【インタビュー】怒髪天(上原子友康&増子直純) 

インタビュー by 編集部 2010年3月19日

R&E(ロック&演歌)を体現する唯一無二のスタイルで、聴く者を熱狂させる怒髪天。日本屈指のライブ・アクトとして精力的に活動を続ける彼らが最新作となる『オトナマイト・ダンディー』を完成させた。作品にはバラエティ豊かな楽曲が多数収録されており、不変の”怒髪天節”を存分に堪能できる意欲作に仕上がっている。ギター・マガジン4月号では、楽曲制作の中心人物である上原子友康(g/写真左)と圧倒的存在感を放つフロントマン増子直純(vo/写真右)のインタビューを掲載中。ここでは本誌に収録しきれなかった爆笑インタビューをお届けしよう。

バンドがきちんと音楽的にまとまるためには

友康がいないと成立しないんだよ。

ーーー増子直純

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●意外にも今回がギター・マガジン初登場となります。

増子 やっとだね(笑)。

上原子 ね。念願が叶いました(笑)。

増子 友康ね、すごくいいギター弾くんですよ。でも結果的に俺のキャラクターのせいで評価されづらいというか……俺の問題なんだよね(笑)。

●(笑)。今回の『オトナマイト・ダンディー』でも、上原子さんの多彩なギター・プレイが炸裂していますよね。引き出しも広いし、テクニックも見せつけています。

上原子 ありがとうございます。

●制作に当たりイメージしていたものはありましたか?

上原子 いつもアルバムを作る時は特にテーマを設けないんですよ。最終的に曲がすべてそろった時に全貌が見える感じですね。

増子 今回、友康(上原子)が30曲くらい作ってきて、アルバムに入れるか入れないかは関係なく”おもしろい”とか”いい曲だ”っていう判断で選んだのね。で、選んだ結果を友康に教えたら”この曲をやるの?”っていう反応でさ。

上原子 いつもなら選ばないような曲もピックアップしてきたんで驚いたんですよ。

増子 でも、そのかわり俺も大変だったんだよ! だってね、俺の世界観にはメジャー・セブンスとかっていうコード感はないんだから(笑)。これ、ど〜しよう?って。でも、そのおかげかレコーディングは今までで一番楽しかった。チャレンジのしがいがあったというか。

上原子 もう先が読めない中、作り上げていくっていう作業がすごく楽しかったよね。

●コード・バッキングの中にもオシャレなテンション・コードを織りまぜたりしていますよね。

増子 アーバンなね(笑)!

上原子 個人的には好きなんですよ。テンション・コードのカッティングって。けど怒髪天の音楽性や増子の声質には合わないんじゃないかっていうのがあって、今まで避けていたところなんですけど、今回はやってしまおうと(笑)。

増子 基本的にはすべての曲を友康が作ってるし、総合的なプロデュースも彼だからね。怒髪天の音楽って、ギターありきで作ってるもんな。やっぱり。

●曲を作る段階では、増子さんの歌声などは想定しているんですか?

上原子 そうですね。やっぱりもう20年以上一緒にやってるので意識しなくても自然とそうなってると思います。

●おふたりの考える”怒髪天節”とはどんなところですか?

増子 日本語の歌詞と歌で持ってく”歌モノ”っていう部分かな。能ある鷹は爪を隠すというか、けっこう作り込んだことをやってるんだけど、どこかバカっぽく聴こえるものが好きなんで。

上原子 メロディのツボっていうのはメンバーが同世代ってっていうこともあるのでそこは一緒かなと思いますね。

●メタルライクな楽曲からボサノバ的アプローチまで収録曲の表情もすごく多彩です。

増子 もともと友康は、昔からメタルが大好きで、最近また、だんだんとメタリックになってきてるよね(笑)。

上原子 そうそう。まぁ古いんだけどね。KISSみたいな感じというか(笑)。

増子 初めて出会ったのは高校3年の時かな。当時から友康はものすごいギターがうまくて。メチャメチャ速弾きしてましたね。それまでそんな速弾き観たことなかった。当時の俺はハードコア・パンクだったので、俺なんかとやるタイプじゃないと思っていたけど、やっぱりギターでの表現力が格段にすごかった。っていうか……友康以外のメンバー3人は、本当に馬鹿なんで(笑)、バンドがきちんと音楽的にまとまるためには友康がいないと成立しないんだよね。だから今回のアルバムは友康の作曲能力を前面に出した、もう彼のソロ・アルバムかというくらい、いろんなバリエーションの曲を入れてやろうと思っていたんです。

●歌謡のコブシの効かせ方や溜めなどはメタルに通じるところがあるのでは?

