介して勉強してもらいました。また、2008年8月22日に発売した『ひたすら弾くだけ! アコギ・トレーニング』では21種類のジャンル、2012年2月23日に発売の最新刊『ギター朝トレ15分! 忙しい人のための濃密練習法』では26種類の音楽ジャンルを紹介しています。

『ひたすら弾くだけ! アコギ・トレーニング』と、最新刊『ギター朝トレ15分! 忙しい人のための濃密練習法』

26種類ですか…。一体どんなジャンルを扱っているのか教えてください。

加茂 え、全部思い出すんですか(笑)。えーと、『ひたすら弾くだけ! アコギ・トレーニング』では、R&B〜Hip-Hop〜ニュー・エイジ〜民族音楽〜バラード〜ロック〜ファンク〜ブルース〜ジプシー・ジャズ〜フュージョン〜ジャズ〜カントリー〜ラテン〜アシッド・ジャズ〜ポップ・ロック〜クラシカル〜オールディーズ〜ハウス〜ボサ・ノヴァ〜フォーク〜ラグタイム〜指練習曲、の計21種類ですね。

新刊『ギター朝トレ15分! 忙しい人のための濃密練習法』は?

加茂 J-Rock〜アメリカン・ロック〜サーフ・ロック〜ドラムンベース〜レゲエ〜ファンク〜ハウス〜ブルース〜R&B〜ヘヴィ・メタル〜ラテン〜ジャズ〜70′sディスコ〜パワー・バラード〜J-POP〜ジャズ・ファンク〜ポップ・ロック〜ボサ・ノヴァ〜80′sPOP〜プログレ〜R&Bバラード〜フュージョン〜アンビエント〜ハードロック〜AOR〜様式美の26種類を紹介しています。YouTubeで26種類のジャンルが視聴できますので、よければ、そちらで確認してください。

確かに音楽の歴史が集約されていますね。しかし、これだけの譜例を弾くのは相当大変なのでは?

加茂 もちろん大変ですよ(笑)。『ひたすら弾くだけ! アコギ・トレーニング』のラグタイムとかはマジ弾きですからね。なんちゃってプレイじゃないので、商品紹介ページにある試聴用の埋め込み動画か、YouTubeのサンプル動画で確認してみてください。それから、エレキの速弾きができても、アコギの太い弦でフル・ピッキングでジプシー・ジャズやカントリーの速弾きするのはまったく違いますから。『ギター朝トレ15分! 忙しい人のための濃密練習法』も,YouTube動画を聴けばマジだということがわかると思います(笑)。

あのYouTubeの動画は面白いですね。いろんなジャンルが次から次へと聴けるので、FMラジオの音楽番組を聴いている感覚になりました。ところで加茂さんは,”著者たちの語らい“や”ネット・ギタリストの語らい“においても,いろんなジャンルのセッションをしていますよね。さまざまなジャンルのコラボレーションをするコツがあったら教えてください。

加茂 あれは危険すぎる企画ですよ! みんな第一線のギタリストじゃないですか。リットーさん、もっと楽な企画を僕に振ってくださいよ(笑)。コツに関しては、正直言うと毎回どうやって弾いたらいいかわからないんですが(笑)、僕が最初に目をつけるのはやっぱりコード進行かなぁ。それぞれのジャンルを象徴するというか、「ああ、わかる」っていうコード進行ってあると思うんですよね。それで、その”コードらしさを表現するフレーズ”をきちんと弾いておくっていうことは大事にするかもしれません。

コードらしさを表現するフレーズとは、具体的にどういうものですか?

加茂 まず、最初に考えるのは何といっても分散和音ですよね。イングヴェイ・マルムスティーンが”ブロークン・コードだ!”と言ったアレです(笑)。どんな難しいコード進行でも分散和音を弾いている限りは絶対にインサイドな響きになるわけですからね。イングヴェイのような弾き方以外にも、たくさんの分散和音の弾き方があります。コード・スケールについては”分散和音+テンション”という風に考えています。

分散和音を身に着けるコツがあったら教えてください。

加茂 その辺は、ぜひとも新刊『ギター朝トレ15分! 忙しい人のための濃密練習法』で練習していただけるとうれしいのですが(笑)、コード・フォームと分散和音とコード・スケールをセットで覚えることが重要だと思います。ひとつ例をあげましょう。

