【インタビュー】YOUR SONG IS GOOD(シライシ”シライシ”コウジ & ヨシザワ”モーリス”マサトモ)

インタビュー by 編集部 2010年3月15日

前作から1年8ヵ月ぶりとなる通算4作目のアルバム『B.A.N.D.』をリリースしたYOUR SONG IS GOOD(YSIG)。タイトルどおりのバンド感に溢れたサウンドは、これまでの集大成的な側面に加え、各メンバーのパーソナル面も反映され、もはやカテゴライズ不能の柔軟性を持つ。ギター・マガジン4月号では、シライシ”シライシ”コウジ(写真左)とヨシザワ”モーリス”マサトモのツイン・ギター・チームのインタビューを掲載中。ここでは本誌に収録しきれなかったインタビューをお届けしよう。

控えめでいるほうが、

“何で控えめにしてんだよ”って空気になってましたね。

 

●新作『B.A.N.D.』には、「WE ARE」、「MR.EVERYMAN」、「UNBREAKABLE」など、これまでの良い意味で暑苦しかったYSIGサウンドとは、また違った印象の楽曲が収録されていますね?

モーリス:YSIGっていう塊で考えたらそうかもしれないですね。今回は、”それぞれがやりたいことをやるのが一番いいんじゃないか”っていう、個々がすごく自由な感じでした。

シライシ:うん。それぞれの趣味趣向を個々人が適度な具合に入れてますよね。

モーリス:もしかしたら今までは、”自分が思うYSIG”とか”ほかの5人が思うYSIG”とかの最大公約数の旨みをグッて引き上げてたところで、自分のアイディアを出していたかもしれない。でも今回は、そうじゃなくてもうちょっとパーソナルな部分とかもバンドにドンドン提出したっていうか。だから「WE ARE」は思いっきりシライシだし。

シライシ:「WE ARE」は、曲調も自分の好きなギターポップだったり、ああいうカッティングありきで作ったりしてましたね。だから、”やっぱりそういう雰囲気にしかならないだろうな”って思いながら、バンドに持っていってたんで。

●「WE ARE」は、歌詞もシライシさんが書いていて、サラリーマンの悲哀というか、切ない内容ですね。

シライシ:別に決めごとはなかったけど、なんとなく自分が作った曲に関しては”やれよ”みたいな空気があったんで、自主的に書いて持っていきました(笑)。で、最初はそんなにリーマンリーマンしてなかったんです。やっぱり、リーダー(サイトウ”ジェイジェイ”ジュン:vocal、organ、etc)が歌うわけだし、たぶん歌いづらいだろうなって思って、そういうのが匂うキーワードをすごくぼやかして1回目は出したんですよ。そうしたら、”もっとリーマン色を出しちゃっていい”とか、”自分の生活の中で出てくるキーワードとかをもっとわかりやすく入れちゃっていいよ。それでも俺はちゃんと歌うから”って言われて。それで持ち帰って、その時に感じたこととか生活のことも書いて持っていったら……ウケてました(笑)。”これは俺には書けない”って。

●みんなの最大公約数を取らなくても、何をやっても、もう自分たちのものにできるっていう自信があるということでしょうかね?

シライシ:うん。ブレなくなっているのかもしれないですね。

モーリス:逆に、もうそこに関して控えめでいるほうが、”何で控えめにしてんだよ”って空気になってましたね。

 

気合いっすね……カリプソではない(笑)。

 

●「FIGHT BACK! FIGHT BACK! FIGHT BACK!」は、ふたりがコード・ストロークで同じフレーズを終始弾いているのが、YSIGとして新鮮でした。

シライシ:この曲はカリプソで、カリプソって今までかなりやってきているんです。で、この曲ができてきた時に、今回のアルバムでどうやって良い位置にしてあげようかなって考えて、ギターがふたりでガチャガチャ同じことやってズドーンって出てるっていうのは今までやってなかったから、アイディアとしてはおもしろいんじゃないかなって。

●ギターがものすごい疾走感を請け負ってますね。

シライシ:ギターが引っぱっていくというイメージですよね。で、これはわりと雑に弾きました。今までみたいなカリプソだと、ちょっとキュッと落ち着いたものになっちゃうと思ったんで。ちょいリズムから離れてもいいかなって感じで、ちょっとハシっちゃったりとか、あまりヨシザワとキッチリ合わせないようにちょこっとだけカッティングのニュアンスを変えたりだとか、ちょっとグチャグチャに聴こえるようにとか、そういうのは意識して弾いたような気がします。

モーリス:これは気合いで弾きましたね。

シライシ:そう、気合いっすね……カリプソではない(笑)。

モーリス:カリプソの好きなところは、マイルドっていうか、スウィートだったりジャジィなコード感だったりって部分もありますけど、今回はそれをあえてなくしました。

●そこが新しいですよね。で、また新しいと思ったのが、アコギがフィーチャーされたモーリスさん作の「MR.EVERYMAN」。でも、これはあまりギターギターしてないですね?