上原子 うん。そうですね。ありますね。

増子 なにしろオッサンだからね(笑)。

上原子 様式美的な感じがどこか似てるよね。メタルのバラードなんか演歌ですし。

増子 だから「ヤケっぱち数え歌」は日本語のわからない外国人に聴かせたいよね。きっと普通にカッコイイ曲だなって思うはずだもん(笑)。

●この曲のギター・トーンは王道のハムバッキング・サウンドですよね。フレーズもユニゾンのツイン・リフからワウ・プレイにいく流れなど、ギターの聴かせどころがしっかりと盛り込まれてるなと思いました。

上原子 そうですね。A型なんで、そのへんはけっこう綿密に考えています。

増子 でも、うれしいよね。ここまでギターに特化して聴いてくれるなんて。さすがギター・マガジンだね。”アニキ、男とは何ですか?”みたいな質問が多いからさ(笑)。アルバムと関係ねーだろ!っていう。

●精神論じゃないですか(笑)。では作曲作業においては、デモの段階から設計図をしっかりと考えているんですか?

上原子 曲にもよるんですけどだいたい考えてますね。特に「ヤケっぱち〜」はけっこう作り込みました。

●ちなみに上原子さんのルーツとなる音楽というと?

上原子 高校生の時はジャパメタ一色でしたね。それこそラウドネスやアースシェイカー、あとランディ・ローズやラットも好きでしたよ。

増子 当時はラットのロビン・クロスビー・モデルのギターを射守矢雄(b/bloodthirsty butchers)とおそろいで買って使ってましたね。目のまわりを真っ黒に塗って、舌ベロベロ出しながら弾いてましたから(笑)。

●観てみたかったです(笑)。あと本作の楽曲には必ずと言っていいほどソロが入っています。最近のバンドだと曲中にソロがないことも多いですよね。

増子 そうそう! ”許せない!”とまでは言わないけど、なんか腑に落ちないんだよね。

上原子 やっぱり間奏の時は、スッと前に出てきてギター・ソロでしょって思いますよ。

増子 コロガシの間から出てきてね。で、弾き終わったらスキップで帰ると(笑)。

上原子 スキップでは帰らないよ!

増子 昔やってたじゃん! ソロ終わったらちょっとニコってしてスキップで戻ってたじゃん!

上原子 あぁ〜……昔はね(笑)。まぁ僕らはギター・ソロがないと曲じゃないって思う世代ですから。

増子 エンターテインメントというかそういったバカバカしいところも含めてロックだと思うし、ショーだと思うから。俺もやっぱり2番を歌い終わったあとに”ギターーー!!!!”って叫びたいからね。

上原子 昔はギター・ソロのフレーズとか口で歌えたりしたじゃないですか? そういう歌メロと一緒にギターも歌えるようなのををやりたいですね。

●怒髪天のギターだと”いなたいなぁ〜”ってちょっと笑みがこぼれるようなフレーズも多いですよね。オブリとか特に。

上原子 そうですね(笑)。多いですね。

増子 なにしろレコーディング現場で”うわ〜”って笑いながら作ってるから。いつも楽しく作ってるよ。

●そういう”笑えるフレーズ”というのも判断基準のひとつだったりするんですか?

増子 それはあるね。”これやらないでしょ!”っていうのをあえて取り入れたり。誰もやらないうちに早くやっとこうっていう(笑)。

上原子 でもそれは”誰もやりたくない”ことなんじゃない?(笑)

●なるほど(笑)。ちなみに上原子さんは、ライブで即興的に弾いたりすることはあるんですか?

上原子 曲の中ではほとんどないですね。ちょっとしたチョーキングのニュアンスとかの部分での自己満足はありますけど(笑)。”ここ昨日の演奏とは違うんだけどわかるかな〜?”みたいな(笑)。

増子 誰もわかんないっつーの(笑)。

上原子 揺れがちょっと違うんだけど、みたいな。それくらいで大幅にフレーズを変えることはしないですね。

増子 やっぱり楽曲の総合的な完成図が見えてるのは友康だけなんだよね。デモはざっくりとしたものもあるし、完成度の高いものもあるんだけど、後者だと、ドラムやベースなんかもデモのイメージに引っ張られていくこともある。それを嫌う曲もあるし、逆もある。その兼ね合いが最終的に友康の頭の中にあるんだけど、こっちがいじりようがないくらい良い具合に作ってきてくれるから、俺が”これは嫌だ”って言うことはまずない。むしろ崩すほうのこと言うよね。

もうギター・マガジンに育てられたようなもんですから。

ーーーー上原子友康

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●4人のアンサンブル以外の部分だと、「オレとオマエ」を始め、要所要所でキーボードが入ってますよね。

増子 この曲のために買ったからね。

上原子 今までダビングはギターを重ねていたんだけど、今回はバンド・サウンドはドカンとしてて、その味付けの部分はキーボードがいいかなと思って買ったんです。まぁ、買ったからには使おうかな、と。

増子 歌詞にも”蘇るのは80年代の思い出”ってあるから、そこに来るサウンドとしてはピコピコした音しかないでしょ! あの音が入るだけでキュンとするもんね。ポリスとかの影響を受けてるみたいでしょ。今の時代では一番やっちゃいけないことだけど(笑)。