例えば、C→Dm7→Em7→F△7→G7→Am7→Bm7(♭5)ってコード・ネームを見て、初見でパッパッパッっとコード・フォームを押さえられるギタリストってたくさんいると思うんですよ。だけど、このコードの分散和音をパッパッパッって弾いてって言われると、アレレ……と
なっちゃう人も多いでしょう。

だけど、分散和音を弾くのはピアノには普通のことなんですね。鍵盤にとっては、一気に押さえるかバラバラに押さえるかの違いでしかないんで。ギターはバレーのフォームが多いから、単音弾きに発展しにくいんですよね。新刊では分散和音を活用したアイデアを多数紹介しています。

ほかにギター上達のコツがあったら教えてもらえますか?

加茂 おっ! webの連載”加茂フミヨシ式一歩先を行くギター・トレーニング“(毎週金曜日に更新)のような質問となってきましたね(笑)。

読者の皆さんも知りたいと思うので、ぜひお願いします。

加茂 オッケーですよ! 僕はギター好きの皆さんが大好きですからね。僕も読者の皆さん以上にギター好きですし(笑)。ギター上達に一番大事なのは、実はインターネットの使い方だと思っています。具体的にはネットを見ないことです。

え? オンライン・レッスンのギネス記録者とは思えない発言ですが?

加茂 フフフ(笑)、ちょっと含みを持たせました。このところ、特にツイッターとかを見ているとレベルの低い書き込みが凄く目立つんですよ。特に、ミュージシャンが日々の愚痴を書いたり、下ネタみたいなものをツイッターに書き込んでいるのが目に入ったりすると、だから日本でK-POPが流行ったと思ってしまいます。K-POPのアーティストがそんな書き込みをするとは思えませんからね。K-POPは素晴らしいですよ。アーティストっていうのはどんなに時代が変わっても夢を与える仕事なので、日々の愚痴とか下ネタ……要はスラング・ワードを書いて盛り上がっているような文化を作っちゃいけないんですよ。若い子は、深く考えずに真似するでしょうし。

子供たちの親だってツイッターをやっている世代です。親が子供の”世界に発信している低俗な書き込み”を見たらなんて思うか。そういうことに対して何の責任も感じないというところが、またマズイわけです。僕はギターを練習する時はツイッターを絶対に見ません。もちろん、ファンや読者との交流がしたいので、休憩時間にチェックするようにしていますが。

情報のシャットアウトが大事だということですね。

加茂 そう、完璧にシャットアウト。くだらない書き込みを見ない! 低俗な書き込みをしない! 子供に悪い影響を与えない! そんな暇があったら練習する!……っていうシンプルなことですが。これが一番重要です。不要な情報をシャットアウトすれば、練習時に集中できますし。

前向きな意味でインターネットを使っていくという点についてはどうですか?

加茂 その辺は”ネット・ギタリストとの語らい“を見てもらえばわかると思います。あそこには、ネット・ギタリストの第一線の人たちが出てますから。まさに新世代ですよね。自分も対談しながら勉強になってますよ。

今後の目標を聞かせてください。

加茂 今年は、地方の音楽活性化に力を入れたいなと思っています。ネットを使ってマスに発信することもやっていきますが、実際に地方へ行ってプレイすることも重要だなと思っているので。まずは、取っかかりとして自分の生まれ育った北海道を始め、ゆかりのある栃木、群馬、福島に恩返しの意味も含めて貢献できたら嬉しいなと思っています。

※編注:2月18日(土)に島村楽器イオンモール高崎店にて,加茂フミヨシ氏の地元凱旋デモンストレーションが行なわれた。イベントの様子はこちらの動画を見てほしい。

加茂フミヨシ

加茂フミヨシ

超絶技巧ギタリスト/クリエイターとして活躍する。傍ら、最先端エレキ・ギター奏法の求道者としても、多くのヒット作教則本を発表。2011年に、スティーヴ・ヴァイがバークリー音楽大学で記録した“世界最大規模のオンライン・ギター・レッスン”のギネス世界記録に挑戦。ヴァイの“ギター・レッスン受講者4,455人”の記録を“8,776人”に更新し、イギリスのギネス・ワールド・レコーズより日本人ギタリストとして正式承認される。世界に名を刻んだエレキ・ギター界の伝道師である。



Amazon.co.jpから購入定期購読(特典つき)

バックナンバー

TUNECORE JAPAN