モーリス:ですよね。でも、ギターはかなり入れてるんですよ。別にフィーチャーした感じではないですけど。で、大もとは、全然違うタイプの曲だったんです。一番最初は、ボコーダーのメロディありきで、”疾走感のある教会音楽”みたいな、よくわからない感じを目指していたんですよ。そのあと、一度ファンキーな4つ打ちの曲に変貌して、それから寝かせているうちに”アコギを使いたいな”って気まぐれに変わっていって。で、最終的になぜかこうなった(笑)。

●ここまでストレートな疾走感の曲も、なかったタイプの曲かなと。

モーリス:ドラムのビートとかはシンプルに、器用なことを一切やらない感じは、あえて目指しました。

シライシ:これはやっぱり、作ってきた作者のイメージがあったんですよね。だから、それに近づけようとみんなでやった作業な気がします。リズムもある程度決まってたし、俺のギターはこういうリバービィな感じでっていうのも何となくあったから。

モーリス:今まで好きだったいろんな曲の要素をいっぱい詰めたかった。聴いた印象は全然違うんですけど、マイブラみたいなことも考えたりしながら、”埋め尽くしている感じにしてくれ”とか、メロディははかないくらいに聴こえるか聴こえないかでいいから、ギターをとりあえずベタで”ジャージャージャージャー”ってやっちゃってとか。リズムをどう押していくかっていうんじゃなくて、音のレイヤーをどう重ねるかみたいなものをすごく考えてましたね。

●「ONIROKU」は時代劇に合いそうな感じですよね(笑)。シライシさんの弾くギターのメロディの感じとか。

シライシ:ファミコンの”がんばれゴエモン”みたいな感じ……ですよね。今、ピンときました(笑)。

モーリス:イメージは、時代劇ではなかったですけど(笑)、やってみると、メロディがマイナー・ペンタトニックな音階なので、そういうちょっと和な部分も出てきてるかな。シライシのソロとかは、何となく”こういう感じの変な音階でこういうアクセントのメロディで”っていうイメージだけがあって、シライシとふたりでギターを弾きながら雰囲気を伝えながら、シライシがすごくいいのを作ってくれました。

シライシ:昼くらいから入って、夜にレコーディングするまでの4、5時間くらいの間に、細かいところの詰めは作りましたね。イントロだったり、Aメロ、Bメロは誰が弾くんだとか、ほかに決めなきゃいけないことっていっぱいあるじゃないですか。だから、延々と頭から最後まで何回も演奏をくり返していく中で、自分の見せ所とかを見つけながら作り上げていった感じです。

キレイにまとめて、”これだけ上手に弾けますよ”というよりは、

“こんな感じでいつも演奏しているんですよ”っていう

そのままをパッケージしてもいいのかなって。

 

●「NAMAENSOU SHIMAKURI NO WEEKEND」は、イントロのコード進行がすごくエモいですね。

シライシ:うん、エモですね。

●と、思ってたら、そこからいきなりスカになったり、ノンビリな感じになったりと、曲調の落差がおもしろい。

シライシ:エモい部分だけは自分で作り上げていたんですけど、そのスカの部分だけは何もアイディアがなかったんです。で、”おもしろくしたいんですけど”って感じで、バンドでいろんなリズムを試した中で、”スカにしよう”ってベース・ラインをゴリゴリに動く感じにしたらすごく変な感じになって。”ああ、やっとこれで落ち着いたな”みたいな(笑)。自分でもスカになるとは思ってなかったんですけどね。最初はちょっとジャムみたいなロックになったりとかもしたし、いろいろ回ったら、ああなっちゃった。

●「UNBREAKABLE」はスケールのデカいインストですね。YSIG的ポストロック的な感じを受けました。

モーリス:10年ぐらい前は、こんな感じの……ポストロックをやってたんですけどね……。その時はなかなか完成しなかった世界観を、今あらためてジュン君がやりたかったのかなっていうのを感じながらやりました。