上原子 でもそのへんの自覚症状はあるよね。

増子 もちろん! だからこそやるんだよ。そのテイストじゃないと表わせないものが必ずあるからやる。前回のアルバムでサンバの曲を作ったんだけど(編注:『プロレタリアン・ラリアット』収録の「セバ・ナ・セバーナ」)、俺らはまったくやることになると思ってなかったわけ。リオの血が流れてるわけでもあるまいし、言ってもせいぜい浅草のサンバ・カーニバルくらいでしょ。第一海外には一度も行ったことないんだし、パスポート持ってないんだから。もちろんサンバにも興味ないし。でもサンバ調の曲作ってみようかって時に、あのくらいバカみたいな突き抜け方してないと、表現できないバカさがあるってその時にわかったね。だから”演奏者が俺たちであれば何を演奏しても怒髪天の音になるんだ”ってわかったんだよ。だから今回もやりすぎたとしても絶対おもしろくなるぞと、俺ららしいものになるって思ってたよ。……最初は不安だったけど。

上原子 サウンド的には「オレとオマエ」が今作の代表的なサウンドになってると思いますね。

増子 あとは「俺ときどき・・・」もただごとじゃないよね。

●そういった曲のネタやアイディアはどこから仕入れてくるものなんですか?

上原子 音楽はいろんなものを聴いてて、好きなアーティストもたくさんいます。奏法面で言えば、僕はいろいろなスタイルのギターを弾きたいタイプなんです。で、そこで活躍するのがギター・マガジンなんですよ。それこそ高校生から読者なんですけど、いまだに誌面に載ってる譜面はひとつも漏らさず最初から最後まで弾くんです。でギタマガって、夏になったらボサノバとか、秋になったらひとり爪弾くソロ・ギターとかいろいろ特集があるじゃないですか。それを続けていると、自然にいろんなスタイルのギターが身につくんですよね。自分の中に各ジャンルのギター奏法がストックされていくんです。そうすると曲を思いついた時にメロディと一緒にこうやってギターを弾こうって思いつくんですよね。

増子 しかしギター・マガジンよく読んでるよね。ツアーの時は必ず持ってきてるもんな。ずーっと読んでるよ。何回読み直すんだっていうくらい。

上原子 いまだに家で酒飲みながら眺めてるのがすごく好きなんです。一番幸せな時間かな。眺めてると幸せなんだよね。

増子 表紙を観ただけでツアーのこと思い出すもんな。ギター・マガジンを観るとツアー中の機材車を思い出す(笑)。

上原子 もうギター・マガジンに育てられたようなもんですから。

●ありがとうございます。では、いち機材としてギターに求めるものは?

上原子 メイプル指板のストラトが好きですね。以前はレス・ポールを弾いてた時期もあったんですけど、自分の体の前に1枚の板がある感じがする。でもストラトは、体の一部のような感覚で弾けるんです。アームも含め腕の延長みたいな感覚なんですよね。材としては、思ったことをダイレクトに伝えてほしいので、音の立ち上がりの早いメイプルは好きです。そういった”瞬発力”はギターに対してすごく求めますね。

増子 今回のレコーディングでおもしろいなって思ったのは、いつものストラトだけじゃなくてフジゲンや、でっかいギルドのアコギもそうだけど、それぞれのモデルに極端なくらいの個性があったこと。そのギターのキャラクターじゃなければできない音が如実に出てると思う。

●ライブを見に来るギター・キッズにメッセージを。

上原子 コピーしてくれたらうれしいなぁ。で、コピーした音源とか映像をぜひ事務所まで送って下さい(笑)。審査するんで。

増子 それ何もらえるの?

●ギター・マガジンと何かコラボ企画やりましょうか?

増子 それおもしろいね! 譜面とかのっけてさ。

上原子 いいですね。自分のコピーって聴いてみたいじゃないですか。

●最優秀者は、ライブで共演できるとか(笑)。

増子 もちろんボーカルでね! なんつって(笑)。

●ギター・マガジンなのに?!(笑)。

増子 (笑)。でも共演はいいんじゃないかな。

●でも、上原子さんのギターをコピーするのはむずかしいと思いますよ。簡単そうに見えてすごく難しい。

増子 それはよく言われるよな。25周年記念のライブ(怒髪天結成25周年特別企画”オールスター男呼唄 秋の大感謝祭?愛されたくて…四半世紀?”)をやった時に、出演バンドに俺らの曲をカバーしてもらったんだけど、みんなヒーヒー言ってたもんね。難しすぎるって(笑)。しかもドラムとベースに比べてギターはものすごく難しいから。

上原子 THE BACKHORNの(菅波)栄純が弾いてるの見て、”俺って変なんだなぁ”って思いましたね(笑)。変なコードの抑え方しているなとか、変な弾き方だなとか(笑)。

増子 リズムもそうだよね。カバーだとリズムが全然違って聴こえるというか……グル−ヴが全然違う。こんな風になるんだって新鮮だった。

●怒髪天が自然とやっていることが意外と難しいのかもしれませんね。

増子 そう。20年以上同じメンバーでやってるからこそなんでね。なんとも言えない感じだけど(笑)。

上原子 なんか変な臭いがついてきた気がして悲しい気持ちになることありますよ。加齢臭的なね(笑)。タメとか特に。

増子 本人はタメてるつもりないんだけどね。自然と”泣き”入っちゃいますから。それを直すっていうのは、もうDNAレベルで無理だよ(笑)。

 

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『オトナマイト・ダンディー』
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