【インタビュー】生形真一(Nothing’s Carved In Stone)

インタビュー by 編集部 2010年6月11日

邦ロック・シーンにおいて際立った存在感を持ったメンバーが集まったNothing’s Carved In Stone。昨年発表された1stアルバム『PARALLEL LIVES』以降、精力的なライブ活動を行ない、その驚異的なグルーヴで全国のロック・ファンを魅了してきた彼らが、2ndアルバム『Sands of Time』を発表した。ギター・マガジン2010年7月号では、新作アルバムで聴けるギター・サウンドやソロ・プレイについて生形真一に聞いたが、ここでは彼のプレイの大きな魅力のひとつであるアルペジオについての話を中心に、本誌とはまた違った角度から生形に迫ってみた。

アルペジオをすごく練習した時期は確かにあって
その時期はオレにとってはデカかった。

 

●生形さんのプレイでは、やっぱりアルペジオが秀逸なんですが、ひと口にアルペジオと言っても、ご自身の中でいろんなアプローチがありますか? 例えば、「Chaotic Imagination」の最後のサビでは、その部分だけで聴ける新しいアルペジオが出てきてますが、それ以前のアプローチとは違ったり?

○オレは曲もひとつの物語というか、ちゃんと起承転結があるほうが好きだし、最後はドラマチックに終わりたい曲もあって。「Chaotic Imagination」なんかはまさにそうで、アルペジオで上のほうに行けばそういう雰囲気が出たんです。「Sands of Time」も、最後のサビだけ全然違うことを弾いていて、あれもそういう意味でやってるし。

「Sands of Time」のアルペジオはコード進行の中で、長いスパンで歌う感じ。一方、「Pendulum」はアルペジオがペダル的なアプローチだと思うんです。そういう使い分けは感覚で判断している?

○どっちも試したり、一発でハマることもある。でも、できない時はやっぱり時間をかけてやりますね。「Sands of Time」の最後なんかはそれこそパッとできましたけど、「Pendulum」はけっこう時間がかかったかな。

●そうなんですか。逆かなと思ってました

○そう感じますよね。でもね、やっぱりそれは得意と不得意があって。オレは「Sands of Time」みたいなフレーズはすごく得意。逆に使いすぎちゃうくらいなので、なるべく新しいことをするためにも抑えてる部分があるんです。

●昔、アルペジオが苦手ですごく練習していたということですが、具体的にはどんなことをしていたんですか?

○自分のフレーズを作って曲の中に入れていくのが一番だと思いますね。自分の曲だから練習するしかないじゃないですか。それをひたすらやるっていうのが、オレは多いですかね。もちろん、人のフレーズをコピーするのも大事だしタメになるけど、それをやったうえで、今度は自分で作って自分のスタイルを作る。それが一番練習になると思います。

●フレーズを作る場合は、それこそ歌のメロディを考えるのと同じように、頭の中で流れたメロディをギターで追うんですか?

○最初はそうですね。曲の中にアルペジオを入れる時は何回も聴いて、”こういう音をここに入れたらいいな”っていうのをまず1ヵ所見つけて、そこから作っていく感じ。なんか、メロディをポンポンポンって弾いて、その音と音の合間に、コードの構成音を入れていくと、キレイなアルペジオになったりしますね。そういうのがけっこう多いかな。

●例えば「Sunday Morning Escape」のサビのアルペジオとか?

○そうそう、まさにああいう感じですね。あれはアルペジオっていっても、ルートの音をオレが弾かないアルペジオで、けっこう自由に動ける感じだけど。まぁ、アルペジオっていうと、オレは”ギター1本でコードも弾いてる”ってイメージで、オレはそれはあんまりやらないんですけど。

●「Palm」のイントロとかですね。

○あぁ、それくらいですかね。ああいうのが自分の頭の中では”アルペジオ”。

●「Palm」のアルペジオは指弾きのフレーズですよね? 普段家では、ああいうのを弾いていたり?

○家では最近、指で弾くことも多いかなぁ。「Palm」のフレーズは、ホントに家でポロポロやっていたものをそのまま持っていったんですけど。指のほうが、難しいけど表情は出やすい。最近、それこそジェフ・ベックとか、ここ何年かジャズとかも聴くようになって、ウエス・モンゴメリーとかを聴いて、ああいうのもやってみたいなって気持ちも自分の中にはあって。「Palm」はけっこうチャレンジだったっていうか、今までずっとピックでやってきたから感覚も違って指で弾くのも難しかった。でも、ギタリストとしてはすごくおもしろいですね。

●聴いているぶんには、アルペジオが苦手だったというのが信じられないですけどね。

○でも、アルペジオをすごく練習した時期は確かにあって。”このアルバムは、何かアレンジに困ったらとりあえずアルペジオを弾いてフレーズを作ってみよう”って思って作ったアルバムもあって、その時期はオレにとってはデカかったかな。

●それはいつ頃?