シライシ:これはすごく楽しかったですよ。曲を作ったり録ったりしていく中で、やっぱり懐かしさもありつつ。昔、結局ポストロック時代は作ったら作りっぱなしで、音源という形では残さなかったんです。だから、今聴き直せないし何とも言えないんですけど、やっぱりひとつの完成型というか、その時から比べて進化してればいいんですけどね。

モーリス:で、これを作ってた時は、「UNBREAKABLE」ってタイトルじゃなくて、仮で”SAD”、”悲しい”って言葉だけがあって。自分の悲しい感じを、どういう風にシンプルなメロディで弾こうかなって気にしながら、ただ淡々と弾いたというよりはけっこう気持ちを込めながら弾きました。

●”SAD”でも、最後はちゃんと光が見える感じで終わってるのが、いいですよね。

シライシ:ジュン君らしいような気がしますね。最後は派手に終わりたいっていう。

●その最後に盛り上がっていくギターとベースが8分に入る前、右チャンネルで、一瞬狂気のギターがハジけますね?

シライシ:何か入れたほうがいいかなと思って、我慢できなくて入れてしまいました。その前に、ピアノとかも不協和音で何かを入れてたんですよ。で、”そっか、ジュン君もそういう風にやるんだったら、俺もどこかで入れよう”と思って。”ここだ!”と思って、リハの時から毎回入れてました(笑)。

●「THE LOVE SONG」の2番のアタマでも、1小節だけ偶発音的な感じで”ポーン”とギターが鳴って、キレイな感じじゃなく音が切れますよね?

シライシ:これはわざとで、エフェクターを一回踏んでスイッチングしてますね。ギター本体のスイッチングをガチャガチャしたり、あそこはいろいろと試して、結果アレがOKテイクになってます。なんかああいう部分で生っぽさを出したかったんです。

●また、中盤ではギター・ソロのような、勢い満点のヨシザワさんのフィーチャー・プレイがあります。

モーリス:あれも、”ここでなんかやって!”みたいな感じで言われて、ノープランで弾きました。結局、今回どれもそうですけど、本番テイクの1回目とか2回目とか、浅いテイクが生かされていて、そのあとに直すことをしなかったんです。だから、たまたま、あの時に出ちゃった音だっていう。で、家に帰ってから、どうやって弾いたんだろうなって、自分で耳コピする作業をやりましたね(笑)。

シライシ:「THE LOVE SONG」に関しては、このヨシザワのギターの部分が、全体のOKテイクになった要素としてはデカかった気がする。ヨシザワのギターの変な感じが一番よく鳴っていたって部分で。

●「SIGNBOADER TRIPPIN’」はトレモロ・ピッキングをフィーチャーした曲です。

モーリス:これは、ギターでメロディをやりたいなっていうのがあって、しかも伸びのあるメロディだったので、ギター1本でやるとしたらトレモロで音の粒を埋めていこうと。これも結局、うまくないテイクのまんまなんですよ。単音をキレイにトレモロできていれば、ちゃんとメロディだけ聴こえてるんでしょうけど、かなりガシャガシャやっちゃったんで、違う弦がいっぱい鳴っちゃってる。でも、今回、そういうのを入れるってことに、逆に意義があったっていうか。それを弾き直してキレイにまとめて、”これだけ上手に弾けますよ”っていうのを見せるよりは、”こんな感じでいつも演奏しているんですよ”っていうまんまをCDにパッケージしてもいのかなって思ったんです。

●また、曲の余韻が長くて、エンディングで伸ばした音が自然に消えるくらいまで長く取られていますね。

モーリス:“チャ〜ン”と弾いて伸びるところまで伸ばしておきたいなってのと、最後ジュン君もオルガンを”プルルルルル”って、ずっと止めなかったんですよ。それで、一発で録るっていう意味と近い感じで、全員の音がなくなったあたりが曲の終わりなんじゃないかなって。これは曲の始めも、録音のテープが立ち上がる”ウイッ”ってちょっとしゃくれる音から始まって、そこからスーッってアンプのノイズが入りっぱなしでドラムが入るんです。その場でテレコを置いてポチって押して録音したみたいな感じというか。だから、曲の最後プチって切れるのも、”プチ。ハイ、オッケーです”ってところまで生かす感じにしたらいいって。そのままの実況というか、その場の空気を整理せずに入れたいって、すごくシンプルな発想でしたね。

 

『B.A.N.D.』
Kakubarhythm/NAYUTAWAVE RECORDS 
UPCH-20183

 

ユニバーサル・ミュージックのアーティスト・ページ

オフィシャル・ブログ

TUNECORE JAPAN