○ELLEGARDENの『ELEVEN FIRE CRACKERS』(06年発表)とか……。

●最近じゃないですか(笑)。その時点ですでに”アルペジオ・マスター”な感じだったと思いますけど。

○でも、自分の中で完成したのはその辺。それまでは、オレがよく言ってるコードと一緒のアルペジオ、要は上がペダルでコードが変わっていくようなアルペジオをメインで使っていたと思うんですけど、『ELEVEN FIRE CRACKERS』で、自分の中で、”これはもう自分のものになったからほかのことをやってみよう”って思えたんですよね。

その楽器が最終的には体の一部になるというのが理想。

 

●「Slow Down」にはアコギが入っていますが、アコギは今まで、そんなになかったですよね?

○そうですね。実は、オレはアコギを持ってなくて、今回、マーティンを借りたんですけど、おもしろいですね。だから最近アコギが欲しいなと思ってます。

●アコギとエレキでは使うコード・フォームが違う?

○基本的には変わらないです。オレは自分で言うのもあれだけど、エレキでもけっこう変わったコードを使うほうだと思うんで、むしろアコギのほうがそういう響きがキレイに出て気持ちいいですね。

●それはなるべく開放弦を入れるようにしたりとか?

○そういうのもありますね。オレはあんまり理論とかがわからないから、感覚でフォームを作るんですけど、押さえる場所によっても全然響きが違うし、それがアコギだと如実に出るから、そういうおもしろさはあります。

●エレキだとハイポジをけっこう使いますよね?

○アコギもけっこう上のほうで、5フレットから12フレットの間をよく使いますね。エレキの場合はヌケさせたい時はもうチョイ上まで行きますけどね。

●ところで、生形さんがギタリストとして目標にしたり影響を受けている人というと?

○前から言っているバーナード・バトラーはやっぱり好きで、彼はすごく人間的なギターを弾く人だし、そこは自分でも極めていきたいなと思っているところ。それと別だと、最近はロバート・フリップ。あの人ってすごく機械的って言われるけど、オレにはすごく人間的に聴こえて。それこそファズの使い方とかは最近けっこう気にしていますね。あとは、ジェフ・ベックもそうだし、ウエス・モンゴメリーやジョン・マクラフリンとか、いわゆる”ギタリスト”も好きだし。最近は、ロックに偏らないでいろいろ聴きますね。渡辺香津美さんとかも、ギター・マガジンですごく興味深いことを言っているなとも思うし。渡辺さんがブログをやっていて、けっこう映像も一緒に上げてるんです。それでクリスマス・ソングをアコギ1本で弾いている動画を観て、それが本当に素晴らしくて。こんな風に弾けたらいいなって思いましたね。あと、若い人たちもいろいろ聴きますよ。それこそ、世代によって全然感性が違うじゃないですか。上の人は上の人でいろいろと持っているし、若い子は若い子ですごくおもしろいギターを弾く人やおもしろいバンドがいたりして。

●生形さんのギターにあこがれてギターを始めたという人もけっこういると思うんですが、彼らにアドバイスをすると?

○技法的な面では、これはもう感覚なんですけど、オレは使うギターやアンプによって、一番良い音が出るポイントってあると思っているんです。例えば、今、ここにマーシャルとストラトがあってしばらく弾いているとすると──これは、ギターを多少やっている人なら誰でもそうなると思うけど──自分が一番気持ちいいポジションとかピッキングのニュアンスとかが絶対にあって、それがすごく大事なことだと思う。”こういうピッキングが正しい”とか”こういうセッティングが正しい”ってものは別になくて。オレはその楽器が最終的には体の一部になるというのが理想だから、自分の弾き方を押しつけるんじゃなくて、そのギターに対応した、そのギターのことを考えた弾き方でないと良い音は出ないんじゃないかなと思ってます。あとは、とにかくギターをたくさん弾くこと。機材を選んだり観に行くのも楽しいし大事だけど、そっちばっかりになっちゃうのもどうかと思う。その分ギターを弾いていたほうがうまくなるから、とにかくたくさんギターを弾いて、で、最終的にそれが自信につながるんですよね。それが大事じゃないかなと思います。

 

『Sands of Time』
GROWING UP Inc./Dynamord Label
GUDY-2004

Nothing’s Carved In Stoneオフィシャル・サイト

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